このページでは、建設工事請負契約書の契約条項のポイントについて解説しています。

建設工事請負契約は、文字どおり、民法上の「請負契約」に該当します。このため、民法では、基本的なルールが規定されてはいます。

そのうえで、建設業法第19条では、建設工事請負契約で必ず書面(=建設工事請負契約書)で規定しなければならない事項が定められています。

このため、建設工事請負契約書を作成する際には、この建設業法第19条に適合した内容としなければなりません。

このページでは、こうした建設工事請負契約の作成の際に重要となる契約条項のうち、24項目ピックアップして、ポイントを解説します。

なお、建設工事請負契約そのものの解説や定義につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

製造請負契約とは?意味・定義について解説




【意味・定義】建設工事請負契約とは?

請負契約は、民法では、以下のように規定されています。

民法第632条(請負)

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

従って、建設工事請負契約の定義は、次のとおりです。

【意味・定義】建設工事請負契約とは?

建設工事請負契約とは、請負人(受託者)が何らかの建設工事を完成させること約束し、注文者(委託者)が、その建設工事の施工の対価として、報酬を支払うことを約束する契約をいう。

このほか、建設工事請負契約の定義につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

建設工事請負契約とは?意味・定義や建設業法の規制について解説




建設業法に規定されている必須記載事項は?

建設業法第19条で書面作成義務が課されている

建設工事の請負契約を結ぶ場合、建設業法第19条により、次のとおり、書面の交付が義務づけられています。

建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)

1 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

(1)工事内容

(2)請負代金の額

(3)工事着手の時期及び工事完成の時期

(4)工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容

(5)請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法

(6)当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

(7)天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

(8)価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更

(9)工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

(10)注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め

(11)注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期

(12)工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

(13)工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

(14)各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

(15)契約に関する紛争の解決方法

(16)その他国土交通省令で定める事項

2(以下省略)

このように、建設業法では、書面の作成義務に加えて、作成するべき書面の詳細な事項まで規定されています。

建設業法第19条の書面=建設工事請負契約書とする

しかも、単に契約内容を記載した書面を交付すればいいだけではなく、「署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」となっています。

このため、通常は、この建設業法第19条の「書面」として建設工事請負契約書を作成し、同第1項各号に規定された事項をすべてを契約書に記載します。

ちなみに、この規定では、「建設工事の請負契約の当事者は」となっていますので、注文者(委託者)・請負人(受託者)の双方に義務が課されています。

このため、建設工事請負契約書を作成しないと、注文者(委託者)・請負人(受託者)の双方が建設業法違反となります。

ポイント
  • 建設工事請負契約の当事者は、建設業法第19条により、建設工事請負契約書の作成義務がある。




建設工事請負契約の重要な契約条項一覧

建設工事請負契約では、次の契約条項が重要となります。

建設工事請負契約の重要な契約条項
  1. 工事内容
  2. 契約形態
  3. 工事着手の時期および工事完成の時期
  4. 前金払いまたは出来高払いの支払時期・支払方法
  5. 設計変更・工事着手の延期・工事の中止の場合の取扱い
  6. 不可抗力
  7. 物価の変動・変更による請負代金(報酬・料金・委託料)・工事内容の変更
  8. 第三者の損害賠償金の負担
  9. 資材の提供
  10. 機械等の貸与
  11. 検査の時期・方法
  12. 引渡しの時期
  13. 所有権の移転
  14. 請負代金(報酬・料金・委託料)の金額または計算方法
  15. 請負代金(報酬・料金・委託料)の支払の時期
  16. 金銭の支払方法
  17. 瑕疵担保責任
  18. 損害保険
  19. 遅延利息・違約金・その他の損害金
  20. 知的財産権
  21. 再委託・下請負
  22. 秘密保持義務
  23. 契約解除・施工の中止
  24. 紛争解決方法(合意管轄・仲裁)

以下、それぞれ詳しく解説していきます。




【重要な契約条項1】工事内容

「工事内容」の条項では、建設工事の内容について規定します。

この条項は、建設業法第19条第1項第1号に規定されている、必須記載事項です。

具体的な工事内容そのものについては、契約書の条文としては規定せず、別の書面=設計図面、仕様書、現場説明書、質問回答書で規定します。

これらの書面を建設工事請負契約書が一体となるように綴じ込むことにより、工事内容を契約内容の一部とします。

なお、このほか、建設工事の工事内容につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

建設工事請負契約における業務内容(設計図面・仕様書・設計図書)の決め方・書き方とは?




【重要な契約条項2】契約形態

一般的には「建設工事=請負契約」

「契約形態」の条項では、その契約が、民法上の何の契約であるのかを明記します。

一般的な建設工事の契約は、請負契約である場合がほとんどですので、請負契約である旨を明記します。

あるいは、タイトルが「建設工事請負契約書」となっていれば、わざわざ契約形態の条項を規定する必要もありません。

しかしながら、実際に建設工事請負契約書を作成する際は、本当にその契約が「請負契約」でいいのかどうか、検証する必要があります。

必ずしも「建設工事=請負契約」とは限らない

実は、建設工事の施工に関する契約だからといって、必ずしも請負契約に該当するとは限りません。

例えば、いわゆる「手間請け」といわれる、建設業者(多くの場合はいわゆる「一人親方」)が、作業のみをおこなう形態の契約があります。

このような契約は、請負契約ではなく、準委任契約とも考えられます。

準委任契約につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

【改正民法対応】委任契約・準委任契約とは?請負契約や業務委託契約との違いは?

