取適法(旧下請法)の4条明示(旧3条書面)と注文書・発注書の違いは何でしょうか?
4条明示は、取適法第3条にもとづき委託事業者(旧親事業者)が中小受託事業者(旧下請事業者)に対してしなければならない明示です。これに対し、注文書・発注書は、注文者(委託者)から受注者(受託者)に対する意思表示≒契約の申込みの証拠として交付される書面です。
通常、4条明示の要件を満たした書面は注文書・発注書と同様に扱われますので、両者を兼用する場合が多く、その場合は両者には大きな違いはありません。

このページでは、取適法の委託事業者・中小受託事業者向けに、取適法の4条明示と注文書・発注書の定義とこれらの違いについて解説しています。

取適法の4条明示と注文書・発注書は、理論上はまったく別物ですが、実務上は両者を兼用して運用することが多いです。

つまり、取適法が適用される企業間取引の場合、委託事業者は、中小受託事業者に対し、4条明示の要件を満たした注文書・発注書を交付することで、取適法第4条の規制を遵守しつつ、その取引にかかる契約の申込みをします。

このように、一般的な下請取引においては、「4条明示=注文書・発注書」として扱われますが、細かな違いもあるため、特にイレギュラーが発生した場合は、注意が必要な場面もあります。

このページでは、こうした4条明示と注文書・発注書の違いや実務上の取扱いについて、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 4条明示と注文書・発注書の違い
  • 4条明示の定義
  • 注文書・発注書の定義
  • 4条明示の要件を満たしていない注文書・発注書の民事上の取扱い
  • 4条明示を交付した場合における民事上の効果

なお、このページは、改正下請法=取適法にもとづく解説となります。

下請法は、2026年1月1日の改正下請法の施行に伴い、取適法に改められました。

旧下請法における旧3条書面と注文書・発注書の違いつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法の三条書面と注文書・発注書の違いとは?




4条明示と注文書・発注書の違いとは

4条明示と注文書・発注書は、ともに契約の内容を通知する書面である点で共通しています。

他方で、4条明示と注文書・発注書は、取適法第4条にもとづく明示(4条明示)であるか、または契約の申込みの意思表示を証する書面(注文書・発注書)、つまり民事上の効果の有無に違いがあります。

三条書面と注文書・発注書の違い

三条書面と注文書・発注書は、下請法第3条にもとづき交付される通知の書面(三条書面)であるか、または契約の申込みの意思表示を証する書面(注文書・発注書)=民事上の効果がある書面であるかの点。ただし、実務上は同様となるように運用がされることが多い。

取適法第4条では、特に民事上の効果については、特に明記されていません。

取適法第4条(中小受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)

1 委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、中小受託事業者の給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により中小受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により中小受託事業者に対し明示しなければならない。

2 委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、中小受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、中小受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。

ただし、4条明示のみをしたからといって、民事上の効果がまったく無いわけではなく、4条明示の要件を満たした書面は、事実上は民事上の効果が認められる可能性が非常に高いです。

取適法第4条第1項に「委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、」とあるとおり、4条明示は、「製造委託等をした場合」に交付される書面です。

そもそも、4条明示は「委託事業者から発注時の取引条件等を明確に記載した書面を発注の都度中小受託事業者に交付させ、下請取引に係るトラブルを未然に防止するため」に交付されるものです。

● この規定が設けられたねらい
受託取引において口頭による発注は、発注時の取引条件等が不明確でトラブルが生じやすく、トラブルが生じた場合、中小受託事業者が不利益を受けることが多い。そのため、発注の都度、委託事業者から発注時の取引条件等を中小受託事業者に明示させることによって、受託取引に係るトラブルを未然に防止するためにこの規定が設けられた。

このことから、4条明示が「製造委託等をした場合」の取引条件を明確化した書面であるにもかかわらず、民事上の効果、つまり、契約の申込みや承諾のような意思表示が否定されるとは考えにくいと言えます。

同様に、次のとおり、契約書等において必須記載事項をすべて網羅しているいる場合は、別に4条明示をする必要はありません。

(途中省略)委託事業者と中小受託事業者の間で取り交わされる契約書等の内容が、明示規則で定める明示事項を全て網羅している場合には、当該契約書等を交付する方法により4条明示とすることが可能であるので、別に書面又は電磁的記録を作成する必要はない。

こうした背景から、取適法が適用される一般的な取引において、注文書・発注書を使用する場合は、4条明示の要件を満たすことにより、注文書・発注書と4条明示を兼用して運用し、わざわざ分けて運用することはありません。

なお、これらの考え方は、いわゆる「フリーランス保護法」における3条通知でも同様といえます。

3条通知につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

フリーランス新法(保護法)の三条通知(3条通知)とは?





