このページでは、取適法(旧下請法)の委託事業者(旧親事業者)・中小受託事業者(旧下請事業者)の双方向けに、いわゆる「60日ルール」とその例外について解説しています。

取適法が適用される企業間取引の契約では、納入等(給付・役務の提供)の時点から起算して、原則として、60日後までに支払期日を設定しなければなりません。

この60日ルールの規制にはいくつかの例外があり、その例外に該当した場合は、60日を経過した後に支払ったとしても、取適法違反とはなりません。

ただし、この60日ルールの例外には、詳細な条件がありますので、その条件を満たしていないと、取適法違反となります。

このページでは、こうした60日ルールとその例外について、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 取適法の「60日ルール」の定義。
  • 60日ルールの数え方。
  • 60日ルールの5つの例外と条件。
  • 60日ルールに違反した場合の罰則・ペナルティ。

なお、このページは、改正下請法=取適法にもとづく解説となります。

下請法は、2026年1月1日の改正下請法の施行に伴い、取適法に改められました。

旧下請法における60日ルールにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法の60日ルールとは?例外・数え方・罰則も解説




取適法の60日ルールとは?

支払期日は給付日・役務の提供日から60日以内

「60日ルール」とは、取適法が適用される企業間取引の契約において、支払期日を納入等(給付・役務の提供)があった日(初日算入)から起算して、最長でも60日以内とするルールのことをいいます。

【意味・定義】60日ルール(下請法)とは?

60日ルールとは、下請法が適用される業務委託契約における下請代金の支払期日について、検査の有無にかかわらず、親事業者が下請事業者からの給付を受領した日・役務の提供を受けた日(初日を算入する)から起算して60日以内を最長とするルールをいう。

取適法では、製造委託等代金(旧下請代金)の支払期日は、次のように制限されています。

取適法第3条(製造委託等代金の支払期日)

1 製造委託等代金の支払期日は、委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日(役務提供委託又は特定運送委託の場合にあつては、中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた日。以下同じ。)から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

2 製造委託等代金の支払期日が定められなかつたときは委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日が、前項の規定に違反して製造委託等代金の支払期日が定められたときは委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日の前日が、それぞれ製造委託等代金の支払期日と定められたものとみなす。

60日ルールは準委任契約にも適用される

なお、60日ルールは、請負や準委任等の契約形態に関係なく、取適法が適用される取引に適用されます。

よって、準委任契約型の業務委託契約であっても、60日ルールが適用されることとなります。

一般的に、納品物や納入がないタイプの業務委託契約の場合は、契約形態は準委任契約とされることが多いと思われます。

この場合は、取適法の「情報成果物作成委託」や、「役務提供委託」に該当する可能性があります。

この他、準委任契約に対する取適法の適用につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

準委任契約は取適法(旧下請法)の適用対象となりますか?

ポイント
  • 取適法が適用される企業間取引の契約では、支払期日は、原則として納入日・業務提供日から60日以内。
  • 準委任契約型の業務委託契約の場合は、情報成果物作成委託や役務提供委託として取適法が適用され、60日ルールが適用される可能性がある。





取適法の60日ルールの数え方は?いつから数える?

60日ルールはいつから計算する?

受領日・提供日が起算日となる

「60日ルール」は、次のいずれかの日を起算点として計算します(取適法第3条)。

取適法の60日ルールの起算点
  • 製造委託・修理委託・情報成果物作成委託の場合:委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日(中小受託事業者から物品等又は情報成果物を受領した日)
  • 役務提供委託・特定運送委託の場合:中小受託事業者が役務を提供した日
根拠条文

取適法第3条(製造委託等代金の支払期日)

1 製造委託等代金の支払期日は、委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日(役務提供委託又は特定運送委託の場合にあつては、中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた日。以下同じ。)から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。

2 製造委託等代金の支払期日が定められなかつたときは委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日が、前項の規定に違反して製造委託等代金の支払期日が定められたときは委託事業者が中小受託事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日の前日が、それぞれ製造委託等代金の支払期日と定められたものとみなす。