工事が「完成しない」建設工事もある

さく井工事は「仕事の完成」がないこともある

また、請負契約は、「仕事の完成」を目的とした契約ですが、建設工事のなかには、予定どおりに施工したとしても、「仕事の完成」がないものがあります。

典型的な例としては、「さく井工事」があります。

さく井工事の具体例としては、「さく井工事、観測井工事、還元井工事、温泉掘削工事、井戸築造工事、さく孔工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事、揚水設備工事」などがあります(国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」p.33)。

これらの工事のうち、さく井工事、温泉掘削工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事などは、さく井工事を施工したとしても、必ずしも、水、温泉、石油、天然ガスが出てくるとは限りません。

必ず実態に合わせた契約内容とする

このように、建設工事の中には、必ずしも結果=「仕事の完成」が伴わないものもあります。

こうした建設工事の契約形態を請負契約とした場合、施工自体は完成したとしても、「仕事の完成」とはみなされない可能性もあります。

請負契約では、原則として、「仕事の完成」がないと、請負人(受託者)は、報酬・料金・委託料を請求できません。

ただ、施工自体が完成しているのに、請負人(受託者)に報酬・料金・委託料の請求権が認められないのは、あまりにも不合理です。

このため、特に請負人(受託者)の立場では、契約形態を準委任契約にしたり、仕事の完成がなくても報酬・料金・委託料を請求できるようにするなど、実態に合わせた契約内容とするべきです。

このほか、契約形態の条項につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

業務委託契約における契約形態の種類とは?契約条項の規定のしかた・書き方は?

ポイント
  • 一般的な建設工事は原則として請負契約。
  • ただし、場合によっては、請負契約に該当しない建設工事もある。
  • 必ずしも工事が完成しないタイプの建設工事(さく井工事など)の場合は、特に注意する。
  • 場合によっては、請負契約ではなく、準委任契約とする。




【重要な契約条項3】工事着手の時期および工事完成の時期

「工事着手の時期」と「工事完成の時期」の条項には、文字どおり、工事着手と工事完成の時期について、明記します。

よほど小規模な工事でもない限り、工事のスケジュールは確定しているでしょうから、この条項には、具体的な年月日を記入します。

なお、「工事着手の時期」と「工事完成の時期」は、建設業法第19条第1項第3号に規定されている、必須記載事項です。

ですから、小規模な工事で予定が決まっていないからといって、これらを建設工事請負契約書に記載しないと、建設業法第19条違反となります。




【重要な契約条項4】前金払いまたは出来高払いの支払時期・支払方法

【意味・定義】前金払い・出来高払いとは?

「前金いまたは出来形払いの支払時期・支払方法」の条項には、前金の支払いや出来形部分の支払い=出来高払いがある場合における、支払時期と支払方法を規定します。

この条項は、建設業法第19条第1項第4号に規定されている、必須記載事項です(ただし、これらの定めがある場合に限ります)。

前金払いと出来高払いとは、それぞれ、次のとおりです。

【意味・定義】前金払い・出来高払いとは?
  • 前金払い:工事が始まる前に、資材の購入などの準備に必要な資金としての支払いのこと。
  • 出来高払い:出来上がった工事の部分=出来形に対する支払いのこと。

支払期限・支払方法の規定のしかた

前払いの支払期限につきましては、「工事着手の時期」の前のいずれかの日付を指定することにより、規定します。

出来高払いの支払期限につきましては、あらかじめ日付を指定できませんので、手続きを規定します。

一般的には、まず、工事監理者(=建築士)の検査を受けて、合格した出来形について、金額を算定します。

そのうえで、「合格の日から起算して●日後」、「合格後になされた請求の日の翌月●日」のような形で、支払期限を設定します。

なお、支払方法につきましては、後に触れる「金銭の支払方法」をご覧ください。




【重要な契約条項5】設計変更・工事着手の延期・工事の中止の場合の取扱い

「設計変更・工事着手の延期・工事の中止の場合の取扱い」の条項では、契約当事者のどちらかから、設計変更・工事着手の延期・工事の中止の申出があった場合における、工期の変更、請負代金の額の変更または損害の負担およびびそれらの額の算定方法について規定します。

これらは、建設業法第19条第1項第5号に規定された、必須記載事項です。

この条項では、設計変更・工事着手の延期・工事の中止などの不測の事態があった場合に、契約当事者の対処について規定します。

ただ、このような不測の事態は、実際に起こってみないと、どのような対処をするべきなのかは、決めようがありません。

このため、具体的な対処についてあらかじめ決めておくのは難しく、せいぜい、手続きや損害の計算方法などを決めておく程度のことしかできません。

ポイント
  • 設計変更・工事着手の延期・工事中止の場合の取扱いは、せいぜい手続きや損害の計算方法くらいしか規定できない。




【重要な契約条項6】不可抗力

不可抗力の損害は請負人(受託者)の負担

「不可抗力」の条項には、不可抗力による工期の変更と損害の負担(その算定計算)について規定します。

これは、建設業法第19条第1項第6号に規定された、必須記載事項です。

民法上、請負契約では、仕事の完成前の災害による損害は、請負人(受託者)の負担となります。

具体的には、火災で建築中の建物が焼失したり、台風で盛土が流出したりした場合、特約がなければ、その損害は、請負人(受託者)の負担となります。

不可抗力に対する請負人(受託者)の対応は?

