
- 取適法(旧下請法)が適用される取引きでは、注文書・発注書をあとから(事後に)交付することは違法になるのでしょうか?
- 取適法が適用される場合において、注文書・発注書をあとから交付したときは、違法となる場合と適法になる場合があります。
このページでは、取適法の委託事業者(旧親事業者)向けに、注文書・発注書を後から交付する「事後交付」の違法性・適法性について解説しています。
取適法が適用される取引きでは、委託事業者は、中小受託事業者(旧下請事業者)に対し、いわゆる「4条明示(旧3条書面)」を発注後、直ちに交付しなければなりません。
そこで問題となるのが、注文書・発注書については、後から交付していいのか、ということです。
これは、注文書・発注書と4条明示を兼用しているかどうかによって、違法・適法のいずれかに該当します。
このページでは、こうした4条明示・注文書・発注書のあとからの交付=事後交付について、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。
このページでわかること
- 取適法が適用される場合における注文書・発注書のあとからの交付・事後交付が違法となる場合
- 4条明示・注文書・発注書の適切な交付のタイミング
なお、このページは、改正下請法=取適法にもとづく解説となります。
下請法は、2026年1月1日の改正下請法の施行に伴い、取適法に改められました。
旧下請法における注文書の事後交付や事後発注につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
注文書・発注書をあとから交付しても必ずしも違法にはならない
取適法では、注文書・発注書の交付やその時期については、特に規制はありません。
このため、取適法が適用される取引きにおいて、注文・発注や契約の成立の後から注文書・発注書を交付したとしても、そのことをもって、直ちに委託事業者が取適法違反になることはありません。
ただし、取適法には、いわゆる4条明示の交付については、「直ちに」しなければならないことが規定されています(後述)。
このため、4条明示を交付せずに後から注文書・発注書を交付した場合や、4条明示と注文書・発注書を兼用している場合において、「直ちに」=すぐに交付しないときは、取適法違反となります。
逆に、4条明示を直ちに交付している場合は、後から注文書・発注書を交付したとしても、取適法違反にはなりません。
また、当然ながら、4条明示と注文書・発注書を兼用しているものを「直ちに」=すぐに交付した場合も取適法違反になりません。
注文書・発注書の事後交付の違法性・適法性
- 4条明示をせずに後から注文書・発注書を交付した場合:違法
- 4条明示と注文書・発注書を兼用したものを後から交付した場合:違法
- 4条明示を直ちにしたうえで後から注文書・発注書を交付した場合:適法
- 4条明示と注文書・発注書を兼用したものを直ちに交付した場合:適法
4条明示とは?
4条明示は委託事業者に交付義務がある書面
4条明示とは、取適法(正式には「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」)第3条に規定されている書面です。
取適法第4条(中小受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
1 委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、中小受託事業者の給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により中小受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により中小受託事業者に対し明示しなければならない。
2 委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、中小受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、中小受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。
【意味・定義】4条明示(取適法)とは?
4条明示(取適法)とは、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)第4条に規定された、委託事業者(旧親事業者)が中小受託事業者(旧下請事業者)に対し明示しなければならない事項(取引条件)をいう。旧下請法のいわゆる「3条書面」に代わるもの。
なお、4条明示につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
4条明示はいつまでに交付する?
取適法の委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、4条明示を交付する義務があります。
ここでいう、「直ちに」とは、一般的な法令用語の意味としては、すぐに、という意味です。
【意味・定義】直ちにとは?
「直ちに」とは、即時に、すぐに、ということ。
これは、取適法でも同様の意味で使われています。
- Q50:4条明示の書面は様式を問わないので契約書の交付を4条明示とすることも可能と聞いたが、発注後、契約締結まで日数を要する場合、どの程度までなら「直ちに」交付したといえるか。
- 「直ちに」とは「すぐに」という意味である。委託事業者には、発注した場合「直ちに」4条明示をする義務があるので、発注から契約締結までに日数を要するのであれば、発注後、直ちに明示したとはいえない。そのような場合には、契約書とは別に、発注後直ちに4条明示をしなければならない。
引用元:中小受託取引適正化法テキストp.45
つまり、委託事業者は、中小受託事業者に対し業務委託(製造委託等)の発注をした場合は、すぐに4条明示を交付しなければなりません。
この他、4条明示や注文書・発注書の交付の時期につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
4条明示兼注文書(発注書)の場合はあとから交付できる?
4条明示は契約書・注文書・発注書と兼用することが多い
このように、4条明示は、委託事業者が中小受託事業者に対し交付することから、同じく中小受託事業者に対し交付する注文書・発注書と兼用することが多いです。
よって、取適法が適用される取引きにおいて注文書・発注書を使う場合、委託事業者は、中小受託事業者に対し、4条明示の要件を満たした注文書・発注書を作成したうえで交付することが多いです。
この他、4条明示と注文書・発注書の関係につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
なお、同様に、中小受託事業者と取り交わす業務委託契約書や取引基本契約書と4条明示を兼用することも多いです。
4条明示兼注文書(発注書)はあとから交付したら違法
このように、4条明示と注文書・発注書を兼用する場合、委託事業者が中小受託事業者に対し製造委託等(業務委託)をしたときは、4条明示と注文書・発注書を兼ねた書面を直ちに=すぐに交付しなければなりません。
つまり、発注のあとから注文書・発注書を交付した場合は、取適法第4条に違反することとなります。
このため、委託事業者としては、製造委託等(業務委託)の発注後にすぐに(できれば同時に)4条明示(兼注文書・発注書)をできるような運用体制を構築しておく必要があります。
または、逆に4条明示(注文書・発注書)ができるようになるまでは、安易に発注をしない体制とする必要があります。
4条明示と注文書・発注書を別々にしている場合はあとから交付してもいい?
