- 下請条第3条の書面(三条書面)を電磁的方法(電子契約)でおこなう場合の承諾書とは何でしょうか?
- 下請法の親事業者は、原則として書面で三条書面を交付しなければなりませんが、下請事業者から事前の承諾を得た場合は、例外として電磁的方法(電子メール、電子契約等)で交付することができます。この事前承諾に必要なものが承諾書や電子メールです。
このページでは、下請法の親事業者向けに、三条書面の電子化=電磁的方法(電子メール・電子契約)で交付するために必要な承諾書等について解説しています。
親事業者は、下請事業者に対し、下請法第3条の書面(三条書面)を交付しなければなりません。
この三条書面は、原則として書面での交付が必要ですが、一定の条件を満たすことにより、書面ではなく、電磁的方法(電子メールや電子契約)で交付することができます。
この一定の条件のひとつとして、下請事業者からの事前の承諾を得なければなりません。
このページでは、この三条書面の電子化(電子メール・電子契約での交付)に必要な下請事業者からの事前承諾とその詳細な条件について、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。
このページでわかること
- 三条書面の交付を電磁的方法(電子メール・電子契約)にするための事前承諾の内容。
- 事前承諾に必要な条件の詳細。
- 電磁的方法による三条書面の交付の注意点。
三条書面の事前承諾とは?
三条書面は原則として書面・例外として電磁的方法
下請法の親事業者は、次のとおり、下請事業者に対し、下請法第3条第1項にもとづく書面=三条書面を交付する義務があります。
下請法第3条(書面の交付等)
1 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。
2 親事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該下請事業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該親事業者は、当該書面を交付したものとみなす。
【意味・定義】三条書面(下請法)とは?
三条書面(下請法)とは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)第3条に規定された、親事業者が下請事業者に対し交付しなければならない書面をいう。
ただし、下請法第3条第2項により、下請事業者の事前承諾を得ることによって、いわゆる「電磁的方法」によって交付することができようになります。
電磁的方法による三条書面とは?
この「電磁的方法」とは、具体的には、以下の3つの方法が認められています。
イ 書面の交付に代えることができる電磁的方法
下請取引において書面の交付に代えることができる電磁的方法は以下のとおりであり、いずれの方法を用いる場合であっても、下請事業者が電磁的記録を出力して書面を作成できることが必要となる(3条規則第2条)。
○ 電気通信回線を通じて送信し、下請事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(以下「下請事業者のファイル」という。)に記録する方法(例えば、電子メール、EDI等)
○ 電気通信回線を通じて下請事業者の閲覧に供し、当該下請事業者のファイルに記録する方法(例えば、ウェブの利用等)
○ 下請事業者に磁気ディスク、CD-ROM等を交付する方法
引用元: 下請取引適正化推進講習会テキストp.114
この電磁的方法のうち、一般的な企業間取引に使用されているものが、電子メール、ウェブサービス、電子契約サービス等になります。
事前承諾は承諾書のほかにも電磁的方法(電子メール・電子契約等)でも取得できる
すでに述べたとおり、親事業者が電磁的方法で三条書面を交付する場合、下請事業者からの事前承諾が必要となります。
この事前承諾は、「書面又は電磁的方法」で得なければなりません(下請法施行令第2条第1項)。
下請法施行令第2条(情報通信の技術を利用する方法)
1 親事業者は、法第3条第2項の規定により同項に規定する事項を提供しようとするときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、当該下請事業者に対し、その用いる同項前段に規定する方法(以下「電磁的方法」という。)の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
2 (以下省略)
ここでいう「書面」はいわゆる承諾書のことを意味し、「電磁的方法」はすでに述べた3種類の方法を意味します。
このため、電磁的方法による三条書面の交付の事前承諾そのものについても、電子メールや電子契約等で取得することができます。
三条書面の電磁的方法の事前承諾が有効となる条件とは?
