このページでは、取適法(旧下請法)が適用されるコンサルティング契約の条件について、簡単にわかりやすく解説しています。

一般的に、コンサルティング契約は、原則として取適法が適用されることはありません。

しかしながら、一部のコンサルティング契約では、依頼者とコンサルタントの資本金や従業員数コンサルティング業務の内容次第では、取適法が適用される可能性もあります。

このページでは、主にコンサルティング契約の委託者・依頼者向けに、取適法が適用されるコンサルティング契約についてについて、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 取適法が適用されるコンサルティング契約の条件
  • 取適法が適用されるコンサルティング契約の業務内容




コンサルティング契約に取適法が適用される条件とは?

コンサルティング契約には様々なものがありますが、依頼者に対しコンサルタントが助言をするような、一般的なコンサルティング契約では、取適法は適用されません。

他方で、資本金の区分や従業員数が取適法の規制対象とる場合は、コンサルティング業務の内容によっては、コンサルティング契約であっても、取適法の適用対象となる可能性があります。

コンサルティング契約が取適法の規制対象となる条件
  • 条件1.クライアント企業とコンサルタント企業の資本金の区分または従業員数が取適法の規制対象であること。
  • 条件2.コンサルティング業務の内容が取適法の規制対象である「製造委託等」(取適法第2条第6項)に該当すること。

それぞれ、詳しく見ていきましょう。





取適法が適用される資本金の区分・従業員数と業務内容とは?

取適法が適用される資本金の区分・従業員数と業務内容については、以下のとおりです。

パターン1
委託者受託者
資本金の区分3億1円以上の法人3億円以下の法人(または個人事業者)
業務内容
  1. 製造委託
  2. 修理委託
  3. 特定運送委託
  4. 情報成果物作成委託(プログラムの作成に限る
  5. 役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理に限る
パターン2
委託者受託者
資本金の区分1千万1円以上3億円以下の法人1千万円以下の法人(または個人事業者)
業務内容
  1. 製造委託
  2. 修理委託
  3. 特定運送委託
  4. 情報成果物作成委託(プログラムの作成に限る
  5. 役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理に限る
パターン3
委託者受託者
従業員の区分従業員300人超の法人従業員300人以下の法人または個人事業者
業務内容
  1. 製造委託
  2. 修理委託
  3. 特定運送委託
  4. 情報成果物作成委託(プログラムの作成に限る
  5. 役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理に限る
パターン4
委託者受託者
資本金の区分5千万1円以上の法人5千万円以下の法人(または個人事業者)
業務内容
  1. 情報成果物の作成(プログラムの作成以外のもの)
  2. 役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理以外のもの)
パターン5
委託者受託者
資本金の区分1千万1円以上5千万円以下の法人1千万円以下の法人(または個人事業者)
業務内容
  1. 情報成果物の作成(プログラムの作成以外のもの)
  2. 役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理以外のもの)
パターン6
委託者受託者
従業員の区分従業員100人超の法人従業員100人以下の法人または個人事業者
業務内容
  1. 情報成果物の作成(プログラムの作成以外のもの)
  2. 役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理以外のもの)

ここでいう委託者がクライアントであり、受託者がコンサルタント企業ということになります。

これらの資本金の区分と従業員数に該当し、かつ、コンサルティング業務の内容が規制対象となる場合(後掲)は、取適法の適用対象となります。

なお、旧下請法が改正された取適法(2026年1月1日施行)では、資本金区分に加えて、従業員数も規制対象となりました。

改正事項旧下請法取適法改正のポイント
従業員基準適用対象の判定は、資本金基準×業務類型によって行われる。
従業員数を基準とした適用判定の規定は存在しない。
従来の資本金基準×業務類型に加え、従業員基準×業務類型による判定が新たに設けられている。適用対象の判断軸として、従業員基準が追加された点が改正点。
資本金基準が変更・廃止されたわけではなく、判断基準が追加されたにとどまる。





取適法が適用されるコンサルティング業務とは?

