業務委託において、受託者の作業者が会議、打ち合わせ、ミーティング等に参加した場合、違法となりますか?
業務委託において受託者の作業者が会議、打ち合わせ、ミーティング等に参加したとしても、そのこと自体は違法とはなりません。ただし、会議、打ち合わせ、ミーティング等の内容として委託者から受託者に対する指揮命令等がある場合は、違法となる場合もあります。

業務委託契約を締結した受託者の作業者が、その業務に関係する委託者の会議、打ち合わせ、ミーティング等(以下、「会議等」とします)に参加したとしても、原則としては違法にはなりません。

ただし、会議等の内容によっては、違法になる場合もあります。

具体的には、会議等において、受託者の作業者に対し、委託者からの指揮命令がある場合です。

この場合、偽装請負とみなされ、労働者派遣法違反となり、違法となる可能性があります。

【意味・定義】偽装請負(労働者派遣法・労働者派遣契約)とは?

労働者派遣法・労働者派遣契約における偽装請負とは、実態は労働者派遣契約なのに、労働者派遣法等の法律の規制を免れる目的で、請負その他労働者派遣契約以外の名目で契約が締結され、労働者が派遣されている状態をいう。

会議等が違法とならないためには、具体的には、次の条件を満たしている必要があります。

会議・打ち合わせ・ミーティングへの受託者の労働者の同席が認められる条件
  • 会議等の際、委託者から作業の順序や受託者の労働者への割振り等の詳細な指示がおこなわれないこと。
  • 会議等の際、委託者から受託者の労働者に対し作業方針の変更が日常的に指示されないこと。

つまり、単に受託者の労働者が会議等に同席するのみであり、その会議等の際に、委託者が受託者の労働者への指揮命令・指示や労務管理等をおこなっていないのであれば、例外として指揮命令・指示には該当せず、労働者派遣事業とは判断されません。

根拠資料
問9 発注者との打ち合わせ会議や、発注者の事業所の朝礼に、請負事業主の管理責任者だけでなく請負労働者も出席した場合、請負でなく労働者派遣事業となりますか。
発注者・請負事業主間の打ち合わせ等に、請負事業主の管理責任者だけでなく、管理責任者自身の判断で請負労働者が同席しても、それのみをもって直ちに労働者派遣事業と判断されることはありません。
ただし、打ち合わせ等の際、作業の順序や従業員への割振り等の詳細な指示が行われたり、発注者から作業方針の変更が日常的に指示されたりして、請負事業主自らが業務の遂行方法に関する指示を行っていると認められない場合は、労働者派遣事業と判断されることになります。

この他、法人間の業務委託契約における会議等に関する偽装請負・労働者派遣法違反や指揮命令につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託の指揮命令・指示は違法?偽装請負?例外は?どこまでできる?請負・準委任の場合は?

また、受託者が個人事業者・フリーランスである場合に、委託者からの指揮命令があったときは、業務委託契約ではなく雇用契約・労働契約とみなされ、労働基準法等の各種労働法に違反し、違法となる可能性もあります。

【意味・定義】労働法とは?

労働法とは、「労働法」という名称の法律ではなく、労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法などの労働に関係する法令の総称をいう。

受託者が個人事業者・フリーランスである場合、適法な業務委託契約であるか、または実質的に雇用契約・労働契約であるかの判断基準として、「労働基準法研究会報告」があります。

【意味・定義】昭和60年労働基準法研究会報告とは?

昭和60年労働基準法研究会報告とは、旧労働省(現:厚生労働省)の労働基準法研究会によっておこなわれた、労働基準法第9条の「労働者」の定義と、その判定基準をいう。

この労働基準法研究会報告1(1)ロ(イ)には、次のとおり、「業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無」が規定されています。

ロ 業務遂行上の指揮監督の有無

(イ)業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無

業務の内容及び遂行方法について「使用者」の具体的な指揮命令を受けていることは、指揮監督関係の基本的かつ重要な要素である。しかしながら、この点も指揮命令の程度が問題であり、通常注文者が行う程度の指示等に止まる場合には、指揮監督を受けているとは言えない。なお、管弦楽団員、バンドマンの場合のように、業務の性質上放送局等「使用者」の具体的な指揮命令になじまない業務については、それらの者が放送事業等当該事業の遂行上不可欠なものとして事業組織に組み入れられている点をもって、「使用者」の一般的な指揮監督を受けていると判断する裁判例があり、参考にすべきであろう。

つまり、会議等の場において、「通常注文者が行う程度の指示等」の範囲を越えて、業務の内容・遂行方法について、「使用者」が具体的な指揮命令をしている場合は、雇用契約・労働契約とみなされる可能性が高くなります。

このため、個人事業者・フリーランスとの業務委託契約では、契約書で業務内容や業務の遂行方法を明確に規定することが、極めて重要となります。

業務委託契約書を作成する理由

業務委託契約書を作成して業務内容や業務の遂行方法を明確にせず、口頭で業務内容や業務の遂行方法を伝えることは、指揮命令に該当し、業務委託契約ではなく雇用契約・労働契約とみなされる可能性が高いから。

なお、適法な業務委託契約による個人事業者・フリーランスと実質的に雇用契約・労働契約である労働者との判断基準につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

労働者性のチェックリスト―フリーランスと労働者との21の判断基準を解説

まとめ
  • 業務委託において受託者の作業者が会議等に参加したとしても、そのこと自体は違法とはならない。
  • 法人間の業務委託の会議等において、受託者の作業者に対し委託者からの指揮命令等が合った場合は、偽装請負・労働者派遣法違反となり、違法となる。
  • 個人事業者・フリーランスが相手方の業務委託の会議等において、個人事業者・フリーランスに対し委託者からの指揮命令等が合った場合は、労働基準法や労働契約法などの各種労働法違反となり、違法となる。