このため、注文者(委託者)としては、不可抗力があった場合は、民法上の原則どおりの規定=損害は請負人(受託者)の負担とするように、主張しがちです。

他方、請負人(受託者)としては、建設工事での不可抗力の損害は多額になることが多いため、次のような対処をします。

不可抗力の場合の請負人(受託者)の対処
  • 協議事項とする(民間建設工事標準請負契約約款・工事請負契約約款の場合)。
  • 保険で対処する(民間建設工事標準請負契約約款・工事請負契約約款の場合)。
  • 保険で対処することを前提に、保険料を折半または注文者(委託者)の負担とする。
  • あらかじめ損害を折半することを規定する。
  • 注文者(委託者)の負担とする。

なお、協議事項としたところで、協議自体が整わないと意味がありません。

このため、契約実務上は、協議事項とすること自体には、さほど効果は期待できません。

ポイント
  • 民法の原則では、仕事の完成前の不可抗力による損害は請負人(受託者)の負担。このため、請負人(受託者)の側は、特約で損害の負担を軽減する必要がある。
  • 不可抗力による損害の負担を協議事項にしても、協議が整わなければ意味がない。
  • 通常は、保険によって対処する。




【重要な契約条項7】物価の変動・変更による請負代金(報酬・料金・委託料)・工事内容の変更

あらかじめ請負代金の変更の計算方法を規定するのは難しい

「物価の変動・変更による請負代金の変更」の条項では、物価の増減があった場合の、請負代金(報酬・料金・委託料)の変更について規定します。

次項の工事内容の変更も含めて、これらの条項は、建設業法第19条第1項第5号に規定された、必須記載事項です。

このような、価格の変動に関する条項は「インフレ条項」ともいいます(「デフレ条項」と呼ぶ慣習はまだないようです)。

請負代金の変更については、物価の急激な増減があった場合において、請負代金を変更するときの計算方法について規定します。

理屈のうえでは、客観的な経済指標にもとづき、あらかじめ計算方法を規定することも可能ですが、必ずしも実態を反映したものとならず、合意にいたることはまずありません。

このため、最終的には協議のうえ決定するように規定することが多いです。

工事内容の変更は協議事項とする

工事内容の変更については、物価の変更が工事にどのような影響を与えるのか、あらかじめ把握することはできません。

建設工事請負契約書であらかじめ決めておけるのは、せいぜい、工事内容の変更についての手続きを規定しておく程度しかできません。

そのうえで、最終的には工事内容の変更を協議事項とすることが多いです。

このため、契約実務上は、協議事項とすること自体には、さほど効果は期待できません。

ポイント
  • 物価の変動・変更による請負代金の変更は、理論上は、経済指標に連動した計算が可能。
  • ただし、現実的には実態を反映した内容になるとはいえず、合意に至らないことが多い。
  • 物価の変動・変更による工事内容の変更は、実際にその時にならないと決めようがないため、協議事項とする。




【重要な契約条項8】第三者の損害賠償金の負担

施工により第三者に発生した損害=請負人(受託者)の責任

「第三者の損害賠償金の負担」の条項では、建設工事の施工に伴い、第三者に対し損害を与えた場合における、損害賠償金の負担について規定します。

この規定は、建設業法第19条第1項第8号に規定された、必須記載事項です。

次のとおり、民法上、請負契約では、請負人(受託者)が第三者に対して与えた損害は、注文者(委託者)は、責任を負いません。

民法第716条(注文者の責任)

注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。

このため、請負人(受託者)が第三者に与えた損害については、注文者(委託者)の過失による注文・指図でない限り、請負人(受託者)の責任となります。

請負人(受託者)としては注文者(委託者)にも負担してもらう

ただ、この民法の原則どおりに、請負人(受託者)が第三者の損害を負担するとなると、負担が大きくなりすぎる、という問題があります。

この点について、民間建設工事標準請負契約約款や工事請負契約約款では、請負人(受託者)が善管注意義務を果たしても避けられない損害については、注文者(委託者)の負担としています。

具体的には、騒音、振動、地盤沈下、地下水の断水などによる損害については、注文者(委託者)の負担としています。

このほか、日照阻害、風害、電波障害などによる第三者との紛争にもとづく補償についても、注文者(委託者)の負担としています。

ポイント
  • 民法の原則では、施工により第三者に発生した損害=請負人(受託者)の責任。
  • 請負人(受託者)の側は、損害の負担を軽減するため、例外を規定する。




【重要な契約条項9】資材の提供

「資材の支給」の条項では、注文者(委託者)から請負人(受託者)に対し、資材の提供がある場合における、内容・方法について規定します。

この条項は、建設業法第19条第1項第9号に規定された、必須記載事項です。

この点について、民間建設工事標準請負契約約款や工事請負契約約款では、主に提供資材の品質検査について重点的に規定しています。

ただ、これらの約款では、あくまで検査を実施するのが注文者(委託者)となっていて、請負人(受託者)には検査の義務がありません。

このため、場合によっては、請負人(受託者)の側にも検査の義務を課すべきです。

【重要な契約条項10】機械等の貸与

「機械等の貸与」の条項では、注文者(委託者)から請負人(受託者)に対し、機械等の貸与がある場合における、貸与の内容について規定します。

この条項は、建設業法第19条第1項第9号に規定された、必須記載事項です。

機械等の内容にもよりますが、ごく小規模な機械の場合は、機械の取扱いや管理等について、いわゆる「善管注意義務」を規定する程度で済ませる場合があります。

逆に、大規模な機械等の場合は、善管注意義務だけではなく、より詳細な契約内容を規定する場合があります。

特に、有償の機械等の貸与がある場合は、建設工事請負契約書とは別に、機械等の賃貸借契約書・使用貸借契約書を作成することもあります。




【重要な契約条項11】検査の時期・方法

必ず検査基準・検査方法について決めておく

「検査の時期・方法」の条項では、工事が完成した後におこなわれる、注文者(委託者)による検査の時期や方法について規定します。

この条項は、建設業法第19条第1項第10号に規定された、必須記載事項です。

一般的な建設工事請負契約では、検査の時期については、あらかじめ設計図書のスケジュールに組み込まれているため、契約条項に改めて規定する必要はありません。

また、検査方法・検査基準についても、工事の内容にもよりますが、あらかじめ決まっていることが多いです。

なお、破壊検査などの特殊な検査が必要な場合は、その費用負担(復旧に要する費用を含む)などについても、詳細に規定します。

このほか、検査につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約における検査(検査項目・検査方法・検査基準)とは?契約条項の規定のしかた・書き方は?

