無償・無報酬で業務委託を委託・発注した場合、委託者は、法律違反・違法となるのでしょうか?
無償・無報酬の業務委託契約は、原則として法律違反・違法ではありません。ただし、無償・無報酬の業務委託契約は、独占禁止法の優越的地位の濫用=「従業員等の派遣の要請」「その他経済上の利益の提供の要請」「減額」「取引の対価の一方的決定」、下請法が適用される場合にあっては「下請代金の減額」「買いたたき」「不当な経済上の利益の提供要請」に該当したときは、独占禁止法違法・下請法違反となる可能性があります。
なお、無償・無報酬の業務委託契約とする場合は、無償・無報酬である旨を業務委託契約に規定しておかないと、商法第512条により、受託者に報酬請求権が発生し、無償・無報酬とならない可能性があります。

このページでは、主に業務委託契約の委託者向けに、無償・無報酬の業務委託契約の適法性・違法性について解説しています。

原則として、無償・無報酬の業務委託は、法律違反・違法にはなりません。

このため、無償・無報酬の業務委託契約を委託・発注した場合であっても、委託者としては、特に問題にはなりません。

ただし、一定の条件を満たした場合は、無償・無報酬の業務委託は、独占禁止法、下請法、建設業法に違反し、違法となる可能性もあります。

このページでは、こうした無償・無報酬の業務委託の適法性・違法性について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 無償・無報酬の業務委託が原則として法律違反・違法とならないこと。
  • 一定の条件を満たした場合は、無償・無報酬の業務委託は優越的地位の濫用=「従業員等の派遣の要請」「その他経済上の利益の提供の要請」「減額」「取引の対価の一方的決定」となり、独占禁止法違反・違法となること。
  • 下請法が適用される場合は、無償・無報酬の業務委託は「下請代金の減額」「買いたたき」「不当な経済上の利益の提供要請」に該当し、下請法違反・違法となること。
  • 建設業法が適用される場合は、無償・無報酬の業務委託は「不当に低い請負代金の禁止」に該当し、建設業法違反・違法となること。
  • 業務委託契約に「無償」「無報酬」と明記しないと受託者に報酬請求権が発生すること。
  • 無償・無報酬の業務委託であっても受託者に責任が発生すること。




原則:無償・無報酬の業務委託は法律違反・違法にならない

契約自由の原則により無償・無報酬の業務委託契約は成立し得る

業務委託契約の報酬の有無や金額については、契約自由の原則により、当事者の合意で自由に決めることができます。

【意味・定義】契約自由の原則とは?

契約自由の原則とは、契約当事者は、その合意により、契約について自由に決定することができる民法上の原則をいう。

民法第521条(契約の締結及び内容の自由)

1 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。

2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。

上記の民法第521条第2項にあるとおり、「法令の制限内」ではありますが、業務委託を無償としても、原則として違法=法律違反にはなりません。

委任契約・準委任契約はそもそも無償・無報酬

また、業務委託契約の代表的な契約形態である委任契約・準委任契約は、そもそも無償とされています(民法第648条)。

民法第648条(受任者の報酬)

1 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。

2 (2項以下省略)

このため、特に委任契約・準委任契約である業務委託契約の場合は、無償であったとしても、理論上は不自然ではありません。

ただし、企業間取引である業務委託契約では、無償である旨を明記しておかないと、商法第512条により、有償扱いとなる可能性があります(後述)。





例外1:無償・無報酬の業務委託は独占禁止法違反(優越的地位の濫用)・違法

優越的地位の濫用とは

無償の業務委託は、独占禁止法違反(優越的地位の濫用)となる可能性があります。

【意味・定義】優越的地位の濫用とは?

優越的地位の濫用とは、「自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が,取引の相手方に対し,その地位を利用して,正常な商慣習に照らし不当に不利益を与える行為」をいう。

一般的に、次の3つの条件(要件)に該当した場合、優越的地位の濫用に該当します。

優越的地位の濫用の3要件
  1. 事業者が優越的地位にあること。
  2. 事業者の行為が正常な商慣習に照らして不当であること。
  3. 事業者による濫用行為があること。

このため、優越的地位の濫用に該当するためには、無償の業務委託であることに加えて、上記の条件も満たす必要があります。

減額または取引の対価の一方的決定に該当する

公正取引委員会では、優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(いわゆる「ガイドライン」)の第4以下において、次のとおり11種類に分類しています。

