4000円の収入印紙はなぜ契約書に貼るのでしょうか?4000円の収入印紙を貼る必要がある契約書はどのような契約書でしょうか?
なぜ4000円の収入印紙を貼るのかといえば、7号文書に該当する場合は、印紙税法により納税の義務があるからです。
4000円の収入印紙を貼る契約書は、売買・請負の取引基本契約書、売買等の業務・事務に関する委託の契約書などの、「継続的取引の基本となる契約書」(7号文書)です。

このページでは、企業間取引の当事者に向けて、4,000円の収入印紙を貼る契約書について解説しています。

4,000円の収入印紙を貼る契約書は、「継続的取引の基本となる契約書」です。

これは、印紙税法別表第一の第7号に規定されていることから、慣例として「7号文書」と呼ばれています。

なぜこの7号文書に4000円の収入印紙を貼るのかといえば、印紙税法により7号文書の作成者に納税の義務があるため、収入印紙の購入と消印の押印により納税をするからです。

このページでは、こうした4,000円の印紙(収入印紙・印紙税)を貼るべき7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当する条件について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • なぜ4000円の収入印紙を貼らなければならないのか。
  • 4000円の収入印紙を貼らなければならない契約書=継続的取引の基本となる契約書=7号文書に該当する条件




4000円の収入印紙を貼るべき7号文書とは?

4000円の収入印紙を貼る契約書は、「継続的取引の基本となる契約書」とされ、契約実務では、通称「7号文書」といいます。

なぜ7号文書と言われているのかといえば、収入印紙・印紙税について規定している印紙税法の別表第一の第7号に規定されているからです。

【意味・定義】7号文書(印紙税法)とは?

7号文書とは、継続的取引の基本となる契約書であって、「特約店契約書、代理店契約書、銀行取引約定書その他の契約書で、特定の相手方との間に継続的に生ずる取引の基本となるもの」のうち、売買契約や請負契約等の印紙税法施行規則第26条で定めるものをいう。

この契約書がこの7号文書に該当する場合、その作成者には印紙税の納税義務が発生し、収入印紙を購入して契約書に貼り、消印を押印することにより納税しなければなりません。

この7号文書の印紙税の金額が、4000円となります。

7号文書の印紙税の金額
文書の種類印紙税額(1通または1冊につき)
7継続的取引の基本となる契約書(契約期間の記載のあるもののうち、当該契約期間が三月以内であり、かつ、更新に関する定めのないものを除く。)4千円

よって、4000円の収入印紙を貼る必要があるかどうかは、この7号文書に該当するかどうかがポイントとなります。





7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当する条件は?

7号文書は5種類

7号文書の定義を規定している印紙税法施行令第26条によると、7号文書の種類(=継続的取引の基本となる契約書の範囲)は、以下の5つです。

5つの7号文書
  1. 販売店契約書・取引基本契約書等(印紙税法施行令第26条第1号)
  2. 代理店契約書・業務委託契約書等の売買等の委託に関する契約書(同第2号)
  3. 銀行取引約定書
  4. 信用取引口座設定約諾書
  5. 保険特約書
印紙税法施行令第26条

印紙税法施行令第26条(継続的取引の基本となる契約書の範囲)

法別表第一第七号の定義の欄に規定する政令で定める契約書は、次に掲げる契約書とする。

(1)特約店契約書その他名称のいかんを問わず、営業者(法別表第1第17号の非課税物件の欄に規定する営業を行う者をいう。)の間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する2以上の取引を継続して行うため作成される契約書で、当該2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格を定めるもの(電気又はガスの供給に関するものを除く。)

(2)代理店契約書、業務委託契約書その他名称のいかんを問わず、売買に関する業務、金融機関の業務、保険契約の締結の代理若しくは媒介の業務又は株式の発行若しくは名義書換えの事務を継続して委託するため作成される契約書で、委託される業務又は事務の範囲又は対価の支払方法を定めるもの

(3)銀行取引約定書その他名称のいかんを問わず、金融機関から信用の供与を受ける者と当該金融機関との間において、貸付け(手形割引及び当座貸越しを含む。)、支払承諾、外国為替その他の取引によつて生ずる当該金融機関に対する一切の債務の履行について包括的に履行方法その他の基本的事項を定める契約書

(4)信用取引口座設定約諾書その他名称のいかんを問わず、金融商品取引法第2条第9項(定義)に規定する金融商品取引業者又は商品先物取引法(昭和25年法律第239号)第2条第23項(定義)に規定する商品先物取引業者とこれらの顧客との間において、有価証券又は商品の売買に関する2以上の取引(有価証券の売買にあつては信用取引又は発行日決済取引に限り、商品の売買にあつては商品市場における取引(商品清算取引を除く。)に限る。)を継続して委託するため作成される契約書で、当該2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち受渡しその他の決済方法、対価の支払方法又は債務不履行の場合の損害賠償の方法を定めるもの

