このページでは、個人事業者やフリーランスが契約当事者となる場合において、雇用契約・労働契約とみなされない適法な業務委託契約とするためのチェックリストについて提示し、くわしく解説しています。
業務委託契約が雇用契約・労働契約とみなされて、労働基準法などの各種労働法違反とならないようにするためには、いわゆる『労働基準法研究会報告』に適合した契約内容としなければなりません。
この労働基準法研究会報告では、適法な業務委託契約となる21の条件を示しています。
個人事業者・フリーランスとの業務委託契約の契約内容が、これらの条件を満たしていないと、偽装請負=業務委託契約が雇用契約・労働契約とみなされ、労働基準法等の各種労働法違反となります。
そこで、このページでは、こうした偽装請負=労働法違反とならないための21ポイントのチェックリストについて、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。
このページでわかること
- 個人事業者・フリーランスとの業務委託契約等が偽装請負(雇用契約・労働契約)に該当するのかどうかの判断基準。
- 個人事業者・フリーランスとの業務委託契約等が偽装請負(雇用契約・労働契約)に該当しないためのチェックポイント。
- 個人事業者・フリーランスとの業務委託契約等が偽装請負(雇用契約・労働契約)に該当した場合のリスク。
なお、このページでは、あくまで個人事業者・フリーランスとの契約に関する偽装請負(労働基準法等の労働法関係)のチェックリストについて取り扱っています。
労働者派遣法違反の偽装請負に関するチェックリストにつきましては、以下のページをご覧ください。
偽装請負(労働基準法違反)とならないチェックリスト
チェックリスト=「『労働者性』の判断基準」
個人事業者・フリーランスとの業務委託契約が雇用契約・労働契約とみなされるかどうかは、「『労働者性』の判断基準」(労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)昭和60年12月19日)に該当するかどうかによります。
この「『労働者性』の判断基準」をリスト化したチェックリストが、以下のものとなります。
偽装請負(労働基準法違反)とならないチェックリスト
「使用従属性」に関する判断基準のチェックリスト
- 1.受託者が委託者の「指揮監督下の労働」を提供していない
- 1-1.受託者に「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由」がある
- 1-2.委託者による「業務遂行上の指揮監督」がない
- 1-2-1.委託者による「業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令」がない
- 1-2-2.予定外の業務がない
- 1-3.拘束性がない
- 1-4.代替性がある(受託者による再委託等ができる)
- 2.報酬に労務対償性がある
- 2-1.報酬が「労働の結果による」計算となっている
- 2-2.欠勤した場合であっても「応分の報酬が控除」されない
- 2-3.残業をした場合であっても「通常の報酬とは別の手当が支給」されない
「労働者性」の判断を補強する要素のチェックリスト
- 3.事業者性の有無
- 3-1.受託者が機械・器具の所有している
- 3-2.高額な報酬である
- 3-3.その他
- 3-3-1.受託者が損害賠償責任を負う
- 3-3-2.受託者による独自の商号使用が認められている
- 4.専属性の程度
- 4-1.「他社の業務に従事することが制度上制約」されていない
- 4-2.他社の業務に従事する時間的余裕がある
- 4-3.報酬に固定給部分がない
- 4-4.「業務の配分等により事実上固定給」となっていない
- 4-5.報酬の額が「生計を維持しうる程度のもの」でない
- 5.その他
- 5-1.「採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様」ではない
- 5-2.報酬について「給与所得」としては源泉徴収をおこなっていない
- 5-3.労働保険の適用対象としていない
- 5-4.服務規律を適用していない
- 5-5.退職金制度、福利厚生を適用していない
「使用従属性に関する判断基準」→「労働者性の判断を補強する要素」の順に判断される
「『労働者性』の判断基準」は、以下の2つに分かれています。
2つの「労働者性」の判断基準
- 「使用従属性」に関する判断基準
- 「労働者性」の判断を補強する要素
この2点の判断基準ですが、まずは「使用従属性」について判断し、雇用契約・労働契約に該当するかどうかが決定されます。
この際、明らかに雇用契約・労働契約に該当すると判断される場合や、該当しないと判断される場合は、「労働者性」については考慮されることはありません。
そのうえで、「使用従属性」の判断だけでは、雇用契約・労働契約に該当するかどうかの判断ができない場合は、「『労働者性』の判断を補強する要素」も勘案して総合的に判断されることとなります。
つまり、まずは「使用従属性に関する判断基準」で判断して、それでも労働者かそうでないか判断がつかない場合は、「『労働者性』の判断を補強する要素」を勘案して、労働者かどうかを総合的に判断します。
ポイント
- 「使用従属性に関する判断基準」→「労働者性の判断を補強する要素」の順に判断される。
- 「使用従属性に関する判断基準」だけで労働者である、または労働者でないと判断された場合は、「労働者性」については判断されない。
- 「使用従属性に関する判断基準」だけでは判断がつかない場合は、「労働者性の判断を補強する要素」が勘案され、労働者かどうかが総合的に判断される。
「使用従属性」に関する判断基準のチェックリスト