優越的地位の濫用の行為類型
  1. 購入・利用強制(第4の1)
  2. 協賛金等の負担の要請(第4の2(1))
  3. 従業員等の派遣の要請(第4の2(2))
  4. その他経済上の利益の提供の要請(第4の2(3))
  5. 受領拒否(第4の3(1))
  6. 返品(第4の3(2))
  7. 支払遅延(第4の3(3))
  8. 減額(第4の3(4))
  9. 取引の対価の一方的決定(第4の3(5)ア)
  10. やり直しの要請(第4の3(5)イ)
  11. その他(第4の3(5)ウ)

このうち、無償の業務委託は、3.の従業員等の派遣の要請、4.のその他経済上の利益の提供の要請、8.の減額、9.の取引の対価の一方的決定のいずれか該当する可能性があります。

従業員等の派遣の要請とは

従業員等の派遣の要請には、業務内容が明確でないにおいて、無償で従業員等(正社員、アルバイト、派遣社員等)の派遣を要請する場合に該当する可能性があります。

(2) 従業員等の派遣の要請
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,従業員等(注11)の派遣を要請する場合であって,どのような場合に,どのような条件で従業員等を派遣するかについて,当該取引の相手方との間で明確になっておらず,当該取引の相手方にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合や,従業員等の派遣を通じて当該取引の相手方が得る直接の利益(注12)等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担となり,当該取引の相手方に不利益を与えることとなる場合(注13)には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる。
取引の相手方に対し,従業員等の派遣に代えて,これに相当する人件費を負担させる場合も,これと同様である。

なお、有償であったとしても、上記の考え方が適用されます。

その他経済上の利益の提供の要請とは

その他経済上の利益の提供の要請には、発注内容に含まれていない業務を無償でおこなわせる場合に該当する可能性があります。

(3) その他経済上の利益の提供の要請
ア 協賛金等の負担の要請や従業員等の派遣の要請以外であっても,取引上の地位が相手方に優越している事業者が,正当な理由がないのに,取引の相手方に対し,発注内容に含まれていない,金型(木型その他金型に類するものを含む。以下同じ。)等の設計図面,特許権等の知的財産権,従業員等の派遣以外の役務提供その他経済上の利益の無償提供を要請する場合であって,当該取引の相手方が今後の取引に与える影響を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる(注15)。

なお、ここで「従業員等の派遣以外」となっているのは、すでに述べた「従業員等の派遣の要請」との重複を避けたものであり、無償で従業員等の派遣の要請をしていいわけではありません。

また、有償での要請であったとしても、後述の「取引の対価の一方的決定」に該当する可能性があります。

減額とは

減額は、正当な理由がないのに、契約で定めた対価を無償まで減額した場合に該当する可能性があります。

(4) 減額
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,商品又は役務を購入した後において,正当な理由がないのに,契約で定めた対価を減額する場合であって,当該取引の相手方が,今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる。
契約で定めた対価を変更することなく,商品又は役務の仕様を変更するなど対価を実質的に減額する場合も,これと同様である。

なお、無償まで減額しなかったとしても、上記の考え方が適用されます。

取引の対価の一方的決定とは

取引の対価の一方的決定は、一方的に無償の対価を要請する場合に該当する可能性があります。

ア 取引の対価の一方的決定
(ア) 取引上の地位が相手方に優越している事業者が,取引の相手方に対し,一方的に,著しく低い対価又は著しく高い対価での取引を要請する場合であって,当該取引の相手方が,今後の取引に与える影響等を懸念して当該要請を受け入れざるを得ない場合には,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり,優越的地位の濫用として問題となる(注25)。

なお、無償でなかったとしても、上記の考え方が適用されます。

独占禁止法はすべての企業間取引に適用される

なお、独占禁止法は、すべての事業者間取引に適用されます。

後述の下請法や建設業法が適用されない場合であっても、独占禁止法は適用されます。

このため、委託者としては、資本金の金額等に関係なく、無償の業務委託はなるべく避けるべきです。

この他、独占禁止法につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約では独占禁止法(不公正な取引方法・優越的地位の濫用)に注意





例外2:下請法が適用される場合は無償・無報酬の業務委託は下請法違反・違法

「下請代金の減額」に該当する場合は下請法違反・違法

下請代金の減額とは?

下請代金の減額とは、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること(下請法第4条第1項第3号)です。

【意味・定義】下請代金の減額とは?

