注文書と発注書の違いは何ですか?
注文書と発注書は、ともに契約の申込みを証する書面ですので、法的にも契約実務上も、注文書と発注書の違いはありません。

このページでは、企業間取引(特に業務委託契約)の双方の当事者向けに、注文書と発注書の違いと、業務委託契約における使い方について解説しています。

法的には、注文書と発注書の違いは、特にありません。

つまり、注文書と発注書は、法的には同じ性質の書面となります。

業務委託契約では、注文書と発注書は、主に委託者から受託者に対する契約の申込みを証する書面として使われます。

このページでは、こうした注文書・発注書の違いと業務委託契約における一般的な使い方について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 注文書と発注書の違い
  • 注文書・発注書の業務委託契約における使い方




注文書と発注書の違いは特にない

注文書・発注書=両者とも契約の申込みを証する書面

注文書・発注書とは、ともに注文者・発注者からの何らかの契約の申込みを証する書面です。

【意味・定義】注文書・発注書とは?

注文書・発注書とは、一方の契約当事者(注文者・発注者)から他方の契約当事者(請負人・受注者)に対する、何らかの契約の申込みの意思表示をするための書面をいう。

このため、注文書と発注書の違いは、特にありません。

注文書は本来は請負契約で使用する

注文書は、本来であれば、請負契約において使用する書面です。

というのも、請負契約では、請負契約を注文する側を「注文者」といい、請負契約を受注する側を「請負人」といいます。

また、民法上は、他の契約については、「注文」という表現を使っていません。

このため、「注文書」という表現は、正確には請負契約だけで使う表現となります。

発注書はあらゆる契約で使用する

これに対し、発注書は、あらゆる契約で使用する書面です。

このため、請負契約以外の契約では、「発注書」という表現を使うべきです。

もっとも、「発注書」の「発注」は、「注文を発する」ことを意味します。

その意味でも、発注書と注文書は、厳密には違いはありません。

よって、契約実務の現場では、注文書と発注書は厳密に使い分けられていませんし、法的にも特に違いはありません。

注文書は注文請書、発注書は受注書とセット

なお、注文書は注文請書と対になります。

また、発注書は受注書と対になります。

これらのセットは、契約実務の慣例として使われています。

このため、このセットを間違えると、「契約実務の経験が浅い」と思われてしまう可能性があります。

ポイント
  • 注文書と発注書は、ともに契約の申込みを証する書面。
  • 注文書と発注書の違いはない。
  • 注文書・発注書ともに、契約実務上はあらゆる契約で使われる。
  • 注文書は注文請書、発注書は受注書と組み合わせて使われる。





業務委託契約における注文書・発注書の使い方は?

委託者による業務委託契約の申込みに使用

業務委託契約では、注文書・発注書は、委託者による契約の申込みに使われます。

より具体的には、次の場面で使われます。

業務委託契約において注文書・発注書が使われる場面
  • 1.ごく簡単なスポットの業務委託契約の申込み
  • 2.業務委託基本契約が締結されている場合における業務委託個別契約の申込み

1.のように、注文書・発注書は、単体でスポットの業務委託契約における契約の申込みとして使われることがあります。

ただ、一般的に、注文書・発注書は、A4の印刷用紙の片面または両面で印刷されていることが多く、内容が非常に少なくなります。

いかに簡単な業務委託契約とはいえ、これではリスクが非常に高くなってしまいます。

このため、一般的な業務委託契約では、2.のように、あらかじめ業務委託基本契約を締結しておき、その個別契約の申込みのために、注文書・発注書を使うことが多いです。

下請法の三条書面としても使用

また、下請法が適用される業務委託契約では、下請法第3条により、委託者から受託者に対する、取引条件が記載された書面の交付が義務づけられています。

下請法第3条(書面の交付等)

1 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。

2 親事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該下請事業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該親事業者は、当該書面を交付したものとみなす。

この書面を「三条書面」といいます。

【意味・定義】三条書面(下請法)とは?

三条書面(下請法)とは、下請代金支払遅延等防止法(下請法)第3条に規定された、親事業者が下請事業者対し交付しなければならない書面をいう。

業務委託契約では、委託者=親事業者は、受託者=下請事業者に対し、この「三条書面」として注文書・発注書を交付することがあります。

この他、三条書面につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法の三条書面とは?12の法定記載事項や契約書との違いは?

フリーランス保護法の三条書面としても使用

さらに、遅くとも2024年秋ごろまで施行される「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス保護法)の第3条においても、下請法同様に、書面による取引条件の明示・交付が義務づけられています。

フリーランス保護法第3条(書面の交付等)

1 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。

2 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。

下請法とは異なり、フリーランス保護法の場合は、必ずしも書面の交付が必要なわけではなく、明示で足ります(同第1項)。

また、書面ではなく、電磁的方法(電子メールの送信等)も、あらかじめ認められています(同上)。

ただし、フリーランスからの求めがあった場合は、委託者は、書面の交付をしなければなりません(同第2項)。

このため、注文書・発注書は、この「書面」として使用されることとなります。





注文書・発注書の違いに関するよくある質問

注文書と発注書の違いは何ですか?
注文書と発注書は、ともに契約の申込みを証する書面ですので、法的にも契約実務上も、注文書と発注書の違いはありません。
業務委託契約では、注文書・発注書は、どのように使われていますか?
業務委託契約では、注文書・発注書は、つぎのように使われています。

  • ごく簡単なスポットの業務委託契約の申込み
  • 業務委託基本契約が締結されている場合における業務委託個別契約の申込み
  • 下請法の三条書面
  • フリーランス保護法の三条書面