(5)保険特約書その他名称のいかんを問わず、損害保険会社と保険契約者との間において、2以上の保険契約を継続して行うため作成される契約書で、これらの保険契約に共通して適用される保険要件のうち保険の目的の種類、保険金額又は保険料率を定めるもの

一般的な企業間取引の契約書は、1または2に該当する可能性があります。

このため、ここからは、1と2について解説していきます。

7号文書の契約書1:販売店契約書・取引基本契約書等

7号文書に該当する契約書の1つめは、売買・請負等の基本的事項を規定した契約書等です。

こうした基本契約書等が7号文書に該当する条件は、以下の7つのすべてとなります。

7号文書に該当する条件(取引基本契約書等)
  1. 契約当事者の双方が「営業者」であること。
  2. 契約形態が「売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する」もののいずれかであること。
  3. 二以上の取引を継続して行うため作成される契約書」であること。
  4. 「取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格」についてひとつ以上を定めるものであること。
  5. 「契約期間の記載のあるもののうち、当該契約期間が3月以内であり、かつ、更新に関する定めのないもの」でないこと。
  6. 報酬・料金の記載がないこと。
  7. 「電気又はガスの供給に関するもの」でないこと。

具体的には、以下の契約書が該当する可能性があります。

7号文書の具体例(取引基本契約書)
  • 特約店契約書、販売店契約書、売買取引基本契約書等の売買の基本契約書
  • 運送請負取引基本契約書、製造請負基本契約書、建設工事請負基本規約書、システム等開発請負基本契約書等の請負の基本契約書
  • 運送取次契約書等の運等取扱いにに関する契約書

7号文書の契約書2:代理店契約書・業務委託契約書等

7号文書に該当する契約書の2つめは、代理店契約書等の一定の業務について委託することを規定した契約書です。

こうした代理店契約契約書等が7号文書に該当する条件は、以下のものとなります。

7号文書に該当する条件(代理店契約書等)

以下の業務または事務を継続して委託するため作成される契約書のうち、委託される業務または事務の範囲または対価の支払方法を定めるもの。

  1. 売買に関する業務
  2. 金融機関の業務
  3. 保険契約の締結の代理またはは媒介の業務
  4. 株式の発行または名義書換えの事務

なお、ここでいう「売買に関する業務」とは、「売買に関する業務の一部又は全部を委託すること」とされています(印紙税法基本通達別表第一 第7号文書の7)。

一般的に、準委任契約書は課税文書には該当しませんが、この「売買に関する業務」の委託に関する契約書であれば、契約形態が準委任契約であっても7号文書=課税文書に該当します。

7号文書に該当するかどうかの判断は?

7号文書に該当するかどうかにつきましては、以下のフローチャートでかんたんに判断できます。

その契約書は7号文書?2号文書?1号文書?フローチャートでかんたんに診断





なぜ4000円の収入印紙を契約書(7号文書)に貼る?

契約書が「課税物件」に該当する場合は収入印紙を貼る必要ある

それでは、そもそもなぜ4000円の収入印紙を貼る必要があるのかといえば、これまで述べた7号文書に該当する場合、印紙税法の課税対象となる課税文書となるからです。

契約書に収入印紙を貼る必要があるかどうかは、契約内容次第です。

契約書が印紙税法上の課税文書に該当するかどうかは、原則として、その契約書が印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書に該当するかどうかによって判断されます(ただし、例外あり。印紙税法基本通達第2条)。

印紙税法第2条(課税物件)

別表第1の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。

7号文書は、この課税物件表の第7号に規定されている文書であるため、印紙税の納税義務が発生し、収入印紙を貼る必要があります。

なお、当然ながら、「課税物件」に該当しない契約書には、収入印紙を貼る必要はありません。

印紙税法では印紙税の納税義務者は「作成者」

また、印紙税法では、印紙税の納税義務者は、課税文書の「作成者」となっています。

印紙税法第3条(納税義務者)

1 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

2 1の課税文書を2以上の者が共同して作成した場合には、当該2以上の者は、その作成した課税文書につき、連帯して印紙税を納める義務がある。

このため、収入印紙・印紙税は、契約書を作成したどちらかの当事者、または双方の当事者が負担することになります。

ここでポイントとなるのは、第2項にあるとおり、課税文書を共同で作成した場合は、「連帯して」印紙税を収める義務があります(何をもって「共同」というのかは必ずしも明らかではありませんが)。

つまり、共同で契約書を作成したにもかからわず、相手方がその契約書に収入印紙を貼っていない場合は、理屈のうえでは、国税庁に対して、「連帯して」印紙税を納税させられる可能性もあるわけです。

民法では”契約の締結”に必要な費用は折半

なお、民法では、原則として、契約に関する費用は、契約当事者の等分負担となっています。

民法第558条(売買契約に関する費用)

売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。

民法第559条(有償契約への準用)

この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

ここでいう「契約に関する費用」というのは、契約の締結に必要な費用であって、債務の弁済に必要な費用(民法第485条)ではありません。

【意味・定義】契約に関する費用とは?

