こんにちは。契約書作成専門・小山内行政書士事務所代表の小山内です。

このページでは、業務委託契約における業務内容が検査に与える影響について、簡単にわかりやすく解説しています。

業務委託契約における業務内容は、実施された業務や納入された製品や成果物の検査の合否の基準(=検査基準)となります。

このため、業務委託契約書での業務内容は、この検査に大きな影響を与えます。

業務内容はハッキリしていれば、検査はスムーズに進みますが、業務内容がハッキリしていなければ、検査結果を巡ってトラブルになります。

また、下請法が適用される場合、業務内容によっては、検査後に無償でやり直しをさせることが違法となることもあります。

このページでは、スムーズに検査を進めるために、どのように業務内容を決めるべきなのか、という点について、解説していきます。

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【影響1】業務内容は検査基準となる

「何をするのか」と同じくらい「ちゃんとしたのか」も大事

業務内容には、ふたつの性質があります。

業務内容のふたつの性質

  1. 「何をするのか」という、受託者が果たすべき義務・債務・責任(裏を返せば委託者が請求できる権利)の内容、という性質。
  2. 「ちゃんとしたのか」という、受託者が義務・債務・責任を果たしたのかどうか、という性質。

このページでは、後者の点について解説していきます。

前者の点、つまり、受託者の義務・債務・責任としての業務内容については、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約書で最も重要な業務内容の5つのポイントとは?

原則として業務委託契約では検査がある

一般的な業務委託契約では、受託者からの業務の実施や、製品・成果物の納入が合った後でおこなわれる、検査の条項を規定します。

検査は、受託者によって実施された業務や、納入された製品・成果物を、委託者が、文字どおり検査することです。

業務委託契約の検査(検査項目・検査方法・検査基準)とは?条項の規定のしかた・書き方・作り方は?

なお、ごく小規模な業務委託契約の場合は、検査を省略することもあります。

また、検査をすること自体にあまり意味がない業務委託契約(一部のコンサルティング契約など)では、検査をしないこともあります。

コンサルティング契約における検査

成果保証型以外のコンサルティング契約では、コンサルタント側が成果を保証しない。このため、仮に検査結果が不合格だったとしても、クライアント側がやり直しや返金の請求ができないため、検査はしない。

ただ、一般的な業務委託契約では、企業間取引であることもあり、よほどのことがない限り、検査の条項を規定しないことはありません。

もっとも、検査条項の規定はあっても、実際は検査をほとんどしない、ということはありえます。

業務内容にもとづき検査する

検査では、受託者によって実施された業務や、納入された製品・成果物が、合格・不合格のいずれであるかを判定します。

業務や製品・成果物によって、検査の方法は様々ですが、いずれの場合も、何らかの検査の基準があります。

この検査の基準になるのが、業務内容です。

実際の検査では、業務内容にもとづいて、委託者の側が、実施された業務や納入された製品・成果物を確認し、合格・不合格の判定をします。

ポイント

  • 業務内容=検査基準。
  • 業務内容と同じくらい、業務の検査も重要。
  • 業務委託契約で規定した業務内容にもとづき、検査はおこなわれる。
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【影響2】不合格のときに業務内容が問題となる

検査結果が不合格となった場合に揉めるリスクがある

検査の結果、実施された業務や納入された製品・成果物が合格であれば、特に問題なく、業務は終了となります。

問題は、不合格であった場合です。

検査結果が不合格であった場合に、受託者の側がすんなり検査結果(=不合格)を受け入れるのであれば、特に揉めることはありません。

この場合は、受託者に、もう一度やり直してもらう、損害賠償を負担してもらう、値引きするなどの対応があります。

ところが、検査結果が不合格であった場合に、受託者の側が検査結果を受け入れない場合もあります。

検査の判定を巡って委託者と受託者が対立する

受託者としては、委託者に不合格と判定された場合、納得できる判定でないと、すんなりとやり直しなどには応じにくいものです。

ここでポイントとなるのが、業務内容=検査基準です。

業務内容が、委託者・受託者の双方(できれば第三者も)が見て、一義的・客観的で、解釈の余地が入るスキがなければ、受託者としても、不合格の検査結果も受け入れざるを得なくなります。

