このページでは、(準)委任契約の受任者に向けて、(準)委任契約における受任者の権利義務についてわかりやすく解説しています。

(準)委任契約の受任者って善管注意義務を果たせばいいんでしょ?」と思ったことはないでしょうか。

確かに、善管注意義務は、(準)委任契約において、最も重要な義務ではあります。ただ、(準)委任契約には、それ以外にもいろんな義務・責任があります。

何よりも、(準)委任契約では、受任者は、いわゆる「再委託」が原則としてできません。

また、権利のほうでは、報酬以外にも、費用の請求が認められています。さらに、損害賠償責任こそ発生しますが、契約途中での解除が認められています。

このページでは、こうした(準)委任契約の受任者の権利義務や注意点について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

受任者vの方々がこのページを読むことで、(準)委任契約における受任者の権利・義務・責任等の注意点が理解でき、また、トラブルを未然に防ぐことができます。

このページでわかること
  • 「善管注意義務」を中心とした(準)委任契約における受任者の5つ義務
  • 受任者が5つの義務に違反した場合のリスク
  • 請負人が持つ注文者に対する3つの権利、特に費用の請求権

なお、(準)委任契約の解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

【改正民法対応】委任契約・準委任契約とは?請負契約や業務委託契約との違いは?

また、委任者の権利義務につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

【改正民法対応】委任契約・準委任契約における委任者の義務・責任と権利とは?




委任契約(読み方:いにんけいやく)とは?

委任契約は、民法では、以下のように規定されています。

民法第643条(委任)

委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

【意味・定義】委任契約とは?

委任契約とは、委任者が、受任者に対し、法律行為をすることを委託し、受任者がこれ受託する契約をいう。

法律行為とは、行為者が法律上の一定の効果を生じさせようと意図して意思の表示(=意思表示)をおこない、意図したとおりに結果が生じる行為のことです。

【意味・定義】法律行為とは?

法律行為とは、行為者が法律上の一定の効果を生じさせようと意図して意思の表示(=意思表示)をおこない、意図したとおりに結果が生じる行為をいう。

学術的な用語で、非常にわかりづらいですが、わかりやすい具体例としては、「契約を結ぶこと」が、法律行為のひとつの例です。




準委任契約(読み方:じゅんいにんけいやく)とは

準委任契約は、民法では、以下のように規定されています。

民法第656条(準委任)

この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

【意味・定義】準委任契約とは?

準委任契約とは、委任者が、受任者に対し、法律行為でない事務をすることを委託し、受任者がこれ受託する契約をいう。

ここでいう「事務」というのは、一般的な用語としての事務(例:事務を執る、事務所、事務職など)ではなく、もっと広い概念です。

民法上は定義がありませんが、作業、助言、企画、技芸の教授など、「法律行為でない行為」が該当すると考えて差し支えないでしょう。




(準)委任契約における受任者の5つの義務・責任

受任者の5つの義務・責任とは?

(準)委任契約の受任者には、以下の5つの義務・責任があります。

(準)委任契約における受任者の5つの義務・責任一覧リスト
  • 【義務・責任1】受任した法律行為・事務に着手する義務
  • 【義務・責任2】期限(納期)・期日・期間に受任した法律行為・事務を実施する義務
  • 【義務・責任3】受任者自身が委託業務を実施する義務
  • 【義務・責任4】善管注意義務
  • 【義務・責任5】報告義務

以下、詳しく見ていきましょう。

【義務・責任1】受任した法律行為・事務に着手する義務

受任者は、受任した法律行為・事務=委託業務に着手する義務があります。

これは、何も(準)委任契約に限った話ではありません。

民法第541条(催告による解除)

当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

このように、民法では、契約全般の一般的なルールとして、「契約の履行をしない場合」は、契約解除ができるようになっています。

【義務・責任2】期限(納期)・期日・期間に受任した法律行為・事務を実施する義務

一般的な業務委託契約としての(準)委任契約では、必ず受託事務等の実施の期限(いわゆる「納期」。法律的には「確定期限」)または期間が設定されています。

受任者は、この期限(納期)まで、または期間中に、受任した法律行為・事務=委託業務を実施する義務があります。

これは、裏を返せば、期限(納期)が来るまで、または期間外では、委託業務を実施する義務はない、ともいえます。

民法第412条(履行期と履行遅滞)

1 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。

2 (以下省略)

このように、民法では、契約全般の一般的なルールとして、確定期限の到来後は、債務者に責任が発生するようになっています。

また、業務委託契約の性質によっては、特定の期日や期間に委託業務を実施する義務が課される場合がありますが、これも同様です。

このほか、納入につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

業務委託契約における納入・納入方法・納入場所とは?契約条項の規定のしかた・書き方は?

