このページでは、企業とフリーランスとの契約に労働基準法が適用され、違法な労働契約と判断される条件とそのリスクについて解説しています。

フリーランスとの契約については、「形式的には業務委託契約でも労働基準法が適用されて違法な労働契約とみなされるのでは?」と不安になる方もいらっしゃると思います。

それもそのはずで、個人であるフリーランスとの業務委託契約は、同じく個人である労働者との労働契約と非常によく似た契約です。

このため、実際にフリーランスとの業務委託契約が労働契約とみなされた事例はいくつもあります。

そこで、このページでは、フリーランスとの業務委託契約に労働基準法が適用されるかどうかについて、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページをご覧いただくことで、以下の内容を理解できます。

ポイント
  • フリーランスとの契約が業務委託契約に労働基準法が適用され、違法な労働契約と判断される条件
  • フリーランスとの契約が違法な労働契約とみなされた場合のリスク




フリーランスと労働者の違いとは?

フリーランスの定義は?

フリーランス=個人事業者・個人事業主

フリーランスとは、法律上の明確な定義はありませんが、一般的には、事業をおこなう個人のことをいいます。

【意味・定義】フリーランスとは?

フリーランスとは、事業をおこなう個人をいう。

フリーランスは、法律上は、「個人事業者」(または個人事業主)が正確な表現です。

ただ、フリーランスは、一般的には、労働者を雇わずに、一人で事業をしている個人事業者を意味します。

一人親方とは?

なお、フリーランスとほぼ同様の意味で使われる用語に、「一人親方」があります。

この一人親方は、主に建設業に従事する個人事業者のことを意味します。

【意味・定義】一人親方とは?

一人親方とは、建設業に従事する個人事業者のうち、労働者を雇わずに一人で事業をしている者をいう。

一人親方もまた、労働者を雇わずに、一人で事業をしています。

労働者の定義は?

これに対し、労働者とは、労働基準法第9条によると、次のとおりです。

労働基準法第9条(定義)

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

【意味・定義】労働者(労働基準法)とは?

労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう(労働基準法第9条)。

フリーランスと労働者の違いとは?

このように、表現だけを見れば、フリーランスと労働者の定義は明らかです。

フリーランスと労働者の違い
  • 自ら事業をおこない、報酬を得る個人がフリーランス。
  • 事業者に使用され、賃金を得る個人が労働者。

この他にも、様々な部分が、フリーランスと労働者では異なります。

フリーランスと労働者の15の違い
業務委託契約と雇用契約・労働契約の違い一覧表
業務委託契約雇用契約・労働契約
委託者・使用者に提供されるもの請負契約:仕事の完成
(準)委任契約:委託業務の実施
労働力
受託者・労働者に提供されるもの金銭(報酬・料金・委託料)+消費税金銭(報酬・賃金)
契約当事者の関係企業間の取引関係(理屈のうえでは対等)労使関係
適用される法律商法・会社法・独占禁止法・下請法・家内労働法・特定商取引法・各種業法各種労働法(労働基準法・労働契約法等)
報酬・賃金等の金銭に対する規制原則としてなし(ただし下請法等の規制あり)最低賃金法・労働基準法(特に残業代)などの規制あり
報酬・賃金の金額一般的には労働者の賃金に比べて報酬・料金・委託料は高い一般的には個人事業者・フリーランスの報酬・料金・委託料に比べて賃金は低い
報酬・賃金等の金銭に対する源泉徴収義務原則として委託者に源泉徴収義務はなし
(ただし例外に該当する場合が多い)
使用者に源泉徴収義務あり
報酬・賃金等が消費税の仕入税額控除の対象となるか対象となる対象とならない
社会保険料等の負担受託者である個人事業者・フリーランス労使双方の負担
仕事の諾否の自由ありなし
指揮命令の有無なしあり
場所・時間の拘束性の有無なしあり
業務の代替性の有無請負契約:あり
(準)委任契約:なし
なし
業務遂行に必要な機械・器具等・費用の負担受託者である個人事業者・フリーランスの負担使用者の負担
業務遂行にもとづく損害の負担原則として受託者である個人事業者・フリーランスの負担原則として使用者の負担

