契約書の「営業日」とは、どのような意味でしょうか?
「営業日」は、法律上も契約実務上も明確な定義がありません。このため、契約書において営業日の定義を規定しないと、トラブルの元になります。

このページでは、主に事業者向けに、契約書や契約実務における「営業日」の定義や契約条項における書き方について解説しています。

営業日は、ビジネスの現場では頻繁に使われている用語であり、一部の法令でも使われています。

また、契約書でも、「営業日」という表現は、比較的使われる用語でもあります。

しかし、この「営業日」は、民法上、あるいは契約実務上は、明確な定義がありません。

このため、契約書において明確な定義を規定せずに「営業日」という表現をしてしまうと、その解釈を巡ってトラブルになる可能性があります。

そこで、このページでは、契約実務における「営業日」の定義や書き方などの注意点について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 契約実務における「営業日」の使い方
  • 契約実務における「営業日」の定義のしかた




契約書に書かれた「営業日」には明確な定義がない

営業日=ビジネス用語

営業日とは、一般的には、ある事業者が営業している日=休業でない日を意味するビジネス用語です。

【意味・定義】銀行営業日とは?

銀行営業日とは、土曜日、日曜日、祝日および12月29日から翌年1月3日まで以外の日をいう。

このため、具体的な営業日や休業日は、事業者によって異なります。

一般的には、平日が営業日で土日や祝日が休日となる場合が多いでしょうが、必ずしもすべての事業者がそのような同じ営業日とは限りません。

例えば、製造業では生産管理の都合上、祝日が休日にならないことが多いですし、サービス業では客足の都合上、土日・祝日とも営業日となることもあります。

法令用語としての営業日=「営業をしている日」「休業でない日」

法令上の営業日は法律によって異なる

また、一部の法令でも「営業日」という用語は使われています。

ただ、この場合の営業日は、単にその法令が適用される事業者が「営業をしている日」「休業でない日」程度の意味で使われています。

つまり、法令で使われている営業日は、法令用語としては、統一的な使われ方はされていません。

このため、具体的にいつが営業日なのか、また、いつが休業日なのかは、法令によって異なります。

銀行営業日は「土日・祝日・12月29日から翌年1月3日まで」以外の日

例えば、銀行は、銀行法第15条により、土日・祝日・12月29日から翌年1月3日まで日が休日となっています。

銀行法第15条(休日及び営業時間)

1 銀行の休日は、日曜日その他政令で定める日に限る。

2 銀行の営業時間は、金融取引の状況等を勘案して内閣府令で定める。

銀行法施行令第5条(休日)

1 法第十五条第一項に規定する政令で定める日は、次に掲げる日とする。

(1)国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日

(2)十二月三十一日から翌年の一月三日までの日(前号に掲げる日を除く。)

(3)土曜日

2 (以下省略)

このため、一般的にも、また、法令用語としても、「銀行営業日」は、上記の休日(土日・祝日・12月29日から翌年1月3日まで)を除いた日とされています。

【意味・定義】銀行営業日とは?

銀行営業日とは、土曜日、日曜日、祝日および12月29日から翌年1月3日まで以外の日をいう。

契約書の用語としての営業日=定義がない

さらに、契約書に適用される民法等の私法には、「営業日」の明確な定義は規定されていません。

同様に、契約実務の一般的な用語としても「営業日」には明確な定義や統一的な考え方はありません。

というのも、すでに述べたとおり、具体的な営業日や休業日は、事業者によって異なります。

このため、民法等の私法や契約実務の定義としても、具体的な営業日や休業日を決めようがないのです。





契約書に定義がない「営業日」はトラブルのもと

定義がない営業日=日付を限定したことにならない

以上のように、契約書に記載される「営業日」の表現は、定義や統一的な解釈はありません。

このため、定義を明確に規定せずに「営業日」という用語を使ってしまうと、その解釈を巡ってトラブルになる可能性があります。

すでに述べたとおり、営業日は、業界や事業者によってまったく異なります。

このため、営業日の定義が無いと、例えば、土日や祝日が休日なのか、平日がすべて営業日なのか、夏季や年末年始が営業日が休日なのかが明らかになりません。

営業日のトラブルの具体例1:納入期限

例えば、営業日という用語が使われがちなものとして、次のような納入期限に関する条項があります。

【契約条項の書き方・記載例・具体例】納入期限に関する条項

第○条(納入期限)

本件製品の納入期限は、本契約の成立の日から起算して15営業日後までとする。

(※便宜上、表現は簡略化しています)

このように営業日の定義が明らかでないと、実際の納入期限がいつなのかが判然としません。

当然ながら、納入する受託者の立場としては、営業日をより長く解釈しようとしますし、委託者の立場としては、営業日をより短く解釈しようとします。

その結果、納入期限の計算の結果が異なり、トラブルになる可能性があります。

営業日のトラブルの具体例2:検査完了日

また、次のような検査完了日に関する条項でも、営業日が問題となることがあります。

【契約条項の書き方・記載例・具体例】検査に関する条項

第○条(検査)

