契約書が複写式の場合は、原本(1枚目)と写し(2枚目)のどちらを相手に渡すべきでしょうか?
複写式の契約書は、原本(1枚目)のほうが証拠能力が高いので、なるべく原本(1枚目)を手元に残しておき、写し(2枚目)の方を相手方に渡すようにします。

契約書の中には、カーボンコピーによって複写できるものもあります。

これは、一般的なプリンターで作成するものではなく、印刷業者に依頼して印刷所で作成するものです。

この複写の契約書は、ボールペンで署名(サイン)をしたもらった方が原本(1枚目)であり、カーボンコピーで署名(サイン)が写されたものが写し(2枚目)となります。

これらの複写の契約書は、署名がある原本(1枚目)の方が証拠能力が高く、写し(2枚目)の方は原本(1枚目)に比べて証拠能力が低いです。

このため、一般的には、原本(1枚目)の方を手元に残し、写し(2枚目)の方を相手方に渡します。

ただし、法律によっては、署名または記名押印がされた契約書の交付が義務づけられている場合もあります。

例えば、建設業法第19条が該当します。

建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)

1 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

(1)工事内容

(2)請負代金の額

(3)工事着手の時期及び工事完成の時期

(4)工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容

(5)請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法

(6)当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

(7)天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

(8)価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更

(9)工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

(10)注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め

(11)注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期

(12)工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

(13)工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

(14)各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

(15)契約に関する紛争の解決方法

(16)その他国土交通省令で定める事項

2(以下省略)

この場合は、写し(2枚目)の方にも押印するようにします。または、複写式とせずに、原本を2部作成します。

なお、署名欄がカーボンコピーだったとしても、印鑑登録証明書と実印による押印がある場合は、署名と同等以上の証拠能力があります。

このため、印鑑登録証明書と実印による押印がある場合は、原本(1枚目)を相手方に渡しても構いません。

ただし、この場合は、印紙税法上、写し(2枚目)も原本(1枚目)と同じ契約書と扱われ、課税文書となりますので注意しましょう。

収入印紙を貼る必要のある契約書のコピー

次のような契約書は、コピー・写しであっても、収入印紙を貼る必要がある。

  • (1)契約当事者の双方又は文書の所持者以外の一方の署名又は押印があるもの
  • (2)正本などと相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの

参考:No.7120 契約書を複数作成した場合の課税関係|国税庁

まとめ
  • 複写の契約書は、署名がある原本(1枚目)の方が証拠能力が高い。
  • 一般的に、複写の契約書は、証拠能力が高い原本(1枚目)を手元に残し、写し(2枚目)を相手方に渡す。
  • 法律によっては、写し(2枚目)のほうに押印する必要がある。
  • 押印がある契約書の写し(2枚目)は課税文書となる。