
- 取適法(旧下請法)が適用される取引きで、4条明示(旧3条書面)を電子メールで送信することはできるのでしょうか?
- 4条明示を電子メールに添付して送信することはできます。ただし、この場合、一定の条件を満たしていないと、取適法第4条に違反することとなります。
このページでは、取適法の委託事業者(旧親事業者)向けに、4条明示を取適法に適合した形で電子メールで送信する方法について解説しています。
取適法では、委託事業者に対し、いわゆる「4条明示」の交付を義務づけています。
この4条明示は、電子メールで送信することも認められています。
しかしながら、この電子メールには、書面での交付とは別に一定の条件が付けられていて、その条件を満たさないと取適法第4条違反となります。
このページでは、こうした取適法におけるメール発注の違法性と、電子メールを適法な4条明示とできる条件について、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。
このページでわかること
- 取適法が適用される場合に電子メールで4条明示を送信できる条件。
なお、このページは、改正下請法=取適法にもとづく解説となります。
下請法は、2026年1月1日の改正下請法の施行に伴い、取適法に改められました。
旧下請法における電子メールによる旧3条書面・発注書の交付につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
4条明示(4条書面)は「書面又は電磁的方法」でできる
4条明示とは?
取適法が適用される場合、委託事業者は、中小受託事業者に対し、取引きの内容が記載された4条明示を交付しなけばなりません。
取適法第4条(中小受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
1 委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、中小受託事業者の給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により中小受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により中小受託事業者に対し明示しなければならない。
2 委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、中小受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、中小受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。
【意味・定義】4条明示(取適法)とは?
4条明示(取適法)とは、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)第4条に規定された、委託事業者(旧親事業者)が中小受託事業者(旧下請事業者)に対し明示しなければならない事項(取引条件)をいう。旧下請法のいわゆる「3条書面」に代わるもの。
これは、旧下請法における3条書面に相当します。
一部では、「3条書面」の呼称になぞらえて「4条書面」と表現される場合がありますが、このページでは、公正取引委員会の「中小受託取引適正化法テキスト」に倣い、「4条明示」と表現します。
なお、4条明示につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
【取適法改正事項】複雑な事前承諾の条件は削除
旧下請法では、旧3条書面は、原則として書面、例外として一定の条件を満たした電磁的方法が認められていました。
現行法=取適法の施行により、「書面又は電磁的方法(途中省略)により中小受託事業者に対し明示しなければならない」(取適法第4条第1項)とされ、書面と電磁的方法は同じく扱われるように改正されました。この電磁的方法には電子メールも含まれます。
これにより、電磁的方法による交付に必要とされた、下請事業者(新中小受託事業者)の承諾に関する複雑な条件は削除されました。
よって、現在では、電子メールを含む電磁的方法で4条明示をする場合であっても、中小受託事業者からの事前承諾は必要ありません。
ただし、制度上はそのような規制緩和がなされていても、なお事前承諾を取得しておいたほうが望ましいです。
この事前承諾の必要性につきましては、につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
電子メールは「受信」していなければ4条明示をしたことにならない
なお、電子メールは、委託事業者から単に送信されただけでは、4条明示として提供したことにはなりません。
以下のとおり、中小受託事業者の電子計算機(=パソコン)に記録される、つまり、電子メールが受信されていることが必要となります。
また、電子メール等を送信する方法は、中小受託事業者の使用に係る電子計算機の映像面に文字等が明確に表示されるものでなければならず、中小受託事業者の使用に係る電子計算機により当該電子メール等が受信されるなど、中小受託事業者がその使用に係る電子計算機により4条明示の内容を確認し得る状態にする必要がある。
引用元:中小受託取引適正化法テキストp.39
【取適法改正事項】「文字、番号、記号その他の符号で明確に表示」する必要がある
また、電子メールを含む電磁的方法による4条明示では、電子計算機=パソコンやスマートフォンの「映像面に文字、番号、記号その他の符号で明確に表示されるものでなければならない」とされています。
製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則第2条
1 法第四条第一項の公正取引委員会規則で定める電磁的方法は、次に掲げる方法とする。
(1)電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)を送信する方法
(2)電磁的記録を記録した記録媒体を交付する方法
2 前項の方法は、明示すべき事項が中小受託事業者の使用に係る電子計算機の映像面に文字、番号、記号その他の符号で明確に表示されるものでなければならない。
引用元:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則 | e-Gov法令検索
これは、現行法=取適法の施行により、新たに追加された規制です。
他方で、ファイルの記録・出力についての規制は緩和されました(後述)。
なお、こちらは、フリーランス保護法でほぼ同様の規制があります。
イ 電磁的方法による提供(本法第3条第1項及び本法規則第2条)
業務委託事業者は、特定受託事業者に3条通知により明示する場合には、電磁的方法により提供する方法によることができる。ただし、明示事項が文字、番号、記号その他の符号で表示される方法でなければならない。
(以下省略)引用元:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方第2部第1 1(3)イ
【取適法改正事項】電磁的方法はファイルの記録・出力が必須でなくなった
旧下請法においては、電子メールを含む電磁的方法による3条書面は、ファイルの記録や出力が必須でした。
しかし、これらのファイル記録・出力の規制は、取適法=改正下請法の施行により、撤廃されました。
その代わり、すでに述べたとおり、「明示すべき事項が中小受託事業者の使用に係る電子計算機の映像面に文字、番号、記号その他の符号で明確に表示されるものでなければならない」とされています。
条件を満たしていない電子メールへの4条明示の添付は50万円以下の罰金
このような条件を満たすことなく、委託事業者が下請業者に対し電子メールに4条明示を添付して交付した場合、そもそも4条明示を交付したことになりませんので、取適法違反となります。
この場合、4条明示の不交付として、50万円以下の罰金が科されます。
取適法第14条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした委託事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、五十万円以下の罰金に処する。
(1)第四条第一項の規定に違反して明示すべき事項を明示しなかつたとき。
(2)第四条第二項の規定に違反して書面を交付しなかつたとき。
(3)第七条の規定に違反して、書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の書類若しくは電磁的記録を作成したとき。
ポイントは、委託事業者である法人だけに罰金が科されるのではなく、その違反行為をした委託事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者にも罰金が科される、ということです。
つまり、会社で50万円を払えばいい、というものではないのです。しかも、50万円とはいえ、いわゆる「前科」がつきます。
なお、委託事業者である法人にも、罰金は科されます。
取適法第16条(罰則)
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。
ポイント
- 4条明示をしないことは犯罪行為。
- しかも法人だけでなく個人にも罰金が科される。
取適法の対象かどうかの条件とは?
