このページでは、業務委託契約の契約条項のうち、報酬・料金・委託料の金額・計算方法の条項について、簡単にわかりやすく解説しています。
業務委託契約では、通常は、報酬・料金の支払いが伴います。
このため、業務委託契約書には、委託者が具体的に支払うことになる報酬・料金の金額または計算方法を明記します。
いずれの記載方法にせよ、誰が見ても同一の金額となるように記載します。
この際、印紙税の計算のために、消費税については、なるべく報酬・料金・委託料とは別に記載します。
また、契約締結後の事情の変更により、報酬・料金・委託料の金額を変更するべき事態となった場合の対応も検討しておきます。
このページでは、これらの報酬・料金・委託料の金額・計算方法について、解説しています。
金額か計算方法を明記する
原則として金額を明記する
報酬・料金・委託料はの記載方法には、大きく分けて金額と計算方法がありますが、原則として金額で明記します。
多くの業務委託契約では、契約締結の時点で、報酬・料金・委託料の金額が確定していることが多いです。
このため、後で触れる特殊な場合を除いて、交渉の結果確定した金額を契約書に明記します。
また、契約内容にもよりますが、支払いには、大きく分けて一括払いと分割払いがあります。
一括払いの場合は、特に記載は必要ありませんが、分割払いの場合は、分割した金額と支払期限を規定します。
例外として計算方法で規定する場合もある
後で実績が判明するタイプの契約では計算方法で規定する
報酬・料金・委託料の金額を事前に明らかにすることができない場合は、その計算方法を明記します。
一般的な業務委託契約では、計算方法による報酬・料金・委託料の規定はあまりありません。
一部の業務委託契約、具体的には成果報酬型や出来高制の業務委託契約の場合はあり得る計算方法です。
例えば、前者のものは、営業代行の業務委託契約、後者のものは、タイムチャージ式のコンサルティング契約などがあります。
必ず金額が確定した場合の通知・手続きを規定する
こうした計算方法で報酬・料金・委託料を規定する場合、単に計算方法だけでは不十分です。
というのも、具体的な金額が確定した場合、委託者・受託者が相互に相手方に金額を通知しなければなりません。
このため、計算の締切や(多くの場合は暦月で締切る)、通知の期限・方法などを規定します。
なお、下請法が適用される場合は、金額が確定した場合、委託者=親事業者は、受託者=下請事業者に対して、必ずその通知をしなければなりません。
「月末締め翌月末払い」とはしない
報酬・料金・委託料の計算方法の記載として、よくありがちなものに、「月末締め翌月末払い」があります。
第○条(委託料の計算)
本件製品の委託料の計算は、月末締め翌月末払いとする。
これは、非常に問題のある書き方です。
というのも、例えば、次のような製造請負契約を想定してみましょう。
- 発注日:5月31日
- 受注日:6月10日
- 製品の納入日:7月31日
- 製品の検査合格日:8月10日
このような取引の場合、「月末締め翌月末払い」では、いつの時点が支払期限になるのでしょうか?
