契約書に貼る4000円の収入印紙はどちらが負担するものなのでしょうか?
7号文書に該当する契約書に4,000円の収入印紙については、一般的には両者が折半して負担することとなります。
このため、2部作成した契約書には、契約当事者がそれぞれ収入印紙を貼り、消印を押印します。

このページでは、このページでは、弊所によく寄せられるご質問である、4,000円の印紙税が発生する7号文書、つまり「継続的取引の基本となる契約書」に貼る収入印紙の負担について、発注者・受注者の両者に向けて解説しています。

「収入印紙は誰が負担するのかよくわからない」というお声は、よく寄せられます。

確かに、民法と印紙税法では、印紙税をどちらが負担するのかどうかについて食い違いがあるため、そのようにお考えになるのも無理はありません。

しかしながら、一般的には、7号文書の印紙税は、発注者・受注者が、それぞれ4,000円ずつ負担することとなります。

このページでは、こうした7号文書の印紙税の負担について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 契約書に4000円の収入印紙を貼る場合に誰が負担するのか。
  • 折半ではなく一方の当事者だけに印紙税を負担させるリスク。
  • 4000円の収入印紙を節税する方法。

なお、4000円の収入印紙をなぜ貼るのかにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

4000円の収入印紙はなぜ貼る?その必要がある契約書(7号文書)とは?

また、7号文書に該当するかどうかにつきましては、以下のフローチャートでかんたんに判断できます。

その契約書は7号文書?2号文書?1号文書?フローチャートでかんたんに診断




契約書に貼る4,000円の収入印紙は契約当事者が折半して負担する

結論から言えば、4,000円の印紙税が発生する7号文書=「継続的取引の基本となる契約書」に貼る収入印紙の負担は、契約当事者の双方が、それぞれ折半して負担することが多いです。

よって、契約書を2部作成して取り交わした際に、それぞれが保有する1部の原本に収入印紙を貼り、消印を押印することとなります。

なお、この際、収入印紙への消印については、「作成者のうちの一の者が消すこととしても差し支えない」とされています(印紙税法基本通達第64条)。

印紙税法基本通達第64条(共同作成の場合の印紙の消印方法)

2以上の者が共同して作成した課税文書にはり付けた印紙を法第8条《印紙による納付等》第2項の規定により消す場合には、作成者のうちの一の者が消すこととしても差し支えない。

ただし、これはあくまで民法と印紙税法の規定にもとづく考え方です。このため、特約で、印紙税の負担について、別途規定することが可能です。

なお、下請法が適用される契約の場合は、親事業者が下請事業者に対して印紙税の負担を押し付けると、下請法違反となる可能性があります。





印紙税法では印紙税の納税義務者は「作成者」

印紙税法では、印紙税の納税義務者は、課税文書の「作成者」となっています。

印紙税法第3条(納税義務者)

1 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

2 1の課税文書を2以上の者が共同して作成した場合には、当該2以上の者は、その作成した課税文書につき、連帯して印紙税を納める義務がある。

このため、収入印紙・印紙税は、契約書を作成したどちらかの当事者、または双方の当事者が負担することになります。

ここでポイントとなるのは、第2項にあるとおり、課税文書を共同で作成した場合は、「連帯して」印紙税を収める義務があります(何をもって「共同」というのかは必ずしも明らかではありませんが)。

つまり、共同で契約書を作成したにもかからわず、相手方がその契約書に収入印紙を貼っていない場合は、理屈のうえでは、国税庁に対して、「連帯して」印紙税を納税させられる可能性もあるわけです。

ポイント
  • 印紙税の納税義務者は課税文書の作成者。
  • 印紙税は、共同で作成した契約書の場合は、契約当事者が連帯して納税する義務がある。
  • 共同して作成したにもかかわらず、相手方が契約書に収入印紙を貼っていない場合は、理屈のうえでは、「連帯して」印紙税を納税させられる可能性もある。





民法では印紙税を含む「契約に関する費用」は等分負担

”契約の締結”に必要な費用は折半

なお、民法では、原則として、契約に関する費用は、契約当事者の等分負担となっています。

民法第558条(売買契約に関する費用)

売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。

民法第559条(有償契約への準用)

この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

ここでいう「契約に関する費用」というのは、契約の締結に必要な費用であって、債務の弁済に必要な費用(民法第485条)ではありません。

【意味・定義】契約に関する費用とは?

契約に関する費用(民法第558条)とは、契約の締結に必要な費用をいう。

このため、民法上は、印紙税は、それぞれが等分に負担することになります。

契約書を2部作成する場合は自然と折半となる

この点について、4,000円の印紙税が発生する7号文書は、次のような企業間取引の根幹となる契約書であることが多いです。

7号文書の具体例
  • 売買取引基本契約
  • 製造請負取引基本契約書
  • 代理店契約書
  • 販売店契約書
  • 建設工事請負基本契約書
  • 営業代行契約書