下請代金の減額とは、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずることをいう。

下請法が適用される場合(後述)は、有償の業務委託契約の成立後に無償としたときは、「下請代金の減額」に該当する可能性があります。

「買いたたき」に該当する場合は下請法違反・違法

「買いたたき」とは?

下請法の買いたたきとは、下請事業者の給付の内容と同種または類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること下請法第4条第1項第5号)です。

【意味・定義】買いたたきとは?

買いたたきとは、下請事業者の給付の内容と同種または類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めることをいう(下請法第4条第1項第5号)。

下請法が適用される場合(後述)は、無償の業務委託は、「買いたたき」に該当する可能性があります。

無償・無報酬の業務委託が「買いたたき」に該当する事例

下請法が適用される業務委託契約では、「次のような方法で下請代金の額を定めることは,買いたたきに該当するおそれがある」とされています。

キ 給付の内容に知的財産権が含まれているにもかかわらず,当該知的財産権の対価を考慮せず,一方的に通常の対価より低い下請代金の額を定めること。

なお、「通常支払われる対価」は、以下の2つの価格をいいます。

「通常支払われる対価」とは,当該給付と同種又は類似の給付について当該下請事業者の属する取引地域において一般に支払われる対価(以下「通常の対価」という。)をいう。ただし,通常の対価を把握することができないか又は困難である給付については,例えば,当該給付が従前の給付と同種又は類似のものである場合には,従前の給付に係る単価で計算された対価を通常の対価として取り扱う。

つまり、知的財産権の譲渡・移転・使用許諾の対価が、無償を含め、相場よりも低い場合や従来の取引価格より低い場合は、買いたたきに該当する可能性があります。

「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する場合は下請法違反・違法

「不当な経済上の利益の提供要請」とは?

また、下請法が適用される場合は、無償の業務委託は、「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する可能性があります。

【意味・定義】不当な経済上の利益の提供要請とは?

不当な経済上の利益の提供要請とは、親事業者が、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることにより、下請事業者の利益を不当に害することをいう(下請法第4条第2項第3号)。

無償・無報酬の業務委託が「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する事例

下請法が適用される業務委託契約では、不当な経済上の利益の提供要請については、次のように考えられています。

(4) 情報成果物等の作成に関し,下請事業者の知的財産権が発生する場合において,親事業者が,委託した情報成果物等に加えて,無償で,作成の目的たる使用の範囲を超えて当該知的財産権を親事業者に譲渡・許諾させることは,法第4条第2項第3号に該当する。

具体的には、次のような事例が、「不当な経済上の利益の提供要請」に該当する可能性があります。

7-4 設計図等の無償譲渡要請
(1) 親事業者は,下請事業者に金型の製造を委託しているところ,外国で製造した方が金型の製造単価が安いことから,下請事業者が作成した金型の図面,加工データ等を外国の事業者に渡して,当該金型を製造させるため,下請事業者が作成した図面,加工データ等を対価を支払わず,提出させた。
(2) 親事業者は,建設機械部品等の製造を委託している下請事業者に対し,委託内容にない金型設計図面等を無償で譲渡させた。
7-5 型・治具の無償保管要請
(1) 親事業者は,機械部品の製造を委託している下請事業者に対し,量産終了から一定期間が経過した後も金型,木型等の型を保管させているところ,当該下請事業者からの破棄申請に対して,「自社だけで判断することは困難」などの理由で長期にわたり明確な返答を行わず,保管・メンテナンスに要する費用を考慮せず,無償で金型,木型等の型を保管させた。
(2) 親事業者は,自動車用部品の製造を委託している下請事業者に対し,自社が所有する金型,木型等の型・治具を貸与しているところ,当該自動車用部品の製造を大量に発注する時期を終えた後,当該部品の発注を長期間行わないにもかかわらず,無償で金型,木型等の型・治具を保管させた。

(途中省略)

7-9 知的財産権の無償譲渡の要請
 親事業者は,テレビ番組の制作を委託している下請事業者との契約により,下請事業者に発生した番組の知的財産権を譲渡させていたところ,それに加えて,番組で使用しなかった映像素材の知的財産権を無償で譲渡させた。

