フリーランス新法(保護法)は、建設業の一人親方と締結する建設工事請負契約にも適用されますか?
フリーランス新法(保護法)は、下請法とは異なり、建設業にも適用されます。このため、事業者が一人親方と締結する建設工事請負契約等にも、フリーランス新法(保護法)は適用されます。

このページでは、一人親方と契約を締結する建設業者や建設工事の事業者向けに、建設業におけるフリーランス新法(保護法)の適用について解説しています。

フリーランス新法(保護法)は、下請法とは異なり、業種の制限をしていません。

このため、事業者が一人親方や一人法人が相手の場合は、建設業の契約であっても、フリーランス新法(保護法)の適用対象となります。

このページでは、こうした建設業に関するフリーランス新法(保護法)の適用について、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • フリーランス新法(保護法)が建設工事請負契約等の「建設工事の委託」にも適用されるかどうか。
  • フリーランス新法(保護法)が適用される建設業の事業者の条件。




フリーランス新法(保護法)は建設業にも適用される?

フリーランス新法(保護法)は下請法とは異なり「建設工事の委託」も適用対象となる

フリーランス新法(保護法)は、ほとんどの業務委託(詳しくは後述)が適用対象となります。

特に、下請法とは異なり、建設工事の委託であっても、フリーランス新法(保護法)の適用対象となります。

No.関係項目等意見の概要考え方
4-6本法と建設業法が重畳して適用されるかについても明示されたい。

理由
本法第 2 条第 3 項第 2 号に規定する「役務の提供」については、下請代金支払遅延等防止法(昭和 31 年法律第 120 号)第 2 条第 4 項に規定する「役務提供委託」と異なり、建設業法(昭和 24 年法律第 100号)第 2 条第 2 項に規定する建設業を営む者が業として請け負う建設工事を除くことの明示がなく、本法と建設業法の関係性が明らかではないため。

本法の「業務委託」(本法第2条第2項)には、建設工事の委託も含まれるため、本法と建設業法が重複して適用される場合も想定されます。

一人親方等との建設工事の委託は建設業法とフリーランス新法(保護法)が適用される

このように、建設工事請負契約等の建設工事の委託には、フリーランス新法(保護法)と「建設業法が重複して適用される場合も想定されます」。

このため、下請法の適用対象外である建設業者としては、建設業法第と併せて、いわゆる一人親方に対する業務委託がフリーランス保護法の対象となることに注意が必要です。

特に、契約実務の観点では、注文者(発注事業者)は、一人親方や一人法人と建設工事請負契約を締結する場合、建設業法第19条の規制に加えて、フリーランス新法(保護法)第3条の規制を遵守する必要があります。

建設業法第19条とフリーランス新法(保護法)第3条とは?

建設業法第19条で書面作成義務が課される

建設工事の請負契約を締結する場合、建設業法第19条により、次のとおり、書面の交付が義務づけられています。

建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)

1 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

(1)工事内容

(2)請負代金の額

(3)工事着手の時期及び工事完成の時期

(4)工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容

(5)請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法

(6)当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

(7)天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

(8)価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更

(9)工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

(10)注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め

(11)注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期

(12)工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

(13)工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

(14)各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

(15)契約に関する紛争の解決方法

(16)その他国土交通省令で定める事項

2(以下省略)

このように、建設業法では、書面の作成義務に加えて、作成するべき書面の詳細な事項まで規定されています。

それも、工事代金の大小に関係なく、作成しなければなりません。

この他、契約書なしの建設工事に関する契約の違法性につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

契約書なしの工事請負契約は違法?少額工事・金額が少ない場合は不要?

フリーランス新法(保護法)第3条により契約条件の通知義務が課される

一人親方や一人法人と建設工事の請負契約を締結する場合、フリーランス新法(保護法)第3条により、次のとおり、契約内容の通知が義務づけられています。

フリーランス保護法第3条(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)

1 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。

2 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。

この通知を、三条通知といいます。

【意味・定義】三条通知(フリーランス保護法)とは?

