このページでは、フリーランス・個人事業者やその発注者などの業務委託契約の当事者向けに、フリーランス保護法・フリーランス新法の概要について解説しています。

フリーランス保護法・フリーランス新法は、正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(別名:フリーランス・事業者間取引適正化等法)といい、フリーランス・個人事業者・一人法人を保護し、その発注者を規制する法律です。

フリーランス保護法・フリーランス新法では、フリーランスによる給付の内容等の取引条件の明示義務、フリーランスとの取引の適正化、フリーランスの就業環境の整備などが規定されています。

これらの規定は、下請法とも共通する部分が多く、その多くは下請法よりも規制が緩くなっています。

ただ、フリーランス保護法・フリーランス新法には、下請法よりも規制が厳しい部分や下請法とは異なる規制もあるため、下請法を遵守しているからといって、自動的にフリーランス保護法が遵守されていることにはなりません。

このページでは、こうしたフリーランス保護法・フリーランス新法の概要と下請法との関連性について、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • フリーランス保護法の目的と概要
  • 規制対象となる特定受託事業者・特定業務委託事業者の定義
  • 法律の適用対象となる取引・契約の範囲
  • 発注事業者に求められる通知義務と契約ルール
  • 禁止行為の概要
  • 法令違反時の行政指導・罰則の内容




【意味・定義】フリーランス保護法・フリーランス新法とは?

フリーランス保護法は、正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(別名:フリーランス・事業者間取引適正化等法)といいます。

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律は、その名の通り、特定受託事業者=フリーランスが当事者となるビジネス上の取引の適正化に関する法律です。

具体的には、主に以下の内容の法律となっています。

フリーランス保護法の主な内容
  • 取引内容の明示(三条通知
  • 支払期限の規制(60日ルール)
  • 発注事業者の禁止行為・規制行為
  • 募集広告の規制
  • フリーランスの妊娠・出産・育児・介護に対する発注事業者の配慮義務
  • 中途解約の規制

発注事業者の立場としては、フリーランス保護法は、フリーランスを協力に保護している法律であるとも言えます。

【意味・定義】フリーランス保護法(フリーランス新法)とは?

フリーランス保護法・フリーランス新法とは、正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(別名:フリーランス・事業者間取引適正化等法)といい、フリーランスに係る取引の適正化、就業環境の整備等を図る法律をいう。





フリーランス保護法・フリーランス新法の対象となる事業者は?

フリーランス保護法は広範囲な発注事業者が規制対象となる

フリーランス保護法では、主に次の3つの事業者を適用対象としています。

フリーランス保護法の適用対象となる3つの事業者
  • 特定受託事業者:個人事業者または役員が1人だけの法人(いずれも従業員を使用しないものに限る)
  • 業務委託事業者:特定受託事業者に対し業務委託をする事業者(三条通知の明示義務の対象者)
  • 特定業務委託事業者:業務委託事業者のうち、従業員を使用する個人事業者または役員が2人以上いる、もしくは従業員を使用する法人

ここでいう特定受託事業者が、いわゆる「フリーランス」に該当します。

また、業務委託事業者と特定業務委託自称者が、いわゆる「発注事業者」に該当します。

このうち、業務委託事業者に対する規制は比較的緩いですが、特定業務委託事業者に対する規制は比較的厳しい内容になっています。

つまり、事業者として従業員を使用しない個人事業者または一人法人に対して業務委託をする場合は、フリーランス保護法の適用対象となる可能性があります。

そして、これらが当事者となる企業間取引のうち、特定の業務委託の内容のものが、フリーランス保護法の適用対象となります。

具体的には、物品の製造・加工、情報成果物の作成、役務の提供のいずれかの業務委託の場合が、フリーランス保護法の適用対象となります(詳細は後述)。

フリーランス保護法の規制内容とは?