取適法が適用されるコンサルティング業務は、具体的には、情報成果物作成委託または役務提供委託です。

【意味・定義】情報成果物作成委託(取適法)とは?

情報成果物作成委託とは、「ソフトウェア,映像コンテンツ,各種デザインなど,情報成果物の提供や作成を行う事業者が,他の事業者にその作成作業を委託すること」をいう。

【意味・定義】役務提供委託(取適法)とは?

役務提供委託とは、「他社から運送やビルメンテナンスなどの各種サービス(役務)の提供を請け負った事業者が、請け負った役務の提供を他の事業者に委託すること」をいう。「ただし、建設業法に規定される建設業を営む事業者が請け負う建設工事は、」含まれない。

以下、それぞれ詳しく見ていきましょう。





コンサルティング契約で取適法が適用される情報成果物作成委託とは?

コンサルティング契約で取適法が適用されるのは再委託または社内業務の委託

情報成果物作成委託は、クライアントがコンサルタントに対し、何らかの情報成果物の作成を委託した場合に該当する可能性があります。

具体的には、次の2つのパターンが考えられます。

コンサルティング業務が情報成果物作成委託に該当するパターン
  • クライアントが外部の第三者に対して提供する情報成果物の作成をコンサルタントに再委託する場合。
  • クライアントが事業で使用する情報成果物の作成を自らおこなっている場合(いわゆる「自家使用」)にその情報成果物の作成をコンサルタントに委託する場合。

1点目は、取適法が適用される典型的なパターンです。

他方で、特に注意が必要なのが2点目の自家使用のパターンです。

社内でコンサルティング業務と同様の業務を担当する部署がある場合は取適法の対象

情報成果物作成委託の定義は、取適法第2条第3項で次のように規定されています。

取適法第2条(定義)

(途中省略)

3 この法律で「情報成果物作成委託」とは、事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。

(以下省略)

この「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合」に該当するかどうか、つまりいわゆる「自家使用」に該当するかどうかがポイントとなります。

【意味・定義】自家使用(取適法)とは?

取適法における自家使用とは、物品または情報成果物を自ら使用することをいう。こうした物品・情報成果物の製造・作成を業として委託することが、製造委託または情報成果物作成委託に該当する条件のひとつ。

例えば、情報成果物が同じ「事業活動の分析レポート」であったとしても、社内で同様のレポートを作成している部署がある場合は、取適法が適用されます。

他方で、社内でそのような部署がない場合は、取適法が適用されません。

ポイント
  • コンサルティング契約は取適法の対象になり得る。
  • 再委託と社内業務の委託としての情報成果物の作成が情報成果物作成委託に該当し、取適法が適用される。





コンサルティング契約で取適法が適用される役務提供委託とは?

第三者に提供する役務の提供は取適法の対象

役務提供委託は、委託者がコンサルタントに対し、何らかの役務の提供を委託した場合に該当する可能性があります。

具体的には、次のパターンが考えられます。

コンサルティング業務が役務提供委託に該当するパターン
  • 委託者が外部の第三者に対して提供する役務の提供をコンサルタントに再委託する場合。

役務提供委託は、情報成果物作成委託とはことなり、外部の第三者に提供しない役務、つまり「自ら用いる役務」は該当しません。また、「自家役務」という概念はありません。

このため、例えば、同じ「ウェブサイトの分析」の業務であったとしても、委託者が第三者のウェブサイトの分析業務をコンサルタントに再委託する場合は取適法が適用されます。

他方で、委託者が自らのウェブサイトの分析業務をコンサルタントに委託した場合は取適法は適用されません。

講師の委託の場合は取適法の対象外となり得る

なお、第三者に提供する役務であっても、講演の講師の委託の場合は、取適法の対象外となる可能性があります。

「中小受託取引適正化法テキスト」には、次のような記載があります。

(自ら用いる役務の委託に該当し、役務提供委託に該当しない例)
○ ホテル業者が、ベッドメイキングをリネンサプライ業者に委託すること。
○ 工作機械メーカーが、自社工場の清掃作業の一部を清掃業者に委託すること。
カルチャーセンターを営む事業者が、開催する教養講座の講義を個人事業者である講師に委託すること。
○ プロダクションが、自社で主催するコンサートの歌唱を個人事業者である歌手に委託すること。

