このページでは、業務委託契約における業務内容が検査に与える影響について、解説しています。
業務委託契約における業務内容は、実施された業務や納入された製品や成果物の検査の合否の基準(=検査基準)となります。このため、業務委託契約書での業務内容は、検査に大きな影響を与えます。
業務内容はハッキリしていれば、検査はスムーズに進みますが、業務内容がハッキリしていなければ、検査結果を巡ってトラブルになります。
また、取適法(旧下請法)が適用される場合、業務内容によっては、検査後に無償でやり直しをさせることが違法となることもあります。
このページでは、スムーズにトラブルなく検査を進めるために、どのように業務内容を決めるべきなのか、という点について、解説していきます。
影響1:業務委託契約の業務内容は検査基準となる
「何をするのか」と同じくらい「ちゃんとしたのか」も大事
業務委託契約における業務内容の規定には、ふたつの性質があります。
業務委託契約における業務内容のふたつの性質
- 「受託者が何をするのか」という、受託者が果たすべき義務・債務・責任(裏を返せば委託者が請求できる権利)の内容、という性質。
- 「受託者がちゃんとしたのか」という、受託者が義務・債務・責任を果たしたのかどうか、という性質。
このページでは、後者の点について解説していきます。
前者の点、つまり、受託者の義務・債務・責任としての業務内容については、詳しくは、以下のページをご覧ください。
原則として業務委託契約では検査がある
一般的な業務委託契約では、受託者からの業務の実施や、製品・成果物の納入が合った後でおこなわれる、検査の条項を規定します。
検査は、受託者によって実施された業務や、納入された製品・成果物を、委託者が、文字どおり検査することです。
なお、ごく小規模な業務委託契約の場合は、検査を省略することもあります。
また、検査をすること自体にあまり意味がない業務委託契約(一部のコンサルティング契約など)では、検査をしないこともあります。
コンサルティング契約で検査をしない理由
成果保証型以外のコンサルティング契約では、一般的にはコンサルタント側が成果を保証しない。このため、仮に検査結果が不合格だったとしても、クライアント側がやり直しや返金の請求ができないため、検査はしない。
ただ、一般的な業務委託契約では、企業間取引であることもあり、よほどのことがない限り、製品の納入後や業務・サービスの実施後の検査の条項を規定しないことはありません。
もっとも、検査条項の規定はあっても、実際は検査をほとんどしない、ということはありえます。
業務内容にもとづき検査する
製品納入後・業務やサービス実施後の検査では、受託者によって納入された製品・成果物や実施された業務・サービスが、合格・不合格のいずれであるかを判定します。
製品・成果物・業務・サービスによって、検査の方法は様々ですが、いずれの場合も何らかの検査の基準があります。この検査の基準になるのが、業務内容です。
実際の検査では、業務内容にもとづいて、委託者の側が、納入された製品・成果物や実施された業務・サービスを確認し、合格・不合格の判定をします。
ポイント
- 業務内容=検査基準。
- 業務内容と同じくらい、業務の検査も重要。
- 業務委託契約で規定した業務内容にもとづき、検査はおこなわれる。
影響2:検査不合格の際に不明確・不十分な業務内容により利害が対立する
検査結果が不合格となった場合に揉めるリスクがある
検査の結果、納入された製品・成果物や実施された業務・サービスが合格すれば、特に問題なく業務委託契約は終了となります。
しかし、不合格となった場合は問題となります。
検査結果が不合格であった場合、受託者の側がすんなり検査結果(=不合格)を受け入れるのであれば、特に揉めることはありません。
この場合は、受託者に、もう一度やり直してもらう、損害賠償を負担してもらう、値引きしてもらう、追加で納入してもらう(数量不足の場合)などの対応があります。
ところが、検査結果が不合格であった場合に、受託者の側が検査結果を受け入れない場合もあります。
検査の判定を巡って委託者と受託者が対立する
受託者としては、委託者に不合格と判定された場合、納得できる判定でないと、すんなりとやり直しなどには応じにくいものです。
ここでポイントとなるのが、すでに述べた「業務内容=検査基準」です。
業務内容が、委託者・受託者の双方(できれば第三者も)が見て、一義的・客観的で、解釈の余地が入るスキがなければ、受託者としても、不合格の検査結果も受け入れざるを得なくなります。
これに対し、業務内容が不明確で、どうとでも解釈できるような内容であれば、受託者としては、そう簡単に不合格の検査結果を受け入れるわけにはいきません。
