このページでは、下請法が適用されるコンサルティング契約の条件について、簡単にわかりやすく解説しています。

一般的に、コンサルティング契約は、原則として下請法が適用されることはありません。

しかしながら、一部のコンサルティング契約では、依頼者とコンサルタントの資本金コンサルティング業務の内容次第では、下請法が適用される可能性もあります。

このページでは、主にコンサルティング契約の委託者・依頼者向けに、下請法が適用されるコンサルティング契約についてについて、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 下請法が適用されるコンサルティング契約の条件
  • 下請法が適用されるコンサルティング契約の業務内容

なお、コンサルティング契約の一般的な解説につきましては、につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

コンサルティング契約とは?意味・定義について解説




コンサルティング契約に下請法が適用される条件とは?

コンサルティング契約には様々なものがありますが、依頼者に対しコンサルタントが助言をするような、一般的なコンサルティング契約では、下請法は適用されません。

他方で、資本金の区分が下請法の規制対象となり、かつ、一部のコンサルティング業務である場合は、コンサルティング契約であっても、下請法の適用対象となる可能性があります。

コンサルティング契約が下請法の規制対象となる条件
  • 条件1.クライアント企業とコンサルタント企業の資本金の区分が下請法の規制対象であること。
  • 条件2.コンサルティング業務の内容が下請法の規制対象である「製造委託等」(下請法第2条第5項)に該当すること。

それぞれ、詳しく見ていきましょう。





下請法が適用される資本金の区分と業務内容とは?

下請法が適用される資本金の区分と業務内容については、以下のとおりです。

パターン1
親事業者下請事業者
資本金の区分3億1円以上3億円以下(または個人事業者)
業務内容
  1. 製造委託
  2. 修理委託
  3. 情報成果物作成委託(プログラムの作成に限る
  4. 役務提供委託(運送・物品の倉庫保管、情報処理に限る
パターン2
親事業者下請事業者
資本金の区分1千万1円以上3億円以下1千万円以下(または個人事業者)
業務内容
  1. 製造委託
  2. 修理委託
  3. 情報成果物作成委託(プログラムの作成に限る
  4. 役務提供委託(運送・物品の倉庫保管、情報処理に限る
パターン3
親事業者下請事業者
資本金の区分5千万1円以上5千万円以下(または個人事業者)
業務内容
  1. 情報成果物の作成(プログラムの作成以外のもの)
  2. 役務提供委託(運送・物品の倉庫保管、情報処理以外のもの)
パターン4
親事業者下請事業者
資本金の区分1千万1円以上5千万円以下1千万円以下(または個人事業者)
業務内容
  1. 情報成果物の作成(プログラムの作成以外のもの)
  2. 役務提供委託(運送・物品の倉庫保管、情報処理以外のもの)

ここでいう「親事業者」がクライアントであり、「下請事業者」がコンサルタント企業ということになります。

これらの資本金の区分に該当し、かつ、コンサルティング業務の内容が規制対象となる場合(後掲)は、下請法の適用対象となります。





下請法が適用されるコンサルティング業務とは?

下請法が適用されるコンサルティング業務は、具体的には、情報成果物作成委託または役務提供委託です。

【意味・定義】情報成果物作成委託とは?

情報成果物作成委託とは、「ソフトウェア,映像コンテンツ,各種デザインなど,情報成果物の提供や作成を行う事業者が,他の事業者にその作成作業を委託すること」をいう。

【意味・定義】役務提供委託とは?

役務提供委託とは、「運送やビルメンテナンスをはじめ,各種サービスの提供を行う事業者が,請け負った役務の提供を他の事業者に委託すること」をいう。「ただし,建設業を営む事業者が請け負う建設工事は,役務には含まれ」ない。

以下、それぞれ詳しく見ていきましょう。





コンサルティング契約で下請法が適用される情報成果物作成委託とは?

コンサルティング契約で下請法が適用されるのは再委託または社内業務の委託

情報成果物作成委託は、委託者がコンサルタントに対し、何らかの情報成果物の作成を委託した場合に該当する可能性があります。

具体的には、次の2つのパターンが考えられます。

コンサルティング業務が情報成果物作成委託に該当するパターン
  • 委託者が外部の第三者に対して提供する情報成果物の作成をコンサルタントに再委託する場合。
  • 委託者が事業で使用する情報成果物の作成を自らおこなっている場合(いわゆる「自家使用」)にその情報成果物の作成をコンサルタントに委託する場合。

特に注意が必要なのが、2点目の情報成果物作成委託です。

社内でコンサルティング業務と同様の業務を担当する部署がある場合は下請法の対象

情報成果物作成委託の定義は、下請法第2条第3項で次のように規定されています。

下請法第2条(定義)

(途中省略)

3 この法律で「情報成果物作成委託」とは、事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。

(以下省略)

この「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合」に該当するかどうか、つまりいわゆる「自家使用」に該当するかどうかがポイントとなります。

【意味・定義】自家使用・自家消費(下請法)とは?

