- 業務委託契約における注文書・発注書とは何でしょうか?また、業務委託契約書との違いは何でしょうか?
- 業務委託契約における注文書・発注書は、委託者・発注者からの契約の申込みを証する書面のことです。これに対し、業務委託契約書は、委託者・発注者と受託者・受注者との契約の成立を証する書面です。
このページでは、業務委託契約の当事者向けに、業務委託契約における注文書・発注書の定義についてと、業務委託契約書との違い解説しています。
注文書・発注書は、あくまで「契約の申込みを証する書面」であり、通常はそれ単体では契約は成立しません。
他方で、業務委託契約書は契約書ですから、それ単体で業務委託契約の成立します。
このページでは、こうした注文書・発注書の定義や業務委託契約書との違いについて、開業20年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。
このページでわかること
- 注文書・発注書の法的な定義や位置づけ。
- 注文書・発注書と業務委託契約書の違い。
注文書・発注書とは?
注文書・発注書=両者とも契約の申込みを証する書面
注文書・発注書とは、ともに委託者・発注者からの何らかの契約の申込みを証する書面です。
【意味・定義】注文書・発注書とは?
注文書・発注書とは、一方の契約当事者(委託者・発注者)から他方の契約当事者(受託者・受注者)に対する、何らかの契約の申込みの意思表示をするための書面をいう。
【意味・定義】申込みとは?
申込みとは、契約の締結をしようとする意思にもとづき申込者から他人に対して申し入れられる意思表示をいう。
このため、注文書と発注書の違いは、特にありません。
あくまで「契約の申込みを証する書面」でしかない
このように、注文書・発注書は、あくまで「契約の申込みを証する書面」にすぎません。
契約は、申込みと承諾があって成立するものです(民法第522条第1項)。
民法第522条(契約の成立と方式)
1 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
つまり、注文書・発注書を交付したとしても、それだけでは、一般的には契約は成立しません。
契約の成立には注文請書・受注書が必要
このため、業務委託契約の実務では、通常は、注文書・発注書を単体で使いません。
通常は、少なくとも、「契約の申込みに対する承諾を証する書面」=注文請書・受注書をセットで使うことで、業務委託契約を成立させます。
ただ、少額な業務委託契約など、リスクが少ない場合は、わざわざ注文請書・受注書を使わず、口頭や電子メール等で承諾を伝えることもあります。
なお、いわゆる取引基本契約等で、注文書・発注書の交付だけで自動的に(個別)契約を成立させることもできます。
【意味・定義】基本契約(取引基本契約)とは?
基本契約とは、継続的な売買契約、請負契約、準委任契約の取引の基本となる、個々の取引に共通して適用される契約条項を規定した契約をいう。取引基本契約ともいう。
この他、注文書・発注書の使い方につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
補足:注文書・発注書は業務委託契約以外でも使われる
なお、注文書・発注書は、業務委託契約以外でも使われる場合があります。
代表的な例としては、継続的な物品の売買契約等でも使われます。
すでに述べたとおり、注文書や発注書は、「注文」や「発注」を証する書面です。
このため、注文書・発注書は、慣例的に、多くの事業上の契約やビジネス上の契約の注文・発注に使われています。
業務委託契約書とは?
これに対し、業務委託契約書は、文字通り、業務委託の契約書のことです。
【意味・定義】業務委託契約とは?
業務委託契約とは、企業間取引の一種で、ある事業者が、相手方の事業者に対して、自社の業務の一部または全部を委託し、相手方がこれを受託する契約をいう。
業務委託契約書は、注文書・発注書とは異なり、署名や記名押印により、契約の申込みと承諾の双方を確認できます。
このため、業務委託契約書は、それ単体で契約の成立を証する書面となります。
この他、業務委託契約書の一般的な解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
発注書・注文書と業務委託契約書の違いは?
このように、業務委託における注文書・発注書は、業務委託契約の委託者・発注者による「契約の申込みを証する書面」です。
このため、原則として、それ単体では契約は成立せず、契約の成立には、注文請書・受注書(契約の申込みに対する承諾を証する書面)や口頭・電子メール等による承諾が必要です。。
他方で、業務委託契約書は、「業務委託の成立を証する書面」です。
よって、注文書・発注書と業務委託契約書の違いは、「それ単体で契約が成立するかどうか」という点です。
業務委託契約における注文書・発注書と業務委託契約書の違い
業務委託契約における注文書・発注書と業務委託契約書の違いは、それ単体で契約が成立するかどうか。注文書・発注書は原則としてそれ単体では契約が成立せず、業務委託契約書はそれ単体で契約が成立する。
注文書・発注書だけで業務委託をするリスクは?
