業務委託契約書を作成する際に最も時間をかけて検討しなければいけないのが、業務内容そのものと、その書き方です。
というのも、業務委託契約は、法的に定義がない契約ですので、そもそも「何をするのか」=業務内容が法律では決まっていません。
このため、業務内容については、すべて業務委託契約書に書いて決めなければいけません。
このページでは、個別具体的な業務委託契約における業務内容の決め方・書き方について、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。
このページを読むことで、業務内容の書き方やポイントが理解でき、不明・不十分な業務内容によるトラブルを未然に防ぐことができます。
このページでわかること
- フトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務委託契約(ウォーターフォール型開発)の業務内容の決め方・書き方
- ソフトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務委託契約(アジャイル型開発)の業務内容の決め方・書き方
- 製造請負契約・製造業務委託契約・請負取引基本契約の業務内容の決め方・書き方
- 建設工事請負契約の業務内容の決め方・書き方
- コンサルティング契約の業務内容の決め方・書き方
- 警備業務委託契約の業務内容の決め方・書き方
各種業務委託契約における業務内容の書き方
一般的な業務内容の決め方・書き方は?
一般的な業務委託契約における業務内容の決め方・書き方は、次のとおりです。
業務内容の決め方・書き方の具体例
- ソフトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務委託契約(ウォーターフォール型開発):仕様書
- ソフトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務委託契約(アジャイル型開発):プロダクトバックログ・スプリントバックログ
- 製造請負契約・製造業務委託契約・請負取引基本契約:試作品と設計図
- 建設工事請負契約:設計図書
- コンサルティング契約:提案書・企画書・見積書
- 警備業務委託契約:警備計画書・警備指令書
以下、詳しく解説します。
ウォーターフォール型開発のソフトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務委託契約では仕様書で業務内容を確定する
ウォーターフォール型開発の場合、ソフトウェア・プログラム・システム・アプリなどの開発業務委託契約では、いわゆる「仕様書」で業務内容を確定します。
この「仕様書」ですが、やっかいなことに、現場レベルで、定義が一致せず、しばしば誤解や認識の不一致の原因となります。
比較的規模が大きな案件では、一般的に、次の3種類の書類で、業務内容=仕様を確定します。
システム等開発業務委託契約における仕様書の内訳
- 要件定義を記載した要件定義書
- 外部設計(基本設計)を記載した外部設計書(基本設計書)
- 内部設計(詳細設計)を記載した内部設計書(詳細設計書)
これらの仕様書の詳細につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
アジャイル型開発のソフトウェア・プログラム・システム・アプリ開発業務委託契約では仕様書で業務内容を確定する
アジャイル型開発の場合、ソフトウェア・プログラム・システム・アプリなどの開発業務委託契約では、いわゆる「プロダクトバックログ」で業務内容を明らかにします。
【意味・定義】プロダクトバックログとは?
プロダクトバックログとは、ユーザの要求事項をリスト化して優先順位をつけたものをいう。
また、個々のスプリントにおける業務内容は、「スプリントバックログ」で確定します。
【意味・定義】スプリントバックログとは?
スプリントバックログとは、「プロダクトバックログの中から選定される、次のスプリントでの開発対象となる要求事項と、それらを実現するために必要なタスクを列挙したリストをいう。」
【意味・定義】スプリントとは?
スプリントとは、「開発業務を実施するための一定の区切られた期間をいう。」
アジャイル型開発のプロダクトバックログは、ウォーターフォール型開発の仕様書とは異なり、それほど厳密な要件定義が規定されているわけではありません。
詳細で具体的な業務内容は、どちらかと言えば、スプリントバックログに明記されます。
製造請負契約・製造業務委託契約・請負取引基本契約では試作品と設計図で業務内容を確定する
物品の製造の契約である製造請負契約・製造業務委託契約・取引基本契約では、いわゆる「設計図」で業務内容を確定します。
もっとも、図面だけで業務内容を確定させるわけではなく、量産が前提の物品の製造であれば、事前に試作品を作成します。
また、物品によっては、金型を作成して、その金型を使用して製造します。
このように、物品の製造の契約では、契約書による合意はもとより、実際に物品を製造することで、業務内容を確定します。
このほか、製造請負契約・製造業務委託契約・取引基本契約における業務内容の確定につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
建設工事請負契約では設計図書で業務内容を確定する
建設工事請負契約では、いわゆる「設計図書」で業務内容を確定します。
設計図書の中心となるのが、設計図面や仕様書です。
設計図面は、ごく小規模な工事(リフォームなど)を除いて、建築士が建築基準法にもとづいて設計し、地方自治体等による開発許可や建築確認の手続きを受けます。
このため、建築士が故意に改ざんをしない限り、建設工事請負契約の業務内容である設計図書に問題が発生することは、滅多にありません。
このほか、建設工事請負契約における業務内容の確定につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
コンサルティング契約では提案書・企画書・見積書で業務内容を確定する
コンサルティング契約では、提案書・企画書・見積書などの書類で業務内容を確定します。
もっとも、ひと口にコンサルティング契約といっても、大手のコンサルティングファームがコンサルタントとなる大規模な案件もあれば、個人の経営コンサルタントによる、比較的小規模な案件まで、様々です。
当然ながら、大規模な案件では、金額も大きくなるため、コンサルティング契約における業務内容についても、それだけしっかり作り込まれた書類で確定されます。
逆に、小規模な案件では、契約書で数行程度規定するだけで、業務内容を確定させる場合もあります。
このほか、コンサルティング契約における業務内容の確定につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
警備業務委託契約書では警備計画書等で業務内容を確定する
警備業務委託契約書では、主に警備計画書により業務内容を確定します。
【意味・定義】警備計画書とは?
警備計画書とは、一般に、警備の計画について記載された書面をいう。
これに加えて、交通誘導警備では、警備指令書などを使用する場合もあります。
警備計画書は、通常は契約締結前に警備業者が作成し、遅くとも見積書の提示の前にまでには、警備業者から委託者に提示されます。
【意味・定義】警備指令書とは?
警備指令書とは、一般に、警備計画書の内容にもとづき、個別具体的に規定された警備行動基準を記載した書面をいう。
警備計画書も警備指令書も、いずれも民法や警備業法などの法律による定義はありません。
このため、その内容や記載項目などについては、警備業者が独自で決めなければなりません。