まずは、「労働者性」の判断にあたり、最も重要な判断基準である「使用従属性」について見ていきましょう。
繰り返しになりますが、使用従属性の判断基準は、以下のとおりです。
「使用従属性」に関する判断基準のチェックリスト
- 1.受託者が委託者の「指揮監督下の労働」を提供していない
- 1-1.受託者に「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由」がある
- 1-2.委託者による「業務遂行上の指揮監督」がない
- 1-2-1.委託者による「業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令」がない
- 1-2-2.予定外の業務がない
- 1-2.委託者による業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令がない
- 1-3.拘束性がない
- 1-4.代替性がある(受託者による再委託等ができる)
- 2.報酬に労務対償性がある
- 2-1.報酬が「労働の結果による」計算となっている
- 2-2.欠勤した場合であっても「応分の報酬が控除」されない
- 2-3.残業をした場合であっても「通常の報酬とは別の手当が支給」されない
それぞれ、根拠となるガイドラインとともに、詳しく解説します。
ポイント1:受託者が委託者による「指揮監督下の労働」を提供していない
ポイント1-1:受託者に「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由」がある
労働基準法研究会報告1(1)イには、次のとおり、「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無」が規定されています。
1 「使用従属性」に関する判断基準
(1)「指揮監督下の労働」に関する判断基準
労働が他人の指揮監督下において行われているかどうか、すなわち他人に従属して労務を提供しているかどうかに関する判断基準としては、種々の分類があり得るが、次のように整理することができよう。
イ 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
「使用者」の具体的な仕事の依頼、業務従事の指示等に対して諾否の自由を有していれば、他人に従属して労務を提供するとは言えず、対等な当事者間の関係となり、指揮監督関係を否定する重要な要素となる。これに対して、具体的な仕事の依頼、業務従事の指示等に対して拒否する自由を有しない場合は、一応、指揮監督関係を推認させる重要な要素となる。なお、当事者間の契約によっては、一定の包括的な仕事の依頼を受諾した以上、当該包括的な仕事の一部である個々具体的な仕事の依頼については拒否する自由が当然制限される場合があり、また、専属下請のように事実上、仕事の依頼を拒否することができないという場合もあり、このような場合には、直ちに指揮監督関係を肯定することはできず、その事実関係だけでなく、契約内容等も勘案する必要がある。
つまり、個々の業務委託契約の依頼・発注や、個々の業務に関する委託者からの指示等に対して、受託者の諾否の自由がある場合は、指揮命令関係が否定され、適法な業務委託契約とみなされる可能性が高くなります。
他方で、これらの依頼・発注・業務の指示等について、受託者の諾否の自由がない場合は、指揮命令関係が推認され、雇用契約・労働契約とみなされる可能性が高くなります。
なお、「専属下請」の場合は、契約内容等により指揮監督関係が判断されることとなり、直ちに指揮監督関係であるとはみなされません。
ポイント1-2:「業務遂行上の指揮監督」がない
ポイント1-2-1:委託者による「業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令」がない
業務委託契約書で業務内容や業務の遂行方法を明確に規定する
労働基準法研究会報告1(1)ロ(イ)には、次のとおり、「業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無」が規定されています。
ロ 業務遂行上の指揮監督の有無
(イ)業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無
業務の内容及び遂行方法について「使用者」の具体的な指揮命令を受けていることは、指揮監督関係の基本的かつ重要な要素である。しかしながら、この点も指揮命令の程度が問題であり、通常注文者が行う程度の指示等に止まる場合には、指揮監督を受けているとは言えない。なお、管弦楽団員、バンドマンの場合のように、業務の性質上放送局等「使用者」の具体的な指揮命令になじまない業務については、それらの者が放送事業等当該事業の遂行上不可欠なものとして事業組織に組み入れられている点をもって、「使用者」の一般的な指揮監督を受けていると判断する裁判例があり、参考にすべきであろう。
つまり、「通常注文者が行う程度の指示等」の範囲を越えて、業務の内容・遂行方法について、「使用者」が具体的な指揮命令をしている場合は、雇用契約・労働契約とみなされる可能性が高くなります。
このため、個人事業者・フリーランスとの業務委託契約では、契約書で業務内容や業務の遂行方法を明確に規定することが、極めて重要となります。
業務委託契約書を作成する理由
業務委託契約書を作成して業務内容や業務の遂行方法を明確にせず、口頭で業務内容や業務の遂行方法を伝えることは、指揮命令に該当し、業務委託契約ではなく雇用契約・労働契約とみなされる可能性が高いから。
そもそも「指揮命令」がない業務の場合は「指揮監督を受けている」(判例)
なお、そもそも「具体的な指揮命令になじまない業務」の場合は、「事業の遂行上不可欠なものとして事業組織に組み入れられている点」をもって、「使用者」の一般的な指揮監督を受けている、との判例があります。
