- 4000円の印紙税の納税義務がある7号文書の「営業者」とはどのような者でしょうか?また、「営業者」に該当しない例外は、どのような者でしょうか?
- 営業者は、一般的な事業者のことです。ただし、公益法人、人格のない社団、農林水産業の従事者、医師等の医療従事者、弁護士等の士業、病院等(医療法人に限る)は、例外として営業者には該当しない場合があります。
このページでは、契約書の作成者向けに、7号文書の営業者の定義について解説しています。
4000円の収入印紙を貼る必要がある7号文書のうち、いわゆる取引基本契約書等に該当する条件のひとつが、「営業者の間」で取り交わす契約書であることです。
ここでいう営業者は、株式会社などの一般的な事業者が該当します。
ただ、この営業者には多数の例外があります。
契約当事者の一方でも営業者に該当しない場合は、7号文書に該当せず、4000円の収入印紙を貼る必要はありません。
このページでは、こうした7号文書の「営業者」の定義と例外について、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。
このページでわかること
- 7号文書(印紙税法施行令第26条第1号)の「営業者」の定義
- 「営業者」の例外
- 7号文書に該当しない契約書の印紙(収入印紙・印紙税)の金額
7号文書の営業者とは?
7号文書=「営業者の間」で作成される契約書
4000円の印紙税が発生する7号文書の定義は、印紙税法施行令第26条において、第1号から第5号まで、合計5種類規定されています。
そのうちのひとつとして第1号に規定されているものの条件のひとつが、「営業者(法別表第1第17号の非課税物件の欄に規定する営業を行う者をいう。)の間」において作成される契約書であることとされています。
そこで問題となるのが、この「営業者」の定義です。
営業者=一般的な事業者
営業者とは、一般的な事業者のことを意味します。
この営業には、「営利目的があるかぎり、現実に利益を得ることができなかったとしても、また、当初反復、継続の意志があるかぎり、1回でやめたとしても」該当します。
よって、一般的な事業者のほとんどは、7号文書における営業者に該当します。
会社以外の法人も該当し得る
なお、印紙税法における営業は、「法別表第1第17号の非課税物件の欄に規定する営業を行う者」とされていますが、この別表第1第17号の非課税物件の欄に規定する営業には、一部の例外が規定されているのみで、特に定義は規定されていません。
ただし、この箇所には、営業について、「会社以外の法人で、法令の規定又は定款の定めにより利益金又は剰余金の配当又は分配をすることができることとなつているものが、その出資者以外の者に対して行う事業を含み」となっています。
つまり、会社以外の法人であっても、法令・定款により営利事業ができる場合は、第三者との事業は営業となり、その法人は営業者に該当します。
「会社以外の法人」とは?
ここでいう会社以外の法人は、印紙税法基本通達別表第一 第17号文書の21によると、概ね以下のとおりです(数が多いので折りたたんでいます)。
7号文書の営業者の例外とは?