さて、この事前承諾は、単なる承諾では有効とならず、一定の条件を満たす必要があります。
その条件は、以下のとおりです。
下請事業者の事前承諾の条件
電磁的方法による三条書面の交付に必要な下請事業者の事前承諾の条件
- あらかじめ書面または電磁的方法による承諾を得ること(下請法施行令第2条第1項)
- 三条書面を交付する電磁的方法の種類および内容を明記すること(下請法施行令第2条第1項)
- 種類については、上記の3つの方法(電子メール等、ウェブサイト・電子契約、記録媒体の交付)のいずれかを明記すること(下請法三条規則第3条第1号)
- 内容については、「ファイルへの記録の方法」を明記すること(下請法三条規則第3条第2号)
- 三条書面が「下請事業者がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるもの」であること(下請法三条規則第2条第2項)
- 費用負担の内容を明記すること(下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項第2 1)
- 「電磁的記録の提供を受けない旨の申出を行うことができること」を明記すること(同上)
- スマートフォン等に電子メールが送信される場合はその旨についてあらかじめ合意していること
- ウェブサービス・電子契約の場合は三条書面のファイルがダウンロードできること
以下、それぞれ詳しく見ていきましょう。
条件1:あらかじめ書面または電磁的方法による承諾を得ること
事前承諾は電子メール・電子契約でも可能
電磁的方法(電子メール・電子契約)による三条書面の交付が認められる条件の1つ目は、あらかじめ書面または電磁的方法による承諾を得ることです。
すでに述べたとおり、この事前の承諾は、書面(承諾書)または電磁的方法による場合が認められています。
このため、三条書面を電磁的方法により交付することについて、電子メールや電子契約等による承諾を得ることができます。
逆に言えば、口頭での承諾は無効となります。
取引基本契約等による事前承諾も可能
なお、事前承諾は、承諾書のほか、契約書によることもできます。
このため、いわゆる取引基本契約書等によって承諾を得ることもできます。
【意味・定義】基本契約(取引基本契約)とは?
基本契約とは、継続的な売買契約、請負契約、準委任契約の取引の基本となる、個々の取引における共通した条項を規定した契約をいう。取引基本契約ともいう。
条件2:電磁的方法であることと具体的な方法(電子メール・電子契約等)を明記すること
電磁的方法(電子メール・電子契約)による三条書面の交付が認められる条件の2つ目は、電磁的方法であることと、具体的な方法を明記することです。
事前承諾は、3つの電磁的方法のうち、いずれによるものかを明らかにする必要があります。
そのうえで、どの電磁的方法であるかを明記して、下請事業者からの事前承諾を得なければなりません。
このため、電子メール、ウェブサービス、電子契約など、具体的な電磁的方法を明記する必要があります。
条件3:「ファイルへの記録の方法」を明記すること
電磁的方法(電子メール・電子契約)による三条書面の交付が認められる条件の3つ目は、「ファイルへの記録の方法」を明記することです。
電磁的方法による三条書面は、「下請事業者がファイルへの記録を出力することによる書面を作成することができるもの」、つまり印刷できるファイル形式でなければなりません(下請法三条規則第2条第2項)。
そして、このファイルについて、「ファイルへの記録の方法」についても、事前承諾を得る必要があります。
この「ファイルへの記録の方法」とは、ファイルを閲覧できるソフトウェア(バージョン)を意味します。
(ア) 承諾の方法
親事業者は、下請取引において、本法第3条の書面に記載するべき事項を電磁的方法によって提供する場合には、あらかじめ、下請事業者に対して、使用する電磁的方法の種類(電子メール、ウェブ等)及び内容(Word20○○、一太郎バージョン○○以上などのファイルへの記録方法)を示して、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない(法第3条第2項、施行令第2条第1項、3条規則第3条)。
引用元: 下請取引適正化推進講習会テキストp.114
よって、三条書面が記録されたファイルの拡張子やファイルを閲覧できるソフト等について、下請事業者からの事前承諾を得る必要があります。
条件4:費用負担の内容を明記すること
費用負担が生じる場合は明記する
