こんにちは。契約書作成専門・小山内行政書士事務所代表の小山内です。

このページでは、業務委託契約の契約条項のうち、契約の目的を規定する条項(以下、「目的条項」といいます。)について、簡単にわかりやすく解説しています。

目的条項では、その業務委託契約の概要を規定します。

目的条項で、いわゆる「信義誠実の原則」を規定する場合もありますが、これは法的にはあまり意味がありません。

このように、日本の契約実務では、目的条項は軽視されがちです。

しかし、実は、目的条項は、契約解除や秘密保持義務に関わる、非常に重要な規定です。

このページでは、目的条項の規定のしかたや書き方と、業務委託契約に与える影響について、解説します。

なお、業務委託契約の定義と基本的な解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約書とは?その定義とポイントを簡単にわかりやすく解説

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目的条項は契約の概要を規定する条項

目的条項では契約当事者のおおまかな権利義務を規定する

目的条項は、一般的には、第1条に規定する条項です。

目的条項では、その契約の全体的な概要、具体的には、契約当事者のおおまかな権利義務について規定します。

おおまかな権利義務であっても、あいまいな記載ではなく、明確な記載とするべきです。

例えば、製造請負契約の場合は、次のような書き方になります。

記載例・書き方

第1条(目的)

本契約は、次の各号の内容について規定することを目的とする。

(1)注文者が請負人に対し物品の製造請負を発注し、請負人がこれを受注すること。

(2)請負人が前号の物品を製造し、注文者に対し、納入すること。

(3)注文者が請負人に対し前号の物品の製造の報酬を支払い、受注者が受領すること。

※便宜上、表現は簡略化しています。

なお、実際の権利・義務の詳細は、個別の条項で規定することになります。

このため、目的条項では、この程度の簡潔なもので結構です。

目的条項は信義誠実の原則を規定する条項ではない

よくある話ですが、目的条項に、次のような「信義誠実の原則」を規定することがあります。

記載例・書き方

第○条(目的)

甲および乙は、相互反映の理念にもとづき、信義誠実の原則に従って、本契約を履行するものとする。

※便宜上、表現は簡略化しています。

このような目的条項は、契約書全体の格調を高め、体裁を整える程度の効果はあるかもしれませんが、法的には、特に意味はありません(規定すること自体は問題ではありません)。

というのも、信義誠実の原則は、民法上の大原則であるため、わざわざ契約で規定しなくても、当然に適用されるものだからです。

逆に、信義誠実の原則だけが規定されていて、契約の概要が記載されていない契約書は、そうした事情を理解していない人に起案された可能性があります。

ポイント

  • 目的条項は、契約当事者のおおまかな権利義務を規定する条項。
  • 目的条項に「信義誠実の原則」を規定しても、法的な意味はない。
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原則として目的条項は契約内容に影響を与えない

目的条項は、あくまで契約の概要を規定したものです。

このため、直接的に契約に影響を与えるような規定ではありません。

直接的に契約に影響を与えるとすれば、他の契約条項に規定がないような事態・状況が発生した場合です。

こうした事態・状況では、契約全体の趣旨や解釈を確認するために、目的条項が確認されます。

もちろん、こうした事態・状況はあってはならないですし、そのような(抜け・漏れがある)契約内容としてはいけません。

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目的条項が間接的に影響を与える場合もある

請負型と委任型の業務委託契約では影響を与える

もっとも、目的条項が間接的に影響を与える契約条項もあります。

具体的には、請負型の業務委託契約における、委託者=注文者からの契約解除の場合に、目的条項が関係してきます。

また、準委任型の業務委託契約における、受託者=受任者の業務の実施の場合にも、目的条項が関係することがあります。

この点について、詳しく解説します。

請負型の業務委託契約では契約が解除できるかどうかに関わる

業務委託契約の中には、請負型=請負契約である業務委託契約があります。

請負契約とは?―請負型の業務委託契約のポイント・当事者の権利義務を解説

請負型の業務委託契約では、委託者=注文者が民法にもとづいて契約解除ができるパターンとして、以下の2パターンがあります。

注文者(委託者)の請負契約の解除権

民法上の注文者(委託者)の法定解除権は次の2つ

  • 仕事の目的物に瑕疵がある場合の解除権(民法第635条)
  • 仕事が完成するまでの間に行使できる解除権(民法第641条)

目的条項が関わってくる契約解除は、前者のもの、つまり受託者=請負人の仕事にミスがあった場合のものです。

前者の解除権が規定されている民法第635条は、次のとおり規定されています。

民法第635条(請負人の担保責任)

仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。

このとおり、請負契約を解除するには、「契約をした目的を達することができないとき」という条件を満たす必要があります。

ここでいう「契約をした目的」というのは、必ずしも目的条項だけで判断されるわけではあませんが、ひとつの重要な判断材料となります。

このため、特に委託者=注文者の側は、いざというときに契約解除ができるよう、請負契約の仕事の完成によって、どのような目的を達成しようとしているのかを、契約書に明記します。

