参考文献
実務経済法講義
スポンサード リンク
『実務経済法講義』(川越憲治、民事法研究会、平成17年)は、独占禁止法について解説されている理論書です。
編集者・著者の川越憲治氏は、弁護士の方であり、同時に、白鴎大学の教授でもいらっしゃいます。独占禁止法を専門とし、同法の第一人者として、数多くの書籍を出版していらっしゃいます。他の著者の方々は、弁護士の方、元検事の公証人の方で、いずれも独占禁止法を専門として、実務・教育の第一線で活躍していらっしゃる方々です(巻末「執筆者略歴」より)。
本書では、独占禁止法全般について、事例、理論、判例、学説等の紹介を通じて、解説がなされています。
独占禁止法の基本書
本書は、独占禁止法全般について解説している基本書です。
本書は、法科大学院での教科書としての使用を想定して執筆されたものですので、対象読者としては法科大学院の学生を想定しています。このため、初学者など、ある程度の法的な知識や考え方がない方にとっては、少々難解な内容となっています。
ただし、法科大学院の教科書とはいえ、実務の世界からかけ離れているものではありません。むしろ、学生にとって理解しやすいように、事例、判例、図が豊富に掲載されていますので、法律の基本書としては、わかりやすいものといえます。この点から、実務家や企業法務の担当者にとっても、十分に使いやすい書籍であるともいえます。
本書では、独占禁止法のポイント・問題点について、実務・理論両方の観点から、まんべんなく解説されています。企業間の取引における契約実務については、本書1冊で十分にカバーできます。ただし、先述のとおり、本書の内容の理解には、一定の法的な知識や考え方が要求される可能性があります。その意味では、初学者の方は、本書をご覧になるまえに、独占禁止法の入門書をご覧になることをお勧めいたします。
不公正な取引方法について特に注意
業務委託契約の契約実務において、独占禁止法は、特に、「不公正な取引方法」が問題となります。この点について、本書では、「第6章 不公正な取引方法」(P182~)で解説されています。
本書での解説では、個々の不公正な取引方法について、意義、条文、事件例などが記述されています。また、必要に応じて、図が掲載されています。特に、事件例では、実際に過去に独占禁止法上問題となった事件について取り扱っていますので、非常にわかりやすい内容となっています。それと同時に、特に独占禁止法上問題とされやすい大手企業にとっては、注意すべき点としてチェックしやすくなっています。
大企業の契約実務担当者は、その業務の性質上、どうしても自社にとって有利な内容の契約書を起案しがちです。このこと自体は問題ではありませんし、むしそうあるべきです。しかしながら、これは、同時に、「不公正な取引方法」に該当するような契約条件としてしまうリスクともなります。弊事務所でも、大手企業の作成した契約書のなかにある「不公正な取引方法」に該当する契約条項を何度もチェックしてきました。
このようなことがないように、特に大企業の契約実務担当者は、本書の第6章を参考とし、自社が独占禁止法に該当することがないよう、対策を講じるべきです。また、契約実務担当者は、場合によっては、営業担当者が独占禁止法上問題となる営業活動(契約交渉)をしないように、また、企画担当者が独占禁止法上問題となる企画を立案しないように、本書にもとづいて指導するべきです。
お勧めの関連書籍
- 川越憲治『下請取引の法務』商事法務;2004年
その他の契約書のことなら「契約書の達人」へ
スポンサード リンク