これらの契約書は、通常は原本を2部作成して、契約当事者の双方が1部づつ保管することとなります。

この場合は、それぞれが収入印紙を購入して消印を押印すれば、自然と折半となります。





特約で一方の当事者だけに印紙税を負担させられる

なお、特約を設定することで、どちらか一方が印紙税を負担するような契約内容とすることはできます。

ただし、例えば、下請事業者や立場が弱い契約当事者に対して、一方的に印紙税を負担させるような契約内容は、下請法や独占禁止法で問題となる可能性があります。

下請法につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

下請法とは?中小零細企業・個人事業者・フリーランス=業務委託契約の受託者の味方の法律

独占禁止法につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

独占禁止法とは?私的独占・不当な取引制限・不公正な取引方法等の業務委託契約との関係も解説

ポイント
  • 特約として一方だけが印紙税を負担する内容にもできるが、下請法や独占禁止法で問題となる可能性もある。





7号文書の4,000円の収入印紙を節税する裏技

2つの印紙税を節税する裏技

事業の形態によっては、非常に多くの7号文書を取り交わすこととなり、印紙税の金額もバカになりません。

このため、7号文書の4,000円の印紙税を節税したい、という方も多いと思います。

ここでは、こうした7号文書の4,000円の印紙税を節税する方法を2つ紹介します。

7号文書の4,000円の印紙税を節税する方法
  • 初回取引きの注文書・注文請書または個別契約書を7号文書と同じ文書として綴じ込む(合綴する)
  • 電子契約サービスを利用する

裏技1:初回取引きの注文書・注文請書または個別契約書を7号文書と合綴する

「7号文書かつ2号文書・1号文書」の状態にする

ひとつめの裏技は、7号文書を使用した初回の取引きの際に、個別契約が規定された注文書・注文請書または個別契約書を、7号文書と同じ文書として綴じ込む方法です。

注文書・注文請書(正確には注文請書のみ)や個別契約書は、2号文書となります。ただし、無体財産権の譲渡がある場合は、1号文書である可能性もあります。

いずれにしても、7号文書と2号文書・1号文書(契約金額の記載があるものに限る)が同じ文書となっている場合、2号文書または1号文書として扱われます。

なお、2号文書かつ1号文書がどちらに該当するのかにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

1号文書かつ2号文書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額と計算は?

1号文書または2号文書扱いとなり4,000円を節税できる

国税庁のウェブページによると、7号文書かつ2号文書(かつ1号文書)の場合は、2号文書(かつ1号文書)に契約金額の記載がない場合を除いて、2号文書または1号文書となります。

つまり、2号文書(かつ1号文書)である注文請書や個別契約書と7号文書を同じ契約書として綴じ込んだ場合は、注文請書・個別契約書に契約金額の記載さえあれば、2号文書または1号文書として扱われます。

このため、7号文書と2号文書・1号文書を同じ契約書として綴じ込んだ場合は、4,000円分の印紙税を節税できることとなります。

裏技2:電子契約サービスを利用する

印紙税は、課税文書に該当しない限り、発生しません。

つまり、そもそも契約書を作成しなければ、課税文書そのものを作成しないこととなり、印紙税を課税されることはありません。

もちろん、契約書を作成しなければ、取引きの証拠が残りませんし、場合によっては下請法等の法律違反となります。

このため、電子契約サービスを利用して契約書を電子化することにより、契約の締結と法律の遵守の証拠を残し、そして印紙税を節税することができます。





印紙税の節税は電子契約サービスがおすすめ

印紙税の節税には、電子契約サービスの利用がおすすめです。

というのも、電子契約サービスは、他の方法に比べて、デメリットがほとんど無いからです。

印紙税を節税する方法は、さまざまあります。

具体的には、以下のものが考えられます。

印紙税を節税する方法
  1. コピーを作成する:原本を1部のみ作成し、一方の当事者のみが保有し、他方の当事者はコピーを保有する。
  2. 契約形態を変更する:節税のために準委任契約のような非課税の契約にする。
  3. 7号文書を2号文書・1号文書に変更する:取引基本契約に初回の注文書・注文請書や個別契約を綴じ込むことで7号文書から2号文書・1号文書に変える。

しかし、これらの方法には、以下のデメリットがあります。

印紙税の節税のデメリット
  • コピーを作成する:契約書のコピーは、原本に比べて証拠能力が低い。
  • 契約形態を変更する:節税のために契約形態を変えるのは本末転倒であり、節税の効果以上のデメリットが発生するリスクがある。
  • 7号文書を2号文書・1号文書に変更する:7号文書よりも印紙税の金額が減ることはあるものの、結局2号文書・1号文書として課税される。

これに対し、電子契約サービスは、有料ではあるものの、その料金を上回る節税効果があり、上記のようなデメリットがありません。

電子契約サービスのメリット
  1. 電子契約サービスを利用した場合、双方に証拠として電子署名がなされた契約書のデータが残るため、コピーの契約書よりも証拠能力が高い。
  2. 電子契約サービスは印紙税が発生しないため、印紙税を考慮した契約形態にする必要がない。
  3. 電子契約サービスは印紙税が発生しないため、7号文書に2号文書や1号文書を同轍する必要はなく、そもそも契約書を製本する必要すらない。

このように、印紙税の節税には、電子契約サービスの利用が、最もおすすめです。

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7号文書の印紙税の負担に関するよくある質問

契約書に貼る4000円の収入印紙はどちらが負担するのでしょうか?
一般的に、契約書に貼る4000円の印紙税は、契約当事者のそれぞれが4,000円ずつ負担することとなります。
4,000円の印紙税を節税する方法はないのでしょうか?
4,000円の収入印紙は、次のいずれかの方法により節税できます。

  • 初回取引きの注文書・注文請書または個別契約書を7号文書と同じ文書として綴じ込む(合綴する)
  • 電子契約サービスを利用する