場合によっては外部の建築士に検査を依頼する

工事の完成後の検査は、注文者(委託者)がおこなうことになります。

しかしながら、一般消費者や、建設工事について専門でない企業など注文者(委託者)の場合は、そもそも工事の検査はできません。

せいぜい、目視で確認できる程度の表面的な検査くらいしかできません。

このため、場合によっては、外部の建築士に依頼して検査をしてもらうことも検討します。

当然ながら、建築士に施工監理を依頼している場合は、その建築士に検査も依頼するべきです。

ポイント
  • 設計図書等で、検査時期・検査基準・検査方法をあらかじめ決めておく。
  • 注文者(委託者)の立場として、検査ができないのであれば、建築士に検査を依頼する。




【重要な契約条項12】引渡しの時期

「引渡しの時期」の条項には、工事の完成後、検査に合格した工事対象の引渡しについて規定します。

この条項は、建設業法第19条第1項第10号に規定された、必須記載事項です。

一般的な建設工事請負契約では、引渡しの時期の具体的な日程は、設計図書のスケジュールに記載されています。

このため、引渡しの時期の具体的な日程の記載については、特に問題はありません。

ただし、工事の完成や検査が大幅に遅れた結果、予定の日程で引渡しができない場合の対応(損害賠償など)などについては、明記しておく必要があります。




【重要な契約条項13】所有権の移転

所有権の移転について必ず特約を設定する

「所有権の移転」の条項では、工事が完成した工事目的物の所有権の移転の時期について規定します。

建設工事請負契約における工事目的物の所有権の移転は、特に民法では決まっていません。

この点について、当事者の間で特約がある場合は、その特約に従う、という判例があります(大審院判決大正5年12月13日)

このため、建設工事請負契約では、必ず所有権の移転について、特約を設定します。

特約がない場合は資材の提供の有無による

では、特約がない場合の工事目的物の所有権がどうなるのかといえば、材料の提供の有無によります。

特約がない場合の所有権
  • 注文者(委託者)が材料の全部または主要部分を提供した場合:原始的に(=最初から)注文者(委託者)に帰属(大審院判決昭和7年5月9日)
  • 請負人(受託者)が材料の全部または主要部分を提供した場合:原始的に請負人(受託者)に帰属し、注文者(委託者)への引渡しまたは報酬・料金・委託料の支払いにより、注文者(委託者)に移転する(大審院判決大正3年12月26日)。
  • ただし、2点目の場合でも、注文者(委託者)がすでに報酬・料金・委託料の全部または大部分をすでに支払っている場合は、原始的に注文者(委託者)に帰属する(大審院判決昭和18年7月20日・最高裁判決昭和44年9月12日)。

ちなみに、民間建設工事標準請負契約約款や民間(七会)連合協定 工事請負契約約款では、所有権の移転について規定がありません。

このため、これらの約款を使用する場合は、所有権の移転について明らかではありませんので、特約を追加するべきです。

所有権の移転の時期を設定する

一般的な請負契約では、所有権の移転の条件・時期は、成果物の納入時または検査完了時とすることが多いです。

建設工事請負契約では、以下の時点とすることが考えられます。

工事目的物の所有権の移転時期

上から順に移転の時期が早く、注文者(委託者)に有利。

  • 一部でも施工ができた時点
  • 全体の工事が完了した時点
  • 検査完了の時点
  • 引渡しの時点
  • 報酬・料金・委託料の支払いの完了の時点

所有権の移転は、早いほうが注文者(委託者)にとって有利となり、遅いほうが請負人(受託者)にとって有利です。

特に請負人(受託者)の立場としては、報酬・料金・委託料の回収のため、できるだけ遅くまで所有権の移転を留保しておいたほうがいい、という考えになります。

このほか、所有権の移転の時期につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約における所有権の移転の時期とは?規定のしかた・書き方は?

請負人(受託者)は不可抗力による損害に注意する

なお、請負人(受託者)の立場としては、注文者(委託者)からの報酬・料金・委託料の支払いがないことを理由に工事目的物の所有権の移転を留保する場合は、ひとつ問題があります。

それは、その所有権の移転を留保している間に、不可抗力による損害があった場合、誰がその損害を負担するのか、という問題です。

所有権の移転の留保をしているのは、注文者(委託者)が報酬・料金・委託料を支払わないためです。

このため、所有権の移転を留保している間に不可抗力による損害があった場合は、注文者(委託者)の負担とするべきです。

ポイント
  • 所有権の移転の時期は、必ず特約で明記する。
  • 所有権の移転の時期の特約がない場合は、資材の提供の有無によって所有権の移転の時期が決まる。
  • 注文者(委託者)の立場の場合は、なるべく一部でも施工ができたら原始的に所有権が帰属するように規定する。
  • 請負人(受託者)の立場の場合は、請負代金(報酬・料金・委託料)の支払いの完了の時点で、所有権が移転するように規定する。
  • この場合、支払いが遅れたときの不可抗力による損害については、注文者(委託者)の負担とするように規定する。