業務内容の明確さによる検査結果の違い
- 明確な業務内容=検査基準:受託者が不合格の検査結果も受け入れやすい・受け入れざるを得ない。
- 不明確な業務内容=検査基準:受託者が不合格の検査結果を受け入れにくい。
このように、業務内容が不明確な場合、委託者と受託者の間で、検査結果の判定=不合格の判定を巡って、利害が対立し、トラブルになるリスクがあります。
受託者は委託者による「恣意的」な判定を疑う
受託者の立場としては、検査が不合格であった場合、委託者が「恣意的」な判定をしたのではないか、と疑います。
よほど不誠実でない限り、受託者としても、(うっかりしたミスは別としても)不合格になるような製品・成果物の納入や業務・サービスの実施はしません。
こうした事情があるため、通常は、委託者による不合格の判定があった場合であっても、受託者としては、そう簡単には検査結果を受け入れてはくれません。
この場合、もし委託者が、特に「恣意的」な判定をしているつもりがなくても、受託者からは、「恣意的」な判定をしている、と誤解されてしまうことがあります。
受託者による誤解
明確で客観的な業務内容でないと、委託者がそのつもりがなくても、受託者が「恣意的」な検査をしたと誤解してしまう。
こうした誤解を避けるためにも、受託者に納得してもらえるような、「恣意的」でない=客観的な業務内容=検査基準が重要となります。
ポイント
- 業務委託契約では、検査結果が不合格となった場合に揉めるリスクがある。
- 検査結果が不合格の場合、委託者による検査の判定を巡って委託者と受託者が対立する。
- 明確な業務内容=検査基準:受託者が不合格の検査結果も受け入れやすい・受け入れざるを得ない。
- 不明確な業務内容=検査基準:受託者が不合格の検査結果を受け入れにくい。
- 受託者は、委託者による「恣意的」な検査の判定を疑う。
- 明確で客観的な業務内容でないと、委託者がそのつもりがなくても、受託者が「恣意的」な検査をしたと誤解してしまう。
【補足】業務委託契約における業務内容と検査基準を別にする場合もある
業務内容=検査基準は検査が簡単な場合に限る
契約書で業務内容を簡単に規定できる業務委託契約の場合、すでに触れたとおり、業務内容=検査基準となります。
具体例としては、運送請負契約が該当します。
一般的な運送請負契約の場合、業務内容は、「無事故で荷物を指定の場所に運ぶこと」です。となると、検査基準は、「無事故で荷物が指定の場所に運ばれたかどうか」です。
蛇足ですが、運送請負契約を規定した一般的な運送請負約款では、「時間どおりに運ぶこと」は、運送業者の義務にはなっていません。
検査が複雑な場合はを検査仕様を分けて規定する
これに対して、契約書で業務内容を簡単に規定できない業務委託契約の場合は、業務内容とは別に、検査仕様(=検査項目・検査基準・検査方法)を規定することがあります。
具体例としては、システム等開発業務委託契約が該当します。
特に規模の大きなシステム等開発業務委託契約では、仕様が複雑になり、システム等の仕様=業務内容をそのまま検査基準とすることはできません。
このため、システム等の仕様=業務内容とは別に、開発されたシステム等が納入される前に、検査仕様・検査項目・検査基準等を定めます。
ちなみに、検査仕様・検査項目・検査基準等についても、検査仕様書として書面化し、相互に署名または記名押印して取交します。
検査仕様書にサインが必要な理由
検査仕様も契約内容の一部。このため、検査仕様書も契約書の一部として取扱い、契約書と同様に、署名または記名押印して相互に取り交わす必要がある。
そして、検査の際には、この検査仕様書にもとづいて、検査を実施し、合否の判定をします。
業務の実施と並行して検査を実施する場合もある
また、場合によっては、業務の実施と並行して、実質的な検査を実施する場合があります。
具体例としては、建設工事請負契約があります。
建設工事請負契約では、工事が完了してしまうと検査ができなくなる、あるいは検査に多額の費用がかかること(例:破壊検査など)があります。
このため、設計図書どおりに施工されているかどうか、建築士が随時確認しながら施工を進めていきます。
このように、建設工事で設計図書どおりに施工がされているかどうかを確認することを「施工監理」(施工管理ではありません)といいます。
検査基準は業務の完了・納入前に決める
なお、業務内容と検査基準を別に分ける場合、業務の終了(製品・成果物の納入や業務・サービスの実施の完了)の前までに、検査基準を決める必要があります。これは、特に受託者にとって重要な点です。
