- 電子データの成果物の納入がある場合、下請法の三条書面における納品場所・納入場所(=「下請事業者の給付を受領する場所」)の書き方はどうするべきでしょうか?
- 下請法が適用される場合であっても、「場所の特定が不可能な委託内容の場合」は、「場所の記載は要しない」とされています。ただし、電子データの成果物の場合は、納入先である電子メールアドレス・URLや、納入方法としてのツール・システム等を記載しないと、「下請事業者の給付の内容」の記載が不十分であるとみなされる可能性があります。
このページでは、下請法の親事業者である委託者向けに、三条書面における電子データの成果物の納品場所・納入場所の書き方について解説しています。
下請法の親事業者には、三条書面において、「下請事業者の給付を受領する場所」として、納品場所・納入場所を明記する義務があります。
しかしながら、場所の特定が不可能な場合は、必ずしも納品場所・納入場所を記載する必要はありません。
ただし、まったく納品・納入について記載しないと、「下請事業者の給付の内容」の記載が不十分であるとみなされる可能性があります。
このページでは、こうした下請法が適用される業務委託契約における三条書面の書き方、特に電子データの成果物の納入場所・納品場所・納品先について、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。
このページでわかること
- 契約書・発注書等におけるデータ形式の成果物の納品場所・納入場所の書き方
- 下請法やフリーランス保護法における納品場所・納入場所の規制
下請法の三条書面における電子データの納品場所・納入場所は書かなくてもいい?
納品場所・納入場所は下請法の三条書面の必須記載事項
下請法が適用される場合は、納品場所・納入場所は、「下請事業者の給付を受領する場所」として、三条書面の必須記載事項とされています。
【意味・定義】三条書面(下請法)とは?
三条書面(下請法)とは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)第3条に規定された、親事業者が下請事業者に対し交付しなければならない書面をいう。
このため、親事業者には、下請事業者に対し、履行場所・納入場所を明らかにして書面で通知する義務があります。
納品場所・納入場所がない場合は記載は不要
ただし、「下請代金支払遅延等防止法第3条に規定する書面に係る参考例」(p.14)によると、「また、委託内容から場所の特定が不可能な委託内容の場合には、場所の記載は要しない。」とされています。
また、委託内容から場所の特定が不可能な委託内容の場合には、場所の記載は要しない。
引用元:下請代金支払遅延等防止法第3条に規定する書面に係る参考例p.14
このため、データ形式の成果物について、特に納品場所・納入場所がない場合は、無理に場所を記載する必要まではありません。
「下請事業者の給付の内容」の一部として納入方法を明記する
ただ、電子データの成果物の納入の場合、電子メールアドレスへの送信、特定のURLへのアップロード、ツールやシステムなどの使用による納入がある場合もあります。
この場合、納入方法としてこうした電子メールアドレス、URL、ツール・システム等を記載しないと、「下請事業者の給付を受領する場所」とは別に、「下請事業者の給付の内容」の記載が不十分であるとみなされる可能性があります。
このため、後述のフリーランス保護法と同様に、納品場所・納入場所として、電子メールアドレスやURL等を記載しても問題ありません。
この他、三条書面につきましては、につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
参考:フリーランス保護法の三条通知における電子データの納品場所・納入場所は書かなくてもいい?
納品場所・納入場所はフリーランス保護法の三条通知の必須記載事項
下請法同様、フリーランス保護法が適用される場合は、納品場所・納入場所は、「特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける場所」として、三条通知の必須記載事項とされています。
【意味・定義】三条通知(フリーランス保護法)とは?
三条通知(フリーランス保護法)とは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)第3条に規定された、業務委託事業者(発注事業者)が特定受託事業者(フリーランス)に対し明示しなければならない通知をいう。
このため、発注事業者には、フリーランスに対し、履行場所・納入場所を明示する義務があります。
例外として納品場所・納入場所を記載しなくてもいい場合とは?