【重要な契約条項14】請負代金(報酬・料金・委託料)の金額または計算方法

通常は金額で請負代金(報酬・料金・委託料)を規定する

「請負代金」の条項では、注文者(委託者)が請負人(受託者)に対して支払う、請負代金(報酬・料金・委託料)の金額または計算方法を規定します。

この条項は、建設業法第19項第1項第2項に規定された、必須記載事項です。

一般的な建設工事請負契約では、請負代金は、金額で規定します。

この際、消費税についての規定も忘れないようにします。具体的には、請負代金と消費税が別々に認識できるように記載します。

こうすることで、消費税を含まない請負代金だけで印紙税の金額を計算できます。

時間計算の請負代金は雇用契約・労働契約とみなされる可能性もある

なお、請負人(受託者)が個人事業者(いわゆる一人親方)である場合、時間あたりの単価を設定した、報酬・料金・委託料の計算方法を規定することがあります。

このような計算方法の場合、建設工事請負契約ではなく、雇用契約・労働契約とみなされる可能性があります。

このため、特に注文者(委託者)の側が元請けの建設業者の場合は、注意が必要です。

時間あたりの単価の設定と労働契約との関係につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)とは

ポイント
  • 請負代金は、金額で明記する。
  • 請負代金とは別に、消費税の金額も明記する。
  • 個人事業者(一人親方)が請負人(受託者)となる場合、時間あたりの請負代金を設定すると、建設工事請負契約ではなく、雇用契約・労働契約とみなされる可能性がある。




【重要な契約条項15】請負代金(報酬・料金・委託料)の支払の時期

「支払時期」の条項では、請負代金(報酬・料金・委託料)の支払期限について規定します。

この規定は、建設業法第19条第4号・第11号に規定された、必須記載事項です。

支払期限は、以下の3パターンが考えられます。

支払期限の設定パターン
  • (全部または一部の)前払い
  • 出来高払い
  • (全部または残額の)完成後の支払い

工事内容の実態に合わせて、これらのうちのひとつ、または複数を組み合わせて、支払期限を設定します。




【重要な契約条項16】金銭の支払方法

一般的な金銭の支払方法は銀行振込

「金銭の支払方法」の条項は、請負代金(報酬・料金・委託料)をどのように支払うのかを規定します。

この条項は、建設業法第19条第1項第4号・第11号に規定された、必須記載事項です。

金額が小規模な建設工事請負契約では、金銭の支払方法は、現金の銀行振込とすることがほとんどです。

このほか、比較的規模が大きな建設工事請負契約では、手形、小切手、ファクタリング等の一括決済方式、電子記録債権などによる支払いもあります。

もちろん、ごく小規模な建設工事請負契約では、現金、クレジットカードなどのによる支払いでも差し支えありません。

このほか、金銭の支払方法につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約における支払方法とは?契約条項の規定のしかた・書き方は?

銀行手数料は原則として注文者(委託者)の負担

また、銀行振込に要する銀行手数料については、次のとおり、支払い=金銭の弁済をする債務者である注文者(委託者)の負担となります。

民法第485条(弁済の費用)

弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

ただし、「別段の意思表示がないとき」とあるとおり、「別段の意思表示」=製造請負契約での特約がある場合は、その特約が優先されます。

このため、注文者(委託者)が、請負人(受託者)に銀行振込手数料を負担させるのであれば、その旨を建設工事請負契約に規定する必要があります。

ポイント
  • 小規模な建設工事請負契約の支払方法は、銀行振込が一般的。
  • 大規模な建設工事請負契約の支払方法は、手形、小切手、ファクタリング等の一括決済方式、電子記録債権などもある。
  • 銀行振込の手数料は、民法の原則では注文者(委託者)の負担。
  • 銀行振込の手数料を請負人(受託者)負担とする場合は、その旨を特約で明記する。




【重要な契約条項17】契約不適合責任

契約不適合責任=受託者(請負人)が検査合格後に負う責任

「契約不適合責任」(かつての瑕疵担保責任)の条項では、工事目的物に契約不適合責任(=欠陥。かつての瑕疵)があった場合における、請負人(受託者)の責任について規定します。

このような請負人(受託者)の責任を「契約不適合責任」といいます。

この条項は、建設業法第19条第1項12号に規定された、必須記載事項です。

建設工事請負契約では、一般的に、検査に合格した後に発覚した工事目的物の契約不適合=欠陥・瑕疵について、請負人(受託者)が、期限を区切って契約不適合責任を負います。

契約不適合責任は3種類

検査合格後に請負人(受託者)が負う契約不適合責任には、大きく分けて、以下の4種類があります。

4種類の契約不適合責任
  • 履行追完責任
  • 代金減額責任
  • 損害賠償責任
  • 契約解除責任

民法上の契約不適合責任の期間・年数は「知った時から1年間」

請負人(受託者)が契約不適合責任を負う期間は、民法上は、注文者(委託者)が契約不適合を「知った時から1年」とされています。

第637条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)

1 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。

2 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。

このため、注文者(委託者)が契約不適合を知らないままであれば、消滅時効となる、「目的物の引渡しまたは仕事の完成の時点から10年後」まで契約不適合責任が存在することとなります。

改正民法により建物その他の土地の工作物の契約不適合責任の期間も「知った時から1年」

なお、旧民法第638条では、例外建物その他の土地の工作物の請負契約の場合は、工事目的物によって、10年または5年とされていました。

根拠条文

民法第638条

1 建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後5年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、10年とする。