これらのフリーランスと労働者の違いの解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

個人事業者・フリーランスとの業務委託契約と雇用契約・労働契約の15の違い

ポイント
  • フリーランスとは、事業をおこなう個人のこと。
  • 労働者とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者(労働基準法第9条)のこと。
  • 自ら事業をおこない、報酬を得る個人がフリーランスであり、事業者に使用され、賃金を得る個人が労働者であるが、外形上は見分けがつかない。





形式的にはフリーランスでも実質的には労働者=偽装請負であることも

このように、フリーランスと労働者には多くの違いがありますが、その違いの多くは、表には出ないものです。

つまり、フリーランスと労働者の違いは、外形的には区別がつきにくいものです。

このため、フリーランスの実態が労働者である、ということがよくあります。

このように、形式的にはフリーランスとしての業務委託契約であっても、実質的には労働者として雇用契約・労働契約であることを偽装請負と呼ぶこともあります。

【意味・定義】偽装請負(労働基準法・労働契約)とは?

労働基準法・労働契約における偽装請負とは、実態は労働契約なのに、労働基準法等の法律の規制を免れる目的で、請負その他労働契約以外の名目で契約が締結され、事実上の労働者が就労している状態をいう。

ポイント
  • 労働基準法・労働契約における偽装請負とは、実態は労働契約なのに、労働基準法等の法律の規制を免れる目的で、請負その他労働契約以外の名目で契約が締結され、事実上の労働者が就労している状態のこと。





フリーランスとの業務委託契約に労働基準法が適用される条件とは

厚生労働省のガイドライン「労働基準法研究会報告」で判断される

では、フリーランスと労働者の区別はどのようにされるのでしょうか?

フリーランスと労働者の区別は、厚生労働省が公表しているガイドラインである、『労働基準法研究会報告』(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)により判断されます。

その内容は、カッコ書きにあるとおり、「労働基準法」の「労働者」の判定基準を示したものです。

【意味・定義】昭和60年労働基準法研究会報告とは?

昭和60年労働基準法研究会報告とは、旧労働省(現:厚生労働省)の労働基準法研究会によっておこなわれた、労働基準法第9条の「労働者」の定義と、その判定基準をいう。

ガイドラインに抵触するとフリーランスとの業務委託契約に労働基準法が適用される

この「労働基準法研究会報告」に抵触した場合は、たとえフリーランスと締結している契約が業務委託契約であったとしても、労働基準法が適用され、フリーランスは労働者として扱われます。

つまり、タイトルだけが「業務委託契約」や「業務委託契約書」だったとしても、その内容が「労働基準法研究会報告」に適合したものでなければ、その契約は労働契約として扱われます。

このため、適法な業務委託契約とし、労働基準法が適用されず、フリーランスが労働者として扱われないようにするためには、労働基準法研究会報告に適合した業務委託契約書の作成が必須となります。

業務委託契約書を作成する理由

労働契約とみなされず、労働基準法が適用されない適法な業務委託契約とするためには、労働基準法研究会報告のガイドラインに適合した業務委託契約書が必要となるから。

この他、労働基準法研究会報告の詳細な解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)とは

補足:労働組合法の「労働者」の判断基準も別にある

なお、労働組合法の「労働者」の判断基準を示したものも、別に存在します。

参照:労使関係法研究会報告書(労働組合法上の労働者性の判断基準について)平成23年7月 労使関係法研究会

同じ「労働者」という表現でも、労働基準法の「労働者」と労働組合法の「労働者」は、必ずしも一致しませんので、ご注意ください。

ポイント
  • フリーランスと労働者の区別は、厚生労働省が公表しているガイドラインである、『労働基準法研究会報告』(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)により判断される。
  • ガイドラインに抵触するとフリーランスとの業務委託契約に労働基準法が適用される。
  • 労働契約とみなされず、労働基準法が適用されない適法な業務委託契約とするためには、労働基準法研究会報告のガイドラインに適合した業務委託契約書が必要となる。