これに対し、業務内容が不明確で、どうとでも解釈できるような内容であれば、受託者としては、そう簡単に不合格の検査結果を受け入れるわけにはいきません。

業務内容の明確さにより検査結果の違い

  • 明確な業務内容=検査基準:受託者が不合格の検査結果も受け入れやすい・受け入れざるを得ない。
  • 不明確な業務内容=検査基準:受託者が不合格の検査結果を受け入れにくい。

このように、業務内容が不明確な場合、委託者と受託者の間で、検査結果の判定=不合格の判定を巡って、利害が対立し、トラブルになるリスクがあります。

受託者は委託者による「恣意的」な判定を疑う

受託者の立場としては、検査が不合格であった場合、委託者が「恣意的」な判定をしたのではないか、と疑います。

よほど不誠実な受託者でない限り、受託者としても、(うっかりしたミスは別としても)不合格になるような業務の実施や製品・成果物の納入はしません。

こうした事情があるため、通常は、委託者による不合格の判定があった場合、そう簡単には検査結果を受け入れてはくれません。

この場合、もし委託者が、特に「恣意的」な判定をしているつもりがなくても、受託者からは、「恣意的」な判定をしている、と誤解されてしまうことがあります。

受託者からの誤解

明確で客観的な業務内容でないと、委託者がそのつもりがなくても、受託者が「恣意的」な検査をしたと誤解してしまう。

こうした誤解を避けるためにも、受託者に納得してもらえるような、「恣意的」でない=客観的な業務内容=検査基準が重要となります。

ポイント

  • 業務委託契約では、検査結果が不合格となった場合に揉めるリスクがある。
  • 検査結果が不合格の場合、委託者による検査の判定を巡って委託者と受託者が対立する。
  • 明確な業務内容=検査基準:受託者が不合格の検査結果も受け入れやすい・受け入れざるを得ない。
  • 不明確な業務内容=検査基準:受託者が不合格の検査結果を受け入れにくい。
  • 受託者は、委託者による「恣意的」な検査の判定を疑う。
  • 明確で客観的な業務内容でないと、委託者がそのつもりがなくても、受託者が「恣意的」な検査をしたと誤解してしまう。
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【補足】業務内容と検査基準を別にする場合もある

業務内容=検査基準は検査が簡単な場合に限る

契約書で業務内容を簡単に規定できる業務委託契約の場合、すでに触れたとおり、業務内容=検査基準となります。

具体例としては、運送請負契約が該当します。

一般的な運送請負契約の場合、業務内容は、「無事故で荷物を指定の場所に運ぶこと」です。

となると、検査基準は、「無事故で荷物が指定の場所に運ばれたかどうか」です。

検査が複雑な場合はを検査仕様を分けて規定する

これに対して、契約書で業務内容を簡単に規定できない業務委託契約の場合は、業務内容とは別に、検査仕様(=検査項目・検査基準・検査方法)を規定することがあります。

具体例としては、システム等開発業務委託契約が該当します。

これだけは押さえておきたい!ソフトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務委託契約書の作成の35のポイント

特に規模の大きなシステム等開発業務委託契約では、仕様が複雑になり、システム等の仕様=業務内容をそのまま検査基準とすることはできません。

このため、システム等の仕様=業務内容とは別に、開発されたシステム等が納入される前に、検査仕様を定めます。

ちなみに、検査仕様についても、検査仕様書として、書面化して、相互に署名または記名押印して取交します。

なぜ検査仕様書にサインが必要か?

