このページでは、製造請負契約書の定義について、簡単にわかりやすく解説しています。
製造請負契約書は、製造業者である請負人(受託者)が、物品・製品の製造を請負い、注文者(委託者)が、その対価として、報酬・料金・委託料を支払う契約です。
製造請負契約は、文字どおり、民法上の「請負契約」に該当します。このため、民法では、基本的なルールが規定されてはいます。
ただ、逆にいえば、民法での請負契約の規定は、請負契約としての基本的なルールしか規定されていません。
このため、一般的な企業間取引の製造請負契約では、契約書を作成して、民法の請負契約の内容よりも詳細な取引のルールを決めます。
【意味・定義】製造請負契約とは?
製造請負契約とは、文字どおり、物品・製品(有体物)の製造に関する請負契約です。
そして、請負契約は、民法では、以下のように規定されています。
民法第632条(請負)
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
従って、製造請負契約の定義は、次のとおりです。
製造請負契約とは、請負人(受託者)が何らかの物品・製品の製造を完成させること約束し、注文者(委託者)が、その物品・製品の製造の対価として、報酬を支払うことを約束する契約をいう。
なお、請負契約につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
民法ではわずか11条しか規定がない
民法上はあくまで「請負契約」の規定しかない
民法では、請負契約の規定は、第632条から第642条までと、わずか11条しか規定がありません。
しかもこの規定は、「製造請負契約」の規定ではなく、請負契約全体の規定です。
例えば、製造請負契約とは性質が大きくことなる、建設工事請負契約にも適用される規定です。
このため、どうしても民法上の請負契約の規定は、最大公約数的な抽象的なものが多く、抽象的な内容にとどまります。
民法以外にも様々な法律に配慮する必要がある
このように、民法上の規定が必ずしも実態に合っているとは限らないため、製造請負契約では、契約書の作成は必須といえます。
また、製造請負契約は、民法以外にも、商法、PL法、知的財産権に関する法律(特に特許法)、外為法など、様々な法律が関係してきます。
特に、知的財産権については、次のとおり、様々な重要な点があります。
- 特許権のライセンス契約の問題
- 特許権の改良発明の問題
- 共有特許権の下請実施(一機関としての実施)の問題
こうした点からも、製造請負契約では、契約書の作成が非常に重要視されます。
製造請負契約はシンプルだが奥が深い契約
また、製造請負契約は、「有償で物を作る契約」ですので、その意味では非常にシンプルな契約です。
ただ、ここでいう「物」は、個人事業者が自宅での内職で作るような物から、電気製品、医薬品、化学製品、鉄鋼、自動車、航空機など、非常に高度な技術を要するものまで、様々あります。
また、同じように、ひとくちで「作る」といっても、その作り方は様々です。
このため、対象となる「物」とその「作り方」によって、契約内容もシンプルなものから、非常に複雑なものまで、様々です。
こうした事情から、契約実務において、製造請負契約の契約書を起案する際は、取引の実態をよく把握したうえで、その実態に合った契約書を作成する必要があります。
製造請負契約書の作成が義務づけられる場合は?
製造請負契約は、民法上、特に契約書の作成が義務づけられてはいません。
このため、契約書がなくても(=口頭でも)、製造請負契約自体は、有効に成立します。
しかしながら、一部の法律によって、特に注文者(委託者)の側に、製造請負契約書の作成が義務づけられる場合があります。
代表的な例としては、以下の3つの法律です。
- 下請法(下請代金支払遅延等防止法)
- 家内労働法
- 特定商取引法(特定商取引に関する法律)
これらの業務委託契約書の作成を義務づけている法律につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
製造請負契約の契約条項のポイント
製造請負契約では、次のような重要な契約条項があります。
- 契約の目的
- 業務内容=物品・製品の仕様
- 契約形態
- 納期(納入期限・納入期日)
- 納入手続・納入方法・納入場所
- 検査
- 所有権の移転
- 危険負担の移転
- 製造物責任
- 瑕疵担保責任
- 報酬・料金・委託料の金額・計算方法
- 報酬・料金・委託料の支払期限・支払期日
- 報酬・料金・委託料の支払方法
- 原材料の支給
- 設備等の貸与
- 知的財産権の使用許諾
- 改良発明の取扱い
- 再委託・下請負の可否
- 秘密保持義務
- 契約解除・中途解約
こうした製造請負契約の契約条項のポイントにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。