これは、「委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうか」は問題になりません。

このため、委託事業者が検査をしたとしても、また、その検査が終わっていなかったとしても、中小受託事業者による給付・役務の提供があった日から起算して、原則として60日後には支払いをしなければなりません。

ただし、後述の「やり直しの場合」等を除きます。

物品・情報成果物は「占有」、役務は「終了」が起算点

より具体的には、業務内容に応じて、以下の時点が60日ルールの起算点とされています。

取適法における業務内容ごとの60日ルールの起算点
  • 製造委託:中小受託事業者の給付の目的物を検査の有無にかかわらず受け取り、「自己の占有下に置くこと」から起算
  • 修理委託:同上
  • 情報成果物作成委託:「自己の占有下に置くこと」(記録媒体ありの場合)または「自己の支配下に置くこと」(記録媒体なしの場合)から起算
  • 役務提供委託:中小受託事業者が「役務の提供をした日」(1日のみの場合)または「役務提供が終了した日」(複数の日や期間の場合)から起算
  • 特定運送委託:同上

● 受領日の考え方

支払期日の起算日となる受領日とは、以下の「給付の受領」があった日である。
製造委託又は修理委託における「給付の受領」とは、中小受託事業者の給付の目的物を検査の有無にかかわらず受け取り、自己の占有下に置くことである。委託事業者の検査員が中小受託事業者の工場へ出張し検査を行うような場合には、検査員が出張して検査を開始すれば受領となる。
情報成果物作成委託における「給付の受領」とは、給付の目的物として作成された情報成果物を記録したCD-ROM等の電子媒体を受け取り、自己の占有下に置くことである。また、情報成果物を記録した媒体がない場合には、当該情報成果物を自己の支配下に置くことであり、例えば、当該情報成果物を電子メール等により委託事業者が受信して委託事業者が使用するハードディスクに記録されることや、中小受託事業者が委託事業者の事務所に常駐して情報成果物を作成し委託事業者のハードディスクに記録することなどである。
役務提供委託又は特定運送委託では受領という概念はなく、「支払期日」の起算日は、「中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた日(役務提供に日数を要する場合は役務提供が終了した日)」である。

60日ルールには「初日不算入の原則」は適用されない

さらに、取適法の60日ルールには、「初日不算入の原則」は適用されず、初日を算入します。

【意味・定義】初日不算入の原則とは?

初日不算入の原則とは、日、週、月または年によって期間を定めた場合、期間の初日は算入しない原則をいう。

民法第140条(初日不算入の原則)

日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

一般的な期間の計算では、初日を算入せずに、翌日を初日=起算点として算入して計算します。

しかし、取適法が適用される企業間取引の計算における支払期日の計算では、次のとおり、初日を算入します。

委託事業者は、委託事業者が中小受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、受領日(中小受託事業者から物品等又は情報成果物を受領した日。役務提供委託又は特定運送委託の場合は、中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた日)から起算して 60 日以内(受領日を算入する。)のできる限り短い期間内で、代金の支払期日を定める義務がある。

ポイント
  • 取適法の60日ルールの起算点は、検査の有無に関係なく中小受託事業者からの給付・役務の提供があった日。
  • 取適法の60日ルールには初日不算入の原則は適用されず、中小受託事業者からの給付・役務の提供があった日を初日として計算する。





60日ルールの5つの例外とは?

ただし、60日ルールには、以下の例外があります。

60日ルールの例外
  • 例外1:月単位の締切制度の場合
  • 例外2:やり直しの場合
  • 例外3:システム等開発業務委託契約の「受領」の場合
  • 例外4:継続的な役務提供委託=準委任型の業務委託契約の場合
  • 例外5:支払日に銀行等が休日・休業日である場合

