こんにちは。契約書作成専門・小山内行政書士事務所代表の小山内です。

このページでは、業務委託契約の契約条項のうち、契約の成立と個別契約の受発注の手続きに関する条項について、簡単にわかりやすく解説しています。

業務委託契約は、特殊なものを除いて、口頭でも成立します。

ただ、一般的な企業間取引の業務委託契約では、様々な理由から、何らかの手続きに従って契約を締結します。

むしろ、業務委託契約では、わざわざ口頭での契約の成立を排除することを目的として、契約の成立の条項を規定します。

また、継続的な業務委託契約、いわゆる「取引基本契約」では、個別契約の成立・受発注の手続きについて、詳細に規定するのが一般的です。

このページでは、こうした契約の成立に関する規定と、個別契約の成立・受発注の手続きのポイントについて、解説します。

なお、業務委託契約の定義と基本的な解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約書とは?その定義とポイントを簡単にわかりやすく解説

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口頭での契約の成立を排除する条項

業務委託契約は口頭でも成立する

業務委託契約は、よほど特殊な内容でない限り、契約書の取交しがなくても、つまり口頭であっても、契約自体は成立します。

このため、契約の成立そのものだけを目的とするのであれば、わざわざ業務委託契約書を作成する必要はありません。

ただ、こうした事情があっても、一般的な企業間取引では、わざわざ業務委託契約書を作成します。

これは、業務委託契約書を作成しないと、様々なリスク・デメリットがあるからです。

この業務委託契約書を作成しないリスク・デメリットにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約書を作成しない8つのリスク・デメリット

企業間の契約では口頭での契約の成立・変更は排除する

業務委託契約に限らず、企業間の契約では、契約書を作成することにより、契約を締結します。

それだけではなく、むしろ、口頭での契約の締結・成立・変更ができないように、口頭での契約の成立・手続きを排除するように規定します。

これは、適正な手続きのもとでの契約の成立だけを認めることより、企業の従業員が勝手に契約を結べないようにするためです。

こうした厳格な手続きに関する規定は、会社の規模が大きくなればなるほど、重要となります。

課長以上の役職の者が契約を締結できる

株式会社が当事者となる場合、代表権がある代表取締役が、契約の締結をすることができます。

もちろん、代表取締役だけが契約の締結をできるわけではありません。

会社法や過去の判例によると、一般的には、代表取締役だけではなく、課長以上の役職の者であれば、有効な契約の締結ができるとされます。

つまり、口頭での契約の成立・手続きを排除しておかないと、会社の意思に反して、勝手に契約が結ばれてしまうリスクがあります。

ポイント

  • 業務委託契約は口頭でも成立する。ただし、一般的な企業間取引では口頭では契約を結ばない。
  • 企業間の契約では、むしろ口頭での契約の成立・変更は排除する。

スポットの契約=契約書の取交しで契約成立

スポットの契約、つまり1回限りの契約では、最初に契約書を取交してしまうと、その後は契約の成立に関する手続きはありません。

こうしたスポットの契約の場合、契約の成立について特約を設定しない限り、一般的には、署名または記名押印をした契約書を取交わすことによって、契約書に記載された日の時点で、契約が成立します。

このため、特に契約書の中で、契約の成立について、詳細に規定する必要はありません。

もっとも、契約の変更に関しては、すでに触れたとおり、書面等による変更のみを有効とし、口頭での変更は排除しておくべきです。

取引基本契約では受発注の手続きが重要

【意味・定義】取引基本契約とは?

業務委託契約の中には、スポット=1回だけの業務委託だけではなく、継続的な取引が発生するものもあります。

このような契約では、いわゆる「取引基本契約」を締結します。

取引基本契約の定義

取引基本契約とは、継続的取引の基本となる契約で、個々の取引に共通して適用される契約内容を規定するものをいう。

そして、個々の取引の契約内容(納期や支払期限など)は、そのつど、個別の受発注にもとづく個別契約で規定します。

個別契約の受発注の方法・スケジュール・成立条件を決める

受発注の手続きや個別契約の成立の既定では、個別契約の受発注の方法、スケジュール、成立条件などを規定します。

個別契約の受発注の方法とは?