電磁的方法(電子メール・電子契約)による三条書面の交付が認められる条件の4つ目は、費用負担の内容を明記することです。
1 下請事業者の承諾
親事業者が書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行う場合、事前に、下請事業者の承諾を得ることが必要となるが、親事業者が下請事業者に対して、承諾しない場合には、取引の数量を減じ、取引を停止し、取引の条件又は実施について不利益な取扱いをすること等を示唆するなど承諾を余儀なくさせることも懸念される。このような場合には、下請法及び独占禁止法上の問題が生じ得ることから、下請事業者の承諾を得るに当たっては、費用負担の内容、電磁的記録の提供を受けない旨の申出を行うことができることも併せて提示することが必要となる。
このため、電磁的方法の種類によっては、下請事業者に発生する費用負担についても明記する必要があります。
電子メールの場合は通信費の負担について明記する
一般的な電子メールの送信の場合、費用負担としてあり得るのは、通信費用の負担です。
2 費用負担
(途中省略)
(3) 通信費用等の負担
親事業者が下請事業者に書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行うために要する通信費用を下請代金から減額するなどして下請事業者に負担させることは、下請法第4条第1項第3号(減額の禁止)又は独占禁止法第19条(同法第二条第九項第五号 優越的地位の濫用)に違反するおそれがある。ただし、下請事業者が親事業者から送信された電磁的記録を受信するために要する通信費用について、あらかじめ下請事業者の承諾を受けたときは、この限りでない。
ウェブサービス・電子契約の場合は発生する費用について明記する
親事業者は下請事業者に対しシステム開発費用を請求できない
親事業者がウェブサービスや電子契約によって三条書面を交付する場合において、下請事業者に費用が発生するときは、その旨を明記して事前承諾を得る必要があります。
この点について、親事業者が電磁的方法としてシステム開発をおこなう場合は、原則として下請事業者に対し、開発費の負担を求めることはできません。
2 費用負担
(途中省略)
(3) 通信費用等の負担
親事業者が下請事業者に電磁的記録の提供を行うため、システム開発費等親事業者が負担すべき費用を下請事業者に負担させることは、下請法第4条第2項第3号(不当な経済上の利益の提供要請の禁止)又は独占禁止法第19条(同法第2条第9項第5号 優越的地位の濫用)に違反するおそれがある。ただし、下請事業者の利用に応じて追加的に発生する費用については、下請事業者が得る利益の範囲内での負担を求めることはこの限りでない。
このような負担を求める行為は、下請法(不当な経済上の利益の提供の禁止)や独占禁止法(優越的地位の濫用)に該当します。
ここでいう「下請事業者の利用に応じて追加的に発生する費用」とは、以下のとおりです。
a 電磁的記録の提供に係るシステム開発費等
(途中省略)
「下請事業者の利用に応じて追加的に発生する費用」とは、例えば、親事業者が電子受発注に利用しているシステムにおいて、下請事業者に対して、統計情報、商品の需要予測等の情報も提供できる仕組みとなっている場合、下請事業者が、このような情報を利用することによって発生する費用等が該当する。
引用元: 下請取引適正化推進講習会テキストp.115
親事業者は下請事業者に対しハードウェア・ソフトウェアの購入を強制できない
なお、親事業者は、下請事業者に対して、正当な理由がないのに、自己の指定するハードウェア(通信機器、電子計算機等)やソフトウェアの購入、関連するサービス(プロバイダー等)の提供を受けることを強制することはできません。
同様に、親事業者は、一部の機能しか利用しない下請事業者に対し、ほとんどの機能のシステム利用料の負担を求めることもできません。
2 費用負担
(途中省略)
(2) 電子情報機器等の購入等
下請事業者が電磁的記録の提供を受けるために必要な通信機器、電子計算機等の機器、ソフトウェア等を購入することやインターネットプロバイダ、システムサービス事業者等からの役務の提供を受けることとなっても、親事業者が下請事業者に対して、書面の交付に代えて電磁的記録の提供を求めること自体は、直ちに、下請法又は独占禁止法上問題となるものではない。しかしながら、親事業者が下請事業者に対して、次のような行為を行う場合は、下請法第4条第1項第6号(購入強制の禁止)又は独占禁止法第19条(同法第二条第九項第五号 優越的地位の濫用)に違反するおそれがある。ア 正当な理由がないのに、自己の指定する通信機器、電子計算機等の機器、ソフトウェア等を購入させ、又は自己の指定するインターネットプロバイダ、システムサービス事業者等からの役務の提供を受けさせること。