フリーランスとの契約で労働基準法が適用されないチェックポイント

チェックリスト=「『労働者性』の判断基準」

なお、フリーランスとの業務委託契約で労働基準法が適用されず、適法な業務委託契約とするには、以下のチェックポイントを満たす必要があります。

偽装請負(労働基準法違反)とならないチェックリスト

「使用従属性」に関する判断基準のチェックリスト

  • 1.受託者が委託者の「指揮監督下の労働」を提供していない
    • 1-1.受託者に「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由」がある
    • 1-2.委託者による「業務遂行上の指揮監督」がない
      • 1-2-1.委託者による「業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令」がない
      • 1-2-2.予定外の業務がない
    • 1-3.拘束性がない
    • 1-4.代替性がある(受託者による再委託等ができる)
  • 2.報酬に労務対償性がある
    • 2-1.報酬が「労働の結果による」計算となっている
    • 2-2.欠勤した場合であっても「応分の報酬が控除」されない
    • 2-3.残業をした場合であっても「通常の報酬とは別の手当が支給」されない

「労働者性」の判断を補強する要素のチェックリスト

  • 3.事業者性の有無
    • 3-1.受託者が機械・器具の所有している
    • 3-2.高額な報酬である
    • 3-3.その他
      • 3-3-1.受託者が損害賠償責任を負う
      • 3-3-2.受託者による独自の商号使用が認められている
  • 4.専属性の程度
    • 4-1.「他社の業務に従事することが制度上制約」されていない
    • 4-2.他社の業務に従事する時間的余裕がある
    • 4-3.報酬に固定給部分がない
    • 4-4.「業務の配分等により事実上固定給」となっていない
    • 4-5.報酬の額が「生計を維持しうる程度のもの」でない
  • 5.その他
    • 5-1.「採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様」ではない
    • 5-2.報酬について「給与所得」としては源泉徴収をおこなっていない
    • 5-3.労働保険の適用対象としていない
    • 5-4.服務規律を適用していない
    • 5-5.退職金制度、福利厚生を適用していない




「使用従属性に関する判断基準」→「労働者性の判断を補強する要素」の順に判断される

上記のとおり、「『労働者性』の判断基準」は、以下の2つに分かれています。

2つの「労働者性」の判断基準
  • 「使用従属性」に関する判断基準
  • 「労働者性」の判断を補強する要素

この2点の判断基準ですが、まずは「使用従属性」について判断し、雇用契約・労働契約に該当するかどうかが決定されます。

この際、明らかに雇用契約・労働契約に該当すると判断される場合や、該当しないと判断される場合は、「労働者性」については考慮されることはありません。

そのうえで、「使用従属性」の判断だけでは、雇用契約・労働契約に該当するかどうかの判断ができない場合は、「『労働者性』の判断を補強する要素」も勘案して総合的に判断されることとなります。

つまり、まずは「使用従属性に関する判断基準」で判断して、それでも労働者かそうでないか判断がつかない場合は、「『労働者性』の判断を補強する要素」を勘案して、労働者かどうかを総合的に判断します。

この他、業務委託契約が偽装請負(雇用契約・労働契約)にならないチェックリストの詳細な解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

労働者性のチェックリスト―業務委託契約のフリーランスと労働者の判断基準

ポイント
  • 「使用従属性に関する判断基準」→「労働者性の判断を補強する要素」の順に判断される。
  • 「使用従属性に関する判断基準」だけで労働者である、または労働者でないと判断された場合は、「労働者性」については判断されない。
  • 「使用従属性に関する判断基準」だけでは判断がつかない場合は、「労働者性の判断を補強する要素」が勘案され、労働者かどうかが総合的に判断される。





フリーランスとの業務委託契約で労働基準法が適用されるリスクとは

フリーランスとの業務委託契約に労働基準法が適用されるリスク

フリーランスとの業務委託契約に労働基準法が適用され、労働契約とみなされた場合、委託者にとっては以下のリスクがあります。

フリーランスとの業務委託契約で労働基準法が適用されるリスク
  • 報酬・料金・委託料が従業員の残業代と比較して少ない場合は、残業代を請求される。
  • 極端に報酬・料金・委託料が少ない場合は、最低賃金以上の給料を請求される。
  • 「個人事業者・フリーランス」が業務実施中に事故に遭うと「労災」を主張される。
  • 日本年金機構(悪質な場合は国税庁)に社会保険料の負担を求められる。
  • 税務調査の際に「給与所得」としての源泉所得税(しかも追徴課税つき)の支払いを求められる。

