こんにちは。契約書作成専門・小山内行政書士事務所代表の小山内です。

このページでは、業務委託契約の契約条項のうち、業務の実施によって発生する費用負担に関する条項について、簡単にわかりやすく解説しています。

業務委託契約では、多額の費用がかかるため、その負担を巡ってトラブルとなる可能性があります。

このようなトラブルを避けるためにも、業務委託契約書で、委託者・受託者のどちらが費用を負担するのかを明記します。

また、そもそも、「費用」とは何かを定義づけておかないと、費用の範囲を巡ってトラブルとなる可能性があります。

このため、業務委託契約書には、費用の定義や範囲、場合によっては金額の上限も明記します。

スポンサードリンク

原則として業務委託契約の費用は受託者の負担

原則として契約の履行=弁済の費用は受託者の負担

一般的に、契約の履行=弁済の費用は、その義務を負う当事者の負担となります。

民法第485条(弁済の費用)

弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

これは、弁済の費用は、債務者の給付義務のうちに含まれる、という考え方によります。

このため、業務委託契約において、業務の実施に必要な費用については、原則として受託者の負担となります。

同様に、委託者の義務の履行に要する費用(例:銀行振込の手数料など)は、委託者の負担となります。

銀行振込等の支払方法につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約の報酬・料金・委託料の支払方法とは?条項の規定のしかた・書き方・作り方は?

例外として準委任型の業務委託契約は委託者の負担

(準)委任契約では一定の費用は委託者負担

ただし、例外として、委任契約・準委任契約である業務委託契約=準委任型の業務委託契約では、委託業務の実施に要する費用は、委託者の負担となります。

委任契約・準委任契約とは?―(準)委任型の業務委託契約のポイント・当事者の権利義務を解説

(準)委任契約では、民法の規定により、委託者の負担とされています。

まず、民法第694条により、委託者は、受託者からの請求があった場合、前払いで費用を負担しなければなりません。

民法第649条(受任者による費用の前払請求)

委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。

そして、受託者が委託業務の実施に必要な費用を立替えて支出した場合は、その費用も後払いで支払わなければなりません。

民法第650条(受任者による費用等の償還請求等)

1 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

2 (以下省略)

委託者が負担するのは「費用の全額」ではない

もっとも、ひとくちに費用といっても、すでに触れた民法の規定では、次のとおり規定されています。

(準)委任契約で委任者が負担する費用

  • 「委任事務を処理するについて」の費用(民法第649条)
  • 「委任事務を処理するのに必要と認められる費用」(民法第650条)

このように、(準)委任契約において、委任者が負担するべき費用は、すべての費用というわけではありません。

一般的には、これらは、「客観的に委任事務を処理するのに必要な費用」といわれています。

ただし、具体的にどのような費用が認められるかは、民法では明確な規定はありません。

受託者負担とする場合は業務委託契約に明記する

このように、準委任型の業務委託契約では、費用は、原則として、委託者の負担となります。

この点は、受託者が費用を負担する、請負型の業務委託契約とは真逆の契約内容です。

【保存版】請負契約と(準)委任契約の13の違い

このため、準委任型の業務委託契約でも、請負型と同じように、受託者が費用を負担する場合、業務委託契約書を作成して、特約を規定する必要があります。

最低限、費用が発生する場合は、委託者からの承諾を得るようにするように、受託者に義務を課します。

こうすることで、際限なく費用の負担を求められることがなくなります。

ポイント

  • 原則として業務委託契約の履行=弁済の費用は受託者の負担。
  • 例外として準委任型の業務の実施に必要な費用は委託者の負担。
  • 準委任型の業務委託契約で費用を受託者負担とする場合は、業務委託契約に特約でその旨を明記する。