「月末締め翌月末払い」という記載では、「何について締切るのか」が規定されていません。
このため、上記の例では、次のとおり、4種類の解釈ができます。
- 発注日で締切る場合:6月30日が支払期限
- 受注日で締切る場合:7月31日が支払期限
- 製品の納入で締切る場合:8月31日が支払期限
- 製品の検査合格で締切る場合:9月30日が支払期限
このように、解釈によっては、支払期限に4ヶ月の開きがあります。
このため、締切計算をする際には、「何について締切るのか」を明記します。
なお、下請法が適用される業務委託契約の場合は、遅くとも納入で締切る必要があります。
計算方法は委託者・受託者の双方が一致するように規定する
報酬・料金・委託料について、計算方法で規定する場合は、明確に金額が算出されるように規定します。
計算方法で規定した場合は、委託者の計算と受託者の計算の金額が一致しなければ、当然ながらトラブルとなります。
「単価×数量」のような単純な計算方法であれば、計算結果が不一致となることはまずありません。
これに対し、成果報酬の「成果」の定義が曖昧だったり、インセンティブをつけた計算方法(逓増型のパーセンテージ)のような複雑な計算方法では、条項の解釈が分かれる可能性もあります。
このため、事前に具体的な数字を提示して、何度も計算をしたうえで、契約内容に計算方法を反映させます。
システム等開発業務委託契約の例外
なお、比較的規模が大きなシステム等開発業務委託契約では、あらかじめ開発の報酬・料金・委託料の金額や計算方法が規定できない場合があります。
特に、要件定義の段階から、ベンダーが関与するシステム等開発業務委託契約では、要件定義や外部設計(基本設計)が決まらないことには、開発=コーディング・プログラミングの報酬・料金・委託料は計算できません。
このようなシステム等開発業務委託契約の場合は、あらかじめ金額や計算方法を決めずに契約を締結する場合もあります。
ただし、この場合も、金額が確定した時点で、書面を取交すなどの対応をするべきです。
このほか、システム等開発業務委託契約につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
なお、下請法が適用されるシステム等開発業務委託契約では、委託者=ユーザは、受託者=ベンダーに対して、報酬・料金・委託料の金額が決まり次第、補充書面で通知をしなければなりません。
- 報酬・料金・委託料は、原則として金額で明記する。
- 「月末締め翌月末払い」とはしない。
- 計算方法は委託者・受託者の双方が一致するように規定する。
- 例外として、成果報酬・出来高制などの場合は、計算方法を記載する。
- システム等開発業務委託契約等で、やむを得ず金額を記載できない場合は、金額が確定次第、「直ちに」受託者に対して金額を通知する。
特に委託者は下請法違反に注意する
下請法では委託者に金額を明記した書面を交付する義務がある
下請法が適用される業務委託契約では、委託者=親事業者は、受託者=下請事業者に対し、書面で報酬・料金・委託料の金額について通知しなければなりません(下請法第3条)。
下請法そのものにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
また、下請法が適用される業務委託契約につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
このように、委託者=親事業者が、受託者=下請事業者に対して交付する義務がある書面のことを、三条書面といいます。
金額の計算や通知は委託者の義務
このように、下請法第3条の規定により、委託者=親事業者は、受託者に対し、報酬・料金・委託料を三条書面に記載して交付する義務があります。
この点について、金額で報酬・料金・委託料を規定した場合は、当初交付する三条書面(実務上は業務委託契約書)で交付します。
これに対し、計算方法で報酬・料金・委託料を規定した場合は、当初交付する三条書面では金額が確定しません。
このため、金額が確定次第、「直ちに」受託者=下請事業者に対し、確定した金額が記載された「補充書面」を交付しなければなりません。
下請法が適用される業務委託契約では、委託者は、受託者に対し、報酬・料金・委託料金額を明記した書面を(三条書面)交付する義務がある。
消費税については必ず記載する
税抜価格と消費税を別々に明記する
報酬・料金・委託料の金額を記載する際、税抜価格と消費税の金額を分けて記載します。いわゆる、「外税」で記載する、ということです。
消費税の記載方法は、企業間取引である業務委託契約では、特に法律で決まっているわけではありません。
これに対し、消費者向けの価格の表記では、いわゆる「総額表示」(いわゆる「内税」)が義務づけられています。
どうしても「内税」で記載する場合は、消費税の金額も別途で記載します。
なお、この「外税」と消費税を分けて記載するのは、後に触れる印紙税と源泉徴収の計算とも関係します。
消費税について記載がないとトラブルの原因となる
では、報酬・料金・委託料の金額に消費税についての記載がない場合は、どのような計算になるのでしょうか?