リスク1:残業代を請求される

業務委託契約に労働基準法が適用されるリスクの1つめは、受託者から残業代を請求されることです。

チェックリストの2-3.で示したとおり、そもそもフリーランスとの適法な業務委託契約では、委託者は、残業代を払ってはいけません。

根拠条文

(2)報酬の労務対償性に関する判断基準

労働基準法第11条は、「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」と規定している。すなわち、使用者が労働者に対して支払うものであって、労働の対償であれば、名称の如何を問わず「賃金」である。この場合の「労働の対償」とは、結局において「労働者が使用者の指揮監督の下で行う労働に対して支払うもの」と言うべきものであるから、報酬が「賃金」であるか否かによって逆に「使用従属性」を判断することはできない。

しかしながら、報酬が時間給を基礎として計算される等労働の結果による較差が少ない、欠勤した場合には応分の報酬が控除され、いわゆる残業をした場合には通常の報酬とは別の手当が支給される報酬の性格が使用者の指揮監督の下に一定時間労務を提供していることに対する対価と判断される場合には、「使用従属性」を補強することとなる。

しかし、たとえ委託者が残業代を支払っていなかったとしても、他のチェックポイントに適合していない業務委託契約の場合、その業務委託契約に労働基準法が適用されることがあります。

その結果、適法な業務委託契約ではなく違法な労働契約と判断された場合、実態は労働者であるフリーランスから、残業代を請求されるリスクがあります。

リスク2:最低賃金以上の給料を請求される

業務委託契約に労働基準法が適用されるリスクの2つめは、受託者から最低賃金以上の「給料」を請求されることです。

チェックリストの3-2.で示したとおり、そもそもフリーランスとの適法な業務委託契約では、委託者の正社員の賃金よりも著しく高額な報酬でなければなりません。

根拠条文

ロ 報酬の額

報酬の額が当該企業において同様の業務に従事している正規従業員に比して著しく高額である場合には、上記イと関連するが、一般的には、当該報酬は、労務提供に対する賃金ではなく、自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う「事業者」に対する代金の支払と認められ、その結果、「労働者性」を弱める要素となるものと考えられる。

このため、委託者が不当に低い報酬を支払っていた場合、その業務委託契約に労働基準法が適用されることがあります。

労働基準法が適用された場合は、業務委託契約でなく違法な労働契約と解釈されますので、最低賃金法が適用されます。

その結果、最低賃金を下回る報酬を支払っていた場合は、実態は労働者であるフリーランスから、不足分の「賃金」の支払いを請求されるリスクがあります。

なお、フリーランス・個人事業者との業務委託契約における最低賃金以下の報酬のリスクにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

最低賃金はフリーランス・個人事業者との業務委託契約(請負契約・準委任契約)に適用される?

リスク3:「労災」を主張される

業務実施中や移動中の事故はフリーランス自身が負担する

業務委託契約に労働基準法が適用されるリスクの3つめは、受託者から「労災」を主張されることです。

チェックリストの5-3.で示したとおり、そもそもフリーランスとの適法な業務委託契約では、フリーランスを労働保険の適用対象としてはいけません。

根拠条文

(3)その他

以上のほか、裁判例においては、①採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様であること、②報酬について給与所得としての源泉徴収を行っていること、③労働保険の適用対象としていること、④服務規律を適用していること、⑤退職金制度、福利厚生を適用していること等「使用者」がその者を自らの労働者と認識していると推認される点を、「労働者性」を肯定する判断の補強事由とするものがある。

このため、本来であれば、委託された業務の実施中に事故が発生したり、移動中に交通事故に遭ったりしても、フリーランスは、自身が加入する傷害保険や自動車保険などのにより対応しなければなりません。

甚大な事故が発生すると「手のひら」を返されるリスクがある

しかし、たとえ委託者がフリーランスを労働保険の適用対象としてなかったとしても、他のチェックポイントに適合していない業務委託契約の場合、その業務委託契約に労働基準法が適用されることがあります。

その結果、適法な業務委託契約ではなく違法な労働契約と判断された場合、実態は労働者であるフリーランスから、労災を申請されるリスクがあります。

特に甚大な事故が発生した場合は、それまでフリーランスが特に労働契約である旨を主張していなかったとしても、「手のひら」を返して労働契約である旨を主張することも考えられます。