【意味・定義】4条明示とは

委託事業者が中小受託事業者に対して交付する義務がある明示

4条明示とは、取適法(正式には「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」)第4条に規定されている明示です。

取適法第4条(中小受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)

1 委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、中小受託事業者の給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により中小受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により中小受託事業者に対し明示しなければならない。

2 委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、中小受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、中小受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。

公正取引委員会規則=「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」

取適法第4条に規定する「公正取引委員会規則」とは、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第四条の明示に関する規則」のことです。

この規則は、正式名称が非常に長いので、「取適法4条規則」、「4条明示規則」、「4条規則」と省略されます。

実際に4条明示を作成する際には、取適法第4条とともに、取適法4条規則も併せて確認しながら作成します。

委託事業者が中小受託事業者に対し、取適法第4条と取適法4条規則に適合した明示をして、はじめて4条明示をしたことになります。

逆にいえば、取適法第3条と取適法4条規則に適合していない明示をしても、4条明示をしたことにはなりません。

4条明示の記載事項一覧

取適法第4条と取適法4条規則では、以下の内容が、4条明示の記載事項とされています。

4条明示の必須記載事項

  1. 委託事業者及び中小受託事業者の名称(番号、記号等による明示も可)
  2. 製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託又は特定運送委託をした日
  3. 中小受託事業者の給付の内容(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、提供される役務の内容)
  4. 中小受託事業者の給付を受領する期日(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、その委託に係る役務の提供を受ける期日又は期間)
  5. 中小受託事業者の給付を受領する場所(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、その委託に係る役務の提供を受ける場所)
  6. 中小受託事業者の給付の内容(役務提供委託又は特定運送委託の場合は、提供される役務の内容)について検査をする場合は、その検査を完了する期日
  7. 代金の額
  8. 代金の支払期日
  9. 代金の全部又は一部の支払につき、一括決済方式で支払う場合は、金融機関名、貸付け又は支払を受けることができることとする額(支払額に占める一括決済方式による割合でも可)及びその期間の始期、委託事業者が代金債権相当額又は代金債務相当額を金融機関へ支払う期日(決済日)
  10. 代金の全部又は一部の支払につき、電子記録債権で支払う場合は、電子記録債権の額(支払額に占める電子記録債権による割合でも可)及び中小受託事業者が代金の支払を受けることができることとする期間の始期、電子記録債権の満期日
  11. 原材料等を有償支給する場合は、その品名、数量、対価、引渡しの期日、決済期日及び決済方法
  12. 上記1.~11.の事項のうち、その内容が定められないことについて正当な理由があり記載しない事項(未定事項)がある場合は、当該未定事項の内容が定められない理由、当該未定事項の内容を定めることとなる予定期日

この他、取適法の4条明示(旧下請法の3条書面)につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

取適法4条明示(旧下請法3条書面)とは?12の法定記載事項について解説





【意味・定義】注文書・発注書とは

注文書・発注書=両者とも契約の申込みを証する書面

注文書・発注書とは、ともに委託者・発注者からの何らかの契約の申込みを証する書面です。

【意味・定義】注文書・発注書とは?

注文書・発注書とは、一方の契約当事者(委託者・発注者)から他方の契約当事者(受託者・受注者)に対する、何らかの契約の申込みの意思表示をするための書面をいう。

このため、注文書と発注書の違いは、特にありません。

あくまで「契約の申込みを証する書面」でしかない

このように、注文書・発注書は、あくまで「契約の申込みを証する書面」にすぎません。

契約は、申込みと承諾があって成立するものです(民法第522条第1項)。

民法第522条(契約の成立と方式)

1 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

つまり、注文書・発注書を交付したとしても、それだけでは、一般的には契約は成立しません。

契約の成立には注文請書・受注書が必要

このため、取適法が適用される取引の実務では、通常は、注文書・発注書を単体で使いません。

通常は、少なくとも、「契約の申込みに対する承諾を証する書面」=注文請書・受注書をセットで使うことで、取引を成立させます。

ただ、少額な取引など、リスクが少ない場合は、わざわざ注文請書・受注書を使わず、口頭や電子メール等で承諾を伝えることもあります。

なお、いわゆる取引基本契約等で、注文書・発注書の交付だけで自動的に(個別)契約を成立させることもできます。

【意味・定義】基本契約(取引基本契約)とは?

基本契約とは、継続的な売買契約、請負契約、準委任契約の取引の基本となる、個々の取引に共通して適用される契約条項を規定した契約をいう。取引基本契約ともいう。

この他、注文書・発注書の使い方につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

注文書と発注書の違いは?業務委託契約における使い方についても解説





補足1:4条明示の要件を満たしていない場合は契約は成立しない?

それでは、委託事業者が中小受託事業者に交付した注文書・発注書に不備があり、4条明示の要件を満たしていない場合は、契約は成立するのでしょうか?