これは、実は、過去の判例でも解釈が割れています。
- 外税扱いで別途請求できる(東京地裁判決平成19年2月5日)。
- 内税扱いで別途請求できない(那覇地裁平成12年4月25日)。
このように、消費税の取扱いについて記載がない場合は、トラブルになる可能性があります。
ですから、業務委託契約書に報酬・料金・委託料の金額を記載する場合は、必ず消費税の取扱いを規定します。
消費税の税率の変動がある場合は価格転嫁する
また、長期間の契約や契約期間が更新される契約では、契約期間中に、消費税の税率が変動する場合があります。
特に月額固定金額の料金・報酬が発生する業務委託契約の場合が該当します。
この場合は、原則として、税率の変動に併せて、消費税の金額も変動します。
特に委託者が、合理的な理由もなく、受託者による消費税の金額の変動=価格転嫁(主に値上げ)を拒否した場合、消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法、下請法などの違反となります。
- 税抜価格と消費税を別々に明記する。
- 消費税について記載がないと、内税か外税かの解釈を巡って、トラブルのとなる。
- 消費税の税率の変動がある場合は、税率変動に合わせて価格転嫁する。
- 委託者が価格転嫁を拒否した場合、消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法、下請法などの違反となります。
報酬・料金・委託料の書き方で印紙税が変わる
報酬・料金・委託料の金額の書き方で印紙税を節約できる
印紙税が課税されるタイプの業務委託契約書では、報酬・料金・委託料の金額の書き方次第で、印紙税の金額が変わってきます。
このため、報酬・料金・委託料の金額を記載する場合は、なるべき印紙税を節約できる書き方にします。
ポイントは、次のふたつです。
- 消費税額等の表記は消費税額等の金額が明らかになるように記載する。
- 業務実施の対価と知的財産権(特に著作権)の譲渡金額の内訳を別々に明記する。
消費税額等が外税・内税で印紙税が変わる
印紙税の課税の対象となる記載金額は、原則として、消費税額等が含んだ金額(内税)とされます。
しかし、消費税額等が明らかな場合は、消費税額等を含まない金額(外税)を記載金額として印紙税を計算できます。
No.6925 消費税等と印紙税
[平成29年4月1日現在法令等]
建築工事などの請負契約書や、商品などの販売代金を受け取ったときに作成する売上代金の受取書などは、その文書の記載金額に応じて印紙税が課税されます。
この「記載金額」は、消費税及び地方消費税の額(以下「消費税額等」といいます。)を含んだ金額とされますが、次の文書については、消費税額等を区分して記載している場合、又は、税込価格及び税抜価格が記載されていることにより、その取引に当たって課されるべき消費税額等が明らかである場合には、記載金額に消費税額等を含めないこととしています。
ただし、酒税や揮発油税などの個別消費税については、この取扱いは適用されません。
(1) 第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)
(2) 第2号文書(請負に関する契約書)
(3) 第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)
(注1)「消費税額等を区分して記載している」とは、例えば、以下のような記載方法をいいます。
イ 請負金額 1,080万円(税抜価格 1,000万円 消費税額等 80万円)
ロ 請負金額 1,080万円(うち消費税等 80万円)
ハ 請負金額 1,000万円 消費税額等 80万円 合計 1,080万円
(注2)上記の「第1号文書」などは、印紙税法別表第1の課税物件表の課税物件欄に掲げる文書をいいます。
(以下省略)
例えば、上記の例と同じく、記税抜価格が1,000万円の製造請負契約書(第2号文書)の場合、金額の表示によって、印紙税の計算は、次のとおり変わってきます。
- 請負金額 1,080万円(税抜価格 1,000万円 消費税額等 80万円):記載金額は1,000万円となり、印紙税は1万円。
- 請負金額 1,080万円(税込):記載金額は1,080万円となり、印紙税は2万円。