個別契約の受発注の方法は、口頭以外では、次のものがあります。

個別契約の受発注の方法

  • 発注書・受注書(注文書・注文請書)
  • 個別契約書
  • FAX
  • EDIによる電子商取引
  • 契約締結専用のウェブサービスの利用
  • 編集不能なチャットツール・メッセンジャーアプリの利用
  • 電子メール

この中では、発注書・受注書(注文書・注文請書)が、最も一般的に使われている方法です。

テクノロジーが発達した現在でも、書面での受発注は、最も証拠能力が高い方法です。

このため、専用のEDIを構築しているような場合を除いて、一般的な企業間取引では、書面で契約を締結します。

受発注のスケジュールの決め方

一般的な個別契約の成立までの手続き

一般的な個別契約は、通常の契約の締結と同じく、申込みと承諾によって成立します。

企業間取引である取引基本契約では、通常は、個別契約の締結の前に、受託者の側から見積りの提示があります。

そして、その見積りの提示にもとづいて、委託者から発注書による発注=申込みがあり、その申込みを承諾する場合に、受託者から受注書よる受注があります。

一般的な受発注の流れ

受託者からの見積書の提示→委託者からの発注→受託者からの受注

一般的な取引基本契約では、こうした一連の手続きを経て、発注書が到達したことをもって、その到達の時点で個別契約が成立します。

受託者からの受注がないと発注が「宙に浮く」

このように、毎回スムーズに手続きが進むのであれば、特に問題はありません。

ただ、イレギュラーや不測の事態によって、スムーズに手続きが進まない場合があります。

より具体的には、委託者からの発注があるにもかかわらず、受託者からの受注がない場合です。

こうした場合、いわば委託者からの発注が「宙に浮いた」状態になり、その先に取引が進まなくなってしまいます。

個別契約の申込み=発注への承諾の期限を設定する

取引基本契約における個別契約の成立の条項には、こうした「宙に浮いた」状況を想定した内容も規定します。

具体的には、委託者からの発注(個別契約の申込み)に有効期間を設定します。

つまり、委託者からの発注があった場合、その発注日から起算した一定の期間内に限り、その発注を有効とし、その期間を経過した場合は、その発注を失効させます。

例えば、発注日から7日後までに受注がなければ、その発注は失効するようにします。

こうすることで、期間内に受託者からの受注=個別契約の申込みに対する承諾がない場合、最初から発注=個別契約の申込みは、なかったものとなります。

個別契約の成立条件

このように、取引基本契約では、スムーズに発注書と受注書の取交しが進めば、受注書の到達が個別契約の条件となります。

また、発注の有効期間を設定した場合、その期間内に受注がなければ、発注が失効する、という方法をすでに紹介しました。

実は、この方法とは逆に、発注の有効期間内に受託者からの異議がなければ、自動的に受注したものとみなすような規定にもできます。

個別契約の自動成立・自動不成立を設定する

発注の有効期間を経過した場合、その発注にもとづく個別契約が、自動成立または自動不成立のどちらになるかを決める。

つまり、発注の有効期間を設定した場合に、有効期間を経過したときは、個別契約の自動不成立か、個別契約の自動成立のいずれかを規定します。

このように、当事者の意思=受注以外にも、発注の有効期間の経過を個別契約の成立の条件にすることもできます。

個別契約の自動成立と自動不成立のメリット・デメリット

個別契約を自動成立とするか、自動不成立とするかは、メリットとデメリットがあり、一概にどちらがいいとはいえません。

自動成立のメリット

  • 自動成立で受注する場合、受託者は、受注書の作成を省略できる。
  • 受注書の作成を省略した場合、受託者は、印紙税を負担しなくてもよい。
自動成立のデメリット

  • 自動成立で個別契約が成立した場合、委託者の手元に受注書=受注を証する書面が存在しない状態となる。
  • 受託者としては、発注書をよく確認しないと、誤発注や無理な条件の発注があった場合に、発注の有効期間を経過してから、その「誤発注や無理な条件の発注」に気がつくことがある。

自動成立のほうは、簡単に表現すれば、受注手続きを省略できるため、スムーズに取引ができる、というメリットがあり、その反面、法的な安定性に欠ける、というデメリットがあります。

自動不成立のメリット

  • 委託者・受託者ともに、確実な意思表示(発注書・受注書のやり取り)を確認できる。
  • 受託者としては、うっかり発注の有効期間を経過しても、誤発注や無理な条件の発注を受注したことにはならない。
自動不成立のデメリット