それぞれ、詳しく見ていきましょう。





60日ルールの例外1:月単位の締切制度の場合

60日ルールの例外の1つめは、いわゆる「締切計算」で支払期日を設定する場合です。

この場合、「給付の受領後60日以内」の規定を「受領後2か月以内」として運用されています。

そのうえで、大の月(1ヶ月31日の月)も小の月(1ヶ月30日の月)も同じく1ヶ月として運用しています。

●月単位の締切制度

代金は、中小受託事業者の給付の受領後 60 日以内に支払わなければならないところ、継続的な取引において、毎月の特定日に代金を支払うこととする月単位の締切制度を採用している場合がある。
例えば、「毎月末日納品締切、翌月末日支払」といった締切制度が考えられるが、月によっては 31 日の月(大の月)もあるため、当該締切制度によれば、月の初日に給付を受領したものの支払が、受領から 61 日目又は 62 日目の支払となる場合がある。このような場合、結果として給付の受領後 60 日以内に代金が支払われないこととなるが、本法の運用に当たっては、「受領後 60 日以内」の規定を「受領後2か月以内」として運用しており、大の月(31 日)も小の月(30 日)も同じく1か月として運用しているため、支払遅延として問題とはしていない(後記「● 役務提供委託又は特定運送委託における例外的な支払期日の起算日」の場合も、同様に運用している。)。
なお、検収締切制度を採用する場合、検査に相当日数を要する場合があるが、検査をするかどうかを問わず、受領日から 60 日以内において、かつ、できる限り短い期間内に設定した支払期日に代金を支払う必要があることから、検査に要する期間を見込んだ支払制度とする必要がある。

この運用により、いわゆる「月末納入締切翌月末払い」の場合は、61日目や62日目の支払いとなったとしても、支払遅延の問題は生じません。

締切計算の場合において60日ルールが例外となる条件
  • 支払期日を締切計算とすること。
  • 納入ベースで締め切ること。

なお、「月末締め翌月末払い」の正確な記載方法につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

「月末締め翌月末払い」の正しい契約書の書き方は?正確の規定のしかたについて解説

ポイント
  • 締切計算=「月末納入締切翌月末払い」で支払期日を設定する場合、支払期日は、翌月末日まで。





60日ルールの例外2:やり直しの場合

60日ルールの例外の2つめは、やりなおしの場合です。

これは、支払期日の到来の前に、中小受託事業者の給付に委託内容と異なることがあるなど、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がある場合において、やり直しをさせるときが該当します。

この場合は、委託者=委託事業者は、当初の支払期日ではなく、やり直し後の受領日から60日以内に支払えばよいとされています。

●やり直しをさせた場合の支払期日の起算日

中小受託事業者の給付の内容が4条明示(旧3条書面)された委託内容と異なること等があるなど、中小受託事業者の責めに帰すべき理由があり、代金の支払前(受領後 60 日以内)にやり直しをさせる場合には、やり直しをさせた後の物品等又は情報成果物を受領した日(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた日(役務提供に日数を要する場合は役務提供が終了した日))が支払期日の起算日となる(中小受託事業者の責めに帰すべき理由があるとして、委託事業者が費用を負担することなく、やり直しをさせることができる場合については 106 ページ参照。)。

Q76:中小受託事業者の給付に委託内容と異なること等があり、代金の支払よりも前(受領後 60 日以内)に返品する場合であっても、当初の受領日から 60 日以内に代金を支払う必要があるか。
支払期日が到来する前に中小受託事業者の給付が委託内容と異なること等が発見され、返品する場合は、当初の受領日から 60 日以内に代金を支払う必要はない。この場合、中小受託事業者が再納品した際の受領日が支払期日の起算日となる。

この点について、契約内容として、「委託内容と異なること等」「中小受託事業者の責めに帰すべき理由」があるかどうかが明確である必要があります。

そうでないと、「不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止」(取適法第5条第2項第3号)に該当するリスクがあります。

【意味・定義】不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止(取適法)とは?