イ 親事業者が提供するシステムの一部の機能しか下請事業者が利用しないにもかかわらず、そのほとんどの機能を利用することを前提とした費用の負担を求めること
このような強制は、下請法(不当な経済上の利益の提供の禁止)や独占禁止法(優越的地位の濫用)に該当します。
条件5:「電磁的記録の提供を受けない旨の申出を行うことができること」を明記すること
電磁的方法(電子メール・電子契約)による三条書面の交付が認められる条件の5つ目は、「電磁的記録の提供を受けない旨の申出を行うことができること」を明記することです。
1 下請事業者の承諾
親事業者が書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行う場合、事前に、下請事業者の承諾を得ることが必要となるが、親事業者が下請事業者に対して、承諾しない場合には、取引の数量を減じ、取引を停止し、取引の条件又は実施について不利益な取扱いをすること等を示唆するなど承諾を余儀なくさせることも懸念される。このような場合には、下請法及び独占禁止法上の問題が生じ得ることから、下請事業者の承諾を得るに当たっては、費用負担の内容、電磁的記録の提供を受けない旨の申出を行うことができることも併せて提示することが必要となる。
親事業者は、下請事業者に対し、電磁的方法による三条書面の提供について強制はできません。
このため、事前承諾の内容としては、電磁的方法での三条書面の提供について「拒否できる」ことも明記する必要があります。
条件6:スマートフォン等に送信される場合はその旨についてあらかじめ合意していること
電磁的方法(ただし電子メールに限る)による三条書面の交付が認められる条件の6つ目は、スマートフォン等に送信される場合はその旨についてあらかじめ合意していることです。
「携帯電話」への電子メールの送信は、「下請法で認められる電磁的記録の提供に該当しない」とされています。
2 電子メール等による電磁的記録の提供に係る留意事項
(1)(途中省略)また、携帯電話に電子メールを送信する方法は、電磁的記録が下請事業者のファイルに記録されないので、下請法で認められる電磁的記録の提供に該当しない。
ただし、いわゆるスマートフォンのように、電子計算機=パソコンと同等の機能の携帯電話の場合は、ファイルが記録されます。
このため、スマートフォン等に電子メールで三条書面を送付することについてあらかじめ合意されている場合は、電磁気的記録の提供に該当します。
a 電子メールにより提供する場合
なお、携帯電話に電子メールを送付する方法については、電子メールを記録する機能のない携帯電話端末への送付は認められないが、携帯電話端末にメモリー機能が備わっており、下請事業者が所有する特定の携帯電話端末のメールアドレスに必要事項を電子メールで送付することがあらかじめ合意されているなど、下請事業者のファイルに記録する方法と認められる場合には、3条規則第2条第1項第1号イに規定する電磁的方法に該当する。
引用元: 下請取引適正化推進講習会テキストp.114
よって、スマートフォンで三条書面が受信される場合は、事前承諾の内容として、下請事業者がメモリー機能が備わっているスマートフォン等の携帯電話で受信することと、そのメールアドレスについて合意があることを明示する必要があります。
条件7:三条書面のファイルがダウンロードできること
電磁的方法(ただしウェブサービスや電子契約に限る)による三条書面の交付が認められる条件の7つ目は、三条書面が記録されたファイルがダウンロードできることです。
ウェブサービスや電子契約で三条書面を閲覧させる場合、以下のとおり、ダウンロード機能を持たせ、下請事業者が三条書面のファイルをダウンロードできるようにする必要があります。
2 電子メール等による電磁的記録の提供に係る留意事項
(途中省略)
(2) 書面の交付に代えてウェブのホームページを閲覧させる場合は、下請事業者がブラウザ等で閲覧しただけでは、下請事業者のファイルに記録したことにはならず、下請事業者が閲覧した事項について、別途、電子メールで送信するか、ホームページにダウンロード機能を持たせるなどして下請事業者のファイルに記録できるような方策等の対応が必要となる。
事前承諾があっても違法となる交付のしかたとは?