三条通知とは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)第3条に規定された、業務委託事業者(発注事業者)が特定受託事業者(フリーランス)に対し明示しなければならない通知をいう。

三条通知は、下請法における三条書面に相当する通知となります。

この他、三条通知につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

フリーランス新法(保護法)の三条通知(3条通知)とは?





フリーランス保護法が適用される条件とは?

フリーランス保護法では、すべての企業間取引が適用対象となるわけではありません。

フリーランス保護法が適用される企業間取引は、委託者が業務委託事業者または特定業務委託事業者であり、受託者が特定受託事業者である場合に限られます。

フリーランス保護法の適用対象となる3つの事業者
  • 特定受託事業者:個人事業者または役員が1人だけの法人(いずれも従業員を使用しないものに限る)
  • 業務委託事業者:特定受託事業者に対し業務委託をする事業者(三条通知の明示義務の対象者)
  • 特定業務委託事業者:業務委託事業者のうち、従業員を使用する個人事業者または役員が2人以上いる、もしくは従業員を使用する法人(業務委託の期間により様々な規制が課される)

つまり、事業者として従業員を使用しない一人親方の場合や、株式会社や有限会社であっても、役員が1人だけで従業員を使用していない場合は、フリーランス新法(保護法)の適用対象となる可能性があります。

この他、フリーランス保護法が適用される詳細な条件につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

フリーランス新法(保護法)の適用対象は?事業者・取引(業務委託)や下請法との違いについて解説





フリーランス保護法の「業務委託」は契約形態を問わない

一人親方や一人法人に対する建設工事の委託は、必ずしも請負契約ではなく、準委任契約である場合もあります。

この点について、フリーランス新法(保護法)の「『委託』に該当するかどうかは、取引の実態に基づき判断するものであり、契約の形態は問わない。とされています(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方第1部第1の3(2)ア)。

このため、契約形態が請負契約か準委任契約かそれ以外の契約かは、フリーランス新法(保護法)の「業務委託」に該当するかどうかの判断には影響を与えません。

この他、業務委託契約における契約形態につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

契約形態とは?その種類・一覧や書き方・規定のしかたについても解説





フリーランス保護法の規制内容とは?

フリーランス保護法には、主に以下の7つの規制があります。

フリーランス保護法の7つの規制
  • 三条書面の明示
  • 60日ルール
  • 禁止行為
  • フリーランスの募集広告における募集情報の的確表示義務
  • フリーランスの妊娠・出産・育児・介護に対する発注事業者の配慮義務
  • フリーランスに対するハラスメントに関する発注事業者の配慮義務
  • 30日前の契約の予告解除・予告不更新

これらの規制は、発注事業者の従業員や業務委託の期間の内容によって、課される内容が異なります。

具体的には、発注事業者が事業者(≠一般消費者)であり、フリーランスが特定受託事業者(従業員を使用しない個人事業者または一人法人)である場合、従業員・役員の人数と業務委託の期間に応じて、次の4つの区分で規制が課されます。

フリーランス保護法の規制内容
発注事業者の使用従業員・代表以外の役員業務委託の期間規制内容
0人
  • 三条書面の明示
1人以上1ヶ月未満
  • 三条書面の明示
  • 60日ルール
  • フリーランスの募集広告における募集情報の的確表示義務
  • フリーランスに対するハラスメントに関する発注事業者の配慮義務
1ヶ月以上6ヶ月未満
  • 三条書面の明示
  • 60日ルール
  • 禁止行為
  • フリーランスの募集広告における募集情報の的確表示義務
  • フリーランスに対するハラスメントに関する発注事業者の配慮義務
6ヶ月以上
  • 三条書面の明示
  • 60日ルール
  • 禁止行為
  • フリーランスの募集広告における募集情報の的確表示義務
  • フリーランスの妊娠・出産・育児・介護に対する発注事業者の配慮義務
  • フリーランスに対するハラスメントに関する発注事業者の配慮義務
  • 30日前の契約の予告解除・予告不更新





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