この判例が具体的にどの判例に該当するのかは必ずしも明らかではありません。
ただ、労働組合法における判例ではありますが、「 民間放送会社の放送管弦楽団員が労働組合法上の労働者と認められた」判例はあります(最高裁判決昭和51年5月6日)。
よって、「指揮命令」がないからといって、直ちに「使用従属性がない」と判断されるわけではありません。
ポイント1-2-2:予定外の業務がない
労働基準法研究会報告1(1)ロ(ロ)には、次のとおり、「通常予定されている業務以外の業務」への従事について規定されています。
(ロ)その他
そのほか、「使用者」の命令、依頼等により通常予定されている業務以外の業務に従事することがある場合には、「使用者」の一般的な指揮監督を受けているとの判断を補強する重要な要素となろう。
つまり、受託者が通常予定されている範囲内の業務に従事する場合は適法な業務委託契約になりますが、通常予定されている業務以外の業務に従事する場合は、雇用契約・労働契約とみなされる可能性が高くなります。
なお、下請法が適用される業務委託契約の場合、委託者が通常予定されている業務以外の業務に従事させると、業務内容=「給付の内容」が三条書面に記載されていないこととなり、下請法第3条に違反することとなります。
ポイント1-3:拘束性がない
労働基準法研究会報告1(1)ハには、次のとおり、「拘束性の有無」が規定されています。
ハ 拘束性の有無
勤務場所及び勤務時間が指定され、管理されていることは、一般的には、指揮監督関係の基本的な要素である。しかしながら、業務の性質上(例えば、演奏)、安全を確保する必要上(例えば、建設)等から必然的に勤務場所及び勤務時間が指定される場合があり、当該指定が業務の性質等によるものか、業務の遂行を指揮命令する必要によるものかを見極める必要がある。
つまり、「業務の性質上」や「安全を確保する必要上」などの特段の理由がない限り、勤務場所及び勤務時間が指定され、管理されていることは、適法な業務委託契約ではなく、雇用契約・労働契約とみなされる可能性が高くなります。
これらの勤務場所と勤務時間の指定につきましては、詳しくは、それぞれ以下のページをご覧ください。
ポイント1-4:代替性がある(受託者による再委託等ができる)
労働基準法研究会報告1(1)ニには、次のとおり、「代替性の有無」が規定されています。
ニ 代替性の有無 -指揮監督関係の判断を補強する要素-
本人に代わって他の者が労務を提供することが認められているか否か、また、本人が自らの判断によって補助者を使うことが認められているか否か等労務提供に代替性が認められているか否かは、指揮監督関係そのものに関する基本的な判断基準ではないが、労務提供の代替性が認められている場合には、指揮監督関係を否定する要素のひとつとなる。
つまり、個人事業者・フリーランスが、自身の労働者対しに仕事を任せたり、第三者に対し再委託ができる場合は、適法な業務委託契約と認められる可能性が高いといえます。
この点につき、(準)委任契約の場合、原則として再委託ができません。
このため、個人事業者・フリーランスとの(準)委任契約型の業務委託契約を適法なものとする場合は、あえて再委託を許諾する条項を規定する必要があります。
業務委託契約書を作成する理由
(準)委任契約では、原則として再委託ができないことから、適法な(準)委任契約型の業務委託契約とするためには、特約として再委託が許諾された契約書が必要となるから。
ポイント
- 委託者は、個人事業者・フリーランスである受託者を指揮命令してはいけない。
- 委託者は、個人事業者・フリーランスである受託者に対し、個々の業務に関する契約について、諾否の自由を与えないといけない。
- 委託者は、個人事業者・フリーランスである受託者に対し、事前の合意無しに予定外の業務をさせてはいけない。下請法が適用される場合は、三条書面に記載がない予定外の業務をさせた場合は、下請法第3条に違反する。
- 委託者は、個人事業者・フリーランスである受託者による業務の実施場所および実施時間について、拘束してはいけない。
- 委託者は、個人事業者・フリーランスである受託者による再委託等を認めないといけない。
ポイント2:報酬に労務対償性がある
ポイント2-1:報酬が「労働の結果による」計算となっている
労働基準法研究会報告1(2)次のとおり、「報酬の労務対償性に関する判断基準」が規定されています。
(2)報酬の労務対償性に関する判断基準
労働基準法第11条は、「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」と規定している。すなわち、使用者が労働者に対して支払うものであって、労働の対償であれば、名称の如何を問わず「賃金」である。この場合の「労働の対償」とは、結局において「労働者が使用者の指揮監督の下で行う労働に対して支払うもの」と言うべきものであるから、報酬が「賃金」であるか否かによって逆に「使用従属性」を判断することはできない。
しかしながら、報酬が時間給を基礎として計算される等労働の結果による較差が少ない、欠勤した場合には応分の報酬が控除され、いわゆる残業をした場合には通常の報酬とは別の手当が支給される等報酬の性格が使用者の指揮監督の下に一定時間労務を提供していることに対する対価と判断される場合には、「使用従属性」を補強することとなる。
つまり、業務委託契約における報酬・料金等の計算が時間給となっている等により、労働の結果による較差が少なく、一定時間の労務の対価である場合は、雇用契約・労働契約とみなされる可能性が高くなります。
逆に言えば、労働の提供時間に関係なく、労働の結果による報酬・料金等が設定されている場合は、適法な業務委託契約と判断される可能性が高くなります。