【義務・責任3】受任者自身が委託業務を実施する義務

(準)委任契約では原則として再委託・再委任はできない

民法上、(準)委任契約では、再委託・再委任はできません。

(準)委任契約は、委任者と受任者との信頼関係が基本となる契約です。

委任者が受任者を信頼して業務の実施を委託したにもかかわらず、受任者が他の第三者に業務を再委託・再委任してしまうと、委任者の信頼を裏切ることになります。

このため、(準)委任契約では、再委託・再委任はできません(民法第644条の2第1項)。

民法第644条の2(復受任者の選任等)

1 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。

2 (省略)

この規定により、「委任者の許諾を得たとき」か「やむを得ない事由があるとき」でなければ、再委託・再委任はできません。

このため、受任者として再委託・再委任をしたい場合は、業務委託契約書を作成して、再委託・再委任ができるよう特約を規定しなければなりません。

業務委託契約書を作成する理由

(準)委任型の業務委託契約では、民法第644条の2により原則として再委託が禁止されているため、受託者が再委託をする場合は、特約として再委託の条項を規定した契約書が必要となるから。

受任者は再委託先・復受任者の行為に責任を負う

復受任者の責任は原則として受任者が追求できる

受任者は、委任者に対し、復受任者(いわゆる再委託先)の行為による責任を負います。

これは、債務不履行の一般原則、(準)委任契約の契約内容や善管注意義務による責任等によるものです。

いずれも、たとえ復受任者の行為が原因であったとしても、委任者に対しては、受任者が直接責任を負います。

なお、この場合、復受任者は、受任者に対し、責任を負わなけれなりません。

委任者が復受任者=再委託先に直接責任を追求できる場合とは?

ただし、受任者に代理権が付与された委任契約の場合において、再委任契約でも復受任者に代理権が付与されたときは、復受任者は、委任者に対し、その権限の範囲内において、代理人と同一の義務を負います(民法第644条の2第2項)。

民法第644条の2(復受任者の選任等)

1 (省略)

2 代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。

このため、委任者は、受任者と復受任者の両者に対し、直接責任を問うこともできます。

このほか、再委託につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

業務委託契約における再委託・下請負(外注)の許可・禁止条項とは?

【義務・責任4】善管注意義務

受任者には、いわゆる善管注意義務、つまり「善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務」があります。

【意味・定義】善管注意義務とは?

善管注意義務とは、行為者の階層、地位、職業に応じて、社会通念上、客観的・一般的に要求される注意を払う義務をいう。

善管注意義務とは、行為者の階層、地位、職業に応じて要求される、社会通念上、客観的・一般的に要求される注意を払う義務のことをいいます。

この善管注意義務を果たさない場合、受任者は、債務不履行(いわゆる契約違反)となります。

善管注意義務には、客観的な基準があるわけではなく、個々の契約の内容や取引きの実態によって、最終的には裁判所が判断することになります。

【義務・責任5】報告義務

受任者は、委任者に対する報告義務があります。

民法第645条(受任者による報告)

受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。

この規定にあるとおり、報告しなければならないのは、「委任者の請求があるとき」と「委任が終了した後」です。

このため、特に業務委託契約書に報告の規定がなかったとしても、委任者から請求された場合は、受任者は、報告する義務があります。

ポイント

(準)委任契約において、受任者には、以下の義務・責任がある。

  • 受任した法律行為・事務に着手する義務
  • 期限(納期)・期日・期間に受任した法律行為・事務を実施する義務
  • 受任者自身が委託業務を実施する義務
  • 善管注意義務
  • 報告義務




(準)委任契約における受任者の権利

受任者の4つの権利とは?

(準)委任契約の受任者には、以下の4つの権利があります。

(準)委任契約における受任者の4つの権利一覧リスト
  • 【権利1】報酬の請求権
  • 【権利2】費用の請求権
  • 【権利3】委託業務の実施に伴う損害の賠償請求権
  • 【権利4】中途解約権・契約解除権

以下、詳しく見ていきましょう。

【権利1】報酬の請求権

実は(準)委任契約は原則として無報酬

(準)委任契約は、民法上は、特約がなければ、無報酬とされています。

民法第648条(受任者の報酬)

1 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。

2 (2項以下省略)