  • 委託者・受託者ともに手続きに手間がかかる。
  • 受託者としては、受注書を必ず作らなければならないため、印紙税の負担がある。

自動不成立のほうは、簡単に表現すれば、法的な安定性がある、というメリットがあり、その反面、手続きに手間がかかる、というデメリットがあります。

以上の点から、それぞれ、次のような取引で利用するべきです。

個別契約の自動成立・自動不成立の使い方

  • 自動成立:ある程度長期の取引の実績がある、信頼関係が構築できている=意図的に厳しい条件での発注をしない、あるいは誤発注があっての後で取消し・撤回のコミュニケーショにが取れる取引先との契約で使う。意図的に厳しい条件で発注してくる委託者や、あきらかな誤発注を後から取消し・撤回ができない受託者との契約では使わない。
  • 自動不成立:新規の取引先や、取引の実績が少ない取引先など、まだ信頼関係が構築できていない取引先との契約で使う。

完全自動成立の場合は収入印紙が必要

もっとも、発注書を送付しただけで自動的に契約が成立する手続きとした場合、その発注書は、課税文書となります。

[平成29年4月1日現在法令等]

(途中省略)次に掲げるものは、一般的に契約書に該当するものとして取り扱われています。

(1)契約当事者の間の基本契約書、規約又は約款等に基づく申込みであることが記載されていて、一方の申込みにより自動的に契約が成立することとなっている場合における当該申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものは除かれます。

(2)(以下省略)

このため、発注書の送付により完全に自動的に契約が成立する手続きでは、印紙税の節約のメリットはありません。

書面と他の方法との組合せも検討する

なお、これは、あくまで古典的な発注書・受注書という、書面での受発注の手続きの場合の話です。

他の方法による受発注の手続きを採用することにより、すでに触れたデメリットをいろいろと解消できる場合もあります。

例えば、受注の手続きを電子的な方法でする場合は、受注書という書面を使いませんので、印紙税の負担が不要となります。

このため、発注に関しては発注書=書面、受注に関しては電子メールのような、組合せによる受発注も考えられます。

もちろん、この場合は、電子メールによる受注のデメリット(証拠能力が低い)という点も考慮する必要があります。

商法第509条により発注を放置すると受注したことになる

取引基本契約での発注放置=自動成立

なお、こうした発注の有効期間の設定や、受託者からの受注がない場合に有効期間を経過した際の法的効果を規定しないと、商法第509条により、個別契約が自動的に成立します。

商法第509条(契約の申込みを受けた者の諾否通知義務)

1 商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。

2 商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。

商法は、商行為、わかりやすくいえば企業間取引に適用されるルールですので、一般的な取引基本契約に適用されます。

「発注放置=自動不成立」とするには取引基本契約書が必須

受託者がこのような自動成立のルールを適用したくない場合は、取引基本契約において、自動不成立となる「個別契約の成立」条項を規定する必要があります。

商法第509条は、あくまで原則を規定したものであり、当事者の合意=契約・特約があれば、これとは違うルールにすることができます(商法第509条は、いわゆる「任意規定」です。)。

言いかえれば、商法第509条とは異なるルールが記載された物証(特に取引基本契約書)がなければ、原則どおり、「発注放置=自動成立」となります。

ですから、受託者が「発注放置=自動成立」ではなく、「発注放置=自動不成立」としたいのであれば、そのような内容で業務委託契約書を作成して取り交わす必要があります。

個別契約では何を決める?

個別契約では、一般的には、次の内容を規定します。

個別契約の内容

  • 受発注の年月日
  • 業務内容(取引の対象となる商品・製品・サービスの詳細)
  • 納入期日または納入期限(サービスの場合は実施日・実施機関)
  • 納入場所
  • 検査期間
  • 報酬・料金・委託料の金額または計算方法(単価・数量)
  • 報酬・料金・委託料の支払期限
ポイント

