業務委託契約の交通費は、委託者と受託者のどちらが負担するのでしょうか?
業務委託契約の交通費は、原則として、請負型の場合は受託者の負担準委任型の場合は委託者の負担です。このため、特に準委任型で交通費を受託者の負担としたい場合は、業務委託契約において、その旨の特約を規定する必要があります。

このページでは、業務委託契約における交通費の負担について解説しています。

業務委託契約において、委託業務の実施に必要な費用は、原則として受託者の負担となります(民法第485条)。

ただし、業務委託契約が準委任型である場合は、委託者の負担となります(民法第650条第1項)。

なお、業務委託契約の締結に必要な交通費等の費用については、委託者・受託者が折半することとなります(民法第558条、第559条)。

このページでは、業務委託契約の委託者・受託者の双方向けに、業務委託契約の交通費等の費用の負担について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 請負型の業務委託契約における交通費等の費用の負担
  • 準委任型の業務委託契約における交通費等の費用の負担
  • 業務委託契約の締結に必要な交通費等の費用の負担

なお、業務委託契約における費用負担全般につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約における費用負担とは?書き方・規定のしかたは?




業務委託契約における費用・交通費の負担は契約形態による

請負型=受託者負担、準委任型=委託者負担

業務委託契約における交通費等の費用の負担は、契約形態により異なります。

結論としては、交通費等の費用については、原則として、請負型等の場合は受託者負担、例外として、準委任型の場合は委託者負担となります(詳しくは後述)。

このため、準委任型の業務委託契約の場合は、特約を規定しないと、交通費について受託者負担とすることができません。

なお、請負契約と準委任契約の違いにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

請負契約と(準)委任契約の14の違い

業務委託契約の締結に必要な費用は双方折半

ここでいう交通費等の費用は、あくまで、受注者による業務委託の実施に必要な費用を意味します。

これに対し、契約の締結に必要な費用については、双方折半となります(民法第558条、第559条)。

このため、契約交渉の段階など、契約の締結前の時点で発生した交通費、宿泊費、各種調査等に必要な費用については、双方同じ割合での折半で負担することとなります(詳しくは後述)。

なお、これらの費用についても、特約があれば、そちらが優先されます(任意規定)。

【意味・定義】任意規定とは?

任意規定とは、ある法律の規定と異なる合意がある場合に、その合意のほうが優先される法律の規定をいう。





請負契約型の業務委託契約における交通費・費用の負担は受託者

業務実施の交通費・費用は原則として債務者=受託者の負担

業務委託契約に限らず、契約における債務の弁済の費用は、債務者の負担となっています(民法第485条)。

民法第485条(弁済の費用)

弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

この「債務の弁済」には、業務委託契約における業務の実施も含まれます。

このため、原則として、交通費を含む業務委託契約における業務の実施に必要となる費用は、業務を実施する債務者=受託者の負担となります。

請負契約の場合は費用負担の特則が無い

ただし、民法で特則がある場合や特約がある場合は、そちらが優先されます。

例えば、費用負担については、準委任については特則があります(後述)。

しかし、請負には、費用負担に関する民法の特則はありません。

よって、請負契約型の業務委託契約の場合は、業務の実施に必要となる交通費等の費用の負担は、債務者=受託者の負担となります。

請負契約型の業務委託で費用を委託者負担とする場合は特約が必須

逆に言えば、請負型の業務委託契約の場合において、交通費を含むなんらかの費用を委託者負担とするときは、その旨を規定した特約を規定しなければなりません。

業務委託契約書を作成する理由

請負型の業務委託契約の場合は、交通費等の費用は受託者負担であることから、費用を委託者負担としたい場合は、特約を規定した契約書が必要となるから。

一般的な請負契約型の業務委託契約では、費用を含めて報酬を設定することが多く、別途で受託者が費用を請求できるようにすることは少ないです。

ただし、費用の金額が想定しづらい業務内容(出張が多いものの回数の想定が難しい、等)の場合は、後日実費精算とする形で、委託者の負担とすることもありあす。

ポイント
  • 請負型を含む業務委託契約では、原則として、交通費等の費用は受託者負担。
  • 逆に交通費等の費用を委託者負担とする場合は、特約を規定した業務委託契約書が必要。





準委任契約型の業務委託契約における交通費の負担は委託者

準委任契約の場合は費用負担の特則がある

これに対し、民法の委任・準委任の規定のは、次のように、費用に関する特例があります。

民法第650条(受任者による費用等の償還請求等)

1 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

2 (以下省略)

このため、準委任契約型の業務委託契約の場合は、業務の実施に必要となる交通費等の費用の負担は、委任者=委託者の負担となります。

準委任契約型の業務委託で費用を受託者負担とする場合は特約が必須

このため、準委任型の業務委託契約の場合において、交通費を含むなんらかの費用を受託者負担とするときは、その旨を規定した特約を規定しなければなりません。

業務委託契約書を作成する理由

準委任型の業務委託契約の場合は、交通費等の費用は委託者負担であることから、費用を受託者負担としたい場合は、特約を規定した契約書が必要となるから。

準委任契約型の業務委託契約の場合、交通費等の費用の発生が想定しやすいものと想定しづらいものがあります。

このため、どちらが費用について負担するかは、業務内容や契約内容によって異なります。

ただ、あまりにも費用の金額等が想定しづらい場合は、必ず委託者・受託者のいずれかの負担としたうえで、回数や金額に上限を設定するなどの工夫が必要となります。

ポイント
  • 準委任契約型の業務委託契約では、民法第650条第1項により、原則として、交通費等の費用は、委託者負担。
  • 交通費等の費用を受託者負担とする場合は、特約を規定した業務委託契約書が必要。
  • 費用の金額等が想定しづらい場合は、回数や金額に上限を設定するなどの工夫が必要。





【補足】業務委託契約の締結に必要な交通費は双方折半

なお、交通費等の業務実施に必要な費用ではなく、「契約に関する費用」については、双方折半での負担となります。

これは、民法第559条によって引用される民法第558条によるものです。

民法第558条(売買契約に関する費用)

売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。

民法第559条(有償契約への準用)

この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

ここでいう「契約に関する費用」とは、契約締結に関する費用とされていて、契約の締結までに必要となった費用のことです。

具体的には、契約書の作成費用、印紙税、各種事前調査等の費用が該当します。

このような費用は、特に特約がない限りは、「当事者双方が等しい割合で負担する」=双方折半での負担となります。





業務委託契約における交通費の負担に関するよくある質問

請負契約型の業務委託契約では、交通費はどちらの負担となりますか?
請負契約型の業務委託契約では、交通費は、受託者(請負人)の負担となります。
準委任契約型の業務委託契約では、交通費はどちらの負担となりますか?
準委任契約型の業務委託契約では、交通費は、原則として委託者(委任者)の負担となります。このため、受託者(受任者)の交通費負担としたい場合は、特約を規定した業務委託契約書としなければなりません。