検査仕様も契約内容の一部。このため、検査仕様書も契約書の一部として取扱い、契約書と同様に、署名または記名押印して相互に取交わす必要がある。

そして、検査の際には、この検査仕様にもとづいて、検査を実施し、合否の判定をします。

業務の実施と並行して検査を実施する場合もある

また、場合によっては、業務の実施と並行して、実質的な検査を実施する場合があります。

具体例としては、建設工事請負契約があります。

建設工事請負契約における業務内容(設計図面・仕様書・設計図書)の決め方・規定のしかた・書き方とは?

建設工事請負契約では、工事が完了してしまうと、検査ができなくなる、あるいは、検査に多額の費用がかかること(例:破壊検査など)があります。

このため、設計図書どおりに施工されているかどうか、建築士が、随時確認しながら施工を進めていきます。

このように、建設工事で施工を確認することを「施工監理」(施工管理ではありません)といいます。

検査基準は業務の完了・納入前に決める

なお、業務内容と検査基準を別に分ける場合、業務の終了(業務の実施の完了や製品・成果物の納入)の前までに、検査基準を決める必要があります。

これは、特に受託者にとって重要な点です。

というのも、業務の終了した後で検査基準を決めようとすると、委託者が、自らにとって都合のいい検査基準でなければ、合意しなくなる可能性があるためです。

このため、できるだけ契約締結時、遅くとも、業務の終了の直前までには、当事者間で検査基準について合意することが重要です。

ポイント

  • 業務内容が検査基準となるのは、運送請負契約のように、検査が簡単な場合に限る。
  • 検査が複雑な場合は検査項目・検査基準・検査方法を分けて規定する。
  • 建設工事請負契約のように、業務の実施と並行して検査(施工監理)を実施する場合もある。
  • 委託者にとって都合のいい、恣意的な検査基準を設定されないように、検査基準は、業務の完了・納入前に決める。
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【影響3】不明確な業務内容は下請法違反の原因

「不明確な業務内容」そのものが下請法違反

下請法が適用される業務委託契約の場合、業務内容は、いわゆる「三条書面」の必須記載事項です。

下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といい、委託者=親事業者を規制し、受託者=下請事業者を協力に保護している法律です。

下請法とは?中小零細企業・個人事業者・フリーランスの味方の法律

業務委託契約では、委託者と受託者の資本金の金額と、業務内容によっては、下請法が適用される可能性があります。

業務委託契約に下請法が適用されるかどうかにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法が適用される4つの業務委託契約のパターン

下請法が適用される場合、委託者=親事業者は、下請法第3条にもとづき、受託者=下請事業者に対して、書面を交付しなければなりません。

この書面のことを、「三条書面」といいます。

下請法の三条書面とは?―業務委託契約書の12の必須事項

委託者は、三条書面に「下請事業者の給付の内容」を必ず記載しなければなりません。

この「下請事業者の給付の内容」ですが、単に書けばいいというものではありません。

「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」によると、「下請事業者の給付の内容」については、次のとおり記載しなければなりません。

(3) 3条書面に記載する「下請事業者の給付の内容」とは,親事業者が下請事業者に委託する行為が遂行された結果,下請事業者から提供されるべき物品及び情報成果物(役務提供委託をした場合にあっては,下請事業者から提供されるべき役務)であり,3条書面には,その品目,品種,数量,規格,仕様等を明確に記載する必要がある。

また、特に、システム等開発業務委託契約では、次のとおり、「下請事業者が3条書面を見て『給付の内容』を理解でき,親事業者の指示に即した情報成果物を作成できる程度の情報を記載することが必要である。」とされています。

同時に、「必要な限り明確化することが望ましい。」とされています。

Q38: 情報成果物作成委託においては,委託内容のすべてを3条書面に記載することは不可能だが,どの程度詳しく書かなければならないか。
A: 委託内容のすべてを記載することは困難でも,下請事業者が3条書面を見て「給付の内容」を理解でき,親事業者の指示に即した情報成果物を作成できる程度の情報を記載することが必要である。
また,3条書面の「給付の内容」の記載は,親事業者として下請事業者に対し,やり直し等を求める根拠となるものでもあるので,必要な限り明確化することが望ましい。