取適法における不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止とは、取適法が適用される取引において、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、中小受託事業者の給付の内容を変更させ、または中小受託事業者の給付を受領した後に(役務提供委託・特定運送委託の場合は、中小受託事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させることをいう。

特に、システム等の開発契約、とりわけアジャイル開発の場合は、要求仕様や要件定義が明確でないと、この「不当なやり直し」に該当するリスクがありますので、注意が必要です。

ポイント
  • 支払期日の到来の前に、中小受託事業者の給付に委託内容と異なること等の中小受託事業者の責めに帰すべき理由が発見された場合、委託者=委託事業者は、当初の支払期日ではなく、やり直し後の受領日から60日以内に支払えばよい。





60日ルールの例外3:システム等開発業務委託契約の「受領」の場合

60日ルールの例外の3つめは、システム等開発業務委託契約の「受領」の場合です。

請負型(特にウォーターフォール開発)のシステム等の開発契約において、成果物を受領した際、成果物が委託内容の水準に達しているかどうかがわからない場合があります。

この場合、委託事業者=委託者=ユーザは、次の一定の条件を満たすことにより、必ずしも支払期日どおりに支払いをする必要はありません。

(3) また、情報成果物作成委託においては、委託事業者が作成の過程で、委託内容の確認や今後の作業についての指示等を行うために、情報成果物を一時的に自己の支配下に置くことがある。委託事業者が情報成果物を支配下に置いた時点では、当該情報成果物が委託内容の水準に達し得るかどうか明らかではない場合において、あらかじめ委託事業者と中小受託事業者との間で、委託事業者が支配下に置いた当該情報成果物が一定の水準を満たしていることを確認した時点で、給付を受領したこととすることを合意している場合には、当該情報成果物を支配下に置いたとしても直ちに「受領」したものとは取り扱わず、支配下に置いた日を「支払期日」の起算日とはしない。ただし、明示された納期日において、委託事業者の支配下にあれば、内容の確認が終わっているかどうかを問わず、当該期日に給付を受領したものとして、「支払期日」の起算日とする。

これをわかりやすくまとめると、次のとおりです。

情報成果物作成委託の支払期日の起算日・受領日
  • 情報成果物が委託内容の水準に達しているかどうか明らかではない場合
  • あらかじめ委託事業者と中小受託事業者との間で、委託事業者の支配下に置いた注文品の内容が一定の水準を満たしていることを確認した時点で受領とすることを合意している場合

―以上の2点を満たしていれば、ユーザは、その確認の時点まで(ただし、最長で4条明示に記載した納期日まで)は、受領を留保することができる。

なお、準委任型、特にアジャイル開発型のシステム等の開発契約では、「委託内容の水準に達し得るかどうか」については、常に発注者側が確認していることが多いため、この例外が適用されない可能性が高いです。

業務委託契約書を作成する理由

取適法が適用される契約では、60日ルールの例外として、情報成果物の受領について、情報成果物が一定の水準を満たしていることを確認した時点で給付を受領したこととすることとする場合は、その旨の合意が必要となるから。

ポイント
  • システム等開発業務委託契約において、成果物を受領した際、成果物が委託内容の水準に達しているかどうかがわからない場合、委託事業者=委託者=ユーザは、一定の条件を満たすことにより、最長で納期までは受領を留保できる。





60日ルールの例外4:継続的な役務提供委託の業務委託契約の場合

60日ルールの例外の4つめは、継続的な役務提供委託(主に準委任型)の業務委託契約の場合です。

継続的な役務提供委託≒準委任型の業務委託契約の場合、次のとおり、一定の条件を満たせば、「月単位で設定された締切対象期間の末日」を役務提供の日とすることができます。

(4) 役務提供委託又は特定運送委託にあっては、「支払期日」の起算日は、「中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた日」(役務提供に日数を要する場合は役務提供が終了した日)であり、原則として、中小受託事業者が提供する個々の役務に対して「支払期日」を設定する必要がある。ただし、個々の役務が連続して提供される役務であって、次の要件を満たすものについては、月単位で設定された締切対象期間の末日に当該役務が提供されたものとして取り扱う。
○ 代金の支払は、中小受託事業者と協議の上、月単位で設定される締切対象期間の末日までに提供した役務に対して行われることがあらかじめ合意され、その旨が明示されていること。
○ 明示において、当該期間の代金の額が示されていること、又は代金の具体的な金額を定めることとなる算定方式(役務の種類・量当たりの単価があらかじめ定められている場合に限る。)が明記されていること。
○ 中小受託事業者が連続して提供する役務が同種のものであること。