というのも、業務の終了した後で検査基準を決めようとすると、委託者が、自らにとって都合のいい検査基準でなければ、合意しなくなる可能性があるためです。
このため、できるだけ契約締結時、遅くとも、業務の終了の直前までには、当事者間で検査基準について合意することが重要です。
ポイント
- 業務内容が検査基準となるのは、運送請負契約のように、検査が簡単な場合に限る。
- 検査が複雑な場合は検査項目・検査基準・検査方法を分けて規定する。
- 建設工事請負契約のように、業務の実施と並行して検査(施工監理)を実施する場合もある。
- 委託者にとって都合のいい、恣意的な検査基準を設定されないように、検査基準は、業務の完了・納入前に決める。
影響3:不十分・不明確な業務内容は取適法・フリーランス保護法違反
「不明確な業務内容」そのものが取適法・フリーランス保護法違反
取適法・フリーランス保護法とは?
取適法やフリーランス保護法が適用される業務委託契約の場合、業務内容は、いわゆる「4条明示(旧3条書面)」や3条通知の必須記載事項です。
取適法は、正式名称を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といい、委託者=委託事業者(旧親事業者)を規制し、受託者=中小受託事業者(旧下請事業者)を強力に保護している法律です。
【意味・定義】取適法とは?
取適法とは、正式には「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といい、委託事業者(旧親事業者)に対し義務・禁止行為を課すことにより、委託事業者の中小受託事業者(旧下請事業者)に対する取引を公正にするとともに、中小受託事業者の利益を保護することを目的とした法律をいう。いわゆる「下請法」が改正されたもの。
また、フリーランス保護法は、正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といい、同じく委託者=業務委託事業者を規制し、受託者=特定受託事業者を強力に保護している法律です。
【意味・定義】フリーランス保護法(フリーランス新法)とは?
フリーランス保護法・フリーランス新法とは、正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(別名:フリーランス・事業者間取引適正化等法)といい、フリーランスに係る取引の適正化、就業環境の整備等を図る法律をいう。
取適法が適用される条件とは?
業務委託契約では、委託者と受託者の資本金の金額または常時使用の従業員の数および業務内容によっては、取適法が適用される可能性があります。
具体的には、以下の6パターンの取引が、取適法の適用対象となります。
パターン1 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 資本金の区分 | 3億1円以上の法人 | 3億円以下の法人(または個人事業者) | |
| 業務内容 |
| ||
パターン2 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 資本金の区分 | 1千万1円以上3億円以下の法人 | 1千万円以下の法人(または個人事業者) | |
| 業務内容 |
| ||
パターン3 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 従業員の区分 | 従業員300人超の法人 | 従業員300人以下の法人または個人事業者 | |
| 業務内容 |
| ||
パターン4 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 資本金の区分 | 5千万1円以上の法人 | 5千万円以下の法人(または個人事業者) | |
| 業務内容 |
| ||
パターン5 | ||
|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | |
| 資本金の区分 | 1千万1円以上5千万円以下の法人 | 1千万円以下の法人(または個人事業者) |
| 業務内容 |
| |
パターン6 | ||
|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | |
| 従業員の区分 | 従業員100人超の法人 | 従業員100人以下の法人または個人事業者 |
| 業務内容 |
| |
この他、業務委託契約に取適法が適用されるかどうかにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
フリーランス保護法が適用される条件とは?