2 工作物が前項の瑕疵によって滅失し、又は損傷したときは、注文者は、その滅失又は損傷の時から1年以内に、第634条の規定による権利を行使しなければならない。

民法の改正により、この民法第638条は削除され、契約不適合責任の期間は、工事目的物に関係なく「知った時から1年」となりました。

建設工事請負契約で契約不適合責任の期間の特約も設定できる

民法の期間とは別の契約不適合責任の期間を設定できる

なお、建設工事請負契約にもとづく当事者の合意によって、契約不適合責任の期間を自由に変えることができます。

このため、一般的な建設工事請負契約では、契約不適合責任を民法等の法律とは別の期間を設定します。

この際、契約不適合責任の起算点、つまり、どの時点から契約不適合責任の期間を計算するのかを明らかにします。

例えば、検査に合格した日や、工事目的物の引渡しがあった日などが考えられます。

新築住宅の場合は瑕疵担保責任の期間は10年間

なお、瑕疵担保責任の期間を短縮する特約があったとしても、新築住宅の場合は、その特約が無効になる場合もあります。

というのも、新築住宅の瑕疵担保責任には、住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品確法)が適用されます。

住宅品確法第94条第1項により、住宅を新築する建設工事の請負契約については、請負人(受託者)は、注文者(委託者)に引き渡した時から10年間、「住宅の構造耐力上主要な部分等」の瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。)について、担保責任を負います。

なお、住宅品確法第94条第2項でわざわざ規定しているように、「前項の規定に反する特約で注文者に不利なものは、無効」となります。これが、いわゆる「強行規定」です。

【意味・定義】強行規定とは?

強行規定とは、ある法律の規定と異なる合意がある場合であっても、なお優先される法律の規定をいう。

ちなみに、住宅品確法第95条で、新築住宅の売主の契約不適合責任についても、同様の規定となっています。

瑕疵担保責任について保険に加入する場合はその内容を規定する

瑕疵担保責任の履行について、なんらかの保険に加入する場合は、その保険についても明らかにします。

特に、新築住宅の建設工事請負契約の場合、請負人(受託者)は、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律にもとづき、瑕疵担保責任の履行の確保のため、保証金の供託か、責任保険(特定住宅瑕疵担保責任保険)への加入が義務づけられています。

このため、特定住宅瑕疵担保責任保険に加入する場合は、その保険内容について、建設工事請負契約で規定する必要があります。

この場合、通常は、契約書の本体で保険内容を規定せずに、別紙に添付して建設工事請負契約書と一緒に綴じ込むことで契約内容とします。

契約不適合責任の請求の手続きを明記する

また、契約不適合責任の条項では、注文者(委託者)による契約不適合責任の請求の手続きも明記します。

具体的には、契約不適合責任の期間内に、何をしなければいけないのか、ということも明記します。

典型的な例では、契約不適合があることを通知する、という規定があります。

また、このような通知だけでは足りず、契約不適合の請求も必要とする、という規定もできます。

このほか、契約不適合責任につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

このほか、契約不適合責任につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

【改正民法対応】業務委託契約における契約不適合責任とは?定義・ポイントも解説

ポイント
  • 契約不適合責任とは受託者(請負人)が検査合格後に負う責任。
  • 契約不適合責任は、履行追完責任、代金減額責任、損害賠償責任、契約解除責任―の4種類。
  • 民法上の契約不適合責任の期間・年数は注文者が「知った時から1年間」。
  • 特約で契約不適合責任の期間を短縮し、起算点を「知った時」から検査合格や引渡しの日に設定する。
  • 新築住宅の場合は、住宅品確法により、瑕疵担保責任の期間は10年間。
  • 瑕疵担保責任について保険に加入する場合はその内容を規定する。
  • 契約不適合責任の請求の手続きを明記する。




【重要な契約条項18】損害保険

「損害保険」の条項では、瑕疵担保責任の保険とは別に、施工中の損害に関する保険について規定します。

一般的に、損害保険の条項では、工事中に発生する火災や盗難などの事故による損害について、請負人(受託者)に対し、火災保険や建設工事保険の加入を義務づけます。

民間建設工事標準請負契約約款でも、そのような内容となっています。

もちろん、規模が小さな建設工事の場合は、こうした火災や盗難のリスクは低いでしょうから、必ずしも保険に加入する必要はありません。

【重要な契約条項19】遅延利息・違約金・その他の損害金

それぞれの債務の履行遅滞のペナルティを設定する

「遅延利息・違約金・その他の損害金」の条項では、注文者(委託者)・請負人(受託者)による契約の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における、遅延利息、違約金その他の損害金について規定します。

この条項は、建設業法第19条第1項第13号に規定された、必須記載事項です。

遅延利息・違約金・その他の損害金の条項では、次のとおり、契約当事者の契約の履行遅滞について、ペナルティ(賠償額の予定)を課します。

ペナルティの対象となる履行遅滞
  • 注文者(委託者):報酬・料金・委託料の支払いの遅れ
  • 請負人(受託者):工事目的物の引渡しの遅れ

ペナルティの計算方法を規定する

具体的なペナルティの計算方法は、一般的には、次のとおりです。

ペナルティの計算方法(損害額の予定)
  • 注文者(委託者)のペナルティ:支払いがなされていない報酬・料金・委託料=残額に利率をかけて計算する。
  • 請負人(受託者)のペナルティ:引渡していない部分の割合に応じた報酬・料金・委託料に利率をかけて計算する。

例えば、注文者(委託者)のペナルティに関しては、部分的な支払いがある場合は、その支払いを控除して計算します。

同様に、請負人(受託者)のペナルティに関しては、部分引渡しがある場合は、その分を控除して計算します。

当然ながら、まったく引渡しがない場合は、報酬・料金・委託料の満額に利率をかけて計算します。

遅延利息の利率は?