業務委託契約では費用負担を明確に規定する

民法と同じ費用負担でも業務委託契約で規定しておく

以上のように、民法では、業務の実施に要する費用は、次のとおりです。

民法上の業務実施に要する費用負担

  • 原則として、業務実施に要する費用は、受託者が負担する。
  • 例外として、準委任型の業務委託契約では、業務実施に要する費用は、委託者が負担する。

もっとも、これらの民法の規定は、必ずしも業務委託契約の当事者に理解されているとは限りません。

このため、たとえ民法と同じ内容であったとしても、業務委託契約で費用負担について明確に規定し、当事者間で認識を共有しておくべきです。

こうすることで、費用負担を巡るトラブルを予防できます。

費用の分担の際は当事者と分担の書き方に注意

費用を分担する場合は原則として受託者・例外として委託者の負担とする

一般的な業務委託契約では、業務実施の費用については、受託者の負担とすることが多いです。

これは、たとえ準委任型の業務委託契約であっても、一般的には、受託者の負担とします。

ただ、契約内容によっては、部分的に委託者が費用を負担するべき場合もあります。

この場合、受託者が費用を負担するものとしつつ、例外として、委託者が負担するべき費用について規定します。

こうすることで、「漏れ」=「どちらが負担するのかがハッキリしない費用」が発生することがありません。

記載例・書き方

第○条(費用負担)

1 次の各号のコンサルティング業務の実施に要する費用については、乙の負担とする。

(1)交通費

(2)宿泊費

2 前項各号の費用以外のコンサルティング業務の実施に要する費用については、甲の負担とする。

(※甲:経営コンサルタント、乙:クライアントの場合。また、便宜上、個々の費用の項目の表現は簡略化しています)

この規定は、コンサルティング契約における費用負担の条項の例です。

この規定の場合、交通費と宿泊費はクライアントの負担であり、他の費用については、当初想定していなかったものも含めて、経営コンサルタントの負担となります。

ただし、あとで触れますが、「交通費」「宿泊費」の定義や上限を規定しておかないと、その解釈を巡ってトラブルになります。

委託者・受託者が負担する費用を列挙してはいけない

これに対し、委託者が負担する費用と、受託者が負担する費用を、それぞれ列挙する規定のしかたがあります。

しかし、これでは、必ずと言っていいほど、「漏れ」=「どちらが負担するのかがハッキリしない費用」が発生します。

記載例・書き方

第○条(費用負担)

1 次の各号のコンサルティング業務の実施に要する費用については、甲の負担とする。

(1)飲食代

(2)通信費

2 次の各号のコンサルティング業務の実施に要する費用については、乙の負担とする。

(1)交通費

(2)宿泊費

(※甲:経営コンサルタント、乙:クライアントの場合。また、便宜上、個々の費用の項目の表現は簡略化しています)

この規定も、コンサルティング契約における費用負担の条項の例です。

このように規定した場合、飲食代・通信費については、経営コンサルタント負担、交通費・宿泊費についてはクライアント負担という点は問題はありません。

ただ、これら以外に費用が発生した場合に、どちらの負担となるのかが不明です。

このため、このような規定とするべきではありません。

ポイント

  • 民法と同じ費用負担であっても、念のため、業務委託契約でその内容を規定しておくべき。
  • 費用を分担する場合は、原則として受託者の負担として、一部の例外として、特定の費用だけを委託者の負担とする。

委託者の費用負担を抑える方法とは?

【方法1】費用の定義・範囲を限定する

特に実費清算の場合は受託者による費用の浪費に要注意

以上のように、費用を委託者・受託者で分担することを決めた場合、委託者が気をつけないといけないのが、受託者からの過大な費用負担の請求です。

特に、費用の清算を後日の実費清算とする場合は、委託者が知らないうちに、受託者が高額な費用を使って業務を実施することがあります。

このような場合、委託者は、後日、思いもよらない高額な費用の請求を求められることがあります。

このリスクを防止するためには、業務委託契約における「費用」の定義・範囲が重要となります。

費用の定義・範囲はより詳細な規定とする

例えば、すでに触れたような「宿泊費」や「交通費」では、幅がありすぎて、解釈を巡って、契約当事者間で揉める可能性があります。

あいまいな費用の項目の問題点

  • 宿泊費:カプセルホテル、民泊、簡易宿泊所のような安価なものから、スイートルームまで、どの程度が認められるのか。
  • 交通費(電車):各駅停車から新幹線まで、どの程度のものが認められるのか。また、座席のグレードはどこまで認められるのか。
  • 交通費(飛行機):座席のグレードはどこまで認められるのか。
  • 交通費(タクシー):どの程度の距離から認められるのか。