なお、いわゆる「時給」計算の報酬の問題点・違法性につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
ポイント2-2:欠勤した場合であっても「応分の報酬が控除」されない
(2)報酬の労務対償性に関する判断基準
労働基準法第11条は、「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」と規定している。すなわち、使用者が労働者に対して支払うものであって、労働の対償であれば、名称の如何を問わず「賃金」である。この場合の「労働の対償」とは、結局において「労働者が使用者の指揮監督の下で行う労働に対して支払うもの」と言うべきものであるから、報酬が「賃金」であるか否かによって逆に「使用従属性」を判断することはできない。
しかしながら、報酬が時間給を基礎として計算される等労働の結果による較差が少ない、欠勤した場合には応分の報酬が控除され、いわゆる残業をした場合には通常の報酬とは別の手当が支給される等報酬の性格が使用者の指揮監督の下に一定時間労務を提供していることに対する対価と判断される場合には、「使用従属性」を補強することとなる。
つまり、欠勤した場合に応分の報酬が控除され、逆に出勤そのものに報酬が発生することにより、報酬が一定時間の労務の対価となる場合は、雇用契約・労働契約とみなされる可能性が高くなります。
他方で、出勤の有無に関係なく、また、時間給などでなく固定の報酬となっている場合などでは、適法な業務委託契約とみなされる可能性が高くなります。
ポイント2-3:残業をした場合であっても「通常の報酬とは別の手当が支給」されない
(2)報酬の労務対償性に関する判断基準
労働基準法第11条は、「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」と規定している。すなわち、使用者が労働者に対して支払うものであって、労働の対償であれば、名称の如何を問わず「賃金」である。この場合の「労働の対償」とは、結局において「労働者が使用者の指揮監督の下で行う労働に対して支払うもの」と言うべきものであるから、報酬が「賃金」であるか否かによって逆に「使用従属性」を判断することはできない。
しかしながら、報酬が時間給を基礎として計算される等労働の結果による較差が少ない、欠勤した場合には応分の報酬が控除され、いわゆる残業をした場合には通常の報酬とは別の手当が支給される等報酬の性格が使用者の指揮監督の下に一定時間労務を提供していることに対する対価と判断される場合には、「使用従属性」を補強することとなる。
つまり、業務の提供時間に応じて、いわゆる「残業代」が発生する場合は、雇用契約・労働契約とみなされるリスクが高くなります。
請負契約よりも時間給・タイムジャージ型の(準)委任契約のほうがリスクが高い
以上のように、時間給やタイムチャージ型の報酬の場合は、雇用契約・労働契約とみなされるリスクが高くなります。
特に、一部の(準)委任契約型の業務委託契約のように、「仕事の過程」に対する対価の場合は、リスクが高いといえます。
特に、個人事業者・フリーランスとの常駐型のシステムエンジニアリングサービス契約(SES契約)などは、注意を要します。
他方で、請負契約型の業務委託契約のように、「仕事の結果」に対する対価の場合は、リスクが低いといえます。
ポイント
- 報酬が「時間給」の場合は、個人事業者・フリーランスとの契約が雇用契約・労働契約とみなされるリスクが高くなる。
- 欠勤によって報酬が控除・減額される場合は、個人事業者・フリーランスとの契約が雇用契約・労働契約とみなされるリスクが高くなる。
- 「残業代」が発生する場合は、個人事業者・フリーランスとの契約が雇用契約・労働契約とみなされるリスクが高くなる。
- 固定報酬の請負契約型の業務委託契約に比べて、時間給・タイムチャージ型の(準)委任契約の場合は、雇用契約・労働契約とみなされるリスクが高くなる。
「労働者性」の判断を補強する要素のチェックリスト
次に、「使用従属性」の判断基準では「労働者性」の判断ができなかった場合における、「労働者性」の判断を補強する要素を見ていきましょう。
「労働者性」の判断を補強する要素のチェックリスト
- 3.事業者性の有無
- 3-1.受託者が機械・器具の所有している
- 3-2.高額な報酬である
- 3-3.その他
- 3-3-1.受託者が損害賠償責任を負う
- 3-3-2.受託者による独自の商号使用が認められている
- 4.専属性の程度
- 4-1.「他社の業務に従事することが制度上制約」されていない
- 4-2.他社の業務に従事する時間的余裕がある
- 4-3.報酬に固定給部分がない
- 4-4.「業務の配分等により事実上固定給となって」いない
- 4-5.報酬の額が「生計を維持しうる程度のもの」でない
- 5.その他
- 5-1.「採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様」ではない
- 5-2.報酬について「給与所得」としては源泉徴収をおこなっていない
- 5-3.労働保険の適用対象としていない
- 5-4.服務規律を適用していない
- 5-5.退職金制度、福利厚生を適用していない
それぞれ、根拠となるガイドラインとともに、詳しく解説します。
ポイント3:事業者性の有無
ポイント3-1:受託者が機械・器具を所有している
2 「労働者性」の判断を補強する要素
前述のとおり、「労働者性」が問題となる限界的事例については、「使用従属性」の判断が困難な場合があり、その場合には、以下の要素をも勘案して、総合判断する必要がある。
(1)事業者性の有無