フリーランス保護法には、主に以下の7つの規制があります。

フリーランス保護法の7つの規制
  • 三条書面の明示
  • 60日ルール
  • 禁止行為
  • フリーランスの募集広告における募集情報の的確表示義務
  • フリーランスの妊娠・出産・育児・介護に対する発注事業者の配慮義務
  • フリーランスに対するハラスメントに関する発注事業者の配慮義務
  • 30日前の契約の予告解除・予告不更新

これらの規制は、発注事業者の従業員や業務委託の期間の内容によって、課される内容が異なります。

具体的には、発注事業者が事業者(≠一般消費者)であり、フリーランスが特定受託事業者(従業員を使用しない個人事業者または一人法人)である場合、従業員・役員の人数と業務委託の期間に応じて、次の4つの区分で規制が課されます。

フリーランス保護法の規制内容
発注事業者の使用従業員・代表以外の役員業務委託の期間規制内容
0人
  • 三条書面の明示
1人以上1ヶ月未満
  • 三条書面の明示
  • 60日ルール
  • フリーランスの募集広告における募集情報の的確表示義務
  • フリーランスに対するハラスメントに関する発注事業者の配慮義務
1ヶ月以上6ヶ月未満
  • 三条書面の明示
  • 60日ルール
  • 禁止行為
  • フリーランスの募集広告における募集情報の的確表示義務
  • フリーランスに対するハラスメントに関する発注事業者の配慮義務
6ヶ月以上
  • 三条書面の明示
  • 60日ルール
  • 禁止行為
  • フリーランスの募集広告における募集情報の的確表示義務
  • フリーランスの妊娠・出産・育児・介護に対する発注事業者の配慮義務
  • フリーランスに対するハラスメントに関する発注事業者の配慮義務
  • 30日前の契約の予告解除・予告不更新

この他、フリーランス保護法が適用される詳細な条件につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

フリーランス新法(保護法)の適用対象は?事業者・取引(業務委託)や下請法との違いについて解説





フリーランス保護法・フリーランス新法の対象となる「業務委託」とは?

業務委託=物品の製造・加工、情報成果物の作成、役務の提供

フリーランス保護法の対象となる取引には、あらゆる取引が該当するわけではありませんが、ほとんどの業務委託が該当します。

ここでいう、業務委託とは、物品の製造・加工、情報成果物の作成、役務の提供のいずれかの委託を意味します。

【意味・定義】業務委託(フリーランス保護法)とは?

フリーランス保護法における業務委託とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む)、情報成果物の作成、役務の提供(自らに役務の提供をさせることを含む)を委託することをいう。

フリーランス保護法第2条(定義)

3 この法律において「業務委託」とは、次に掲げる行為をいう。

(1)事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること。

(2)事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)。

建設工事の役務の提供も適用対象

なお、フリーランス保護法では、下請法とは異なり、建設工事の委託についても適用対象となります。

このため、下請法の適用対象外である建設業者としては、建設業法第19条と併せて、いわゆる一人親方に対する業務委託がフリーランス保護法の対象となることに注意が必要です。

No.関係項目等意見の概要考え方
4-6本法と建設業法が重畳して適用されるかについても明示されたい。

理由
本法第 2 条第 3 項第 2 号に規定する「役務の提供」については、下請代金支払遅延等防止法(昭和 31 年法律第 120 号)第 2 条第 4 項に規定する「役務提供委託」と異なり、建設業法(昭和 24 年法律第 100号)第 2 条第 2 項に規定する建設業を営む者が業として請け負う建設工事を除くことの明示がなく、本法と建設業法の関係性が明らかではないため。

本法の「業務委託」(本法第2条第2項)には、建設工事の委託も含まれるため、本法と建設業法が重複して適用される場合も想定されます。

この他、フリーランス保護法の適用対象となる業務委託の範囲につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

フリーランス新法(保護法)の適用対象は?事業者・取引(業務委託)や下請法との違いについて解説





フリーランス保護法・フリーランス新法で明示が義務づけられる「三条通知」とは?

三条通知とは?

フリーランス保護法が適用される場合、業務委託事業者には、特定受託事業者に対する委託内容の明示義務が課されます(フリーランス保護法第3条)。

この明示義務による通知のことを三条通知といいます。

フリーランス保護法第3条(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)

1 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。

2 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。

【意味・定義】三条通知(フリーランス保護法)とは?

三条通知とは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)第3条に規定された、業務委託事業者(発注事業者)が特定受託事業者(フリーランス)に対し明示しなければならない通知をいう。

三条通知の明示事項とは?