遅延利息の利率については、建設工事請負契約で、自由に設定することができます。

ただし、あまりにも高利率の遅延利息は、公序良俗違反(民法第90条)として、無効となる可能性があります。

ちなみに、民間建設工事標準請負契約約款の場合では、「年10パーセント」としています。

このほか、一般的には、年14.6%(=1日0.04パーセント)とすることも多いです。

ポイント
  • 遅延利息、違約金その他の損害金では、相手方による契約上の義務の履行が遅れた場合のペナルティを規定する。
  • 注文者(委託者)のペナルティは、未払いの請負代金に遅延利息をかけて算出する。
  • 請負人(受託者)のペナルティは、引渡しが終わっていない部分の請負代金に相当する金額に遅延利息をかけて算出する。
  • 遅延利息のリ率は、年10パーセントや年14.6パーセント(=日0.04パーセント)など。




【重要な契約条項20】知的財産権

他人の知的財産権(特許権)の使用許諾について

「知的財産権の使用」あるいは「特許権等の使用」の条項では、他人の知的財産権(特に特許権)の使用について規定します。

具体的には、知的財産権の使用については、原則として請負人(受託者)の責任で使用するよう規定します。

例外として、注文者(委託者)の過失により、他人の知的財産権の存在の明示がない資材・設備等・施工方法の指定があった場合は、その責任は発注者の責任とします。

この点は、民間建設工事標準請負契約約款・工事請負契約約款でも同様の内容となっています。

注文者(委託者)の知的財産権(特許権)の使用許諾について

他方、請負人(受託者)が注文者(委託者)の知的財産権を使用する場合は、その旨も規定しておきます。

建設工事請負契約では、工事の施工のために、注文者(委託者)が保有する知的財産権を請負人(受託者)に使用許諾することがあります。

この場合、知的財産権の中でも、主に特許権の使用許諾(正確には、実施権の設定・許諾)があります。

こうした知的財産権の使用許諾は、実質的にはライセンス契約であり、場合によっては、別途ライセンス契約書を作成して対応します。

これらの、特許権の使用許諾につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約における特許権・実用新案権の使用許諾・改良発明の問題とは?

ポイント
  • 請負人(受託者)が第三者の知的財産権を使用する場合は、原則としてその責任は請負人(受託者)が負う。
  • 例外として、注文者(委託者)の過失によって、請負人(受託者)が無断で第三者の知的財産権を使用することになった場合は、注文者(委託者)の責任。
  • 注文者(委託者)の知的財産権を請負人(受託者)が使用する場合は、ライセンス契約を結ぶ。

【重要な契約条項21】再委託・下請負

「再委託・下請負」の規定では、請負人(受託者)による建設工事の再委託・下請負の可否について規定します。

一般論として、請負契約は、「仕事の完成」を目的とした契約であり、その仕事を「誰が」完成させたかは、重要ではありません。

このため、民法上は、請負人(受託者)が再委託・下請負をすることは、禁止されていません。

逆にいえば、注文者(委託者)として、請負人(受託者)に対して、再委託・下請負を禁止する場合は、その旨を建設工事請負契約書の作成の際に記載しなければなりません。

このほか、再委託・下請負につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約における再委託・下請負(外注)の許可・禁止条項とは?

建設工事請負契約では建設業法によって「一括下請負」=丸投げが禁止されている

ただし、建設工事請負契約では、建設業法第22条により、原則として、「一括下請負」、つまり「丸投げ」が禁止されています。

建設業法第第22条(一括下請負の禁止)

1 建設業者は、その請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。

2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負った建設工事を一括して請け負ってはならない。

3 前2項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。

4 (省略)

もっとも、第3項にあるとおり、「共同住宅を新築する建設工事」(建設業法施行令第6条の3)以外の建設工事で、発注者(いわゆる「施工主・施主」)からの書面による承諾がある場合は、例外として一括下請負が認められます。

逆にいえば、「共同住宅を新築する建設工事」の場合は、たとえ施工主・施主からの書面による承諾があったとしても、一括下請負は禁止されます。

ポイント
  • 民法の原則では、請負人(受託者)は、第三者に対して、再委託・下請負ができる。
  • 建設業法第22条では、一括下請負(いわゆる丸投げ)が禁止されている。
  • ただし、「共同住宅を新築する建設工事」以外は、施工主・施主の書面による承諾がある場合は、一括下請負ができる。

【重要な契約条項22】秘密保持義務

建設業法には秘密保持義務の規定がない

「秘密保持義務」の条項では、請負人(受託者)に対する秘密保持義務を課します。

実は、建設業法では、建設業者に対して、秘密保持義務が課されていません。

また、建設業法第19条第1項各号にも、秘密保持義務を規定するべき旨は規定されていません。

このため、建設工事請負契約で何も規定しないと、請負人(受託者)には、秘密保持義務が課されません。

民間建設工事標準請負契約約款にも秘密保持義務がない

なお、民間(七会)連合協定工事請負契約約款には秘密保持義務が規定されています。

ただし、その内容は非常に簡素なものであり、情報漏えいを防ぐものとしては不十分です。

また、国土交通省が作成している民間建設工事標準請負契約約款や建設工事標準下請契約約款には秘密保持義務が規定されていません。

このため、これらの約款を使用する場合は、内容を変更するか、または別途秘密保持契約を締結するべきです。

建物の建設工事では要注意

工場の建設では工場レイアウトの漏えいに注意

特に建物の建設工事の場合、当然、請負人(受託者)は、設計図面の情報に従って工事をおこないますので、建物の構造を完全に把握します。

このような情報は、セキュリティの都合上、外部に漏洩すると問題となる情報です。

また、工場のレイアウトなどは、効率的に製品を製造するための生産ラインなどの情報が記載された、重要な企業秘密です。

これらの工場レイアウトに関する企業秘密は、不正競争防止法の営業秘密として保護を受けられる情報です。

営業秘密につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約で重要となる営業秘密の定義・要件・具体例とは?