労働者は、機械、器具、原材料等の生産手段を有しないのが通例であるが、最近におけるいわゆる傭車運転手のように、相当高価なトラック等を所有して労務を提供する例がある。このような事例については、前記 1 の基準のみをもって「労働者性」を判断することが適当でなく、その者の「事業者性」の有無を併せて、総合判断することが適当な場合もある。
イ 機械、器具の負担関係
本人が所有する機械、器具が安価な場合には問題はないが、著しく高価な場合には自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う「事業者」としての性格が強く、「労働者性」を弱める要素となるものと考えられる。
つまり、業務の実施に必要な著しく高価な機械・器具・原材料等を自己の計算(=費用負担)と危険負担を所有している場合は、個人事業者・フリーランスの事業者としての性格が強くなり、労働者とみなされない可能性が高くなります。
逆に、こうした著しく高価な機械・器具・原材料等について、委託者から受託者に対し無償で貸与や譲渡をする場合は、逆に労働者とみなされるリスクが高くなります。
この場合は、有償での貸与・譲渡とすることも検討するべきでしょう。
ポイント3-2:高額な報酬である
ロ 報酬の額
報酬の額が当該企業において同様の業務に従事している正規従業員に比して著しく高額である場合には、上記イと関連するが、一般的には、当該報酬は、労務提供に対する賃金ではなく、自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う「事業者」に対する代金の支払と認められ、その結果、「労働者性」を弱める要素となるものと考えられる。
つまり、委託者の正社員の賃金と比較して、受託者の報酬の額が著しく高額である場合は、個人事業者・フリーランスが労働者ではなく事業者として認められやすくなります。
「著しく高額」ということですので、少なくとも正社員の額面の賃金よりも同等以上であることは必須であると思われます。
それだけでなく、賃金に加えて社会保険料・各種手当てについても考慮して、報酬を同等以上の金額としないと、個人事業者・フリーランスとみなされるリスクが高くなります。
つまり、単に賃金・社会保険料・各種手当ての金額を形式的に報酬としたうえで、正社員を個人事業者・フリーランスとする場合は、それだけでは適法な業務委託契約とみなされない可能性があります。
ポイント3-3:その他
ポイント3-3-1:受託者が損害賠償責任を負う
労働者は原則として労務の実施にともなう責任を負わない
ハ その他
以上のほか、裁判例においては、業務遂行上の損害に対する責任を負う、独自の商号使用が認められている等の点を「事業者」としての性格を補強する要素としているものがある。
つまり、個人事業者・フリーランスが、業務の実施にともない発生した損害について、事業者として損害賠償責任を負う場合は、労働者ではなく、事業者と認められる可能性が高くなります。
労働契約・雇用契約における労働者であっても、法理論上は、労務の実施によって発生した損害について賠償責任を負うことがあります。
しかしながら、労働者が損害賠償責任を負うことは極めて稀なケースであり、事業者としての個人事業者・フリーランスのほうが業務の実施による責任は重くなります。
個人事業者・フリーランスとの契約ではむやみに免責事項を規定しない
このように、個人事業者・フリーランスが受託者となる業務委託契約では、受託者側の免責条項を規定してしまうと、労働契約・雇用契約とみなされるリスクが高くなります。
このため、個人事業者・フリーランスが契約当事者となる場合は、特に委託者の側は、免責条項について、慎重に検討するべきです。
この点について、フリーランスエンジニアとのSES契約、プログラミング業務委託契約などの、法人であっても免責条項が規定される契約のような特殊な場合であれば、規定しても差し支えないと思われます。
他方で、法人の場合は免責条項を規定しない契約の場合に免責条項を規定すると、契約当事者が個人事業者・フリーランスであることを理由に規定したと判断され、雇用契約・労働契約とみなされるリスクが高くなると思われます。
ポイント3-3-2:受託者による独自の商号使用が認められている
ハ その他
以上のほか、裁判例においては、業務遂行上の損害に対する責任を負う、独自の商号使用が認められている等の点を「事業者」としての性格を補強する要素としているものがある。
つまり、個人事業者・フリーランスである受託者に独自の商号(おそらく屋号も含まれます)の使用が認められる場合は、労働者ではなく事業者として認められる可能性が高くなります。
逆に、独自の商号・屋号の使用が認められず、または委託者の商号の使用を義務づけられる場合は、労働者とみなされるリスクが高くなります。
ポイント
- 個人事業者・フリーランスである受託者が自己の費用負担と危険負担で著しく高額な機械・器具を所有している場合は、事業者としてみなされる可能性が高くなる。
- 個人事業者・フリーランスである受託者の報酬の額が委託者の正社員に比して著しく高額な場合は、事業者としてみなされる可能性が高くなる。
- 個人事業者・フリーランスである受託者が、業務の実施にともない発生した損害について、事業者として損害賠償責任を負う場合は、事業者と認められる可能性が高くなる。
- 個人事業者・フリーランスである受託者に独自の商号や屋号の使用が認められる場合は、事業者として認められる可能性が高くなります。
ポイント4:専属性の程度
ポイント4-1:「他社の業務に従事することが制度上制約され」ていない
個人事業者・フリーランスとの業務委託契約では他社からの受注を制限してはいけない
(2)専属性の程度
特定の企業に対する専属性の有無は、直接に「使用従属性」の有無を左右するものではなく、特に専属性がないことをもって労働者性を弱めることとはならないが、「労働者性」の有無に関する判断を補強する要素のひとつと考えられる。