このため、報酬・料金・委託料の記載は、消費税額等が明らかとなるような書き方にします。
なお、請負契約の印紙税につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
知的財産権の譲渡の価格を記載すると印紙税が変わる
業務委託契約の中には、請負型で、かつ、知的財産権の譲渡があるものがあります。
代表的な例としては、請負型のシステム等開発業務委託契約があります。
このような業務委託契約の場合、業務内容の対価である報酬・料金・委託料の金額と、知的財産権の譲渡の金額は、別々に記載します。
こうすることで、印紙税を節約できる場合があります。
知的財産権(主に著作権)の譲渡がある業務委託契約書は、いわゆる1号文書となります。
また、請負型の業務委託契約書は、同時に、いわゆる2号文書となります。
つまり、知的財産権(主に著作権)の移転・譲渡がともなう請負型の業務委託契約書は、1号文書であり、同時に2号文書でもあるわけです。
「請負の報酬・料金・委託料>知的財産権移転・譲渡の対価」の場合は2号文書
このように、1号文書かつ2号文書の業務委託契約書をどちらの文書として取扱うのかは、以下のとおりです。
- 1号文書と2号文書とに該当する文書:【1号文書】
- ただし、1号文書と2号文書とに該当する文書で、それぞれの課税事項ごとの契約金額を区分することができ、かつ、2号文書についての契約金額が1号文書についての契約金額を超えるもの:【2号文書】
参考:2以上の号に該当する文書の所属の決定|国税庁((5)および(6)を参照)
契約金額にもよりますが、通常は、2号文書よりも1号文書のほうが印紙税が高くなります。
このため、2号文書となるように契約金額を記載したほうが、印紙税の節税になります。
印紙税額が安くなる著作権の譲渡・移転の金額・契約条項の書き方
それでは、具体的に契約条項の書き方を見てみましょう。
第○条(報酬)
1 本件請負の報酬は、金162,000円(うち消費税等金12,000円)とする。
2 前項の報酬には、本件請負により生じた知的財産権の譲渡の対価を含む。
このような規定の請負契約書の場合は、1号文書に該当しますので、400円です。
よく誤解されがちですが、2号文書には該当しませんので、印紙税額は200円ではありません。
第○条(報酬)
1 本件請負の報酬は、金86,400円(うち消費税等金6,400円)とする。
2 本件請負により生じた知的財産権の譲渡の対価は、金75,600円(うち消費税等金5,600円)とする。
このような規定の請負契約書の場合は、2号文書に該当します。
そして、複数の契約金額が記載された場合は、該当する課税文書の契約金額だけで印紙税額を計算します。
上記の例であれば、2号文書の契約金額=8万円(消費税別)で計算しますので、印紙税額は、200円です。
このように、同じ合計15万円(消費税別)の契約金額の業務委託契約書であっても、金額の書き方次第で、印紙税額が違ってきます。
この点につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
- 消費税額等が明らかになるように報酬・料金・委託料を記載をすると、印紙税の金額が安くなる場合がある。
- 請負の報酬・料金・委託料と知的財産権の譲渡の対価を別々に記載すると、印紙税の金額が安くなる場合がある。
受託者が個人事業者であれば源泉徴収も記載する
無用なトラブルを防ぐために事前に記載する
受注者が法人ではなく個人事業者の場合、所得税の源泉徴収の対象となる場合があります。
こうした業務委託契約の場合、報酬・料金・委託料の金額が確定しているのであれば、業務委託契約書に源泉徴収の金額も明記します。
所得税の源泉徴収は、所得税法にもとづき、委託者が当然にするべきものですので、特に業務委託契約書に源泉徴収の金額を明記する義務はありません。
しかしながら、このような事情をご存知でない個人事業者・フリーランスの受託者と、委託者との間で、報酬・料金・委託料からの源泉徴収を巡って、しばしばトラブルになります。
ですから、委託者としては、「所得税法にもとづき、当然に報酬・料金・委託料から源泉徴収されるもの」であることを説明することも兼ねて、業務委託契約書には、源泉徴収の金額も明記します。
源泉徴収が必要な報酬・料金・委託料とは?