これをわかりやすくまとめると、次のとおりです。

継続的な役務提供契約の場合において60日ルールが例外となる条件
  • 「個々の役務が連続して提供される役務」であること。
  • 支払いが役務提供ベースの月末締切であることについてあらかじめ合意されていること。
  • 上記の合意内容について4条明示に明示されていること。
  • 4条明示に製造委託等代金の額または算定方式が明示されていること。
  • 「中小受託事業者が連続して提供する役務が同種のものであること。」

この条件を満たした場合、委託事業者=委託者は、月末に締切り、その月末から60日後(2ヶ月後)を支払期日として設定できます。

ただし、この例外は、1つ目の要件である「連続して」について客観的な基準が無いため、公正取引委員会の判断によっては、「連続」していないと判定される可能性があります。

このため、支払期日をいわゆる「月末締め翌々月払い」とした場合、上記の条件を満たさず、違法となる可能性があります。

実際に、以下のように、「支払遅延」に該当する事例が挙げられています。

(6) 次のような場合は、代金の支払遅延に当たる。
(ア~ウ省略)
エ 「毎月末日納品締切、翌々月10日支払」等の月単位の締切制度を採っている場合に、締切後30日以内に支払期日を定めていないことにより、給付の受領日から60日目までに代金を支払わないとき。

このため、支払期日は、「月末締め翌々月払い」ではなく、少なくとも「月末締め翌月払い」としたほうが無難です。

なお、「月末締め翌月末払い」につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

「月末締め翌月末払い」の正しい契約書の書き方は?正確の規定のしかたについて解説

また、4条明示につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法3条書面(取適法4条明示)とは?12の法定記載事項について解説

業務委託契約書を作成する理由

取適法が適用される契約では、60日ルールの例外として「月末締切」で報酬の計算をする場合、特約としてその合意が必要となるから。

ポイント
  • 役務提供委託≒準委任型の業務委託契約の場合、一定の条件を満たせば、「月単位で設定された締切対象期間の末日」を役務提供の日とし、月末締切・翌々月末日を支払期日とすることができる。





60日ルールの例外5:支払日に銀行等が休日・休業日である場合

60日を超える場合は順延できる

順延できるのは2日以内

60日ルールの例外の5つめは、支払日に銀行等が休日・休業日である場合です。

取適法が適用される企業間取引の契約であっても、支払期日が銀行等の金融機関の休日・休業日に該当する場合は、次のとおり、例外として、支払期日を順延できます。

● 金融機関の休業日

代金を毎月の特定日に金融機関を利用して支払うこととしている場合に、当該支払日が金融機関の休業日に当たることがある。このような場合、支払日が土曜日又は日曜日に当たるなど支払を順延する期間が2日以内である場合であって、委託事業者と中小受託事業者との間で支払日を金融機関の翌営業日に順延することについてあらかじめ書面等で合意している場合には、結果として受領日から 60 日(2か月)を超えて代金が支払われても問題とはしていない。
(以下省略)

ただし、順延できる期間は、あくまで「2日以内」となります。このため、三連休以上の長期休暇などの場合は、順延できません。

また、委託事業者(発注者)と中小受託事業者(受注者)との間で、書面での合意が必要となります。

銀行等の休業日の場合において60日ルールが例外となる条件(取適法)
  • 支払日が土曜日又は日曜日に当たるなど支払を順延する期間が2日以内である場合
  • 委託事業者と中小受託事業者との間で支払日を金融機関の翌営業日に順延することについてあらかじめ書面で合意している場合

銀行営業日は「土日・祝日・12月29日から翌年1月3日まで」以外の日

なお、銀行は、銀行法第15条により、土日・祝日・12月29日から翌年1月3日まで日が休日となっています。

銀行法第15条(休日及び営業時間)

1 銀行の休日は、日曜日その他政令で定める日に限る。

2 銀行の営業時間は、金融取引の状況等を勘案して内閣府令で定める。

銀行法施行令第5条(休日)

1 法第15条第1項に規定する政令で定める日は、次に掲げる日とする。

(1)国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第百78号)に規定する休日

(2)12月31日から翌年の1月3日までの日(前号に掲げる日を除く。)

(3)土曜日

2 (以下省略)

このため、一般的にも、また、法令用語としても、「銀行営業日」は、上記の休日(土日・祝日・12月29日から翌年1月3日まで)を除いた日とされています。

【意味・定義】銀行営業日とは?