イ 他社の業務に従事することが制度上制約され、また、時間的余裕がなく事実上困難である場合には、専属性の程度が高く、いわゆる経済的に当該企業に従属していると考えられ、「労働者性」を補強する要素のひとつと考えて差し支えないであろう。なお、専属下請のような場合については、上記1(1)イと同様留意する必要がある。
つまり、個人事業者・フリーランスが、契約内容等により、制度上、他社との業務委託契約等を制約されていると、労働者とみなされるリスクが高くなります。
他社からの受注を制限すると「排他条件付取引」「拘束条件付取引」=独占禁止法違反
なお、市場のシェア率が高い大手企業が、業務委託契約等において、フリーランス・個人事業者による競合他社からの受注を制限する場合、排他条件付取引や拘束条件付取引、つまり独占禁止法違反に該当する可能性があります(流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針第1部 第2 2(1)イ)。
イ 市場における有力な事業者が,例えば次のように,取引先事業者に対し自己又は自己と密接な関係にある事業者(注6)の競争者と取引しないよう拘束する条件を付けて取引する行為,取引先事業者に自己又は自己と密接な関係にある事業者の競争者との取引を拒絶させる行為,取引先事業者に対し自己又は自己と密接な関係にある事業者の商品と競争関係にある商品(以下「競争品」という。)の取扱いを制限するよう拘束する条件を付けて取引する行為を行うことにより,市場閉鎖効果が生じる場合には,当該行為は不公正な取引方法に該当し,違法となる(一般指定2項(その他の取引拒絶),11項(排他条件付取引)又は12項(拘束条件付取引))。
この点からも、個人事業者・フリーランスとの業務委託契約等において、他社からの受注を制限するのは、望ましくはありません。
ポイント4-2:他社の業務に従事する時間的余裕がある
(2)専属性の程度
特定の企業に対する専属性の有無は、直接に「使用従属性」の有無を左右するものではなく、特に専属性がないことをもって労働者性を弱めることとはならないが、「労働者性」の有無に関する判断を補強する要素のひとつと考えられる。
イ 他社の業務に従事することが制度上制約され、また、時間的余裕がなく事実上困難である場合には、専属性の程度が高く、いわゆる経済的に当該企業に従属していると考えられ、「労働者性」を補強する要素のひとつと考えて差し支えないであろう。なお、専属下請のような場合については、上記1(1)イと同様留意する必要がある。
つまり、業務委託契約等の制度のうえだけでなく、時間的な余裕がないために、事実上、個人事業者・フリーランスが他社から受注をできない状態である場合は、労働者とみなされるリスクが高くなります。
ポイント4-3:報酬に固定給部分がない
ロ 報酬に固定給部分がある、業務の配分等により事実上固定給となっている、その額も生計を維持しうる程度のものである等報酬に生活保障的な要素が強いと認められる場合には、上記イと同様、「労働者性」を補強するものと考えて差し支えないであろう。
つまり、報酬に固定給部分があることにより、生活保障的な要素が強いと認められる場合は、個人事業者・フリーランスが労働者とみなされるリスクが高くなります。
これは、単に固定給があることそのものが問題なのではなく、固定給部分により「生活保障的な要素が強い」かどうかが問題となります。
ポイント4-4:「業務の配分等により事実上固定給となって」いない
ロ 報酬に固定給部分がある、業務の配分等により事実上固定給となっている、その額も生計を維持しうる程度のものである等報酬に生活保障的な要素が強いと認められる場合には、上記イと同様、「労働者性」を補強するものと考えて差し支えないであろう。
つまり、業務の配分等により事実上固定給となっていることにより、生活保障的な要素が強いと認められる場合は、個人事業者・フリーランスが労働者とみなされるリスクが高くなります。
「業務の配分等」については、事実上固定給となるように業務を配分することを意味するものと思われます。
ポイント4-5:報酬の額が「生計を維持しうる程度のもの」でない
ロ 報酬に固定給部分がある、業務の配分等により事実上固定給となっている、その額も生計を維持しうる程度のものである等報酬に生活保障的な要素が強いと認められる場合には、上記イと同様、「労働者性」を補強するものと考えて差し支えないであろう。
つまり、固定給の金額が生計を維持しうる程度であることにより、生活保障的な要素が強いと認められる場合は、個人事業者・フリーランスが労働者とみなされるリスクが高くなります。
なお、「生計を維持しうる程度」を越えて、高額な報酬である場合は、ポイント3-2にあるとおり、個人事業者・フリーランスが事業者として認められる可能性が高くなります。
逆に、この「生計を維持しうる程度」を下回る報酬にした場合は、この項目に加えて、ポイント3-2により、報酬が「正規従業員に比して著しく高額」でなくなるため、労働者とみなされる可能性が高くなります。
ポイント
- 個人事業者・フリーランスが、契約内容等により、制度上、他社との業務委託契約等を制約されている場合、労働者とみなされるリスクが高くなりる。
- 個人事業者・フリーランスが、時間的な余裕がないために、事実上、他社から受注をできない状態である場合は、労働者とみなされるリスクが高くなる。
- 報酬に固定給部分があることにより、生活保障的な要素が強いと認められる場合は、個人事業者・フリーランスが労働者とみなされるリスクが高くなる。
- 業務の配分等により事実上固定給となっていることにより、生活保障的な要素が強いと認められる場合は、個人事業者・フリーランスが労働者とみなされるリスクが高くなる。