意外に多い営業者の例外
このように、ほとんどの事業者は、営業者に該当します。
しかしながら、この営業者には、以下のとおり、意外に多くの例外があります。
営業者(7号文書)の例外
- 公益法人
- 人格のない社団(公益及び会員相互間の親睦等の非営利事業を目的とするもの)
- 農林水産業の従事者(店舗その他これらに類する設備を有しない農業、林業又は漁業に従事する者)
- 医療従事者等(医師、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、保健師、助産師、看護師、あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、獣医師等)
- 士業(弁護士、弁理士、公認会計士、計理士、司法書士、行政書士、税理士、中小企業診断士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士、設計士、海事代理士、技術士、社会保険労務士等)
- 医療法人
これらは、7号文書の営業について引用する17号文書の営業に関する通達である「印紙税法基本通達別表第1 第17号」により除外されるものです。
以下、それぞれ詳しく見ていきましょう。
7号文書の営業者の例外1:公益法人
公益法人は、印紙税法基本通達別表第1 第17号の22により、営業者に該当しません。
印紙税法基本通達別表第1 第17号の22(公益法人が作成する受取書)
22 公益法人が作成する受取書は、収益事業に関して作成するものであっても、営業に関しない受取書に該当する。
引用元:第16号文書|国税庁
つまり、公益法人との間で取り交わす、調達品などの売買取引基本契約書等は、7号文書には該当しません。
7号文書の営業者の例外2:人格のない社団
人格のない社団は、印紙税法基本通達別表第1 第17号の23により、営業者に該当しません。
印紙税法基本通達別表第1 第17号の23(人格のない社団の作成する受取書)
23 公益及び会員相互間の親睦等の非営利事業を目的とする人格のない社団が作成する受取書は、営業に関しない受取書に該当するものとし、その他の人格のない社団が収益事業に関して作成する受取書は、営業に関しない受取書に該当しないものとする。
引用元:第16号文書|国税庁
ただし、「公益及び会員相互間の親睦等の非営利事業を目的とする」人格のない社団に限ります。
また、「収益事業に関して作成する」契約書は、7号文書に該当します。
7号文書の営業者の例外3:農林水産業の従事者
農林水産業の従事者は、印紙税法基本通達別表第1 第17号の24により、営業者に該当しません。
印紙税法基本通達別表第1 第17号の24(農業従事者等が作成する受取書)
24 店舗その他これらに類する設備を有しない農業、林業又は漁業に従事する者が、自己の生産物の販売に関して作成する受取書は、営業に関しない受取書に該当する。
引用元:第16号文書|国税庁
ただし、「店舗その他これらに類する設備を有しない」場合に限ります。
つまり、農林水産業の従事者との間で取り交わす、収穫品等の卸売販売に関する売買取引基本契約書等は、7号文書に該当しません。
7号文書の営業者の例外4:医療従事者等
医師等の医療従事者等は、印紙税法基本通達別表第1 第17号の25により、営業者に該当しません。
印紙税法基本通達別表第1 第17号の25(医師等の作成する受取書)
25 医師、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、保健師、助産師、看護師、あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、獣医師等がその業務上作成する受取書は、営業に関しない受取書として取り扱う。
引用元:第16号文書|国税庁
つまり、個人事業者である医師等との間で取り交わす、医薬品・医療機器等の売買取引基本契約書は、7号文書に該当しません。
7号文書の営業者の例外5:士業
弁護士等の士業は、印紙税法基本通達別表第1 第17号の26により、営業者に該当しません。
印紙税法基本通達別表第1 第17号の26(弁護士等の作成する受取書)
26 弁護士、弁理士、公認会計士、計理士、司法書士、行政書士、税理士、中小企業診断士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士、設計士、海事代理士、技術士、社会保険労務士等がその業務上作成する受取書は、営業に関しない受取書として取り扱う。
引用元:第16号文書|国税庁
つまり、士業との間で取り交わす、何らかの書類や成果物の作成に関する請負取引基本契約書等は、7号文書に該当しません。
例えば、税理士との間で取り交わす、税務書類等の作成を目的とした取引基本契約書は、7号文書に該当せず、契約金額の記載のない2号文書に該当します。
7号文書の営業者の例外6:医療法人
医療法人は、印紙税法基本通達別表第1 第17号の27により、営業者に該当しません。
印紙税法基本通達別表第1 第17号の27(法人組織の病院等が作成する受取書)
27 営利法人組織の病院等又は営利法人の経営する病院等が作成する受取書は、営業に関しない受取書に該当しない。
なお、医療法(昭和23年法律第205号)第39条に規定する医療法人が作成する受取書は、営業に関しない受取書に該当する。引用元:第16号文書|国税庁
なお、「営利法人組織の病院等又は営利法人の経営する病院等」は、営業者に該当します。
つまり、医療法人である病院との間で取交す、医薬品・医療機器等の売買取引基本契約書等は、7号文書に該当しません。
印紙税法施行令第26条第1号の「営業者の間」とは?