一方、フリーランス保護法は、受託者が個人事業者や一人法人である場合に適用されます。
フリーランス保護法第3条が適用される条件
- 発注事業者が事業者であること(業種、規模、従業者の有無を問わない)。
- 受注事業者(フリーランス)が個人事業者または一人法人(役員が1人だけの法人)であり、かつ、いずれも従業員を使用しないものであること。
- 業務委託の内容が物品の製造・加工、情報成果物の作成、役務の提供(物品の修理を含み、発注事業者自らに役務の提供をさせることを含む)であること。
フリーランス保護法第3条が適用される条件のポイント
- 発注事業者としては、すべての事業者が対象となる。
- フリーランスは、個人事業者だけでなく役員が代表取締役だけの一人法人も対象となる。ただし、従業員を1人でも使用する場合は対象外となる。
- 従業員とは、「1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、継続して31日以上雇用されることが見込まれる労働者」(派遣労働者を含む)のこと。
- 従業員には同居家族は含まれない。
- 取適法(旧下請法)とは異なり、役務の提供には建設工事も含まれる。
- 取適法(旧下請法)とは異なり、再委託のもののみならず、発注事業者が「その事業のために」委託するものや、「(発注事業者)自らに役務の提供をさせることを含む」。
この他、業務委託契約にフリーランス保護法が適用されるかどうかにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
4条明示・3条通知で業務内容を明示する義務がある
取適法の4条明示とは?
取適法が適用される場合、委託者=委託事業者は、取適法第4条(旧下請法第3条)にもとづき、受託者=中小受託事業者に対し、取引条件を明示しなければなりません。
この明示のことを、「4条明示」といいます。
【意味・定義】4条明示(取適法)とは?
4条明示(取適法)とは、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)第4条に規定された、委託事業者(旧親事業者)が中小受託事業者(旧下請事業者)に対し明示しなければならない事項(取引条件)をいう。旧下請法のいわゆる「3条書面」に代わるもの。
取適法が適用される業務委託契約の場合、委託者は、4条明示に「中小受託事業者の給付の内容」を必ず記載しなければなりません。
【意味・定義】給付の内容(取適法・フリーランス保護法)とは?
給付の内容とは、取適法またはフリーランス保護法が適用される場合における、中小受託事業者または特定受託事業者が委託事業者または業務委託事業者に対し給付する委託の内容(業務内容)をいう。
この「中小受託事業者の給付の内容」ですが、単に書けばいいというものではありません。
「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」によると、「中小受託事業者の給付の内容」については、次のとおり記載しなければなりません。
(3) 「中小受託事業者の給付の内容」とは、委託事業者が中小受託事業者に委託する行為が遂行された結果、中小受託事業者から提供されるべき物品及び情報成果物(役務提供委託又は特定運送委託をした場合にあっては、中小受託事業者から提供されるべき役務)であり、その品目、品種、数量、規格、仕様等を明示する必要がある。
また、主に、情報成果物作成委託に係る作成過程を通じて、情報成果物に関し、中小受託事業者の知的財産権が発生する場合において、委託事業者は、情報成果物を作成させるとともに、作成の目的たる使用の範囲を超えて知的財産権を自らに譲渡・許諾させることを「中小受託事業者の給付の内容」とすることがある。この場合は、委託事業者は、「中小受託事業者の給付の内容」の一部として、中小受託事業者が作成した情報成果物に係る知的財産権の譲渡・許諾の範囲を明示する必要がある。
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第3 1(3)
フリー
また、特に、システム等開発業務委託契約では、次のとおり、「中小受託事業者が4条明示された内容を見て「給付の内容」を理解でき、委託事業者の指示に即した情報成果物を作成できる程度の情報を明示することが必要」とされています。
同時に、「必要な限り明確化することが望ましい」とされています。
- Q53:情報成果物作成委託においては、委託内容の全てを4条明示することは困難である場合があるが、その場合どの程度詳しく書かなければならないか。
- 委託内容の全てを明示することは困難であったとしても、中小受託事業者が4条明示された内容を見て「給付の内容」を理解でき、委託事業者の指示に即した情報成果物を作成できる程度の情報を明示することが必要である。
また、4条明示する「給付の内容」は、委託事業者として中小受託事業者に対し、やり直し等を求める根拠となるものでもあるので、必要な限り明確化することが望ましい。引用元:中小受託取引適正化法テキストp.46
フリーランス保護法の3条通知とは?