- 固定給の金額が生計を維持しうる程度であることにより、生活保障的な要素が強いと認められる場合は、個人事業者・フリーランスが労働者とみなされるリスクが高くなる。
ポイント5:その他
ポイント5-1.「採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様」ではない
(3)その他
以上のほか、裁判例においては、①採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様であること、②報酬について給与所得としての源泉徴収を行っていること、③労働保険の適用対象としていること、④服務規律を適用していること、⑤退職金制度、福利厚生を適用していること等「使用者」がその者を自らの労働者と認識していると推認される点を、「労働者性」を肯定する判断の補強事由とするものがある。
つまり、個人事業者やフリーランスの選考過程が正社員の採用のものと同様である場合は、委託者側が個人事業者・フリーランスを労働者と認識していると推認され、個人事業者・フリーランスが労働者とみなされるリスクが高くなります。
例えば、事業者として契約を締結する予定であるにもかかわらず、履歴書の提示を求める場合は、労働者の選考過程と同様であるとみなされる可能性があるでしょう。
他方で、業務内容の見積書の提示を求める場合は、正社員の選考過程では見積書を提示させることはありませんので、選考過程が異なるとみなされる可能性が高いです。
ポイント5-2:報酬について「給与所得」としては源泉徴収をおこなっていない
(3)その他
以上のほか、裁判例においては、①採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様であること、②報酬について給与所得としての源泉徴収を行っていること、③労働保険の適用対象としていること、④服務規律を適用していること、⑤退職金制度、福利厚生を適用していること等「使用者」がその者を自らの労働者と認識していると推認される点を、「労働者性」を肯定する判断の補強事由とするものがある。
つまり、個人事業者やフリーランスの報酬について、給与所得として源泉徴収をしている場合は、委託者側が個人事業者・フリーランスを労働者と認識していると推認され、個人事業者・フリーランスが労働者とみなされるリスクが高くなります。
なお、これはあくまで「給与所得として」源泉徴収をしていることがポイントとなります。
このため、「報酬として」源泉徴収をしている場合は、問題ありませんし、むしろ源泉徴収をしなければ所得税法違反となります。
ポイント5-3:労働保険の適用対象としていない
(3)その他
以上のほか、裁判例においては、①採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様であること、②報酬について給与所得としての源泉徴収を行っていること、③労働保険の適用対象としていること、④服務規律を適用していること、⑤退職金制度、福利厚生を適用していること等「使用者」がその者を自らの労働者と認識していると推認される点を、「労働者性」を肯定する判断の補強事由とするものがある。
つまり、個人事業者やフリーランスを労働保険の対象としている場合は、委託者側が個人事業者・フリーランスを労働者と認識していると推認され、個人事業者・フリーランスが労働者とみなされるリスクが高くなります。
社会保険に加入させる手続きを取っているということは、明らかに労働者として扱っていると判断されるものと思われます。
ポイント5-4:服務規律を適用していない
(3)その他
以上のほか、裁判例においては、①採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様であること、②報酬について給与所得としての源泉徴収を行っていること、③労働保険の適用対象としていること、④服務規律を適用していること、⑤退職金制度、福利厚生を適用していること等「使用者」がその者を自らの労働者と認識していると推認される点を、「労働者性」を肯定する判断の補強事由とするものがある。
つまり、委託者が個人事業者やフリーランスに対し服務規律の遵守を求めている場合は、委託者側が個人事業者・フリーランスを労働者と認識していると推認され、個人事業者・フリーランスが労働者とみなされるリスクが高くなります。
ただし、服務規律の遵守を求めることは、単に労働者扱いとするためだけではなく、他にも様々な目的がある場合もあります。
具体的には、企業秘密の漏えいの防止、安全衛生、法令(労働安全衛生法など)の遵守、災害への対応など、別に正当な目的がある場合は、服務規律を適用することをもって、直ちに個人事業者・フリーランスが労働者とみなされることはないものと思われます。
ポイント5-5:退職金制度、福利厚生を適用していない
(3)その他
以上のほか、裁判例においては、①採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様であること、②報酬について給与所得としての源泉徴収を行っていること、③労働保険の適用対象としていること、④服務規律を適用していること、⑤退職金制度、福利厚生を適用していること等「使用者」がその者を自らの労働者と認識していると推認される点を、「労働者性」を肯定する判断の補強事由とするものがある。
つまり、委託者が個人事業者やフリーランスに対し退職金を支給したり、福利厚生の待遇を与えたりしている場合は、委託者側が個人事業者・フリーランスを労働者と認識していると推認され、個人事業者・フリーランスが労働者とみなされるリスクが高くなります。
福利厚生については、程度の問題はあるでしょうが、例えば社員食堂の使用の許可など、日常的に使われる軽微なものであれば、労働者とみなされるリスクは低いものと思われます。
偽装フリーランス(各種労働法違反)のリスクは?