銀行営業日とは、土曜日、日曜日、祝日および12月29日から翌年1月3日まで以外の日をいう。

順延後の支払期日が60日以内の場合は2日以上順延できる

また、同様に、順延後の支払期日が60日(2ヶ月)以内となるのであれば、次のとおり、2日以上の順延も可能です。

● 金融機関の休業日

(途中省略)
なお、順延後の支払期日が受領日から起算して 60 日(2か月)以内となる場合には、中小受託事業者との間であらかじめその旨書面等で合意していれば、金融機関の休業日による順延期間が2日を超えても問題とはしていない。

この場合は、年末年始・ゴールデンウィーク・3連休以上の休日などの銀行の休業日であっても、取適法違反となりません。

なお、この場合も、書面での合意が必要です。

書面での合意が必須

このように、支払期日について順延する場合は、順延後の支払期日が60日を超える場合または60日以内の場合のいずれであっても、書面での合意=契約書の作成が必須となります。

業務委託契約書を作成する理由

取適法が適用される契約では、60日ルールの例外として支払期日を順延するために、特約として支払期日の順延について規定した契約書が必要となるから。

ポイント
  • 支払期日が銀行等の金融機関の休業日に該当する場合、一定の条件を満たすことで、順延後の支払期日が60日を超える場合は、2日以内に限り、支払期日を順延できる。
  • 順延後の支払期日が60日以内の場合は、2日以上であっても順延できる。





60日ルールに違反した場合の罰則・ペナルティは?

取適法の60日ルールに違反した場合、行政指導、勧告(+企業名の公表)、(独占禁止法による)排除措置命令、課徴金納付命令などの罰則、ペナルティが課されます。

まず、取適法の60日ルールに違反した場合、支払遅延(取適法第5条第1項第1号違反)に該当します。

取適法第5条

取適法第5条(委託事業者の遵守事項)

1 委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、次に掲げる行為(役務提供委託又は特定運送委託をした場合にあつては、第一号及び第四号に掲げる行為を除く。)をしてはならない。

(1)中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、中小受託事業者の給付の受領を拒むこと。

(2)製造委託等代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと(当該製造委託等代金の支払について、手形を交付すること並びに金銭及び手形以外の支払手段であつて当該製造委託等代金の支払期日までに当該製造委託等代金の額に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるものを使用することを含む。)。

(3)中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、製造委託等代金の額を減ずること。

(4)中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、中小受託事業者の給付を受領した後、中小受託事業者にその給付に係る物を引き取らせること。

(5)中小受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い製造委託等代金の額を不当に定めること。

(6)中小受託事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。

(7)委託事業者についてこの条の規定に違反する事実があると認められる場合に中小受託事業者が公正取引委員会、中小企業庁長官又はその製造委託等に関する取引に係る事業を所管する大臣に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること。

2 委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、次に掲げる行為(役務提供委託又は特定運送委託をした場合にあつては、第一号に掲げる行為を除く。)をすることによつて、中小受託事業者の利益を不当に害してはならない。

(1)自己に対する給付に必要な半製品、部品、附属品又は原材料(以下この号において「原材料等」という。)を自己から購入させた場合に、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する製造委託等代金の支払期日より早い時期に、支払うべき製造委託等代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせること。

(2)自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

(3)中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、中小受託事業者の給付の内容を変更させ、又は中小受託事業者の給付を受領した後(役務提供委託又は特定運送委託の場合にあつては、中小受託事業者からその委託に係る役務の提供を受けた後)に給付をやり直させること。

(4)中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、当該協議に応じず、又は当該協議において中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に製造委託等代金の額を決定すること。

取適法第5条違反が公正取引委員会に発覚すると、軽微な場合は行政指導や助言の対象となりますが、悪質な場合は勧告(取適法第10条)の対象となります。

取適法第10条

取適法第10条(勧告)

