このページでは、請負契約の請負人に向けて、請負契約における請負人の権利義務についてわかりやすく解説しています。

「請負契約の請負人ってものすごくリスクが大きいんじゃないの?」と思ったことはないでしょうか。

そう思うのも無理はありません。なにしろ、請負契約は、「仕事の完成」を目的とした、非常にハードルが高そうに思われる契約だからです。

請負契約では、この「仕事の完成」を始めとした請負人の義務が果たされているかどうかをを巡って、トラブルになることが非常に多いです。

にもかかわらず、契約の全般的なルールである民法には、請負契約について、それほど明確に規定されていません。

このため、請負契約書や請負型の業務委託契約書では、請負人の権利義務について、明確に規定しておくことが重要となります。

このページでは、こうした請負契約の請負人の権利義務や注意点について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

請負人の方々がこのページを読むことで、請負契約における請負人の権利・義務・責任等の注意点が理解でき、また、トラブルを未然に防ぐことができます。

このページでわかること
  • 「仕事の完成」を中心とした請負契約における請負人の5つ義務
  • 請負人が5つの義務に違反した場合のリスク
  • 請負人が持つ注文者に対する2つの権利、特に中途解約ができる条件

なお、請負契約全般に関する解説につきましては、詳しくは、以下のページをご参照ください。

【改正民法対応】請負契約とは?委任契約や業務委託契約との違いは?

また、注文者の義務・責任・権利につきましては、詳しくは、以下のページをご参照ください。

【改正民法対応】請負契約における注文者の義務・責任と権利とは?




【意味・定義】請負契約(読み方:うけおいけいやく)とは

請負契約は、民法では、以下のように規定されています。

民法第632条(請負)

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

【意味・定義】請負契約とは?

請負契約とは、請負人(受託者)が仕事の完成を約束し、注文者(委託者)が、その仕事の対価として、報酬を支払うことを約束する契約をいう。




請負契約における請負人の5つの義務・責任とは

請負人の5つの義務・責任一覧リスト

請負契約では、請負人には、以下の5つの義務・責任が課されます。

請負契約における請負人の5つの義務・責任
  • 【義務・責任1】仕事に着手する義務
  • 【義務・責任2】期限(納期)までに仕事を完成させる義務
  • 【義務・責任3】再委託先・下請負人の行為にもとづく責任
  • 【義務・責任4】仕事の完成前の災害による損害の負担
  • 【義務・責任5】契約不適合責任

以下、詳しく見ていきましょう。

【義務・責任1】仕事に着手する義務

請負人は、仕事に着手する義務があります。

これは、何も請負契約に限った話ではありません。

民法第541条(催告による解除)

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

このように、契約全般の一般的なルールとして、「契約の履行をしない場合」は(催告が必要ですが)契約解除ができることが、民法で規定されています。

【義務・責任2】期限(納期)までに仕事を完成させる義務

一般的な請負契約では、必ず期限(納期。法律的には「確定期限」)が設定されています。

請負人は、この期限(納期)までに、仕事を完成させる義務があります。

これは、逆に言えば、期限(納期)が来るまでは、仕事を完成させる義務はない、ともいえます。

これも、請負契約に限った話ではありません。

民法第412条(履行期と履行遅滞)

1 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

2 (以下省略)

このように、民法では、契約全般の一般的なルールとして、確定期限の到来後は、債務者に責任が発生するようになっています。

このほか、納入につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

業務委託契約における納入・納入方法・納入場所とは?契約条項の規定のしかた・書き方は?

【義務・責任3】再委託先・下請負人の行為にもとづく責任

請負契約に請負人は、再委託先(下請負人)の行為についても、責任を負わなければなりません。

再委託先(下請負人)は、法的には、再委託(下請け)の程度によって、履行補助者と履行代行者に分かれます。

履行補助者は、わかりやすく言えば、請負人を補助する存在であり、会社の従業員などが該当します。

これに対し、履行代行者は、請負人に代わって仕事をする存在であり、いわゆる「丸投げ」をされて仕事をする事業者などが該当します。

【意味・定義】履行補助者・履行代行者とは?
  • 履行補助者とは、請負人を補助する者(従業員・労働者等)。
  • 履行代行者とは、請負人に代わって仕事をおこなう者(下請負人等の個人事業者等)。

請負人は、再委託先(下請負人)が履行補助者・履行代行者のいずれであっても、その行為については、責任を負わなければなりません。

この点につきましては、以下のページもご参照ください。

業務委託契約における再委託・下請負(外注)の許可・禁止条項とは?




【義務・責任4】仕事の完成前の災害による損害の負担(危険負担)

請負契約は、仕事の完成を目的とした契約です。

このため、仕事の完成前に発生した災害による損害は、すべて請負人の負担となります。

これを危険負担といいます。

【意味・定義】危険負担とは?

危険負担とは、後発的な事由によって、目的物になんらかの損害が生じた場合における損害の負担をいう。

このような災害があった場合、請負人の費用負担で、あらためて仕事を完成させなければなりません。

また、注文者に対して、報酬の増額や費用の追加負担を求めることはできません。

なお、結果として、仕事の完成が不可能(いわゆる「履行不能」)となった場合、請負人の仕事を完成させる義務は消滅します。

ただ、同時に、請負人は、報酬の請求はできませんし、注文者に対して費用の請求もできません(大審院判決明治35年12月18日)。




【義務・責任5】契約不適合責任

契約不適合責任とは

契約不適合責任(旧民法における「瑕疵担保責任」)とは、有償契約において、債務者により履行された債務が契約の内容に適合しない場合において債務者が負う責任のことを意味します(民法第562条、第559条等)。

【意味・定義】契約不適合責任とは?

