ひとくちに知的財産権といっても、業務委託契約で重要となる知的財産権は6種類あり、それぞれ違いがあります。
このページでは、そうした業務委託契約で重要となる知的財産権について、概要を説明しています。
【意味・定義】知的財産・知的財産権とは?
知的財産・知的財産権については、知的財産基本法に、次のとおり規定されています。
知的財産基本法第2条(定義)
1 この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
2 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。
(以下省略)
これをわかりやすく一覧表示にすると、次のとおりです。
【意味・定義】知的財産とは?
創造的活動により生み出されるもの
- 発明
- 考案
- 植物の新品種
- 著作物
商品または役務(サービス)の信用・ブランドのために表示するもの
- 商標
- 商号
事業活動に有用な技術上又は営業上の情報
- 営業秘密
【意味・定義】知的財産権とは?
知的財産権は、以下のものを含む、知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。
- 特許権
- 実用新案権
- 育成者権
- 意匠権
- 著作権
- 商標権
業務委託契約において重要となる知的財産権とは?
業務委託契約の実務では、これらの知的財産権のうち、以下のものが重要となります。
権利 | 概要 |
---|---|
特許権 | 特許発明(特許を受けた高度な技術情報)を排他的独占的に実施できる権利 |
実用新案権 | 登録実用新案を排他的独占的に実施できる権利 |
意匠権 | 登録意匠(意匠登録がされた工業デザイン)を排他的独占的に実施できる権利 |
商標権 | 登録商標を排他的独占的に使用できる権利(専用権)と、他人が登録商標と登録商標に類似する商標を使用した場合に、その使用を禁止できる権利(禁止権)の総称 |
営業秘密に関する不正競争防止法上の権利 | 営業秘密=「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」を相対的独占的に使用できる権利 |
著作権 | 著作権者が保有する、著作物の利用を許諾し、または禁止できる権利であって、複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権等、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権・翻案権等および二次的著作物の利用に関する原著作者の権利の総称 |
以下、それぞれ解説していきます。
【知的財産権1】特許権とは?
特許権は、特許法で直接的に定義づけられていはいませんが、一般的には、次のとおりです。
【意味・定義】特許権とは?
特許権とは、特許発明を排他的独占的に実施できる権利をいう。
※排他的・独占的については、以下のとおり。
- 排他的:重複する第三者の権利の存在を認めないこと。
- 独占的:権利者だけが実施=使用でき、第三者は実施=使用できないこと。
また、業務委託契約書における特許権の問題については、詳しくは、以下のページをご覧ください。
【知的財産権2】実用新案権とは?
実用新案権は、実用新案法では直接的に定義づけられていませんが、一般的には、次のとおりです。
【意味・定義】実用新案権とは?
実用新案権とは、登録実用新案を排他的独占的に実施できる権利をいう。
※排他的・独占的については、以下のとおり。
- 排他的:重複する第三者の権利の存在を認めないこと。
- 独占的:権利者だけが実施=使用でき、第三者は実施=使用できないこと。
また、業務委託契約書における実用新案権の問題については、詳しくは、以下のページをご覧ください。
【知的財産権3】意匠権とは?
意匠権は、意匠法では直接的に定義づけられていませんが、一般的には、以下のとおりです。
【意味・定義】意匠権とは?
意匠権とは、登録意匠(意匠登録がされた工業デザイン)を排他的独占的に実施できる権利をいう。
※排他的・独占的については、以下のとおり。
- 排他的:重複する第三者の権利の存在を認めないこと。
- 独占的:権利者だけが実施=使用でき、第三者は実施=使用できないこと。
また、業務委託契約書における意匠権の問題については、詳しくは、以下のページをご覧ください。
【知的財産権4】商標権とは?
商標権は、商標法では直接的に定義づけられていませんが、一般的には、以下のとおりです。
【意味・定義】商標権とは?
商標権とは、登録商標を排他的独占的に使用できる権利(専用権)と、他人が登録商標と登録商標に類似する商標を使用した場合に、その使用を禁止できる権利(禁止権)の総称をいう。
※排他的・独占的については、以下のとおり。
- 排他的:重複する第三者の権利の存在を認めないこと。
- 独占的:権利者だけが実施=使用でき、第三者は実施=使用できないこと。
また、業務委託契約書における商標権の問題については、詳しくは、以下のページをご覧ください。
【知的財産権5】営業秘密とは?
営業秘密は、一般的には、「ノウハウ」と呼ばれている、企業の知的財産の一種です。
営業秘密の定義は、不正競争防止法では、次のとおり規定されています。
不正競争防止法第2条(定義)
(途中省略)
6 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。
(以下省略)
なお、営業秘密の定義・要件については、詳しくは、以下のページをご覧ください。
また、業務委託契約における営業秘密の問題については、詳しくは、以下のページをご覧ください。
【知的財産権6】著作権とは?
著作権は、著作権者が保有する複数の権利群のことです。実は、著作権法では、著作権そのものを具体的に定義づけるのではなく、複数の権利の要約・略称として位置づけています。
具体的には、著作権は、著作権法第17条第1項で、次のとおり規定されています。
著作権法第17条(著作者の権利)
1 著作者は、次条第1項、第19条第1項及び第20条第1項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第21条から第28条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有する。
2 (省略)
引用元:著作権法 | e-Gov法令検索
つまり、著作権とは、著作権者が保有する、著作権法第21条から第28条までの権利である、ということです。
これを、よりわかりやすく整理すると、以下のとおりです。
【意味・定義】著作権とは?
著作権とは、著作権者が保有する、著作物の利用を許諾し、または禁止できる権利であって、複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権等、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権・翻案権等および二次的著作物の利用に関する原著作者の権利の総称をいう。
また、業務委託契約書における著作権の問題については、詳しくは、以下のページをご覧ください。
業務委託契約の知的財産権に関するよくある質問
- 知的財産・知的財産権とは何ですか?
- 知的財産・知的財産権は、知的財産基本法第2条において、次のとおり定義づけられています。
- この法律で「知的財産」とは、発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。
- この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。
- 業務委託契約では、どのような知的財産権が重要となりますか?
- 業務委託契約では、主に次の知的財産権が重要となります。
- 特許権:特許発明(特許を受けた高度な技術情報)を排他的独占的に実施できる権利
- 実用新案権:登録実用新案を排他的独占的に実施できる権利
- 意匠権:登録意匠(意匠登録がされた工業デザイン)を排他的独占的に実施できる権利
- 商標権:登録商標を排他的独占的に使用できる権利(専用権)と、他人が登録商標と登録商標に類似する商標を使用した場合に、その使用を禁止できる権利(禁止権)の総称
- 営業秘密に関する不正競争防止法上の権利 :営業秘密=「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」を相対的独占的に使用できる権利
- 著作権 著作権者が保有する、著作物の利用を許諾し、または禁止できる権利であって、複製権、上演権及び演奏権、上映権、公衆送信権等、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳権・翻案権等および二次的著作物の利用に関する原著作者の権利の総称