契約に関する費用(民法第558条)とは、契約の締結に必要な費用をいう。

このため、民法上は、印紙(印紙税・収入印紙)は、契約当事者のそれぞれが等分に負担することになります。

印紙税の納税方法は契約書に収入印紙を貼って消印(≠割印)を押す

印紙税は、通常は、収入印紙を購入することにより納税します。

ただ、単に収入印紙を購入するだけではなく、作成した契約書に貼ったうえで、その収入印紙を消さなければなりません(印紙税法第8条)。

印紙税法第8条(印紙による納付等)

1 課税文書の作成者は、次条から第12条までの規定の適用を受ける場合を除き、当該課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額の印紙(以下「相当印紙」という。)を、当該課税文書の作成の時までに、当該課税文書にはり付ける方法により、印紙税を納付しなければならない。

2 課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙をはり付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。

ここでいう、「政令で定めるところにより」とは、印紙税法施行規則第5条のことです。

印紙税法施行規則第5条(印紙を消す方法)

課税文書の作成者は、法第8条第2項の規定により印紙を消す場合には、自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章又は署名で消さなければならない。

なお、この「印章」によって印紙を消すことを、消印といいます。

【意味・定義】消印とは?

消印とは、印紙を消すために、課税文書と収入印紙にまたがって押される印章・押印をいう。

4000円の収入印紙は印紙税の納入のために貼る

以上のことから、なぜ4000円の収入印紙を契約書に貼るのかといえば、印紙税法により、7号文書に該当する契約書は課税文書となり、その作成者には4000円の印紙税の納税義務が発生し、収入印紙を購入し、契約書に貼ったうえで消印を押印することにより、納税義務を果たす必要があるからです。

逆に言えば、7号文書に該当しない契約書の場合は、4000円の収入印紙を貼る必要はありません。

このため、すでに述べた7号文書に該当するかどうかの判断が重要となります。





収入印紙への消印(≠割印)の押し方

なお、収入印紙に消印を押す場合、以下の図のように押します。

この他、収入印紙への消印(≠割印)の押し方の詳細な解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

契約書に貼る印紙(収入印紙)への消印(≠割印)のしかた・場所は?





印紙税の節税は電子契約サービスがおすすめ

印紙税の節税には、電子契約サービスの利用がおすすめです。

というのも、電子契約サービスは、他の方法に比べて、デメリットがほとんど無いからです。

印紙税を節税する方法は、さまざまあります。

具体的には、以下のものが考えられます。

印紙税を節税する方法
  1. コピーを作成する:原本を1部のみ作成し、一方の当事者のみが保有し、他方の当事者はコピーを保有する。
  2. 契約形態を変更する:節税のために準委任契約のような非課税の契約にする。
  3. 7号文書を2号文書・1号文書に変更する:取引基本契約に初回の注文書・注文請書や個別契約を綴じ込むことで7号文書から2号文書・1号文書に変える。

しかし、これらの方法には、以下のデメリットがあります。

印紙税の節税のデメリット
  • コピーを作成する:契約書のコピーは、原本に比べて証拠能力が低い。
  • 契約形態を変更する:節税のために契約形態を変えるのは本末転倒であり、節税の効果以上のデメリットが発生するリスクがある。
  • 7号文書を2号文書・1号文書に変更する:7号文書よりも印紙税の金額が減ることはあるものの、結局2号文書・1号文書として課税される。

これに対し、電子契約サービスは、有料ではあるものの、その料金を上回る節税効果があり、上記のようなデメリットがありません。

電子契約サービスのメリット
  1. 電子契約サービスを利用した場合、双方に証拠として電子署名がなされた契約書のデータが残るため、コピーの契約書よりも証拠能力が高い。
  2. 電子契約サービスは印紙税が発生しないため、印紙税を考慮した契約形態にする必要がない。
  3. 電子契約サービスは印紙税が発生しないため、7号文書に2号文書や1号文書を同轍する必要はなく、そもそも契約書を製本する必要すらない。

このように、印紙税の節税には、電子契約サービスの利用が、最もおすすめです。

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4000円の収入印紙に関するよくある質問

4000円の収入印紙はなぜ契約書に貼るのでしょうか?
なぜ4000円の収入印紙を貼るのかといえば、7号文書に該当する場合は、印紙税法により納税の義務があるからです。
4000円の収入印紙を貼る必要がある契約書はどのような契約書でしょうか?
4000円の収入印紙を貼る契約書は、売買・請負の取引基本契約書、売買等の業務・事務に関する委託の契約書などの、「継続的取引の基本となる契約書」(7号文書)です。