ただし、以下の2点の場合は、納品場所・納入場所について明示する必要はありません。
納品場所・納入場所について明示しなくてもいい場合
- 委託内容=業務内容に給付を受領する場所等が明示されている場合
- 給付を受領する場所等の特定が不可能な委託内容の場合
オ 特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける場所(本法規則第1条第1項第5号)
(途中省略)
ただし、主に役務の提供委託において、委託内容に給付を受領する場所等が明示されている場合や、給付を受領する場所等の特定が不可能な委託内容の場合には、場所の明示は要しない。
引用元:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方第2部第1 1(1)オ
このため、データ形式の成果物について、特に納品場所・納入場所がない場合は、無理に場所を記載する必要まではありません。
フリーランス保護法の場合は納品場所・納入場所として電子メールアドレス等を記載できる
また、下請法とは異なり、データそのものを電子メール等に添付して納入する場合、納品場所・納入場所を明示するのではなく、納入先である電子メールアドレス等を明示することも認められています。
オ 特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける場所(本法規則第1条第1項第5号)
(途中省略)
また、給付を受領する場所等について、主に情報成果物の作成委託において、電子メール等を用いて給付を受領する場合には、情報成果物の提出先として電子メールアドレス等を明示すれば足りる。
引用元:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方第2部第1 1(1)オ
このため、フリーランス保護法が適用される業務委託契約において、データ形式の成果物がある場合は、納品場所・納入場所として、電子メールアドレスやURL等の記載でも差し支えありません。
なお、この場合であっても、詳細な納入方法を規定しないと、「特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける場所」とば別に、「特定受託事業者の給付の内容」の記載が不十分であるとみなされる可能性があります。
この他、三条通知につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
納品場所・納入場所・納品先や納入方法の書き方は?
具体的なデータ形式の成果物の納品場所・納入場所・納入先に関する契約書・三条書面・三条通知の書き方は、以下のとおりです。
電子メールアドレスの場合
データの納入方法として、電子メールアドレスに送信する場合の契約書・三条書面・三条通知の書き方は、以下のとおりとなります。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】納品場所・納入場所・納入先に関する条項(電子メールアドレス1)
第○条(納入方法および納入場所)
1 本件成果物の納入方法は、当該本件成果物のファイルが添付された電子メールの送信とする。
2 本件成果物の納入場所は、委託者の電子メールアドレスである●●@●●.co.jpとする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
上記をより簡略化したものが、以下のものとなります。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】納品場所・納入場所・納入先に関する条項(電子メールアドレス2)
第○条(納入方法)
本件成果物の納入方法は、●●@●●.co.jpに対する当該本件成果物のファイルが添付された電子メールの送信とする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
URLの場合
特定のURLにアップロードする場合
データの納入方法として、特定のURLにアップロードする場合の契約書・三条書面・三条通知の書き方は、以下のとおりとなります。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】納品場所・納入場所・納入先に関する条項(URL1)
第○条(納入方法および納入場所)
1 本件成果物の納入方法は、当該本件成果物のファイルのアップロードとする。
2 本件成果物の納入場所は、https://www.●●.com/●●とする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
上記の例は、あくまでそのURLにおいて、何らかのアップロードできる仕組みがある場合を想定したものとなります。
なんらかのツールを使用する場合
また、特定のウェブサービスやシステムなどのツールの利用が前提である場合は、その名称を明記します。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】納品場所・納入場所・納入先に関する条項(URL2)
第○条(納入方法および納入場所)
1 本件成果物の納入方法は、WordPressを使用した当該本件成果物の投稿とする。
2 本件成果物の納入場所は、https://www.●●.com/●●に存在する投稿ページとする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
上記の例は、WordPressを利用したライティング業務委託契約の場合の例です。
ファイル送信サービスを使用する場合
【契約条項の書き方・記載例・具体例】納品場所・納入場所・納入先に関する条項(URL3)
第○条(納入方法および納入場所)
1 本件成果物の納入方法は、ファイル送信サービスである●●を使用した当該本件成果物のファイルの送信とする。
2 本件成果物の納入場所は、https://www.●●.com/とする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
上記をより簡略化したものが、以下のものとなります。
【契約条項の書き方・記載例・具体例】納品場所・納入場所・納入先に関する条項(URL3)
第○条(納入方法)
本件成果物の納入方法は、ファイル送信サービスである●●(https://www.●●.com/)に対する当該本件成果物のファイルの送信とする。
(※便宜上、表現は簡略化しています)
この他、契約書・発注書でのデータ(成果物)の納品場所・納入場所の書き方につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。