1 公正取引委員会は、第五条の規定に違反する行為があると認めるときは、当該行為をした委託事業者(委託事業者が合併により消滅した場合にあつては合併後存続し、又は合併により設立された法人、委託事業者の分割により当該行為に係る事業の全部又は一部の承継があつた場合にあつては当該事業の全部又は一部を承継した法人、委託事業者の当該行為に係る事業の全部又は一部の譲渡があつた場合にあつては当該事業の全部又は一部を譲り受けた事業者。次項及び次条において「違反委託事業者」という。)に対し、速やかにその中小受託事業者の給付を受領し、その製造委託等代金若しくはその減じた額若しくは第六条の規定による遅延利息を支払い、その給付に係る物を再び引き取り、その製造委託等代金の額を引き上げ、若しくはその購入させた物を引き取るべきこと若しくはその不利益な取扱いをやめるべきこと又はその中小受託事業者の利益を保護するための措置をとるべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。

2 公正取引委員会は、第五条の規定に違反する行為が既になくなつている場合においても、特に必要があると認めるときは、違反委託事業者に対し、当該行為が既になくなつている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

勧告の対象となった場合は、企業名が公表されます。

また、公正取引委員会から、改善報告書や改善計画書の提出が求められます。なお、これは行政指導や助言を受けた場合も求められる場合があります。

この勧告を受けた場合、一般的には、勧告を受け入れて、改善に取り組むことになります。

しかし、この勧告を受け入れないと、独占禁止法にもとづく排除措置命令や課徴金納付命令が課されることとなります。

根拠条文

取適法第11条(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律との関係)

1 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第二十条及び第二十条の六の規定は、公正取引委員会が前条の規定による勧告をした場合において、違反委託事業者が当該勧告に従つたときに限り、当該勧告に係る行為については、適用しない。

独占禁止法第19条

事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

独占禁止法第20条

1 前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止め、契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。

2 第七条第二項の規定は、前条の規定に違反する行為に準用する。

独占禁止法第20条の6

事業者が、第十九条の規定に違反する行為(第二条第九項第五号に該当するものであつて、継続してするものに限る。)をしたときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、違反行為期間における、当該違反行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した売上額(当該違反行為が商品又は役務の供給を受ける相手方に対するものである場合は当該違反行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した購入額とし、当該違反行為の相手方が複数ある場合は当該違反行為のそれぞれの相手方との間における政令で定める方法により算定した売上額又は購入額の合計額とする。)に百分の一を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、その額が百万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。

ポイント
  • 取適法の60日ルール違反は、支払遅延(取適法第5条第1項第1号)に該当する。
  • 支払遅延は、勧告、行政指導、助言の原因となる。
  • 公正取引委員会からの勧告がった場合、企業名が公表される。また、改善報告書や改善計画書の提出が求められる。
  • 行政指導、助言があった場合も、改善報告書や改善計画書の提出が求められる場合がある。
  • 公正取引委員会からの勧告に従わない場合、独禁法が適用され、排除措置命令や課徴金納付命令が課される。





補足1:取適法が適用される条件とは?