上記のカルチャーセンターの具体例が「役務提供委託に該当しない例」とされています。

このため、講演の講師を委託する場合も、同様に役務提供委託に該当せず、取適法は適用されないものと考えられます。

ポイント
  • コンサルティング契約は取適法の対象になり得る。
  • 再委託としての役務の提供の委託が役務提供委託に該当し、取適法が適用される。





取適法が適用される場合はコンサルティング契約書の作成義務がある

クライアント側に契約書≒4条明示(旧3条書面)の作成義務がある

取適法が適用される場合は、契約書(いわゆる「4条明示」)を作成する必要があります。

【意味・定義】4条明示(取適法)とは?

4条明示(取適法)とは、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)第4条に規定された、委託事業者(旧親事業者)が中小受託事業者(旧下請事業者)に対し明示しなければならない事項(取引条件)をいう。旧下請法のいわゆる「3条書面」に代わるもの。

この場合、理屈のうえでは、委託者(クライアント)=委託事業者が、コンサルティング契約書を作成しなければなりません。

なお、4条明示につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

取適法4条明示(いわゆる4条書面)とは?12の法定記載事項を解説

特定の業界のコンサルティング契約では契約書が必要になる

なお、特定の業界のコンサルティング契約では、「コンサルティング契約書」という名目ではなくても、契約書の作成義務がある場合もあります。

例えば、金融商品取引法にもづき、投資助言業務をおこなう投資助言・代理業者は、投資顧問契約書(いわゆる「契約締結時等の書面」)を作成する義務があります(金融商品取引法第37条の4)。

また、不動産投資顧問業登録規程にもとづき、投資助言契約や投資一任契約を結ぶ不動産投資顧問業は、契約締結時の書面を作成する義務があります(不動産投資顧問業登録規程第16条)。

このように、特定のコンサルティング契約、とくに許認可が必要なコンサルティング業務では、コンサルティング契約書の作成義務がある場合もあります。

ポイント
  • 取適法が適用される場合は、コンサルティング契約書を「クライアント側が」作成する義務がある。
  • 特定の業界のコンサルティング契約ではコンサルティング契約書の作成義務がある。





コンサルティング契約の契約条項のポイント

コンサルティング契約では、次のような重要な契約条項があります。

コンサルティング契約の重要な契約条項
  1. コンサルティング業務の内容
  2. コンサルティング業務の提供方法・回数等
  3. 契約形態
  4. 報告義務
  5. 成果物の作成
  6. コンサルティング業務のスケジュール・成果物の納入
  7. コンサルティング業務・成果物の検査
  8. コンサル内容の知的財産権の譲渡・利用許諾
  9. 費用負担
  10. 報酬・料金・委託料の金額・計算方法
  11. 再委託の可否
  12. 秘密保持義務
  13. 利益相反行為・利益相反取引の禁止
  14. 免責・成果の不保証
  15. 損害額の予定

こうしたコンサルティング契約の契約条項のポイントにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

コンサルティング契約書の作り方と重要な15の契約条項のポイントについて解説

また、コンサルティング契約の一般的な解説につきましては、につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

コンサルティング契約とは?意味・定義について解説





コンサルティング契約と取適法に関するよくある質問

コンサルティング契約には取適法が適用されますか?
コンサルティング契約は、一般的には取適法が適用されないことが多いです。ただし、特定の条件を満たした場合は、取適法が適用される場合があります。
コンサルティング契約に取適法が適用される条件は何ですか?
以下の条件を満たした場合、コンサルティング契約は、取適法の適用対象となります。

  • 条件1.クライアント企業とコンサルタント企業の資本金の区分や従業員数が取適法の規制対象であること。
  • 条件2.コンサルティング業務の内容が取適法の規制対象である「製造委託等」に該当すること。