契約不適合責任とは、有償契約において、債務者により履行された債務が契約の内容に適合しない場合において債務者が負う責任をいう。

【意味・定義】有償契約における契約不適合とは?

契約不適合とは、有償契約において債務者により履行された債務の種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないことをいう。旧民法における、いわゆる「瑕疵」に相当する概念。

なお、有償契約の定義は、以下のとおりです。

【意味・定義】有償契約とは?
    有償契約とは、契約当事者の双方が何らかの経済的な対価を給付する契約をいう。

これに対し、有償契約でない契約を無償契約といいます。

【意味・定義】無償契約とは?

無償契約とは、当事者の双方または一方が経済的な給付が発生しない契約をいう。

請負契約における契約不適合・契約不適合責任とは

請負契約における契約不適合・契約不適合責任の定義は、それぞれ次のとおりです。

【意味・定義】請負契約における契約不適合とは?

請負契約における契約不適合とは、請負契約において請負人がおこなった仕事の種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないこと。いわゆる「瑕疵」(欠陥・ミス等)を含む。

【意味・定義】請負契約における契約不適合責任とは?

請負契約における契約不適合責任とは、仕事の種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合(契約不適合があった場合。瑕疵、ミス、欠陥等があった場合を含む。)において、注文者から請求された、履行の追完、報酬の減額、損害賠償、契約の解除の請求に応じる請負人の責任・義務をいう。

請負人には、「仕事を完成させる義務」があります。

これは、通常どおりに仕事を完成させる義務があることと同時に、仕事に契約不適合があった場合には、その契約不適合に対処することによって、仕事を完成させる義務がある、ということです。

こうした契約不適合に対処する責任が、契約不適合責任です。

契約不適合責任に対する注文者の4つの請求権

具体的には、請負人は、次の4つの請求権にもとづく注文者からの請求に応じる責任・義務があります。

契約不適合責任における注文者の4つの請求権
  • 追完請求権(民法第562条)
  • 代金減額請求権(民法第563条)
  • 損害賠償請求権(民法第564条)
  • 契約解除権(民法第564条)

この他、契約不適合責任につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

【改正民法対応】業務委託契約における契約不適合責任とは?定義・ポイントも解説

ポイント

請負人には、以下の5つの責任・義務がある。

  • 仕事に着手する義務
  • 期限(納期)までに仕事を完成させる義務
  • 再委託先・下請負人の行為にもとづく責任
  • 仕事の完成前の災害による損害の負担
  • 契約不適合責任




請負契約における請負人の2つの権利とは

請負人の2の権利一覧リスト

請負契約の請負人には、以下の2つの権利があります。

請負契約における請負人の2つの権利
  • 【権利1】報酬請求権
  • 【権利2】注文者の破産手続きが開始されたときの契約解除権

以下、詳しく見ていきましょう。

【権利1】報酬請求権

当然ながら、(無報酬でない限り)請負人には、報酬を請求する権利があります。

民法第633条(報酬の支払時期)

報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第624条第1項の規定を準用する。

なお、請負人が気をつけるべき点は、あくまで、原則として、報酬の支払期限が、目的物・成果物の引渡しと同時=「後払い」となってる点です。

「物の引渡しを要しないとき」に準用される民法第624条でも、同様に、後払いの規定となっています。

民法第624条(報酬の支払時期)

1 労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。

2 期間によって定めた報酬は、その期間を経過した後に、請求することができる。

このため、請負人が先払いを希望する場合は、あらかじめ業務委託契約書(請負契約)で、特約として、報酬の先払いを明記しておく必要があります。

【権利2】注文者の破産手続きが開始されたときの契約解除権

民法では、請負契約における請負人の契約途中における解除権を、非常に狭く限定しています。

一般的な契約のルールとしての契約解除権を除けば、「注文者が破産手続開始の決定を受けたとき」に契約の解除をすることができる、とされています。

民法第642条(注文者についての破産手続の開始による解除

1 注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。ただし、請負人による契約の解除については、仕事を完成した後は、この限りでない。

2 (以下省略)

この点につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

【改正民法対応】請負契約の契約解除権・法定解除権とは?請負人・注文者による契約解除について解説

ポイント

請負人には、以下の2つの権利がある。

  • 報酬請求権
  • 注文者の破産手続きが開始されたときの契約解除権




請負契約の請負人の権利義務に関してよくある質問

請負契約の請負人の義務・責任には、どのようなものがありますか?
請負人の代表的な義務としては、「仕事の完成」をする義務があります。これに付随して、仕事に着手する義務、期限(納期)までに仕事を完成させる義務、仕事の完成前の災害による損害の負担(危険負担)、契約不適合責任などがあります。この他、再委託先・下請負人の行為にもとづく責任もあります。
請負契約の請負人の権利には、どのようなものがありますか?
請負人には、報酬の請求権と、注文者の破産決定時における契約解除権が認められています(民法第642条)。
請負人は、仕事が完成する前であれば、いつでも、損害を賠償して請負契約を解除することができる?
できません。請負人が仕事を完成しない間、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができるのは、注文者です(民法第641条)。




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