また、あまり一般的ではありませんが、4条明示と注文書・発注書を別々に明示・交付する場合もあります。
例えば、注文書・発注書の交付に時間がかかる場合や、4条明示に記載された内容以外の契約内容について交渉が必要な場合が該当します。
このような場合、委託事業者は、4条明示を単体で先行して直ちに交付していれば、注文書・発注書は後から交付しても構いません。
- Q50:4条明示の書面は様式を問わないので契約書の交付を4条明示とすることも可能と聞いたが、発注後、契約締結まで日数を要する場合、どの程度までなら「直ちに」交付したといえるか。
- 「直ちに」とは「すぐに」という意味である。委託事業者には、発注した場合「直ちに」4条明示をする義務があるので、発注から契約締結までに日数を要するのであれば、発注後、直ちに明示したとはいえない。そのような場合には、契約書とは別に、発注後直ちに4条明示をしなければならない。
引用元:中小受託取引適正化法テキストp.45
逆に、製造委託等(業務委託)の発注を口頭や電子メールでしたにもかかわらず、4条明示を交付せずに注文書・発注書のみを後から交付した場合や、4条明示と注文書・発注書をあとから交付した場合は、取適法第4条に違反することとなります。
注文書・発注書あとから交付した場合の罰則は?
このように、4条明示を交付せずに後から注文書・発注書を交付した場合や、4条明示と注文書・発注書を兼用したものを直ちに交付せずに後から交付した場合は、取適法第4条に違反します。
取適法第4条違反があった場合、委託事業者には、50万円以下の罰金が科されます。
下請法第10条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、50万円以下の罰金に処する。
(1)(省略)
(2)第5条の規定による書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の書類若しくは電磁的記録を作成したとき。
ポイントは、委託事業者である法人だけに罰金が科されるのではなく、「その違反行為をした委託事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者」にも罰金が科される、ということです。
つまり、会社で50万円を払えばいい、というものではないのです。しかも、50万円とはいえ、いわゆる「前科」がつきます。
なお、委託事業者である法人にも、罰金は科されます。
下請法第12条(罰則)
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前2条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。
補足1:取適法の対象かどうかの条件とは?
取適法が適用される対象かどうかの条件は、以下のパターンのいずれかとなります。
パターン1 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 資本金の区分 | 3億1円以上の法人 | 3億円以下の法人(または個人事業者) | |
| 業務内容 |
| ||
パターン2 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 資本金の区分 | 1千万1円以上3億円以下の法人 | 1千万円以下の法人(または個人事業者) | |
| 業務内容 |
| ||
パターン3 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 従業員の区分 | 従業員300人超の法人 | 従業員300人以下の法人または個人事業者 | |
| 業務内容 |
| ||
パターン4 | |||
|---|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | ||
| 資本金の区分 | 5千万1円以上の法人 | 5千万円以下の法人(または個人事業者) | |
| 業務内容 |
| ||
パターン5 | ||
|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | |
| 資本金の区分 | 1千万1円以上5千万円以下の法人 | 1千万円以下の法人(または個人事業者) |
| 業務内容 |
| |
パターン6 | ||
|---|---|---|
| 委託者 | 受託者 | |
| 従業員の区分 | 従業員100人超の法人 | 従業員100人以下の法人または個人事業者 |
| 業務内容 |
| |
これらのパターンのいずれかに該当する場合は、取適法の適用対象となり、委託事業者は、中小受託事業者に対し、4条明示を交付しなければなりません。
これらの取適法が適用されるかどうかの条件につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
補足2:フリーランス保護法にも同様の規制・罰則がある
取適法と同様の法律として、フリーランス保護法(新法)があります。
【意味・定義】フリーランス保護法(フリーランス新法)とは?
フリーランス保護法・フリーランス新法とは、正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(別名:フリーランス・事業者間取引適正化等法)といい、フリーランスに係る取引の適正化、就業環境の整備等を図る法律をいう。
このフリーランス保護法は、従業員を雇っていないフリーランス・個人事業者や、一人法人に対する業務委託契約に適用される法律です。
こうしたフリーランス等に対し業務委託をする場合、発注事業者には、フリーランス保護法第3条により、取適法同様、フリーランス等に対し取引内容を通知する義務があります。
フリーランス保護法第3条(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
1 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。
2 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。
この通知のことを、3条通知といいます。
【意味・定義】3条通知(フリーランス保護法)とは?
3条通知とは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)第3条に規定された、業務委託事業者(発注事業者)が特定受託事業者(フリーランス)に対し明示しなければならない通知(取引条件)をいう。
このフリーランス保護法の3条通知でも、同様の規制があるため、発注の後から3条通知を明示したり、事後に3条通知をした場合は、フリーランス保護法第3条に違反することとなります。
この他、3条通知につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
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取適法が適用される場合の注文書・発注書の事後交付に関連するQ&A
- 取適法では発注書はいつまでに交付しなければなりませんか?
- 委託事業者は、中小受託事業者に対し、製造委託等(業務委託)をした後、「直ちに」(=すぐに)4条明示を交付しなければなりません。このため、4条明示や4条明示と兼用した注文書・発注書については、委託事業者は、すぐに交付しなければ取適法第3条違反となります。
- 取適法では注文書・発注書は必須ですか?また、注文書・発注書なしで取適法違反になる場合は?
- 取適法が適用される場合、委託事業者が契約書・注文書・発注書などを交付せずに口頭で発注した場合、違法となり、最大で50万円の罰金が科されます。