源泉徴収が必要な報酬・料金・委託料は、具体的には、次のとおりです。
[平成29年4月1日現在法令等]
1 源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲
源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲は、その報酬・料金等の支払を受ける者が、個人であるか法人であるかによって異なっています。
(1) 報酬・料金等の支払を受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲
イ 原稿料や講演料など
ただし、懸賞応募作品の入選者などへの支払については、一人に対して1回に支払う金額が5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。ロ 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
ハ 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
ニ プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
ホ 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
ヘ ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
ト プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
チ 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
(2) (以下省略)
なお、これらはの内容あくまで、おおまかなものです。
例えば、行政書士に対する報酬・料金は、上記のロには該当しないため、源泉徴収の必要はありません。
このため、実際に源泉徴収が必要かどうかは、所得税法等の規定を参照のうえ、税理士・税務署等とも相談のうえ、判断してください。
報酬・料金・委託料の金額の書き方で源泉徴収額を減らせる
源泉徴収の対象となる業務委託契約では、報酬・料金・委託料の金額の書き方次第で、源泉徴収額を減らせられます。
もちろん、源泉徴収額を減らしたところで、最終的に受託者の納税額が変わるわけではありません。
ただ、受託者としては、源泉徴収額が少ない=受取る金額が多いことに越したことはありません。
このため、委託者としても、受託者の心証を良くするためにも、なるべく少ない源泉徴収額としたほうがいいでしょう。
消費税等の額が外税・内税で源泉徴収額が変わる
源泉徴収額の課税の対象となる金額は、原則として、消費税等の額が含んだ金額(内税)とされます。
しかし、印紙税の計算と同様に、消費税等の額が明らかな場合は、消費税額等を含まない金額(外税)を報酬・料金・委託料の金額として源泉徴収額を計算できます。
[平成29年4月1日現在法令等]
(途中省略)
2 報酬・料金等の源泉徴収を行う場合の注意事項
源泉徴収が必要な報酬・料金等の範囲は、その報酬・料金等の支払を受ける者が、個人であるか法人であるかによって異なっています。
((1)~(3)まで省略)
(4) 報酬・料金等の額の中に消費税及び地方消費税の額(以下、「消費税等の額」といいます。)が含まれている場合は、原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となります。ただし、請求書等において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。
このため、印紙税の計算と同じ理由で、報酬・料金・委託料の記載は、消費税額等の額が明らかとなるような書き方にします。
- 受託者が個人事業者・フリーランスだった場合、委託者は、報酬・料金・委託料から所得税を源泉徴収しなければならない場合がある。
- 源泉徴収額は、業務委託契約書に記載する義務はないが、記載したほうがトラブルを防げる。
- 消費税額等の額が明らかとなるような報酬・料金・委託料の書き方の場合、源泉徴収額が少なくなる。
報酬・料金・委託料の金額を変更する場合の注意点
【意味・定義】事情変更の原則とは?
なお、原則として、いったん契約を結んでしまった場合、その契約内容を変更することはできません。
これは、報酬・料金・委託料についても同様です。
しかしながら、例外として、契約の前提となった事情が大幅に変動した場合は、契約内容を変更することができる可能性もあります。
これを「事情変更の法理」といいます。
事情変更の原則とは、契約の前提となった事情が大幅に変動したことにより、契約の変更が可能となる法原理をいう。
契約内容として金額変更の要件を規定する
ただ、事情変更の法理が適用されるのは、法的には厳しい条件をクリアする必要があります。
そこで、業務委託契約で、客観的に確認できる条件などを設定し、その条件を満たした場合に報酬・料金・委託料を変更できる規定にすることもあります。
例えば、ある種の物価に関連する経済指標の変動が、一定の範囲を超えた場合などを条件とします。
このようにすることで、比較的簡単な条件で、報酬・料金・委託料を変更できる可能性があります。
建設工事請負契約書では請負代金の金額変更は必須記載事項
ちなみに、ここまで詳細な規定が求められるわけではありませんが、建設工事請負契約書では、建設業法第19条第1項第5号により、報酬・料金・委託料の変更について規定することが義務づけられています。
このほか、建設工事請負契約につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
- 事情変更の原則とは、契約の前提となった事情が大幅に変動したことにより、契約の変更が可能となる法原理のこと。
- 事情変更の原則に該当すれば、報酬・料金・委託料を変更できる可能性がある。
- ただし、事情変更の原則に該当するためには、厳しい条件を満たす必要がある。
- 業務委託契約で、報酬・料金・委託料の金額の変更条件を規定しておけば、金額の変更ができるようになる可能性もある。
- 建設工事請負契約では、建設業法第19条第1項第5号により、報酬・料金・委託料の変更について規定する義務がある。