請負契約は、いつでも解除できますか?
請負契約は、注文者に限っては、請負人が仕事を完成しない間は、いつでも契約解除ができます。ただし、この場合は、注文者は、損害を賠償しなければなりません。

このページでは、請負契約の注文者・請負人の双方向けに、請負契約がいつでも解除できる条件について解説しています。

請負契約は、民法第641条により、請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、「いつでも」契約解除ができます。

他方で、請負人は、「いつでも」は契約解除ができません。

なお、注文者が契約解除をする場合は、「損害を賠償」する必要があります。

このページでは、こうした請負契約を「いつでも」解除できる条件について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 請負契約の注文者が「いつでも」解除ができる条件。




請負契約の注文者だけがいつでも解除できる

民法上の請負契約において、注文者には、次の2つの解除権が認められています。

【意味・定義】請負契約における注文者の法定解除権とは?

民法上の注文者(委託者)の法定解除権は次の2つ。

  • 仕事の目的物に契約不適合がある場合の解除権(民法第559条において準用される第562条、第564条)
  • 仕事が完成するまでの間に理由なしに行使できる、損害賠償責任つきの解除権(民法第641条)

上記の解除権のうち、請負契約を「いつでも」解除できるものは、後者の民法第641条にもとづくものとなります。

民法第641条(注文者による契約の解除)

請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

このように、注文者だけが、一定の条件を満たすことにより、いつでも請負契約を解除できます。

逆に言えば、請負人は、いつでもは請負契約を解除できません。

なお、ここでいう「いつでも」というのは、理由を示す必要がない、ということです。





請負契約の注文者がいつでも解除できる条件とは?

請負契約を注文者がいつでも解除できる2つの条件

請負契約を注文者がいつでも解除するには、以下の2つのすべての条件を満たす必要があります。

請負契約を注文者がいつでも解除できる2つの条件
  • 「請負人が仕事を完成しない間」であること。
  • 損害(費用・逸失利益を含む)を賠償すること。

以下、詳しく見ていきましょう。

「仕事を完成しない間」とは?

「請負人が仕事を完成しない間」とは、請負契約の成立から請負人による仕事の完成までの間のことを意味します。

このため、請負人が仕事に着手したかどうかを問いません。

また、請負人が仕事を完成させた場合は、本条にもとづく請負契約の解除はできません。

これは、仕事が可分な場合における、完成した可分の部分(例:複数棟の建物建設工事請負契約において完成した一部の建物)においても同様です(大審院判決明示37年10月1日)。

逸失利益の補償を含む損害賠償責任が発生する

ただし、この場合、注文者(委託者)は、請負人(受注者)の「損害を賠償」する必要があります。

なお、注文者(委託者)は、請負契約の解除そのものは、損害賠償をすることなくできます(大審院判決明治37年10月3日)。

つまり、損害賠償は、契約解除の後でも構いません。

ただし、この場合の損害は、請負人(受託者)が負担した費用だけでなく、「得べかりし利益」(=逸失利益)も含みます。

ポイント
  • 注文者(委託者)は、「仕事が完成するまでの間の場合」に契約解除ができる。
  • ただし、損害賠償責任が発生する。
  • 仕事の完成前に請負契約を解除した場合、注文者(委託者)は、請負人(受託者)に対して、費用と逸失利益を含む損害賠償をしなければならない。





請負契約の解除に関するよくある質問

請負契約は、いつでも解除できますか?
請負契約は、注文者に限っては、請負人が仕事を完成しない間は、いつでも契約解除ができます。ただし、この場合は、注文者は、損害を賠償しなければなりません。
請負契約を注文者がいつでも解除できる条件とは?
請負契約を注文者がいつでも解除できる条件は、以下の2つです。

  • 「請負人が仕事を完成しない間」であること。
  • 損害(費用・逸失利益を含む)を賠償すること。