取適法が適用される対象かどうかの条件は、以下のパターンのいずれかとなります。
パターン1 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 資本金の区分 | 3億1円以上の法人 | 3億円以下の法人(または個人事業者) | |
| 業務内容 |
| ||
パターン2 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 資本金の区分 | 1千万1円以上3億円以下の法人 | 1千万円以下の法人(または個人事業者) | |
| 業務内容 |
| ||
パターン3 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 従業員の区分 | 従業員300人超の法人 | 従業員300人以下の法人または個人事業者 | |
| 業務内容 |
| ||
パターン4 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 資本金の区分 | 5千万1円以上の法人 | 5千万円以下の法人(または個人事業者) | |
| 業務内容 |
| ||
パターン5 | ||
|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | |
| 資本金の区分 | 1千万1円以上5千万円以下の法人 | 1千万円以下の法人(または個人事業者) |
| 業務内容 |
| |
パターン6 | ||
|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | |
| 従業員の区分 | 従業員100人超の法人 | 従業員100人以下の法人または個人事業者 |
| 業務内容 |
| |
これらのパターンのいずれかに該当する場合は、取適法の適用対象となり、委託事業者は、中小受託事業者に対し、4条明示をしなければなりません。
これらの取適法が適用されるかどうかの条件につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
関連:フリーランス保護法にも同様の規制・罰則がある
なお、取適法と同様の法律として、フリーランス保護法(新法)があります。
【意味・定義】フリーランス保護法(フリーランス新法)とは?
フリーランス保護法・フリーランス新法とは、正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(別名:フリーランス・事業者間取引適正化等法)といい、フリーランスに係る取引の適正化、就業環境の整備等を図る法律をいう。
このフリーランス保護法は、従業員を雇っていないフリーランス・個人事業者や、一人法人に対する業務委託契約に適用される法律です。
こうしたフリーランス等に対し業務委託をする場合、発注事業者には、フリーランス保護法第3条により、取適法同様、フリーランス等に対し取引内容を通知する義務があります。
フリーランス保護法第3条(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
1 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。
2 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。
この通知のことを、三条通知といいます。
【意味・定義】3条通知(フリーランス保護法)とは?
3条通知とは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)第3条に規定された、業務委託事業者(発注事業者)が特定受託事業者(フリーランス)に対し明示しなければならない通知(取引条件)をいう。
この他、三条通知につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
取適法違反とならない契約書・注文書・発注書(4条明示)を作成しよう
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電子メールによる4条明示の提供に関連するQ&A
- 4条明示には押印は必要ですか?
- 取適法第3条や関連する法令等には、4条明示に押印が必要である旨が規定されていませんので、4条明示そのものには押印は不要です。ただし、4条明示と発注書・注文書を兼用している場合は、必要な場合もあります。
- 取適法では発注書はいつまでに交付しなければなりませんか?
- 委託事業者は、中小受託事業者に対し、製造委託等(業務委託)をした後、「直ちに」(=すぐに)4条明示を交付しなければなりません。このため、4条明示や4条明示と兼用した注文書・発注書については、委託事業者は、すぐに交付しなければ取適法第3条違反となります。
- 取適法の4条明示は7条記録(旧5条書類)を兼ねる?
- 取適法の4条明示は、委託事業者から中小受託事業者に対し交付するものであり、7条記録は委託事業者が下請取引の記録をして保管している書類です。このため、4条明示と7条記録は、兼ねるものではありません。
- 取適法の4条明示と7条記録(書面)には、どのような違いがありますか?
- 取適法の4条明示と7条記録(書面)には、主に保存当事者、記載内容、保存期間、電磁的方法において違いがあります。