個人事業者・フリーランスとの業務委託契約等が労働契約・雇用契約とみなされた場合、以下のリスクがあります。
業務委託契約が雇用契約・労働契約とみなされた場合のリスク
- 報酬・料金・委託料が従業員の残業代と比較して少ない場合は、残業代を請求される。
- 極端に報酬・料金・委託料が少ない場合は、最低賃金以上の給料を請求される。
- 「個人事業者・フリーランス」が業務実施中に事故に遭うと「労災」を主張される。
- 日本年金機構(悪質な場合は国税庁)に社会保険料の負担を求められる。
- 税務調査の際に「給与所得」としての源泉所得税(しかも追徴課税つき)の支払いを求められる。
こうした様々なリスクがあるため、委託者の立場として、適法な業務委託契約とするには、受託者・日本年金機構・税務署からの「実態は雇用契約・労働契約だ」という主張に堪えうるような業務委託契約書を作成する必要があります。
ポイント
- 業務委託契約が雇用契約・労働契約とみなされると、残業代・最低賃金の支払い、社会保険料の負担、源泉所得税の追徴課税が求められる。
偽装請負(労働基準法・労働契約法)に関するよくある質問
- 個人事業者・フリーランスとの業務委託契約が労働契約・雇用契約とみなされないようにするには、どのような点に気をつけるべきですか?
- 厚生労働省のガイドライン「労働基準法研究会報告(労働基準法の『労働者』の判断基準について)」によると、以下の2つの判断基準によって、個人事業者・フリーランスが、事業者か労働者のいずれに該当するのかが判断されます。
- 「使用従属性」に関する判断基準
- 「労働者性」の判断を補強する要素
- 「使用従属性」に関する判断基準は、具体的にはどのようになっていますか?
- 「使用従属性」に関する判断基準は、以下のとおりです。
- 1.受託者が委託者の「指揮監督下の労働」を提供していない
- 1-1.受託者に「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由」がある
- 1-2.委託者による「業務遂行上の指揮監督」がない
- 1-2-1.委託者による「業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令」がない
- 1-2-2.予定外の業務がない
- 1-3.拘束性がない
- 1-4.代替性がある(受託者による再委託等ができる)
- 2.報酬に労務対償性がある
- 2-1.報酬が「労働の結果による」計算となっている
- 2-2.欠勤した場合であっても「応分の報酬が控除」されない
- 2-3.残業をした場合であっても「通常の報酬とは別の手当が支給」されない
- 1.受託者が委託者の「指揮監督下の労働」を提供していない
- 「労働者性」の判断を補強する要素は、具体的にはどのようになっていますか?
- 「労働者性」の判断を補強する要素は、以下のとおりです。
- 3.事業者性の有無
- 3-1.受託者が機械・器具の所有している
- 3-2.高額な報酬である
- 3-3.その他
- 3-3-1.受託者が損害賠償責任を負う
- 3-3-2.受託者による独自の商号使用が認められている
- 4.専属性の程度
- 4-1.「他社の業務に従事することが制度上制約」されていない
- 4-2.他社の業務に従事する時間的余裕がある
- 4-3.報酬に固定給部分がない
- 4-4.「業務の配分等により事実上固定給」となっていない
- 4-5.報酬の額が「生計を維持しうる程度のもの」でない
- 5.その他
- 5-1.「採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様」ではない
- 5-2.報酬について「給与所得」としては源泉徴収をおこなっていない
- 5-3.労働保険の適用対象としていない
- 5-4.服務規律を適用していない
- 5-5.退職金制度、福利厚生を適用していない
- 3.事業者性の有無
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