知的財産権の譲渡・許諾等が発生する場合

情報成果物等の作成に関し,下請事業者に知的財産権が発生する場合があるが,親事業者が下請事業者に発生した知的財産権を,作成の目的たる使用の範囲を超えて無償で譲渡・許諾させることは,不当な経済上の利益の提供要請に該当する。また,親事業者が,情報成果物の二次利用について,下請事業者が知的財産権を有するにもかかわらず,収益を配分しなかったり,収益の配分割合を一方的に定めたり,利用を制限するなどして下請事業者の利益を不当に害する場合には,不当な経済上の利益の提供要請として問題となる。さらに,製造委託においても,発注時に下請事業者の給付の内容になかった知的財産権やノウハウが含まれる技術資料を無償で提供させるなどして下請事業者の利益を不当に害する場合には,不当な経済上の利益の提供要請として問題となる。

● 無償での技術指導,試作品の製造等

親事業者が下請事業者に対し,無償での技術指導や試作品の製造等を行わせることにより下請事業者の利益を不当に害する場合には,不当な経済上の利益の提供要請として問題となる。

Q96: デザインの作成委託において,当初の発注内容は下請事業者に複数のデザインを提出させ,その中から1つを採用し親事業者に知的財産権を譲渡させるというものであったが,納品後,採用デザインだけではなく不採用デザインの知的財産権も譲渡させることは問題ないか。
当初の発注内容にない不採用デザインの譲渡を下請事業者に無償で要求することは,不当な経済上の利益の提供要請に該当するおそれがある。この場合,親事業者と下請事業者は双方よく話し合いの上,不採用デザインの知的財産権に係る譲渡対価を決定する必要がある。
Q97: 年末セールの販売活動の手伝いとして,下請事業者から無償で人員を派遣してもらうことを考えている。当該セールでは下請事業者の製品も販売するため,下請事業者にとっても利益があるものと考えるが問題ないか。
下請事業者の金銭・労働力の提供と下請事業者の利益との関係を明確にしないで提供を要請することは,不当な経済上の利益の提供要請に該当するおそれがある。また,下請事業者が,金銭・労働力の提供をすることが直接の利益になるものとして,自由な意思により提供するものでなければ,不当な経済上の利益の提供要請に該当するおそれがある。よって,例えば,下請事業者が本件セールに手伝いとして人員を派遣することでどれだけの利益が見込めるかについて,合理的根拠を示して明らかにし,それが派遣することによって発生する不利益を上回ることを明確に示して,下請事業者の同意を得て人員を派遣させれば,不当な経済上の利益の提供要請には該当しないが,そうでなければ本法違反のおそれがある。

「純粋に無償」である場合は下請法の対象外

なお、下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準では、「『業として行う提供』とは,反復継続的に社会通念上,事業の遂行とみることができる程度に行っている提供のことをいい,純粋に無償の提供であれば,これに当たらない。」とされています。

この点について、無償とはいえ、業務委託の場合は、上記の「業として行う提供」に該当する可能性が非常に高いといえます。

このため、無償の業務委託が、ここでいう「純粋に無償の提供」に該当するとことはほとんど無いと言えるでしょう。

下請法が適用される条件とは?

下請法は、特定の条件(資本金・業務内容)を満たした企業間取引に適用される法律です。

下請法が適用される業務委託契約のパターンにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法の対象かどうかの条件とは?





例外3:建設業法が適用される場合は無償・無報酬の業務委託は建設業法違反・違法

また、建設業法が適用される建設工事請負契約の場合、無償での業務委託は、建設業法違反となる可能性があります。

建設業法第19条の3では、次のとおり規定されています。

第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)

注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。

上記にあるとおり、「通常必要と認められる原価に満たない金額」ですら違法となりますので、「自己の取引上の地位を不当に利用」した形で、委託料を無償とした場合は、違法となります。





無償・無報酬の業務委託のペナルティ・罰則は?

独占禁止法(優越的地位の濫用)、下請法(下請代金の減額・買いたたき・不当な経済上の利益の提供要請)、建設業法(不当に低い請負代金の禁止)に違反して、委託者が業務委託の対価を無償とした場合、以下のリスクがあります。

違法な取引価格の引き下げのペナルティ
  • 勧告(下請法第7条第2項)
  • 企業名等の公表(独占禁止法第43条)
  • 排除措置命令(独占禁止法第20条)
  • 課徴金の徴収(独占禁止法第20条の6。ただし減額を継続した場合)

下請法や建設業法第19条の3は独占禁止法の特別法であるため、最終的には、独占禁止法による行政処分等が課されます。

【意味・定義】特別法とは?