ですので、正確には、受任者には、報酬の請求権はありません。

もちろん、特約があれば、有報酬とすることは可能です。

(準)委任型の業務委託契約では有報酬

もっとも、(準)委任契約が無報酬というのは、あくまで原則です。

(準)委任型の業務委託契約では、むしろ例外であるはずの有報酬となることがほとんどです。

まず、ほとんどの業務委託契約書では、報酬の金額や計算方法を規定します。

次に、もしこうした報酬の規定がない場合や、業務委託契約書を取交していない場合であっても、商法第512条により、有報酬となります。

商法第512条(報酬請求権)

商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

(準)委任型の業務委託契約の報酬はあくまで後払い

ただし、報酬の請求は、委託業務を実施した後でしかできません。つまり、後払いということです。

民法第648条(受任者の報酬)

1 (省略)

2 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第624条第2項の規定を準用する。

3 (省略)

ここでいう「第624条第2項の規定」では、「その期間を経過した後に、請求することができる」となっていますので、同じように後払いということです。

【権利2】費用の請求権

受任者は前払いで費用を請求できる

(準)委任契約では、受任者は、委任者に対して、費用の請求ができます。しかも、「前払い」で請求ができます。

民法第649条(受任者による費用の前払請求)

委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。

ちなみに、この費用の支払いがあるまでは、委託業務に着手しなくても、契約違反とはなりません。

つまり、委任者の立場としては、費用を後払いとしたい場合は、業務委託契約書で、その旨を規定する必要があります。

業務委託契約書を作成する理由

(準)委任型の業務委託契約では、民法第649条により、原則として委託者が費用負担をすることとなるため、委託者が費用負担をしたくない場合、特約として受託者が費用負担をする条項を規定した契約書が必要となるから。

受任者が立替えた費用も請求できる

また、(準)委任契約では、受任者が委託業務の実施に必要な費用を負担した場合は、委任者に対し、この費用について請求ができます。

民法第650条(受任者による費用等の償還請求等)

1 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

2 (以下省略)

なお、業務委託契約の費用負担につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

業務委託契約における費用負担とは?契約条項の規定のしかた・書き方は?

【権利3】委託業務の実施に伴う損害の賠償請求権

受任者は、委託業務の実施に伴い、自らに過失なく損害を受けた場合は、委任者に対し、その損害の賠償を請求できます。

民法第650条(受任者による費用等の償還請求等)

(第1項および第2項省略)

3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

【権利4】中途解約権・契約解除権

受任者は、いつでも(準)委任契約を契約解除できます。

民法第651条(委任の解除)

1 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。

2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

(1)相手方に不利な時期に委任を解除したとき。

(2)委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。

ここでいう、「いつでも」というのは、時期に限らず、特別な理由が必要がない、という意味です。

ただ、上記の民法第651条第2項第1号にあるとおり、委任者に不利な時期に解除した場合は、損害賠償責任が発生します。

このほか、(準)委任契約の法定解除権につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

【改正民法対応】(準)委任契約の契約解除権・法定解除権とは?「いつでも」解約できるとは?

ポイント

(準)委任契約において、受任者には、以下の権利がある。

  • 報酬の請求権
  • 費用の請求権
  • 委託業務の実施に伴う損害の賠償請求権
  • 中途解約権・契約解除権




(準)委任契約の受任者の権利義務に関してよくある質問

(準)委任契約の受任者の義務・責任には、どのようなものがありますか?
(準)委任契約の受任者には、善管注意義務を始めとして、受任した法律行為・事務に着手する義務、期限(納期)・期日・期間に受任した法律行為・事務を実施する義務、受任者自身が委託業務を実施する義務、報告義務等に義務・責任があります。
(準)委任契約の受任者の権利には、どのようなものがありますか?
(準)委任契約の受任者には、報酬の請求権、費用の請求権、委託業務の実施に伴う損害の賠償請求権、「いつでも」契約を解除できる権利の4つの権利があります。特に費用の請求権について、(準)委任型の業務委託契約において、委託者(委任者)が費用を負担したくない場合は、契約書を作成し、特約で受託者(受任者)が費用を負担するように規定しなければなりません。
(準)委任契約の委任者による復委任の要件は何ですか?
(準)委任契約の委任者による復委任の要件は、「委任者の許諾を得たとき」または「やむを得ない事由があるとき」のいずれかです。この要件に該当しないと、復委任ができません(民法第644条の2)。このため、(準)委任型の業務委託契約において、受託者(受任者)が再委託(復委任)をしたい場合は、契約書を作成し、特約で再委託ができるように規定しなければなりません。
善管注意義務とはどのような義務ですか?
善管注意義務とは、行為者の階層、地位、職業に応じて、社会通念上、客観的・一般的に要求される注意を払う義務のことです。詳しくは、「業務委託契約における善管注意義務とは?定義・具体例と5つのポイントもわかりやすく解説」をご参照ください。




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