注意1:電子メールは「受信」していなければ提供したことにならない
親事業者が電子メールで三条書面を添付して送信する場合、親事業者から単に送信されただけでは、三条書面として提供したことにはなりません。
以下のとおり、下請事業者の電子計算機(=パソコン)に記録される、つまり、電子メールが受信されていることが必要となります。
2 電子メール等による電磁的記録の提供に係る留意事項
(1) 書面の交付に代えて電子メールにより電磁的記録の提供を行う場合は、下請事業者の使用に係るメールボックスに送信しただけでは提供したとはいえず、下請事業者がメールを自己の使用に係る電子計算機に記録しなければ提供したことにはならない。例えば、通常の電子メールであれば、少なくとも、下請事業者が当該メールを受信していることが必要となる。(以下省略)
注意2:「下請事業者のファイルに記録されたか否かを確認することが必要」
親事業者が電磁的方法で三条書面を提供する場合、次のとおり、親事業者は、「下請事業者のファイルに記録されたか否かを確認することが必要」となります。
4 電磁的記録の提供を行うことができなかったときの措置
(途中省略)また、親事業者が書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行うに当たって、電磁的記録を送信し又は下請事業者が閲覧した場合であっても、下請事業者のファイルに記録されなかったときは、下請法第3条に違反することとなるので、親事業者において下請事業者のファイルに記録されたか否かを確認することが必要となる。
具体的な方法としては、電子メールの場合は、いわゆる「開封確認」機能がついたものの送信があります。
また、ウェブサービスや電子契約の場合は、内容の確認や契約の締結の際に、自動的にファイルがダウンロードされる機能等が考えられます。
なお、この確認を怠った場合は、三条書面を交付したことにはならず、下請法第3条に違反することとなります。
事前承諾がない場合や不十分な場合の罰則とは?
事前承諾がない・不十分な提供は下請法第3条違反
以上のように、三条書面の電磁的方法に関する事前承諾については、詳細な条件があります。
また、事前承諾の条件を満たしていたとしても、電磁的方法による三条書面の提供の仕方にも詳細な条件があります。
これらの事前承諾がない場合や、不十分な承諾、提供の場合は、そもそも三条書面を提供していないこととなります。
つまり、下請法第3条に違反することとなります。
下請法第3条違反は最大で50万円の罰金が個人単位にも科される
このように、親事業者が下請業者に対し三条書面を交付しない場合や不十分な形で交付した場合は、50万円以下の罰金が科されます。
下請法第10条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、50万円以下の罰金に処する。
(1)(省略)
(2)第5条の規定による書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の書類若しくは電磁的記録を作成したとき。
ポイントは、親事業者である法人だけに罰金が科されるのではなく、「その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者」にも罰金が科される、ということです。
つまり、会社で50万円を払えばいい、というものではないのです。しかも、50万円とはいえ、いわゆる「前科」がつきます。
なお、親事業者である法人にも、罰金は科されます。
下請法第12条(罰則)
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前2条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。
ポイント
- 三条書面を交付しないことは犯罪行為。
- しかも法人だけでなく個人にも罰金が科される。
補足:下請法の対象かどうかの条件とは?