下請法における自家使用・自家消費とは、製造委託・修理委託・情報成果物作成委託において、自ら使用し、または消費する物品の製造もしくは修理または情報成果物の作成をいう。

例えば、情報成果物が同じ「事業活動の分析レポート」であったとしても、社内で同様のレポートを作成している部署がある場合は、下請法が適用されます。

他方で、社内でそのような部署がない場合は、下請法が適用されません。

ポイント
  • コンサルティング契約は下請法の対象になり得る。
  • 再委託と社内業務の委託としての情報成果物の作成が情報成果物作成委託に該当し、下請法が適用される。





コンサルティング契約で下請法が適用される役務提供委託とは?

第三者に提供する役務の提供は下請法の対象

役務提供委託は、委託者がコンサルタントに対し、何らかの役務の提供を委託した場合に該当する可能性があります。

具体的には、次のパターンが考えられます。

コンサルティング業務が役務提供委託に該当するパターン
  • 委託者が外部の第三者に対して提供する役務の提供をコンサルタントに再委託する場合。

役務提供委託は、情報成果物作成委託とはことなり、外部の第三者に提供しない役務、つまり「自ら用いる役務」は該当しません。

このため、例えば、同じ「ウェブサイトの分析」の業務であったとしても、委託者が第三者のウェブサイトの分析業務をコンサルタントに再委託する場合は下請法が適用されます。

他方で、委託者が自らのウェブサイトの分析業務をコンサルタントに委託した場合は下請法は適用されません。

講師の委託の場合は下請法の対象外となり得る

なお、第三者に提供する役務であっても、講演の講師の委託の場合は、下請法の対象外となる可能性があります。

「下請取引適正化推進講習会テキスト」には、次のような記載があります。

(自ら用いる役務の委託に該当し、役務提供委託に該当しない例)
○ ホテル業者が、ベッドメイキングをリネンサプライ業者に委託すること。
○ 工作機械メーカーが、自社工場の清掃作業の一部を清掃業者に委託すること。
カルチャーセンターを営む事業者が、開催する教養講座の講義を個人事業者である講師に委託すること。
○ プロダクションが、自社で主催するコンサートの歌唱を個人事業者である歌手に委託すること。

上記のカルチャーセンターの具体例が「役務提供委託に該当しない例」とされています。

このため、講演の講師を委託する場合も、同様に役務提供委託に該当せず、下請法は適用されないものと考えられます。

ポイント
  • コンサルティング契約は下請法の対象になり得る。
  • 再委託としての役務の提供の委託が役務提供委託に該当し、下請法が適用される。





下請法が適用される場合はコンサルティング契約書の作成義務がある

クライアント側に契約書≒三条書面の作成義務がある

下請法が適用される場合は、契約書(いわゆる「三条書面」)を作成する必要があります。

この場合、理屈のうえでは、委託者(クライアント)=親事業者が、コンサルティング契約書を作成しなければなりません。

なお、三条書面につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法の三条書面とは?12の法定記載事項や契約書との違いは?

特定の業界のコンサルティング契約では契約書が必要になる

なお、特定の業界のコンサルティング契約では、「コンサルティング契約書」という名目ではなくても、契約書の作成義務がある場合もあります。

例えば、金融商品取引法にもづき、投資助言業務をおこなう投資助言・代理業者は、投資顧問契約書(いわゆる「契約締結時等の書面」)を作成する義務があります(金融商品取引法第37条の4)。

また、不動産投資顧問業登録規程にもとづき、投資助言契約や投資一任契約を結ぶ不動産投資顧問業は、契約締結時の書面を作成する義務があります(不動産投資顧問業登録規程第16条)。

このように、特定のコンサルティング契約、とくに許認可が必要なコンサルティング業務では、コンサルティング契約書の作成義務がある場合もあります。

ポイント
  • 下請法が適用される場合は、コンサルティング契約書を「クライアント側が」作成する義務がある。
  • 特定の業界のコンサルティング契約ではコンサルティング契約書の作成義務がある。





コンサルティング契約の契約条項のポイント

コンサルティング契約では、次のような重要な契約条項があります。

コンサルティング契約の重要な契約条項
  1. コンサルティング業務の内容
  2. コンサルティング業務の提供方法・回数等
  3. 契約形態
  4. 報告義務
  5. 成果物の作成
  6. コンサルティング業務のスケジュール・成果物の納入
  7. コンサルティング業務・成果物の検査
  8. コンサル内容の知的財産権の譲渡・利用許諾
  9. 費用負担
  10. 報酬・料金・委託料の金額・計算方法
  11. 再委託の可否
  12. 秘密保持義務
  13. 利益相反行為・利益相反取引の禁止
  14. 免責・成果の不保証
  15. 損害額の予定

こうしたコンサルティング契約の契約条項のポイントにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

コンサルティング契約書の作り方と重要な15の契約条項のポイントについて解説





コンサルティング契約と下請法に関するよくある質問

コンサルティング契約には下請法が適用されますか?
コンサルティング契約は、一般的には下請法が適用されないことが多いです。ただし、特定の条件を満たした場合は、下請法が適用される場合があります。
コンサルティング契約に下請法が適用される条件は何ですか?
以下の条件を満たした場合、コンサルティング契約は、下請法の適用対象となります。

  • 条件1.クライアント企業とコンサルタント企業の資本金の区分が下請法の規制対象であること。
  • 条件2.コンサルティング業務の内容が下請法の規制対象である「製造委託等」に該当すること。