フリーランス保護法第3条と関連する施行規則では、以下の内容が、三条通知の明示事項とされています。

三条通知の必須明示事項

  1. 業務委託事業者および特定受託事業者の商号、氏名もしくは名称または事業者別に付された番号、記号その他の符号であって業務委託事業者および特定受託事業者を識別できるもの(施行規則第1条第1項第1号)
  2. 業務委託をした日(施行規則第1条第1項第2号)
  3. 特定受託事業者の給付の内容(施行規則第1条第1項第3号)
  4. 特定受託事業者の給付を受領し、または役務の提供を受ける期日等(施行規則第1条第1項第4号)
  5. 特定受託事業者の給付を受領し、または役務の提供を受ける場所(施行規則第1条第1項第5号)
  6. 特定受託事業者の給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日(施行規則第1条第1項第6号)
  7. 報酬の額(施行規則第1条第1項第7号)
  8. 報酬の支払期日(施行規則第1条第1項第7号および同条第3項)
  9. 報酬の全部または一部の支払につき手形を交付する場合は、その手形の金額および満期(施行規則第1条第1項第8号)
  10. 報酬の全部または一部の支払につき一括決済方式(債権譲渡担保方式またはファクタリング方式もしくは併存的債務引受方式)により金融機関から当該報酬の額に相当する金銭の賃付けまたは支払を受けることができることとする場合は、当該金融機関の名称、当該金融機関から貸付けまたは支払を受けることができることとする額、および当該報酬債権または当該報酬債務の額に相当する金銭を当該金融機関に支払う期日(施行規則第1条第1項第9号)
  11. 報酬の全部または一部の支払につき、業務委託事業者および特定受託事業者が電子記録債権の発生記録をし、または譲渡記録をする場合は、当該電子記録債権の額および当該電子記録債権の支払期日(施行規則第1条第1項第10号)
  12. 報酬の全部または一部の支払につき、業務委託事業者が、資金決済に関する法律第36条の2第1項に規定する第一種資金移動業を営む同法第2条第3項に規定する資金移動業者(以下、単に「資金移動業者」という。)の第一種資金移動業に係る口座、同法第36条の2第2項に規定する第二種資金移動業を営む資金移動業者の第二種資金移動業に係る口座または同条第3項に規定する第三種資金移動業を営む資金移動業者の第三種資金移動業に係るロ座への資金移動を行う場合は、当該資金移動業者の名称および当該資金移動に係る額(施行規則第1条第1項第11号)

これらをより分かりやすく表現すると、以下のとおりとなります。

三条通知の必須明示事項
  1. 発注事業者およびフリーランスの名称(番号・記号等による記載も可)
  2. 業務委託をした日(業務委託をすることについて合意した日)
  3. 業務内容
  4. 納期等(成果物の納期または役務提供の期日・期間)
  5. 納入場所等
  6. 検査完了日(検査をおこなう場合)
  7. 報酬の額
  8. 報酬の支払期日
  9. 手形を交付する場合はその金額および満期
  10. 一括決済方式で支払う場合は、以下のもの
    • 金融機関名
    • 貸付けまたは支払を受けることができることとする額
    • 報酬債権または報酬債務の額に相当する金銭を当該金融機関に支払う期日
  11. 電子記録債権で支払う場合はその額および支払期日
  12. 電子マネー等の資金移動業者を通じてで支払う場合はその資金移動業の事業者の名称および金額

これらの三条通知に関する詳しい解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

フリーランス新法(保護法)の三条通知(3条通知)とは?





フリーランスに対する報酬の支払期日の規制「60日ルール」とその例外とは?

フリーランス保護法の「60日ルール」とは?

支払期限・支払期日は給付日・役務の提供日から60日以内

フリーランス保護法における「60日ルール」とは、企業間取引の契約において、支払期日・支払期限を納入等(給付・役務の提供)があった日(初日算入)から起算して、最長でも60日以内とするルールのことをいいます。

【意味・定義】60日ルール(フリーランス保護法)とは?

60日ルールとは、フリーランス保護法が適用される業務委託契約における支払代金の支払期日について、検査の有無にかかわらず、発注事業者(特定業務委託事業者)がフリーランス(特定受託事業者)からの給付を受領した日・役務の提供を受けた日(初日を算入する)から起算して60日以内を最長とするルールをいう。

フリーランス保護法では、報酬の支払期日・支払期限は、次のように制限されています。

フリーランス保護法第4条(報酬の支払期日等)

1 特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し業務委託をした場合における報酬の支払期日は、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日(第2条第3項第2号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた日。次項において同じ。)から起算して60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

2 前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日から起算して60日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

3 前2項の規定にかかわらず、他の事業者(以下この項及び第6項において「元委託者」という。)から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務(以下この項及び第6項において「元委託業務」という。)の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合(前条第1項の規定により再委託である旨、元委託者の氏名又は名称、元委託業務の対価の支払期日(以下この項及び次項において「元委託支払期日」という。)その他の公正取引委員会規則で定める事項を特定受託事業者に対し明示した場合に限る。)には、当該再委託に係る報酬の支払期日は、元委託支払期日から起算して30日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