このように、費用を分担する場合は、費用の定義・範囲は、一般的な会計用語のレベルではなく、より詳細な定義とするべきです。

【方法2】金額・計算方法や上限を設定する

こうした費用の項目を検討する際、項目そのものを詳細に定義づける方法もありますが、他の方法もあります。

具体的には、金額や計算方法を指定する方法や、変動する可能性がある金額については、上限を設定する方法です。

例えば、電車の運賃のように、比較的金額や計算方法がわかりやすいものであれば、金額を固定して契約書に記載することあがります。

また、宿泊費のように、施設によって金額が変わる場合は、実費負担としたうえで、上限を設定することもあります。

【方法3】委託者による事前承諾制とする

このほか、費用負担について、委託者からの事前の承諾を必要とする規定もあります。

このような規定は、委託者にとっては、過大な費用の負担を強いられることがなくなる、というメリットがあります。

一方で、受託者にとっては、実質的に費用が認められなくなる、というデメリットがあります。

このため、一定の金額を超えるものと見込まれる費用のみ、事前承諾制とする規定もあります。

これは、一種の折衷案ですが、委託者・受託者双方にとって公平な内容です。

ポイント

  • 【委託者の費用負担を抑える方法その1】費用の定義・範囲を限定する
  • 【委託者の費用負担を抑える方法その2】費用の金額・計算方法や上限を設定をする。
  • 【委託者の費用負担を抑える方法その3】は委託者による事前承諾制とする。

委託者による費用負担は偽装請負の可能性も

【意味・定義】偽装請負とは?

なお、委託者による費用負担は、場合によっては偽装請負=労働者派遣法違反に該当する可能性があります。

偽装請負の定義

偽装請負とは、実態は労働者派遣契約なのに、労働者派遣法等の法律の規制を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約が締結され、労働者が派遣されている状態のこと。

偽装請負とは?偽装請負とみなされた場合の委託者・受託者のリスクは?

委託者による費用負担は37号告示に抵触する可能性がある

偽装請負に該当しないためには、いわゆる37号告示に規定されている、9つの条件をクリアしなければなりません。

37号告示(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準 )とは?

この9つの条件のうちのひとつが、受託者が「自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。」です(37号告示第2条第2号ハ(1))。

このため、特に製造請負契約などで、設備の無償での貸与(実質的な費用負担)があった場合、偽装請負=労働者派遣法違反となる可能性があります。

なお、偽装請負とみなされないようにするには、委託者と受託者との間で、業務委託契約とは別の双務契約(契約書を分ける必要はありません)を締結し、受託者による適正な費用負担がなければなりません。

ポイント

  • 委託者による費用負担は、偽装請負=労働者派遣法違反となるリスクがある。
  • これを回避するためには、有償の双務契約により、受託者による適正な費用負担とする。

委託者による費用負担は雇用契約・労働契約扱い

個人事業者・フリーランスとの業務委託契約では要注意

また、個人事業者・フリーランスとの業務委託契約の場合、委託者がヘタに費用を負担してしまうと、業務委託契約ではなく、雇用契約・労働契約とみなされるリスクもあります。

個人事業者・フリーランスとの業務委託契約と雇用契約・労働契約の15の違い

法律上、個人事業者・フリーランスとの業務委託契約と雇用契約・労働契約とは、明確に切り分けられるものではありません。

このため、厚生労働省(当時の労働省)は、『労働基準法研究会報告』(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)という基準で、雇用契約・労働契約と業務委託契約の区別を発表しています。

労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)とは

原則として費用は受託者が負担するべき

この『労働基準法研究会報告』(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)には、次の規定があります。

イ 機械、器具の負担関係

本人が所有する機械、器具が安価な場合には問題はないが、著しく高価な場合には自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う「事業者」としての性格が強く、「労働者性」を弱める要素となるものと考えられる。

つまり、本人(この場合は個人事業者・フリーランス)が所有する機械、器具が著しく高価な場合には、「事業者」としての正確が強い=労働者性を弱める要素となる、ということです。

逆にいえば、個人事業者・フリーランスである受託者が、委託者の高価な機械・器具を無償で(=実質的に委託者の費用負担)で使用していると、雇用契約・労働契約とみなされる可能性があります。

この点は、特に個人事業者・フリーランスのエンジニアによる、客先常駐型のシステム等開発業務委託契約(特に契約形態が準委任型の場合)は、要注意です。

これだけは押さえておきたい!ソフトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務委託契約書の作成の35のポイント

ポイント

  • 著しく高価な機械・器具を個人事業者・フリーランスが所有していたら、適法な業務委託契約とみなされる可能性が高くなる。
  • 著しく高価な機械・器具を委託者が所有していたら、雇用契約・労働契約とみなされる可能性が高くなる。

【補足1】契約に関する費用=契約締結に必要な費用は折半

さて、これまでは、「契約の履行の費用」(=弁済の費用)について解説してきましたが、実は、似たような概念に「契約に関する費用」というものがあります。

これは、民法第558条と民法第559条に規定されています。

民法第558条(売買契約に関する費用)

売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。

民法第559条(有償契約への準用)

この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

契約に関する費用とは?