なお、印紙税法施行令第26条第1号の「営業者(省略)の間」とは、次の意味となります。
印紙税法基本通達別表第1 第7号の3(営業者の間の意義)
3 令第26条第1号に規定する「営業者の間」とは、契約の当事者の双方が営業者である場合をいい、営業者の代理人として非営業者が契約の当事者となる場合を含む。
なお、他の者から取引の委託を受けた営業者が当該他の者のために第三者と行う取引も営業者の間における取引に含まれるものであるから留意する。引用元:第5号文書|国税庁
ここで重要なのは、「契約の当事者の双方が営業者である場合」という点です。
つまり、一方であっても営業者でない場合は、取引基本契約書等は、7号文書には該当しません。
よって、一方の契約当事者が営業者であっても、他方の契約当事者がすでに述べた営業者の例外に該当する場合は、取引基本契約書等は、7号文書には該当しません。
7号文書に該当しない場合の印紙(収入印紙・印紙税)の金額は?
このように、営業者に該当しない契約当事者と取引基本契約書等を取交わした場合、7号文書には該当しません。
この場合、取引基本契約書等の印紙(収入印紙・印紙税)は、契約内容に応じて、1号文書・2号文書に該当して200円となるか、または不課税文書に該当して0円となる可能性があります。
7号文書に該当しない契約書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額
- 無体財産権の譲渡がある場合:契約金額の記載のない1号文書(200円)
- 不動産売買取引基本契約書の場合:同上
- 運送に関する契約の場合:同上
- 契約形態が請負契約の場合:契約金額の記載のない2号文書(200円)
- 上記以外:0円
7号文書の営業者に関するよくある質問
- 7号文書の「営業者」とはどのような者でしょうか?
- 営業者とは、一般に営業(利益を得る目的で、同種の行為を反復的、継続的になすこと)をおこなっている者をいいます。
- 7号文書の「営業者」に該当しない例外は、どのような者でしょうか?
- 7号文書の「営業者」に該当しない例外は、以下の者です。
- 公益法人
- 人格のない社団(公益及び会員相互間の親睦等の非営利事業を目的とするもの)
- 農林水産業の従事者(店舗その他これらに類する設備を有しない農業、林業又は漁業に従事する者)
- 医療従事者等(医師、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、保健師、助産師、看護師、あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、獣医師等)
- 士業(弁護士、弁理士、公認会計士、計理士、司法書士、行政書士、税理士、中小企業診断士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士、設計士、海事代理士、技術士、社会保険労務士等)
- 医療法人
印紙税の節税は電子契約サービスがおすすめ
印紙税の節税には、電子契約サービスの利用がおすすめです。
というのも、電子契約サービスは、他の方法に比べて、デメリットがほとんど無いからです。
印紙税を節税する方法は、さまざまあります。
具体的には、以下のものが考えられます。
印紙税を節税する方法
- コピーを作成する:原本を1部のみ作成し、一方の当事者のみが保有し、他方の当事者はコピーを保有する。
- 契約形態を変更する:節税のために準委任契約のような非課税の契約にする。
- 7号文書を2号文書・1号文書に変更する:取引基本契約に初回の注文書・注文請書や個別契約を綴じ込むことで7号文書から2号文書・1号文書に変える。
しかし、これらの方法には、以下のデメリットがあります。
印紙税の節税のデメリット
- コピーを作成する:契約書のコピーは、原本に比べて証拠能力が低い。
- 契約形態を変更する:節税のために契約形態を変えるのは本末転倒であり、節税の効果以上のデメリットが発生するリスクがある。
- 7号文書を2号文書・1号文書に変更する:7号文書よりも印紙税の金額が減ることはあるものの、結局2号文書・1号文書として課税される。
これに対し、電子契約サービスは、有料ではあるものの、その料金を上回る節税効果があり、上記のようなデメリットがありません。
電子契約サービスのメリット
- 電子契約サービスを利用した場合、双方に証拠として電子署名がなされた契約書のデータが残るため、コピーの契約書よりも証拠能力が高い。
- 電子契約サービスは印紙税が発生しないため、印紙税を考慮した契約形態にする必要がない。
- 電子契約サービスは印紙税が発生しないため、7号文書に2号文書や1号文書を同轍する必要はなく、そもそも契約書を製本する必要すらない。
このように、印紙税の節税には、電子契約サービスの利用が、最もおすすめです。