4 前項の場合において、報酬の支払期日が定められなかったときは元委託支払期日が、同項の規定に違反して報酬の支払期日が定められたときは元委託支払期日から起算して30日を経過する日が、それぞれ報酬の支払期日と定められたものとみなす。

5 特定業務委託事業者は、第1項若しくは第3項の規定により定められた支払期日又は第2項若しくは前項の支払期日までに報酬を支払わなければならない。ただし、特定受託事業者の責めに帰すべき事由により支払うことができなかったときは、当該事由が消滅した日から起算して60日(第3項の場合にあっては、30日)以内に報酬を支払わなければならない。

6 第3項の場合において、特定業務委託事業者は、元委託者から前払金の支払を受けたときは、元委託業務の全部又は一部について再委託をした特定受託事業者に対して、資材の調達その他の業務委託に係る業務の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない。

60日ルールはあくまで「特定業務委託事業者」が発注事業者の場合に適用される

なお、フリーランス保護法第4条にあるとおり、60日ルールは、あくまで「特定業務委託事業者」が発注事業者である場合に限って適用されます。

【意味・定義】特定業務委託事業者とは?

フリーランス保護法における特定業務委託事業者とは、業務委託事業者のうち、次のいずれかのものをいう。

  • 従業員を使用する個人事業者
  • 役員が2人以上いる法人
  • 従業員を使用する法人

このため、特定業務委託事業者でない「業務委託事業者」が発注事業者である場合には、60日ルールは適用されません。

【意味・定義】業務委託事業者とは?

フリーランス保護法における業務委託事業者とは、特定受託事業者(従業員がいない個人事業者・一人法人)に対し業務委託をする事業者をいう。

フリーランス保護法の60日ルールの6つの例外とは?

フリーランス保護法の60日ルールには、以下の例外があります。

60日ルールの例外
  • 例外1:再委託の場合
  • 例外2:システム等開発業務委託契約の「受領」の場合
  • 例外3:継続的な役務提供委託の場合
  • 例外4:やり直しの場合
  • 例外5:フリーランスの責めに帰すべき事由により支払うことができなかった場合
  • 例外6:支払日に銀行等が休日・休業日である場合

この他、フリーランス保護法における60日ルールにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

フリーランス新法(保護法)の60日ルール=支払期日の規制と例外とは?





発注事業者(特定業務委託事業者)の禁止行為・規制行為とは?

フリーランス保護法では、一定の条件を満たした発注事業者に対し、以下の7つの禁止行為が課されています。

フリーランス保護法における一定の発注事業者(特定業務委託事業者)の禁止行為
禁止行為概要
受領拒否の禁止(本法第5条第1項第1号)注文した物品又は情報成果物の受領を拒むこと
報酬の減額の禁止(本法第5条第1項第2号)あらかじめ定めた報酬を減額すること
返品の禁止(本法第5条第1項第3号)受け取った物を返品すること
買いたたきの禁止(本法第5条第1項第4号)類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い報酬を不当に定めること
購入・利用強制の禁止(本法第5条第1項第5号)特定業務委託事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること
不当な経済上の利益の提供要請の禁止(本法第5条第2項第1号)特定受託事業者から金銭、労務の提供等をさせること
不当な給付内容の変更及び不当なや り直しの禁止(本法第5条第2項第2号)費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさ
せること
根拠条文

フリーランス保護法第5条(特定業務委託事業者の遵守事項)

1 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下この条において同じ。)をした場合は、次に掲げる行為(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、第一号及び第三号に掲げる行為を除く。)をしてはならない。

(1)特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の受領を拒むこと。

(2)特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること。

(3)特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付を受領した後、特定受託事業者にその給付に係る物を引き取らせること。

(4)特定受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること。

(5)特定受託事業者の給付の内容を均質にし、又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。

2 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、次に掲げる行為をすることによって、特定受託事業者の利益を不当に害してはならない。

(1)自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

(2)特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、特定受託事業者の給付の内容を変更させ、又は特定受託事業者の給付を受領した後(第二条第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、特定受託事業者から当該役務の提供を受けた後)に給付をやり直させること。

これらの禁止行為が適用されるかどうかの条件や禁止行為の詳細につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

フリーランス新法の禁止行為7選|発注者が避けるべきNG取引とは【フリーランス保護法】





フリーランス保護法違反に対する勧告・命令・罰則とは?