実務上は、業務委託契約書が三条書面となるように、契約条項を規定していきます。

つまり、業務委託契約書で不明確な業務内容を記載すること自体が、下請法違反となります。

言いかえれば、委託者にとっては、業務委託契約書に明確な業務内容を記載することが、下請法の義務ということです。

「恣意的」な検査は下請法違反

また、不明確な業務内容は、すでに触れたような、「恣意的」な検査の原因となります。

下請法が適用される場合、この「恣意的」な検査もまた、下請法違反となります。

具体的には、次の禁止行為に該当します。

「恣意的」な検査による禁止行為

以下、それぞれ具体的に見てみましょう。

「恣意的」な検査による受領拒否

下請法では、恣意的に厳しい検査基準を設定して、製品・成果物の受領を拒むことは、次のとおり受領拒否(下請法第4条第1項第1号)に該当し、認められません。

(イ) 検査基準を恣意的に厳しくして,委託内容と異なる又は瑕疵等があるとする場合

このため、委託者=親事業者としては、検査基準が恣意的にならないよう、一義的・客観的なものとする必要があります。

「恣意的」な検査にもとづく返品

下請法では、恣意的に厳しい検査基準を設定して、納入された製品・成果物を引き取らせることは、次のとおり返品下請法第4条第1項第4号)に該当し、認められません。

イ 検査基準を恣意的に厳しくして,委託内容と異なる又は瑕疵等があるとする場合

具体的には、次のような事例が禁止されている返品に該当します。

4-3 恣意的な検査基準の変更による返品

 親事業者は,染加工を下請事業者に委託しているところ,下請事業者の納品したものをいったん受領した後,以前には問題としていなかったような色むらを指摘して,下請事業者に引き取らせた。

このため、委託者=親事業者としては、恣意的な検査にならないよう、一貫した検査基準で検査する必要があります。

「恣意的」な検査にもとづくやり直し

下請法では、恣意的に厳しい検査基準を設定して、業務内容の変更や、実施された業務・納入された製品・成果物のやり直しを要請することは、次のとおり不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(下請法第4条第2項第4号)に該当し、認められません。

ウ 検査基準を恣意的に厳しくして委託内容と異なる又は瑕疵等があるとする場合

具体的には、次のような事例が禁止されている不当な給付内容の変更及び不当なやり直しに該当します。

8-3 恣意的な検査基準の変更によるやり直し

 親事業者は,下請事業者に対して金型の製造を委託しているところ,従来の基準では合格していた金型について,検査基準を一方的に変更し,下請事業者に無償でやり直しを求めた。

このため、委託者=親事業者としては、適法なやり直しを要求できるように、明確な業務内容と検査基準の規定をする必要があります。

禁止行為をおこなった場合は勧告がある

委託者=親事業者がこれらの禁止行為の規定に違反した場合、ただちに罰則とはなりません。

通常は、委託者=親事業者に対し、公正取引委員会または中小企業庁から調査が入ります(この調査を拒むと50万円以下の罰金が科されます)。

この調査の結果、違反の程度が軽い場合は、行政指導で済みますが、違反の程度が重い場合は、公正取引委員会から勧告を受けます。

勧告を受けると、企業名が公表されますので、社会的な制裁を受けることになります。

なお、勧告に従わない場合は、独占禁止法にもとづき、より重い行政処分である排除措置命令や課徴金納付命令が出されます。

もちろん、これに従わない場合は、最終的には刑事罰を受けることになります。

ポイント

  • 不明確な業務内容は、下請法第3条違反となる。
  • 恣意的な検査は、下請法で禁止された「受領拒否」「返品」「不当な給付内容の変更及び不当なやり直し」の原因となる。
  • 禁止行為をおこなった場合は、直ちに罰則を受けるわけでなく、勧告(+企業名の公表)や行政指導を受ける。
  • ただし、勧告や行政指導を受けた後に、下請法に適合するように改善しなければ、排除措置命令・課徴金納付命令の行政処分を受け、最終的には刑事罰が科される。