このほか、請負契約の法定解除権につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

請負契約の契約解除・法定解除権とは?注文者・請負人双方について解説

準委任型の業務委託契約では受託者の業務の実施に関わる

受託者=受任者が善管注意義務を果たしているかどうかの判断基準

業務委託契約の中には、準委任型=準委任契約である業務委託契約があります。

委任契約・準委任契約とは?―(準)委任型の業務委託契約のポイント・当事者の権利義務を解説

この準委任契約では、受託者=受任者は、業務の実施にあたって、いわゆる「善管注意義務」を果たす義務があります。

民法をはじめ、法律の条文では、善管注意義務の明確な定義があるわけではありませんが、一般的には、次のような意味となります。

善管注意義務の定義

善管注意義務とは、行為者の階層、地位、職業に応じて要求される、社会通念上、客観的・一般的に要求される注意を払う義務をいう。

この善管注意義務は、民法第644条で、次のとおり規定されています。

民法第644条(受任者の注意義務)

受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

この「委任の本旨に従い」とは、次のような意味です。

「委任の本旨に従い」の定義

「委任の本旨に従い」とは、(準)委任契約の目的に適した事務処理をすることをいう。

この「目的に適した事務処理」をしているかどうかは、必ずしも目的条項だけで判断されるわけではあませんが、ひとつの重要な判断材料となります。

善管注意義務違反=債務不履行=契約違反

善管注意義務を果たしているかどうかは、受託者=受任者の債務不履行=契約違反を判断するポイントとなります。

善管注意義務違反=債務不履行=契約違反

受託者=受任者が善管注意義務を果たしていない場合は債務不履行=契約違反となり、委託者=委任者は契約解除ができる。

このため、特に委託者=委任者の側は、準委任型の業務委託契約では、受託者=受任者にいい加減な仕事をされないようにするためにも、契約書で契約の目的を詳細に規定するべきです。

このほか、善管注意義務につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約における善管注意義務とは?その定義と4つのポイントを解説

ポイント

  • 目的条項は、契約内容に直接影響を与えることはない。
  • 請負型の業務委託契約では、受注者の業務にミスがあった場合に、「契約をした目的を達することができない」ことが、契約解除の要件のひとつ。この要件に、目的条項が影響を与える可能性がある。
  • 準委任型の業務委託契約では、「委任の本旨」に従った善管注意義務を果たしているかどうか=善管注意義務違反で契約解除ができるかどうかに、目的条項が影響を与える可能性がある。
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秘密保持義務(目的外使用の禁止)を意識する

秘密保持義務と併せて目的外使用の禁止を規定する

機密性が高く、有用な秘密情報を開示する業務委託契約では、目的条項が別の意味で重要となります。

一般的に、このような秘密情報を開示する業務委託契約では、秘密情報について、秘密保持義務を課します。

また、契約の履行に伴い、秘密情報の使用を許諾する場合は、同時に、その秘密情報について、目的外の使用を禁止します。

業務委託契約の秘密保持義務・守秘義務とは?条項の規定のしかた・書き方・作り方は?

目的条項は、この秘密情報の目的外使用の禁止に影響を与えます。

機密性が高い秘密情報を開示する場合は契約の目的を明記する

秘密情報の目的外の使用を禁止した条項における「目的」とは、一般的には、目的条項に記載された「契約の目的」とされます。

このため、目的条項で契約の目的が明確になっていないと、「契約の目的」が拡大解釈されてしまう原因となります。

その結果、本来想定していた目的以外の目的で、秘密情報が使用されてしまう可能性があります。

こうしたリスクを防ぐためにも、委託者の側であれ、受託者の側であれ、秘密情報を開示する場合は、秘密情報の使用について意識しながら、目的条項を規定する必要があります。

「目的外使用の禁止」の目的は契約全体で判断される

もっとも、「目的外使用の禁止」条項の目的は、目的条項だけで判断されるべきものではなく、契約書全体の記載や契約の実態によって判断されるべきものです。

このため、目的条項の記載があいまいだからといって、拡大解釈して秘密情報を使用していい、というわけではありません。

このように、意図的に「契約の目的」を拡大解釈して、恣意的に秘密情報を使用した場合、違法行為とみなされる可能性があります。

特に、秘密情報が営業秘密に該当する場合は、営業秘密の不正使用として、不正競争防止法違反となる可能性もあります。

営業秘密の定義・要件・具体例とは?―業務委託契約との関係をわかりやすく解説

このほか、秘密保持義務につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約の秘密保持義務・守秘義務とは?条項の規定のしかた・書き方・作り方は?

ポイント

  • 秘密保持義務の条項では、秘密情報の目的外使用の禁止を規定する。
  • 目的条項は、秘密情報の目的外使用があったどうかの判定における、「目的」の解釈に影響を与える。
  • 目的条項が不明確だからといって、秘密情報を開示者の許可なく使用した場合は、不正競争防止法違反となる可能性がある。