これについては、すでに述べたとおり、取適法第3条には民事上の効果は規定されていません。

このため、委託事業者から中小受託事業者に交付した注文書・発注書が4条明示の要件を満たしていなかったとしても、契約の成立については別途判断されます。

つまり、4条明示の要件を満たしていない注文書・発注書であっても、受注者(受託者)からの承諾があれば、契約として成立する可能性は十分にあり得ます。

この場合、不備があった事項については、取適法や民法・商法などにもとづき判断されます。





補足2:「4条明示の交付=契約の成立」ではない

中小受託事業者からの「受託」「承諾」があって契約は成立する

また、4条明示は、あくまで委託事業者が中小受託事業者に対し「製造委託等をした場合」に交付される書面です。

通常、4条明示は、委託事業者から中小受託事業者に対する「契約の申込み」を証する書面として交付されます。

よって、中小受託事業者からの製造委託等の「受託」=「契約の申込みに対する承諾」がなければ、契約としては成立しません。

ただし、レアケースではありますが、先に中小受託事業者からの「契約の申込み」があり、それに対する承諾として4条明示が交付されることがあります。

この場合は、4条明示の交付をもって契約が成立することとなります。





補足3:「4条明示の交付=契約の成立」とすることもできる

4条明示の交付をもって自動的に契約の成立とすることもできるがリスクも多い

なお、4条明示の交付をもって、自動的に契約を成立させることもできます。

この場合であっても、4条明示の要件を満たしていれば、取適法第3条そのものには違反しません。

ただし、4条明示の表現として問題がなかったとしても、契約条項の内容として問題があった場合は、以下の委託事業者の禁止事項のいずれかに該当します。

取適法における委託事業者の禁止事項
禁止事項概要
【禁止行為1】受領拒否
(取適法第5条第1項第1号)
注文した給付の受領を拒むこと。
【禁止行為2】支払遅延
(取適法第5条第1項第2号)
給付を受領した日から起算して 60 日以内に定められた支払期日までに製造委託等代金を支払わないこと。
【禁止行為3】製造委託等代金の減額
(取適法第5条第1項第3号)
あらかじめ定めた製造委託等代金を減額すること。
【禁止行為4】受領後の返品
(取適法第5条第1項第4号)
受け取った給付を返品すること。
【禁止行為5】買いたたき
(取適法第5条第1項第5号)
類似品等の価格又は市価に比べて著しく低い製造委託等代金を不当に定めること。
【禁止行為6】強制購入・強制利用
(取適法第5条第1項第6号)
委託事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。
【禁止行為7】報復措置
(取適法第5条第1項第7号)
中小受託事業者が委託事業者の不公正な行為を公正取引委員会または中小企業庁に知らせたことを理由として、その中小受託事業者に対して、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。
【禁止行為8】有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
(取適法第5条第2項第1号)
有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る製造委託等代金の支払期日より早い時期に相殺したり、支払わせたりすること。
【禁止行為9】不当な経済上の利益の提供の要請の禁止
(取適法第4条第2項第2号)
中小受託事業者から金銭、労務の提供等をさせること。
【禁止行為10】不当な給付内容の変更および不当なやり直しの禁止
(取適法第4条第2項第3号)
費用を負担せずに注文内容を変更し、又は受領後にやり直しをさせること。
【禁止行為11】協議に応じない一方的な代金決定
(取適法第4条第2項第4号)
中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、当該協議に応じず、又は当該協議において中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に製造委託等代金の額を決定すること。

特に、価格交渉を一切せずに、不当に低い製造委託等代金を設定したうえで、4条明示の交付のみで契約を成立させた場合は、製造委託等代金の減額や買いたたきに該当する可能性が高いです。

フリーランス・個人事業者相手で契約を自動成立とした場合は労働者扱いになる

また、中小受託事業者がフリーランス・個人事業者である場合において、契約を自動成立としたときは、業務委託契約ではなく、労働契約・雇用契約とみなされるリスクがあります。

中小受託事業者がフリーランス・個人事業者である場合に、適法な業務委託契約か労働契約・雇用契約とみなされるかの判断基準は、「労働基準法研究会報告」において示されています。

『労働基準法研究会報告』とは?労働基準法の労働者の判断基準について解説

この「労働基準法研究会報告」の1(1)イには、次のとおり、「仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無」が規定されています。

1 「使用従属性」に関する判断基準

(1)「指揮監督下の労働」に関する判断基準

労働が他人の指揮監督下において行われているかどうか、すなわち他人に従属して労務を提供しているかどうかに関する判断基準としては、種々の分類があり得るが、次のように整理することができよう。

イ 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無

「使用者」の具体的な仕事の依頼、業務従事の指示等に対して諾否の自由を有していれば、他人に従属して労務を提供するとは言えず、対等な当事者間の関係となり、指揮監督関係を否定する重要な要素となる。これに対して、具体的な仕事の依頼、業務従事の指示等に対して拒否する自由を有しない場合は、一応、指揮監督関係を推認させる重要な要素となる。なお、当事者間の契約によっては、一定の包括的な仕事の依頼を受諾した以上、当該包括的な仕事の一部である個々具体的な仕事の依頼については拒否する自由が当然制限される場合があり、また、専属下請のように事実上、仕事の依頼を拒否することができないという場合もあり、このような場合には、直ちに指揮監督関係を肯定することはできず、その事実関係だけでなく、契約内容等も勘案する必要がある。

つまり、個々の取引に関する業務委託契約の注文・発注に対して、中小受託事業者の諾否の自由がある場合は、指揮命令関係が否定され、適法な業務委託契約とみなされる可能性が高くなります。

他方で、これらの注文・発注について、中小受託事業者の諾否の自由がない場合は、指揮命令関係が推認され、雇用契約・労働契約とみなされる可能性が高くなります。





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