受託者からの本件製品の納入があった場合、委託者は、納入があった日から起算して10営業日後以内に、納入された本件製品の検査を実施するものとする。

(※便宜上、表現は簡略化しています)




このように営業日の定義が明らかでないと、検査期間や検査完了日が判然としないこととなります。

営業日のトラブルの具体例3:支払期限

そして、最も深刻なトラブルになる可能性が高いものが、支払期限に関する契約条項です。

【契約条項の書き方・記載例・具体例】支払期限に関する条項

第○条(支払期限)

本件製品の委託料の計算は、暦月ごとの締切計算とし、委託者は、受託者に対し、当月において納入されたものについて、翌月15営業日までに当該委託料を支払うものとする。

(※便宜上、表現は簡略化しています)

この表現でも、営業日の定義がないため、支払期限の解釈を巡ってトラブルになる可能性があります。

安易に「営業日」を使うと下請法違反・フリーランス保護法違反となる

なお、これらの納入期限・検査完了日・支払期限等については、すべて下請法の三条書面の必須記載事項とされています。

同様に、フリーランス保護法の三条通知の必須明示事項でもあります。

これらの法定記載事項・法定明示事項については、(営業日の定義を含めて)明確に定めない場合は、親事業者・発注事業者が下請法・フリーランス保護法に違反することとなります。

なお、下請法の三条書面につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法の三条書面とは?12の法定記載事項や契約書との違いは?





営業日の定義の書き方

「営業日」はなるべく使わない

暦日どおりの日付計算は解釈が一致する

以上のように、定義を規定せずに営業日という用語を使うことは、トラブルになる可能性があります。

このため、原則として、契約書では、暦日どおりの日付計算とし、「営業日」という表現は使わないようにします。

暦日どおりの日付計算の場合は、解釈を巡ってトラブルになる可能性は低くなります。

ただし、いわゆる「初日不算入の原則」については注意が必要です。

【意味・定義】初日不算入の原則とは?

初日不算入の原則とは、日、週、月または年によって期間を定めた場合、期間の初日は算入しない原則をいう。

民法第140条(初日不算入の原則)

日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

暦日どおりの計算は長期休暇のデメリットがある

ただ、暦日どおりの日付計算では、特定の期間ではほとんどが休日となってしまうデメリットもあります。

特に、連休(特にゴールデンウィーク)、夏季休暇、年末年始などの長期休暇を挟んだ期間が該当します。

このような長期休暇を挟んでしまうと、契約上の権利の行使や義務の履行ができなかったり、極端な短時間で対応しなければならなくなる可能性もあります。

例えば、以下のような検査完了日に関する規定が該当します。

【契約条項の書き方・記載例・具体例】検査に関する条項

第○条(検査)

受託者からの本件製品の納入があった場合、委託者は、納入があった日から起算して7日後以内に、納入された本件製品の検査を実施するものとする。

(※便宜上、表現は簡略化しています)




このような検査完了日を設定した場合において、委託者の年末年始の休暇が長期間であるときは、受託者から年末に納入されてしまうと、検査完了日までに検査ができない可能性があります。

このため、委託者としては、より長期間の検査完了日を設定したり、検査完了日を過ぎた場合は不合格にするなどの対応が必要になってきます。

土日祝日・年末年始を除いた平日を営業日とする場合

こうした日付計算のデメリットを解消するために、あえて独自の営業日について定義づける場合もあります。

営業日の定義づけは、休日を明記することによって休日以外の日を営業日とする方法が一般的です。

例えば、以下の具体例は、行政機関と同じ「営業日」とする場合のものです。

【契約条項の書き方・記載例・具体例】営業日の定義に関する条項

第○条(営業日)

本契約において、「営業日」とは、行政機関の休日に関する法律(昭和六十三年法律第九十一号)第1条第1項各号列記に規定する日以外の日をいう。

(※便宜上、表現は簡略化しています)

行政機関の休日に関する法律第1条(行政機関の休日)

1 次の各号に掲げる日は、行政機関の休日とし、行政機関の執務は、原則として行わないものとする。

(1)日曜日及び土曜日

(2)国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日

(3)十二月二十九日から翌年の一月三日までの日(前号に掲げる日を除く。)

2 (以下省略)




この記載例の営業日は、「土日・祝日・12月29日から翌年1月3日まで」以外の日となります。

夏季休暇を追加する場合

なお、上記の営業日の定義では、夏季休暇について考慮されていません。

このため、営業日から夏季休暇を除外する場合は、例えば次のように営業日を定義づけます。

【契約条項の書き方・記載例・具体例】営業日の定義に関する条項

第○条(営業日)

1 本契約において、「営業日」とは、次の日以外の日をいう。

(1)行政機関の休日に関する法律(昭和六十三年法律第九十一号)第1条第1項各号列記に規定する日

(2)8月13日から8月16日まで

(※便宜上、表現は簡略化しています)

なお、当然ながら、日付については実情に合わせて変更できます。

この他、例えば会社の創業記念日などの独自の休日について記載することで、営業日を定義づけることができます。