取適法は4つの資本金・2つの従業員のパターンと特定の業務内容に該当すると適用される

取適法では、すべての企業間取引が適用対象となるわけではありません。

取適法が適用となる企業間取引は、委託者と受託者の資本金と従業員が、一定の区分のものに限られます。

この資本金・従業員の区分には、それぞれ4つと2つのパターン、合計で6つのパターンがあります。

そして、その6つのパターンに当てはまる企業間取引のうち、製造委託等に該当するのものが、取適法の適用対象となります。

取適法が適用される資本金の区分と業務内容

パターン1
委託者受託者
資本金の区分3億1円以上の法人3億円以下の法人(または個人事業者)
業務内容
  1. 製造委託
  2. 修理委託
  3. 特定運送委託
  4. 情報成果物作成委託(プログラムの作成に限る
  5. 役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理に限る
パターン2
委託者受託者
資本金の区分1千万1円以上3億円以下の法人1千万円以下の法人(または個人事業者)
業務内容
  1. 製造委託
  2. 修理委託
  3. 特定運送委託
  4. 情報成果物作成委託(プログラムの作成に限る
  5. 役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理に限る
パターン3
委託者受託者
従業員の区分従業員300人超の法人従業員300人以下の法人または個人事業者
業務内容
  1. 製造委託
  2. 修理委託
  3. 特定運送委託
  4. 情報成果物作成委託(プログラムの作成に限る
  5. 役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理に限る
パターン4
委託者受託者
資本金の区分5千万1円以上の法人5千万円以下の法人(または個人事業者)
業務内容
  1. 情報成果物の作成(プログラムの作成以外のもの)
  2. 役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理以外のもの)
パターン5
委託者受託者
資本金の区分1千万1円以上5千万円以下の法人1千万円以下の法人(または個人事業者)
業務内容
  1. 情報成果物の作成(プログラムの作成以外のもの)
  2. 役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理以外のもの)
パターン6
委託者受託者
従業員の区分従業員100人超の法人従業員100人以下の法人または個人事業者
業務内容
  1. 情報成果物の作成(プログラムの作成以外のもの)
  2. 役務提供委託(運送、物品の倉庫保管、情報処理以外のもの)

これらの6つのパターンにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約・企業間取引に下請法が適用される条件とは?

 





補足2:フリーランス保護法の60日ルールとは

なお、フリーランス保護法においても、取適法と同様の60日ルールがあります。

【意味・定義】60日ルール(フリーランス保護法)とは?

60日ルールとは、フリーランス保護法が適用される業務委託契約における支払代金の支払期日について、検査の有無にかかわらず、発注事業者(特定業務委託事業者)がフリーランス(特定受託事業者)からの給付を受領した日・役務の提供を受けた日(初日を算入する)から起算して60日以内を最長とするルールをいう。

取適法とフリーランス保護法では、以下のとおり、60日ルールには細かな違いがあります。

取適法とフリーランス保護法の「60日ルール」の違い一覧表
取適法(旧下請法)フリーランス保護法
再委託の場合の30日ルール例外無し例外有り
月単位の締切制度の場合例外有り例外有り
やり直しの場合例外有り例外有り
システム等開発業務委託契約の「受領」の場合例外有り例外有り
継続的な役務提供委託=準委任型の業務委託契約の場合例外有り例外有り
支払日に銀行等が休日・休業日である場合例外有り例外有り
受託者の責めに帰すべき事由により支払うことができなかった場合(明文の規定では)例外無し例外有り

最も大きな違いは、「再委託の場合の30日ルール」が認められるかどうかです。

フリーランス保護法が適用される場合、特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し次の内容を明示した場合、元委託支払期日から起算して最長で30日(初日を算入する)の期間内に報酬の支払期日を定めることができます。

再委託の場合における60日ルールの例外のが適用される明示事項
  • 再委託である旨(再委託であることを把握し得る程度のもの)
  • 元委託者の商号、氏名もしくは名称または事業者別に付された番号、記号その他の符号であって元委託者を識別できるもの
  • 元委託業務の対価の支払期日(=元委託支払期日)

この他、フリーランス新法にも60日ルールにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

フリーランス新法(保護法)の60日ルール=支払期日の規制と例外とは?





取適法の60日ルールとその例外に関するよくある質問

取適法の60日ルールとはなんですか?
60日ルールとは、取適法が適用される業務委託契約における支払代金の支払期日について、検査の有無にかかわらず、中小受託事業者が給付を受領した日・役務の提供を受けた日(初日を算入する)から起算して60日以内を最長とするルールをいう。
取適法の60日ルールには、どのような例外がありますか?
取適法の60日ルールには、主に以下の5つの例外があります。

  • 例外1:締切計算の場合
  • 例外2:やり直しの場合
  • 例外3:システム等開発業務委託契約の「受領」の場合
  • 例外4:継続的な役務提供委託=準委任型の業務委託契約の場合
  • 例外5:支払日に銀行等が休日・休業日である場合
取適法が施行されることによって、60日ルールには何か変更はありましたか?
取適法と旧下請法の60日ルールは、一部の表現が運用基準等で変更になっていますが、内容については変更はありません。