これは、フリーランスが業務の実施や移動に関する保険に加入していない結果、膨大な事故の被害について自己負担になってしまった場合にありえる話です。

リスク4:社会保険料の負担を求められる

企業が負担する社会保険料は直接雇用の労働者のみ

業務委託契約に労働基準法が適用されるリスクの4つめは、日本年金機構や国税庁から過去に遡って社会保険料の負担を求められることです。

一般的な事業会社であれば、労働者についての次の社会保険料を負担しています。

企業負担がある社会保険料
  • 健康保険
  • 介護保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

他方で、フリーランスの場合は、社会保険料は、原則としてすべて自己負担となります。

フリリーランスが労働者扱いになると社会保険料の負担を求められる

このため、チェックリストの5-3.でも示したとおり、そもそもフリーランスとの適法な業務委託契約では、フリーランスを労働保険の適用対象としてはいけません。

根拠条文

(3)その他

以上のほか、裁判例においては、①採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様であること、②報酬について給与所得としての源泉徴収を行っていること、③労働保険の適用対象としていること、④服務規律を適用していること、⑤退職金制度、福利厚生を適用していること等「使用者」がその者を自らの労働者と認識していると推認される点を、「労働者性」を肯定する判断の補強事由とするものがある。

しかし、たとえ委託者がフリーランスを労働保険の適用対象としてなかったとしても、他のチェックポイントに適合していない業務委託契約の場合、その業務委託契約に労働基準法が適用されることがあります。

その結果、適法な業務委託契約ではなく違法な労働契約と判断された場合、日本年金機構から過去に遡って社会保険料の負担を求められることとなります。

この際、悪質な場合は、日本年金機構ではなく、国税庁による徴収を受けることとなります。

なお、滞納額が高額で悪質な滞納事業所については、国税庁に徴収を委任する仕組みがあります。

リスク5:源泉所得税の支払いを求められる

「報酬」としての源泉徴収はしてもいい

業務委託契約に労働基準法が適用されるリスクの5つめは、税務署から給与所得の源泉徴収を求められることです。

チェックリストの5-2で示したとおり、委託者は、フリーランスに対して支払う報酬について、「給与所得」としては源泉徴収をおこなってはなりません。

他方で、「報酬」としては、委託者は、むしろ源泉徴収をしなければなりません。

この点から、報酬としての源泉徴収がなされていれば、通常は、税務調査があっても、フリーランスとの契約が適法な業務委託契約なのか実質的に労働契約なのかは、あまり厳しく追求されません。

源泉徴収の必要がない報酬の場合は税務調査で問題となる

問題は、フリーランスとの業務委託契約の報酬が源泉徴収の必要のない場合です。

フリーランスに支払う報酬や料金が源泉徴収の対象になるかどうかは、所得税法において厳密に規定されています(参照:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁)。

これらの対象にならない場合に、たとえ委託者がフリーランスから源泉徴収をしていなかったとしても、他のチェックポイントに適合していない業務委託契約であれば、その業務委託契約に労働基準法が適用されることがあります。

こうなると、税務署からの税務調査が入った際に、フリーランスとの業務委託契約が違法な労働契約とみなされ、「給与所得」としての源泉徴収をしていなかったと判断される可能性があります。





フリーランスとの業務委託契約と労働基準法に関するよくある質問

どのような場合にフリーランスとの業務委託契約に労働基準法が適用されますか?
フリーランスとの業務委託契約では、以下のチェックポイントを満たしていないと、労働基準法が適用され、適法な業務委託契約ではなく、違法な労働契約とみなされる可能性があります。


「使用従属性」に関する判断基準のチェックリスト

  • 1.受託者が委託者の「指揮監督下の労働」を提供していない
    • 1-1.受託者に「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由」がある
    • 1-2.委託者による「業務遂行上の指揮監督」がない
      • 1-2-1.委託者による「業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令」がない
      • 1-2-2.予定外の業務がない
    • 1-3.拘束性がない
    • 1-4.代替性がある(受託者による再委託等ができる)
  • 2.報酬に労務対償性がある
    • 2-1.報酬が「労働の結果による」計算となっている
    • 2-2.欠勤した場合であっても「応分の報酬が控除」されない
    • 2-3.残業をした場合であっても「通常の報酬とは別の手当が支給」されない