なお、フリーランス保護法においても、4条明示ど同様の規制があります。
フリーランス保護法が適用される場合、業務委託事業者は、フリーランス保護法第3条にもとづき、特定受託事業者に対し、取引条件を明示しなければなりません。
この明示のことを、「3条通知」といいます。
【意味・定義】3条通知(フリーランス保護法)とは?
3条通知とは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)第3条に規定された、業務委託事業者(発注事業者)が特定受託事業者(フリーランス)に対し明示しなければならない通知(取引条件)をいう。
フリーランス保護法が適用される業務委託契約の場合、委託者は、3条通知に「特定受託事業者の給付の内容」を必ず記載しなければなりません。
この「特定受託事業者の給付の内容」もまた、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」によると、次のとおり記載しなければなりません。
「給付(法第二条第三項第二号の業務委託の場合は、提供される役務。第六号において同じ。)の内容」とは、業務委託事業者が特定受託事業者に委託した業務が遂行された結果、特定受託事業者から提供されるべき物品及び情報成果物(役務の提供を委託した場合にあっては、特定受託事業者から提供されるべき役務)であり、3条通知において、その品目、品種、数量、規格、仕様等を明確に記載する必要がある。
また、委託に係る業務の遂行過程を通じて、給付に関し、特定受託事業者の知的財産権が発生する場合において、業務委託事業者は、目的物を給付させる(役務の提供委託については、役務を提供させる)とともに、業務委託の目的たる使用の範囲を超えて知的財産権を自らに譲渡・許諾させることを「給付の内容」とすることがある。この場合は、業務委託事業者は、3条通知の「給付の内容」の一部として、当該知的財産権の譲渡・許諾の範囲を明確に記載する必要がある。
引用元: 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方第2部 第1 1(3)ウ
業務委託契約書が4条明示・3条通知となるように作成する
以上の実情があるため、実務上は、業務委託契約書が4条明示や3条通知となるように契約条項を規定していきます。
つまり、業務委託契約書で明確な業務内容を記載しないこと自体が、取適法・フリーランス保護法違反となります。
業務委託契約書を作成する理由
業務委託契約書を作成して三条書面の記載事項のうちの「給付の内容」を明記しないと、取適法第4条(旧下請法第3条)に違反するから。
言いかえれば、委託者にとっては、業務委託契約書に明確な業務内容を記載することが、取適法・フリーランス保護法の義務ということです。
「恣意的」な検査は取適法・フリーランス保護法違反
また、不明確な業務内容は、すでに触れたような、「恣意的」な検査の原因となります。
取適法が適用される業務委託契約の場合、ここの「恣意的」な検査もまた、取適法やフリーランス保護法違反となります。
具体的には、次の禁止行為に該当します。
「恣意的」な検査による禁止行為(取適法)
- 受領拒否(取適法第5条第1項第1号)
- 返品(同第5条第1項第4号)
- 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(同第5条第2項第3号)
「恣意的」な検査による禁止行為(フリーランス保護法)
- 受領拒否(フリーランス保護法第5条第1項第1号)
- 返品(同第5条第1項第3号)
- 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(同第5条第2項第2号)
以下、それぞれ具体的に見てみましょう。
「恣意的」な検査による受領拒否
取適法やフリーランス保護法では、恣意的に厳しい検査基準を設定して、製品・成果物の受領を拒むことは、次のとおり受領拒否(取適法第5条第1項第1号・フリーランス保護法第5条第1項第1号)に該当し、認められません。
(イ)検査基準を恣意的に厳しくして、委託内容と異なるなどとする場合
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第4 1(2)(イ)
・ 業務委託後に検査基準を恣意的に厳しくすることにより、委託内容と適合しないとして、従来の検査基準であれば合格とされたものを不合格とする場合