下請法が適用される対象かどうかの条件は、以下のパターンのいずれかとなります。
パターン1 | |||
---|---|---|---|
親事業者 | 下請事業者 | ||
資本金の区分 | 3億1円以上 | 3億円以下(または個人事業者) | |
業務内容 |
|
パターン2 | |||
---|---|---|---|
親事業者 | 下請事業者 | ||
資本金の区分 | 1千万1円以上3億円以下 | 1千万円以下(または個人事業者) | |
業務内容 |
|
パターン3 | |||
---|---|---|---|
親事業者 | 下請事業者 | ||
資本金の区分 | 5千万1円以上 | 5千万円以下(または個人事業者) | |
業務内容 |
|
パターン4 | ||
---|---|---|
親事業者 | 下請事業者 | |
資本金の区分 | 1千万1円以上5千万円以下 | 1千万円以下(または個人事業者) |
業務内容 |
|
これらのパターンのいずれかに該当する場合は、下請法の適用対象となり、親事業者は、下請事業者に対し、三条書面を交付しなければなりません。
これらの下請法が適用されるかどうかの条件につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
関連:フリーランス保護法にも同様の規制・罰則がある
なお、下請法と同様の法律として、フリーランス保護法(新法)があります。
【意味・定義】フリーランス保護法(フリーランス新法)とは?
フリーランス保護法・フリーランス新法とは、正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(別名:フリーランス・事業者間取引適正化等法)といい、フリーランスに係る取引の適正化、就業環境の整備等を図る法律をいう。
このフリーランス保護法は、従業員を雇っていないフリーランス・個人事業者や、一人法人に対する業務委託契約に適用される法律です。
こうしたフリーランス等に対し業務委託をする場合、発注事業者には、フリーランス保護法第3条により、下請法同様、フリーランス等に対し取引内容を通知する義務があります。
フリーランス保護法第3条(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
1 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。
2 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。
この通知のことを、三条通知といいます。
【意味・定義】三条通知(フリーランス保護法)とは?
三条通知(フリーランス保護法)とは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)第3条に規定された、業務委託事業者(発注事業者)が特定受託事業者(フリーランス)に対し明示しなければならない通知をいう。
このため、下請法が適用されない場合であっても、フリーランス保護法により、メール発注が違法となることもあります。
この他、三条通知につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
下請法違反とならない契約書・注文書・発注書(三条書面)を作成しよう
弊所では、下請法違反とならない、三条書面の要件を満たした適法な契約書・注文書・発注書を作成しております。
下請事業者との契約をご検討中の親事業者の方々は、ぜひ作成をご検討ください。
お見積りは完全無料となっていますので、お問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
三条書面の電磁的方法による提供の承諾書に関連するQ&A
- 下請法の三条書面を電子メールで送ることはできますか?
- 三条書面を電子メールに添付して送信することはできます。ただし、この場合、一定の条件を満たしていないと、下請法第3条に違反することとなります。
- 1 三条書面の事前承諾とは?
- 2 事前承諾は承諾書のほかにも電磁的方法(電子メール・電子契約等)でも取得できる
- 3 三条書面の電磁的方法の事前承諾が有効となる条件とは?
- 4 条件1:あらかじめ書面または電磁的方法による承諾を得ること
- 5 条件2:電磁的方法であることと具体的な方法(電子メール・電子契約等)を明記すること
- 6 条件3:「ファイルへの記録の方法」を明記すること
- 7 条件4:費用負担の内容を明記すること
- 8 条件5:「電磁的記録の提供を受けない旨の申出を行うことができること」を明記すること
- 9 条件6:スマートフォン等に送信される場合はその旨についてあらかじめ合意していること
- 10 条件7:三条書面のファイルがダウンロードできること
- 11 事前承諾があっても違法となる交付のしかたとは?
- 12 事前承諾がない場合や不十分な場合の罰則とは?
- 13 補足:下請法の対象かどうかの条件とは?
- 14 関連:フリーランス保護法にも同様の規制・罰則がある
- 15 下請法違反とならない契約書・注文書・発注書(三条書面)を作成しよう
- 16 三条書面の電磁的方法による提供の承諾書に関連するQ&A