工場の建設工事では工場レイアウトの情報管理に注意

ただ、そもそも工場レイアウトが、重要な企業秘密≒営業秘密に該当するということ自体、よく認識されていないことがあります。

特に、注文者(委託者)である製造業者の側はともかく、請負人(受託者)である建設業者の側としては、それほど重要な情報だとは認識していない可能性が高いです。

これが、下請けの建設業者や、従業員ともなると、さらに工場レイアウトが重要であるという意識は薄くなりがちです。

このため、注文者(委託者)である製造業者の立場の場合は、建設工事請負契約を結ぶ際には、工場レイアウトを始めとした情報の取扱いについて、契約内容として規定しておく必要があります。

場合によっては再委託・下請負を禁止する

建設工事請負契約は、数次にわたる下請負が半ば常態化しています。

このため、元請けの建設業者は、下請け先、再下請け先、3次下請け先まで、設計図書の情報を開示することになります。

これほど複数の契約当事者が存在すると、どうしても情報の管理が杜撰となり、情報漏洩のリスクが高くなります。

このため、秘密保持義務を課すだけではなく、場合によっては、再委託・下請負の禁止も視野にいれるべきです。

このほか、秘密保持義務・守秘義務につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約における秘密保持義務・守秘義務に関する条項のまとめ

ポイント
  • 建設業法では、建設業者に秘密保持義務が課されていない。
  • 民間建設工事標準請負契約約款でも、請負人(受託者)には秘密保持義務は課されていない。
  • 注文者(委託者)の立場の場合、建物(特に工場)の建設工事の場合は、必ず秘密保持契約を結ぶ。
  • 情報漏えいの防止のため、場合によっては再委託・下請負を禁止する。

【重要な契約条項23】契約解除・施工の中止

一般的な請負契約の契約解除は?

「契約解除・施工の中止」の条項では、注文者(委託者)・請負人(受託者)の双方により契約の解除や施工の中止に関する事項を規定します。

この条項は、建設業法第19条第1項第5号に規定された、必須記載事項です。

民法上は、請負契約では、注文者(委託者)の側は、仕事の完成の前では、いつでも契約解除ができます(ただし、損害賠償責任は発生します)。

他方、請負人(受託者)の側は、注文者(委託者)が破産手続開始の決定を受けた場合に限って、契約解除ができます。

このほか、一般的な請負契約における契約解除につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

【改正民法対応】請負契約の契約解除権・法定解除権とは?請負人・注文者による契約解除について解説

建設工事請負契約では契約解除・工事中止の事由を詳細に規定する

建設工事請負契約では、民法上の請負契約の契約解除の原則を踏まえつつ、より詳細・具体的な内容を規定します。

例えば、契約解除や工事中止の事由となる、相手方の債務不履行について、具体的な内容を規定します。

特に、請負人(受託者)の立場の場合は、すでに触れたとおり、民法上の契約解除権は、著しく制限されています(注文者(委託者)が破産手続開始の決定を受けた場合)。

このため、請負人(受託者)にとっては、どれだけ広く契約解除ができる事由を設定できるかがポイントとなります。

ポイント
  • 注文者(委託者)は、比較的簡単に請負契約の解除ができる。
  • 請負人(受託者)は、極めて限定的な場合(注文者(委託者)が破産手続開始の決定を受けた場合)にしか、請負契約の解除ができない。
  • 建設工事請負契約では、実態に合わせて、契約解除・工事中止の事由を規定する。

【重要な契約条項24】紛争解決方法(合意管轄・仲裁)

裁判・仲裁のいずれかで紛争を解決する

「紛争解決方法」の条項では、契約当事者間で紛争があった場合における、紛争の解決方法について規定します。

この条項は、建設業法第19条第1項第14号に規定された、必須記載事項です。

紛争の解決方法には、裁判による解決と、仲裁による解決があります。

建設工事請負契約では、このうちのいずれかを規定します。

裁判による解決の場合は合意管轄を規定する

裁判による解決を選択する場合は、一般的には、実際に裁判を起こす場合の裁判所、いわゆる「合意管轄」を規定します。

この場合、特定の裁判所を1箇所だけ指定するのであれば、「専属的合意管轄裁判所」を規定します。

また、専属的合意管轄裁判所を規定する場合は、一般的には、自社にとって近い裁判所のほうが、有利とされています。

このほか、専属的合意管轄裁判所につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約における専属的合意管轄裁判所とは?契約条項の規定のしかた・書き方は?

仲裁による解決の場合は仲裁合意をする

仲裁は確定判決と同一の効果がある仲裁判断が出される

仲裁による解決を選択する場合は、仲裁合意をしておきます。

仲裁とは、裁判に代えておこなわれる、仲裁法にもとづく紛争解決方法です。

仲裁は、確定判決の代わりに、仲裁人による仲裁判断が出されます。

この仲裁判断は、確定判決と同一の効力を持つため、仲裁判断に不服があったとしても、改めて裁判を起こすことはできません。

仲裁は一審制

仲裁は、三審制の裁判とは異なり、一審制であるため、1回の仲裁で仲裁判断が出されます。

これは、結論が早く出る、というメリットである一方で、慎重な審理ができない、というデメリットでもあります。

一般的な建設工事請負契約、特に企業間の建設工事請負契約では、扱う報酬・料金・委託料の金額も大きくなるため、紛争解決も、早さよりも慎重さが求められる傾向があります。

このため、特に企業間の建設工事請負契約では、紛争解決方法としては、ほとんど裁判による解決が選ばれ、仲裁による解決は選ばれません。

ポイント
  • 裁判による紛争解決方法を選択する場合、専属的合意管轄裁判所を規定する。
  • 仲裁による紛争解決方法を選択する場合、仲裁合意をする。
  • 一般的な建設工事請負契約では、裁判による紛争解決方法がほとんど。