「労働者性」の判断を補強する要素のチェックリスト

  • 3.事業者性の有無
    • 3-1.受託者が機械・器具の所有している
    • 3-2.高額な報酬である
    • 3-3.その他
      • 3-3-1.受託者が損害賠償責任を負う
      • 3-3-2.受託者による独自の商号使用が認められている
  • 4.専属性の程度
    • 4-1.「他社の業務に従事することが制度上制約」されていない
    • 4-2.他社の業務に従事する時間的余裕がある
    • 4-3.報酬に固定給部分がない
    • 4-4.「業務の配分等により事実上固定給」となっていない
    • 4-5.報酬の額が「生計を維持しうる程度のもの」でない
  • 5.その他
    • 5-1.「採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の採用の場合とほとんど同様」ではない
    • 5-2.報酬について「給与所得」としては源泉徴収をおこなっていない
    • 5-3.労働保険の適用対象としていない
    • 5-4.服務規律を適用していない
    • 5-5.退職金制度、福利厚生を適用していない
フリーランスとの業務委託契約に労働基準法が適用された場合、どのようなリスクがありますか?
フリーランスとの業務委託契約に労働基準法が適用された場合、以下のリスクがあります。

  • 報酬・料金・委託料が従業員の残業代と比較して少ない場合は、残業代を請求される。
  • 極端に報酬・料金・委託料が少ない場合は、最低賃金以上の給料を請求される。
  • 「個人事業者・フリーランス」が業務実施中に事故に遭うと「労災」を主張される。
  • 日本年金機構(悪質な場合は国税庁)に社会保険料の負担を求められる。
  • 税務調査の際に「給与所得」としての源泉所得税(しかも追徴課税つき)の支払いを求められる。





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営業秘密・ノウハウライセンス契約書
100,000円~
金銭消費貸借契約書
準金銭消費貸借契約書
20,000円~
労働契約書(雇用契約書)30,000円~
建物賃貸借契約書
建物定期賃貸借契約書
土地賃貸借契約書
土地定期賃貸借契約書
土地使用貸借契約書
事業用定期借地権設定契約書
事業用定期借家権設定契約書
駐車場賃貸借契約書
50,000円~
サブリース契約書
建物転貸借契約書
100,000円~
秘密保持契約書
(従業員向け)秘密保持義務に関する誓約書
30,000円~
フランチャイズ契約書100,000円~
匿名組合契約書
有限責任事業組合(LLP)契約書
投資事業有限責任組合(LPS)契約書
200,000円~
株式譲渡契約書30,000円~
営業譲渡契約書
事業譲渡契約書
M&A契約書
100,000円~
出版権設定契約書100,000円~
著作物作成業務委託契約書
ライティング業務委託契約書
原稿執筆業務委託基本契契約書
グラフィック作成業務委託契約書
動画コンテンツ作成業務委託契約書
出版契約書
50,000円~
プライバシーポリシー50,000円~
リース契約書100,000円~
探偵業務委託契約書50,000円~
芸能マネジメント契約書50,000円~
金型設計請負基本契約書50,000円~
労働者派遣契約書100,000円~
共同研究開発契約書
委託研究契約書
100,000円~
共同研究開発にかかるフィジビリティスタディ契約書
MTA(マテリアルトランスファーアグリーメント)契約書
50,000円~
オペレーター業務委託契約書
コールセンター業務委託契約書
ヘルプデスク業務委託契約書
秘書代行業務委託契約書
50,000円~
警備契約書50,000円~
事業提携契約書
共同事業契約書
100,000円~
預託金制リゾートクラブ会員規約
ゴルフ場クラブ会員規約
100,000円~
医療機器保守契約書
医療機器在庫管理業務委託契約書
50,000円~
投資顧問契約締結前交付書面・同締結時交付書面100,000円~
ECショッピングモール出店契約書
ECショッピングモール利用規約
100,000円~
英語教授契約書
語学教授契約書
50,000円~

お支払期限お支払期限は、納入期限をと同日となります。アフターサービス期間サービス終了後、作成料金(※いずれも消費税抜き)に応じて、無料のアフターサービス期間があります。
・1年間(作成料金10万円以上)
・1ヶ月間(作成料金10万円未満)

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