特別法とは、ある法律(=一般法)が適用される場合において、特定の条件を満たしたときに、一般法よりも優先的に適用される法律をいう。

また、公正取引委員会から、改善報告書や改善計画書の提出を求められる場合もあります。

なお、民事上は、勧告や排除措置命令があった場合、減額分や不足分の取引価格の支払いをしなければならなくなります。





補足1:「無償」「無報酬」を業務委託契約に規定しないと報酬請求権が発生する

すでに述べたとおり、委任契約・準委任契約は、民法上は、原則として無報酬となります。

しかしながら、企業間取引である(準)委任型の業務委託契約では、無償であることを契約内容として明確に規定しておかないと、有償扱いとなります。

というのも、こうした無償である旨の規定がない場合や、業務委託契約書を取交していない場合は、商法第512条により、受託者に報酬請求権が発生し、有報酬となります。

商法第512条(報酬請求権)

商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

よって、委託者として、無償での業務委託としたい場合は、その旨を明確に規定した業務委託契約書を作成する必要があります。

業務委託契約書を作成する理由

企業間取引である業務委託契約では、商法第514条により受託者に報酬請求権が発生することから、無償の業務委託とする場合は、特約として無償である旨を規定した契約書が必要となるから。





補足2:無償・無報酬であっても受任者・受託者には責任が発生する

無償だからといって受任者の責任は軽くならない

委任契約・準委任契約は原則として無償

すでに述べたとおり、委任契約・準委任契約は、原則として無償とされています。

この無償である委任契約・準委任契約であっても、受任者・受託者には、善管注意義務が課されます。

【意味・定義】善管注意義務とは?

善管注意義務とは、行為者の階層、地位、職業に応じて、社会通念上、客観的・一般的に要求される注意を払う義務をいう。

民法第644条(受任者の注意義務)

受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

このため、「無償だから」という理由で責任が軽くなることはありません。

委任契約・準委任契約は高度な善管注意義務が課される

この点について、専門家と依頼者との委任契約・準委任契約でも、専門家の側には、善管注意義務が課されます。

この場合、専門家には、一般的な善管注意義務と比べて、極めて高度な善管注意義務が課されます。

特に、医師について、判例では、「いやしくも人の生命及び健康を管理すべき業務(医業)に従事する者は、その業務の性質に照し、危険防止のために実験上必要とされる最善の注意義務を要求される」最高裁判例昭和36年2月16日)とされています。

また、税理士の業務の場合では、無償での修正申告手続きについて、善管注意義務違反が認められた事例もあります(東京高裁判決平成7年6月19日)。

つまり、報酬の有無にかかわらず、善管注意義務が課される可能性があるというこです。

専門家の側は特に無料相談の回答には注意が必要

この点につき、特に法律関係の専門家の中には、集客の手法として、無料相談等を受け付ける場合があります。

このような無料相談にも、当然、善管注意義務が課されます。

このため、受任者である専門家は、「無料」だからといって手を抜いてしまうと善管注意義務となります。

例えば、無料相談の際に、よく調べないで間違った回答をした結果、その回答によって相談者に損害が発生した場合は、損害賠償の請求を受ける可能性があります。

ポイント
  • 専門家と依頼者との(準)委任契約では、専門家には極めて高度な善管注意義務が課される。
  • 原則として無償の(準)委任契約では、無償であっても善管注意義務が課される。
  • 特に無料相談などの無償のサービスでは、専門家の側は、無償だからといって手を抜いてはいけない。





関連ページ

業務委託契約においては、特に著作権の譲渡について、無償とすることがあります。

これは、すでに述べたとおり、買いたたきや不当な経済上の利益の提供要請に該当する可能性があります。

この他、無償・不当に低い知的財産権の対価につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

無償・不当に低い対価の知的財産権の譲渡・使用許諾は独占禁止法違反・下請法違反





無償・無報酬の業務委託に関するよくある質問

無償・無報酬で業務委託を委託・発注した場合、委託者は、法律違反・違法となるのでしょうか?
無償・無報酬の業務委託契約は、原則として法律違反・違法ではありません。ただし、無償・無報酬の業務委託契約は、独占禁止法の優越的地位の濫用=「従業員等の派遣の要請」「その他経済上の利益の提供の要請」「減額」「取引の対価の一方的決定」、下請法が適用される場合にあっては「下請代金の減額」「買いたたき」「不当な経済上の利益の提供要請」に該当したときは、独占禁止法違法・下請法違反となる可能性があります。
無償・無報酬の業務委託とする場合、契約書がないと問題になりますか?
無償・無報酬の業務委託とする場合に契約書がないと、商法第512条により、受託者に報酬請求権が発生し、無償・無報酬とならない可能性があります。