  • 取引基本契約とは、継続的取引の基本となる契約で、個々の取引に共通して適用される契約内容を規定するもののこと。
  • 個々の取引の契約内容(納期や支払期限など)は、そのつど、個別の受発注にもとづく個別契約で決める。
  • 取引基本契約では、個別契約の受発注の方法・スケジュール・成立条件を決める。
  • 個別契約の受発注の方法は、基本は書面=発注書・受注書を使う。
  • 受託者からの受注がないと受発注の手続きが途中で止まる。
  • 受発注の手続きが途中で止まらないように、発注には有効期間を設定する。
  • 発注の有効期間を経過した場合、その発注にもとづく個別契約が、自動成立または自動不成立のどちらになるかを決める。
  • 完全自動成立の手続きの発注書は、課税文書扱い。
  • 自動成立は、信頼関係が構築できている取引先との契約で使う手法。
  • 自動不成立は、新規の取引先や付き合いが浅い取引先との契約で使う手法。
  • 商法第509条により、受託者が発注を放置すると、自動的に受注したこと=個別契約が自動成立したことになる。
  • このため、個別契約を自動成立ではなく自動不成立としたい場合は、契約書の作成は必須。

法律によっては契約書の作成義務がある

下請法では書面の交付での発注が義務づけられている

原則として書面の交付での発注

なお、下請法が適用される請負型の業務委託契約(下請取引)の場合は、受発注の方法が限られています。

具体的には、原則としては、書面(三条書面)の交付によって、受発注しなければなりません(下請法第3条第1項)。

ですから、下請法が適用される場合は、委託者による口頭や電話での発注は、下請法違反となります。

事前に受託者から承諾を得れば電子メールなどの電磁的方法でも発注可能

また、電子メールなどの電磁的方法による発注も認められていますが、電磁的方法による発注をすること自体について、あらかじめ受託者から承諾を得る必要があります(下請法第3条第2項)。

この承諾も、「書面又は電磁的方法による承諾」となっています(下請法施行令第2条第1項)。

つまり、電子メールなどの電磁的方法で受発注をしたい場合は、業務委託契約書を作成してその旨を規定しておく必要があります。

この点につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法の三条書面とは?―業務委託契約書の12の必須事項

下請法では紙出力のファックスは「書面」扱い

ファックスでの発注に関しては、「受信と同時に書面により出力されるファックスへ送信する方法は、書面の交付に該当する。」となっています(下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項 第1-1-(1)の注1)。

この点について、委託者として注意するべき点は、紙出力でないファックスへの送信する場合です。

このような場合は、電磁的方法と同じ扱いとなります。

受信と同時に書面により出力されるファックスへ送信する方法は,書面の交付に該当するが,電磁的記録をファイルに記録する機能を有するファックスに送信する場合には,電磁的方法による提供に該当する(留意事項第 1-1-(1))。

第1 電磁的記録の提供の方法に関する留意事項

1 電磁的記録の提供の方法

下請法第3条第1項の書面の交付に代えて行うことができる電磁的記録の提供の方法は,以下のいずれかの方法であって,下請事業者がファイルへの記録を出力することによって書面を作成することができるものをいう。

(1) 電気通信回線を通じて送信し,下請事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(以下「下請事業者のファイル」という。)に記録する方法(例えば,電子メール,取引データをまとめてファイルとして一括送信する方法(EDI等),電磁的記録をファイルに記録する機能を有するファックス等に送信する方法等)

(注1)受信と同時に書面により出力されるファックスへ送信する方法は,書面の交付に該当する。

(注2)電子計算機とは,内部にCPU(中央演算装置)やメモリーを有し,電気通信回線を通じて電磁的記録を受信できるものをいう。

(以下省略)

建設業法では書面の交付が義務づけられている

建設工事の請負契約を結ぶ場合、次のとおり、書面の交付が義務づけられています。

建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)

1 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

(1)(以下省略)

しかも、単に契約内容を記載した書面を交付すればいいだけではなく、「署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」となっています。

このため、通常は、建設業法第19条第1項各号に適合した、建設工事請負契約書を取交します。

ちなみに、この規定では、「建設工事の請負契約の当事者は」となっていますので、委託者・受託者の双方に義務が課されています。

このため、建設工事請負契約書を作成しないと、委託者・受託者の双方が建設業法違反となります。

なお、建設工事請負契約につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

これだけは押さえておきたい!建設工事請負契約書の24のポイント

ポイント

  • 下請法が適用される業務委託契約の場合は、原則として書面(三条書面)による受発注が必須。
  • 事前に受託者から承諾を得れば、委託者は、電子メールなどの電磁的方法でも発注が可能。
  • 下請法では紙出力のファックスは「書面」扱い。
  • 建設業法では、建設工事請負契約の締結の際、書面=建設工事請負契約書の交付が、委託者・受託者双方に義務づけられている。