契約に関する費用とは、契約の締結に必要な費用。

契約の締結に必要な費用の例は、典型的なものとしては、契約書の作成や取交しに要する費用です。

これらの費用は、「当事者双方が等しい割合で負担}=いわゆる折半となっています。

ポイント

契約の締結に要する費用は、契約当事者が折半で負担する。

【補足2】印紙税は折半かつ連帯責任

契約書を2部作成する場合は自然と折半となる

また、契約に関する費用の他の代表例としては、印紙税が該当します。

すでに述べたととおり、印紙税も、民法第558条および第559条により、厳密には、折半となります。

これは、一般的な契約書のように、原本を2部作成して、契約当事者の双方が1部づつ保管する場合は、特に問題となりません。

この場合は、それぞれが収入印紙を購入して消印を押印すれば、自然と折半となります。

問題は、原本を1部しか作成しない場合や、注文書・注文請書(発注書・受注書)による契約の場合です。

1部だけの契約書・注文請書(受注書)の印紙税の負担は?

印紙税の節約のため、契約書の原本は1部だけ作成し、一方の当事者はその原本を、他方の当事者はそのコピー・写しを保管する場合があります。

また、注文書・注文請書(発注書・受注書)を取交わす場合、一般的には注文書・発注書には収入印紙を貼る必要はありません。

[平成29年4月1日現在法令等]

 契約とは、申込みとその申込みに対する承諾によって成立するものですから、契約の申込み事実を証明する目的で作成される単なる申込書、注文書、依頼書等(以下「申込書等」という。)は、通常、課税対象にはなりません。(以下省略)

しかし、注文請書・受注書には収入印紙を貼る必要があります。

このような場合、1部だけの契約書や注文請書・受注書については、誰が、どれだけの印紙税を負担するべきでしょうか?

これは、すでに述べたとおり、理屈のうえでは、契約当事者の双方が折半で負担するべきものです。

特に、注文請書・受注書の印紙税は、受託者だけが負担しがちですので、委託者は、後から注文請書の印紙税の半額を請求される可能性があります。

特約で一方の当事者だけに印紙税を負担させられる

このような、後から印紙税の負担を求められないように、特約で、一方の当事者だけに印紙税を負担させることもできます。

ただし、例えば、下請事業者や立場が弱い契約当事者に対して、一方的に印紙税を負担させるような契約内容は、下請法や独占禁止法で問題となる可能性があります。

下請法につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

下請法とは?中小零細企業・個人事業者・フリーランスの味方の法律

独占禁止法につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

独占禁止法とは?私的独占・不当な取引制限・不公正な取引方法等を禁止した法律

印紙税法上は国税庁に対して「連帯責任」を負う

なお、民法上の当事者間の権利義務とは別に、印紙税法上は、契約当事者は、国税庁に対して、連帯して印紙税を納税しなければなりません。

印紙税第3条(納税義務者)

1 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

2 一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合には、当該二以上の者は、その作成した課税文書につき、連帯して印紙税を納める義務がある。

このため、自社が収入印紙を購入して契約書に貼り、消印を押して印紙税を納税していたとしても、相手方が印紙税を納税していない場合、理屈のうえでは、相手方の印紙税を納税させられる可能性があります。

このほか、業務委託契約における印紙税については、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約書にはいくらの収入印紙を貼るの?印紙税はいくら?

ポイント

  • 契約書を2部作成する場合は、その印紙税の負担は、自然と折半となる。
  • 1部だけの契約書・注文請書(受注書)の印紙税は、民法上は、折半となる。
  • 特約として一方だけが印紙税を負担する内容にもできるが、下請法や独占禁止法で問題となる可能性もある。
  • 印紙税は、共同で作成した契約書の場合は、契約当事者が連帯して納税する義務がある。