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第2部 第2 2(2)ア(ウ)①
このため、委託事業者・業務委託事業者としては、検査基準が恣意的にならないよう、一義的・客観的なものとする必要があります。
「恣意的」な検査にもとづく返品
取適法やフリーランス保護法では、恣意的に厳しい検査基準を設定して、納入された製品・成果物を引き取らせることは、次のとおり返品(取適法第5条第1項第4号・フリーランス保護法第5条第1項第3号)に該当し、認められません。
イ 検査基準を恣意的に厳しくして、委託内容と異なるなどとする場合
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第4 4(2)イ
② 業務委託後に検査基準を恣意的に厳しくすることにより、委託内容と適合しないとして、従来の検査基準で合格とされたものを不合格とする場合
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第2部 第2 2(2)ウ(ア)②
このため、委託事業者や業務委託事業者としては、恣意的な検査にならないよう、一貫した検査基準で検査する必要があります。
「恣意的」な検査にもとづくやり直し
取適法やフリーランス保護法では、恣意的に厳しい検査基準を設定して、業務内容の変更や、実施された業務・納入された製品・成果物のやり直しを要請することは、次のとおり不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(取適法第5条第2項第3号・フリーランス保護法第5条第2項第2号)に該当し、認められません。
ウ 検査基準を恣意的に厳しくして委託内容と異なること等があるとする場合
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第4 8(3)ウ
③ 業務委託後に検査基準を恣意的に厳しくし、給付の内容が委託内容と適合しないとする場合
引用元: 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準第2部 第2 2(2)キ(オ)③
このため、委託事業者・業務委託事業者としては、適法なやり直しを要求できるように、明確な業務内容と検査基準の規定をする必要があります。
禁止行為をおこなった場合は勧告がある
委託事業者や業務委託事業者がこれらの禁止行為の規定に違反した場合、ただちに罰則とはなりません。
通常は、委託事業者や業務委託事業者に対し、公正取引委員会または中小企業庁から調査が入ります(この調査を拒むと50万円以下の罰金が科されます)。
この調査の結果、違反の程度が軽い場合は行政指導で済みますが、違反の程度が重い場合は公正取引委員会から勧告を受けます。
勧告を受けると、企業名が公表されますので、社会的な制裁を受けることになります。
なお、勧告に従わない場合は、独占禁止法にもとづき、より重い行政処分である排除措置命令や課徴金納付命令が出されます。
もちろん、これに従わない場合は、最終的には刑事罰を受けることになります。
ポイント
- 不明確な業務内容は、取適法第4条(旧下請法第3条)違反となる。
- 恣意的な検査は、取適法で禁止された「受領拒否」「返品」「不当な給付内容の変更及び不当なやり直し」の原因となる。
- 禁止行為をおこなった場合は、直ちに罰則を受けるわけでなく、勧告(+企業名の公表)や行政指導を受ける。
- ただし、勧告や行政指導を受けた後に、取適法に適合するように改善しなければ、排除措置命令・課徴金納付命令の行政処分を受け、最終的には刑事罰が科される。
- フリーランス保護法にも同様の規制がある。
業務内容が受入検査に与える影響に関するよくある質問
- 業務委託契約において、業務内容が受入検査に与える影響にはどのようなものがありますか?
- 業務委託契約では、業務内容は、検査に関して、次の3つの影響を与えます。
- 業務内容が検査基準となる
- 検査不合格の場合に不明確・不十分な業務内容が原因で利害が対立する
- 不十分・不明確な業務内容は取適法やフリーランス保護法違反
- なぜ不十分・不明確な業務内容が取適法違反となるのですか?
- 業務内容は、いわゆる4条明示の必須記載事項であるため、業務委託契約書を4条明示として運用する場合は、不十分・不明確な業務内容は、取適法第4条(旧下請法第3条)に違反することとなります。