フリーランス保護法違反の行政指導・助言とは?

発注事業者がフリーランス保護法に違反した場合、直ちに罰則が科されるわけではありません。

通常、まずは公正取引委員会や中小企業庁からの指導や助言がありますフリーランス保護法第22条)。

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第22条(指導及び助言)

公正取引委員会及び中小企業庁長官並びに厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、業務委託事業者に対し、指導及び助言をすることができる。

フリーランス保護法違反の勧告とは?

この指導や助言に従わない場合や悪質な場合は勧告があります。

例えば、公正取引委員会が管轄する事項については、次のとおりとなっています(フリーランス保護法第8条)。

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第8条(勧告)

1 公正取引委員会は、業務委託事業者が第三条の規定に違反したと認めるときは、当該業務委託事業者に対し、速やかに同条第一項の規定による明示又は同条第二項の規定による書面の交付をすべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

2 公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第四条第五項の規定に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかに報酬を支払うべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

3 公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第五条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定に違反していると認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかに特定受託事業者の給付を受領すべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

4 公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第五条第一項(第一号に係る部分を除く。)の規定に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかにその報酬の額から減じた額を支払い、特定受託事業者の給付に係る物を再び引き取り、その報酬の額を引き上げ、又はその購入させた物を引き取るべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

5 公正取引委員会は、特定業務委託事業者が第五条第二項の規定に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、速やかに当該特定受託事業者の利益を保護するため必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

同様に、厚生労働省が管轄する事項についても、次のとおりとなっています(フリーランス保護法第18条)。

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第18条(勧告)

1 厚生労働大臣は、特定業務委託事業者が第十四条又は第十五条第一項の規定に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、当該規定による措置をとるべきことを勧告することができる。

2 厚生労働大臣は、特定業務委託事業者が第十六条第一項の規定に違反したと認めるときは、当該特定業務委託事業者に対し、当該規定による措置をとるべきことを勧告することができる。

3 厚生労働大臣は、前条の規定による勧告(第十四条に係るものに限る。)を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、その旨を公表することができる。

フリーランス保護法違反の命令とは?

これら勧告の措置を取らなかった場合は、命令が課されますフリーランス保護法第9条同第19条)。

フリーランス保護法第9条(命令)

1 公正取引委員会は、前条の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該勧告を受けた者に対し、当該勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

2 公正取引委員会は、前項の規定による命令をした場合には、その旨を公表することができる。

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律第19条(命令)

1 厚生労働大臣は、前条の規定による勧告(第十四条に係るものを除く。)を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、当該勧告を受けた者に対し、当該勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

2 厚生労働大臣は、前項の規定による命令をした場合には、その旨を公表することができる。

3 厚生労働大臣は、前条の規定による勧告(第十四条に係るものに限る。)を受けた者が、正当な理由がなく、当該勧告に係る措置をとらなかったときは、その旨を公表することができる。

この命令が課された場合は、命令があった旨を公表されます(それぞれ第2項、第2項および第3項)。

このため、一般的な企業は、遅くとも勧告の段階で対応することがほとんどです。

フリーランス保護法違反の罰則とは?

そして、この命令に違反した場合は、罰則(最大50万円の罰金)が科されます(フリーランス保護法第24条)。

フリーランス保護法第24条

次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、50万円以下の罰金に処する。

(1)第9条第1項又は第19条第1項の規定による命令に違反したとき。

(2)第11条第1項若しくは第2項又は第20条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。

なお、この罰則ですが、発注事業者である法人だけに罰金が科されるのではなく、「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者」にも罰金が科される、ということです(フリーランス保護法第25条)。

フリーランス保護法第25条

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の刑を科する。

つまり、会社で50万円を払えばいい、というものではないのです。しかも、50万円とはいえ、いわゆる「前科」がつきます。





フリーランス保護法・フリーランス新法の施行日は?

フリーランス保護法の施行日は、2024年(令和6年)11月1日となっています。

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の施行期日を定める政令

内閣は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)附則第一項の規
定に基づき、この政令を制定する。
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の施行期日は、令和六年十一月一日とする。

これにより、施行日以後に締結された業務委託契約については、フリーランス保護法が適用されます。

当然ながら、施行日以前に締結された業務委託契約につきましては、フリーランス保護法は適用されません。

この他、フリーランス保護法・フリーランス新法の施行日につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

フリーランス新法(保護法)の施行日は?いつから適用?