注文書・発注書だけの業務委託はリスクが大きい
注文書・発注書だけを利用し、注文請書・受注書すら利用しない業務委託は、非常にリスクが大きいです。
注文書・発注書だけで業務委託をするリスクは、主に次の3つとなります。
注文書・発注書だけで業務委託をするリスク
- 注文書・発注書だけでは契約の成立の証拠にならない
- 注文書・発注書は注文者・発注者・委託者の手元に残らない
- 注文書・発注書では契約条件について書き切れない
それぞれ、簡単に見てみましょう。
リスク1:注文書・発注書だけでは契約の成立の証拠にならない
注文書・発注書だけで業務委託をするリスクの1つめは、注文書・発注書だけでは契約の成立の証拠にならないことです。
すでに述べたとおり、契約は、申込みと、その申込に対する承諾があって成立するものです。
注文書・発注書だけが交付され、注文請書・受注書が交付されていない状態では、単に契約の申込みがあっただけであり、契約が成立した証拠にはなりません。
このため、特に注文者・発注者・委託者としては、請負人・受注者・受託者に対し、契約の成立の証拠とするために、注文請書・受注書の交付を求めるべきです。
最低限、(法的な証拠能力は低くなりますが)電子メール等の形に残る電子データでの承諾を求めましょう。
リスク2:注文書・発注書は注文者・発注者・委託者の手元に残らない
注文書・発注書だけで業務委託をするリスクの2つめは、注文書・発注書は注文者・発注者・委託者の手元に残らないことです。
注文者・発注者・委託者にとっては、いったん注文書・発注書を相手方に交付してしまうと、手元に原本が残らなくなります。
手元に原本が残っていないと、当然ながら、原本に記載された契約条件について把握できなくなります。
このため、注文者・発注者・委託者としては、少なくとも、コピーやスキャンなどにより、注文書・発注書のデータを残しておくべきです。
また、申込みに対する承諾の証拠を得るとともに、契約条件について把握するためにも、できれば注文請書・受注書を交付してもらうべきです。
リスク3:注文書・発注書では契約条件について書き切れない
注文書・発注書だけで業務委託をするリスクの3つめは、注文書・発注書では契約条件について書き切れないことです。
一般的な業務委託契約では、文字の大きさにもよりますが、A4の場合は4~5ページ以上となることが多いです。
これに対し、一般的な注文書・発注書は非常に枚数が少なく、A4で1枚程度であることがほとんどです。
A4で1枚程度であれば、たとえ両面に小さな文字で記載したとしても、通常の業務委託契約の契約条項は書き切れません。
注文書・発注書と注文請書・受注書に加えて取引基本契約書を利用する
このように、注文書・発注書だけの業務委託契約は、リスクが多くなりがちです。
そこで、通常の業務委託の実務では、注文書・発注書による契約の申込みだけなく、少なくとも、注文請書・受注書による申込みに対する承諾をおこないます。
また、特に取引の金額が大きい業務委託契約では、これらの注文書・発注書や注文請書・受注書に共通して適用される取引基本契約を締結し、その証拠を取引基本契約書として残しておきます。
こうした注文書・発注書や注文請書・受注書と取引基本契約書をセットで利用することで、比較的金額が大きな業務委託契約であっても、紙やデータ量を節約しながら、効率よく契約の管理ができるようになります。
取引基本契約書・注文書・注文請書の作成は弊所におまかせください
このように、注文書・発注書は、取引基本契約書と併用することにより、十分な量・内容の契約条項を規定しつつ、効率よく契約の締結・運用・管理が可能となります。
弊所では、こうした取引基本契約書・注文書・注文請書の作成依頼・作成代行を承っております。
取引基本契約書は、注文書・注文請書との連動や受発注の手続きなど、スポットの業務委託契約とは異なる特殊な条項の規定が必要となります。
こうした対応も含め、開業20年・400社以上の取引実績にもとづき、丁寧なお打ち合わせを経て業務委託契約書を作成いたします。
お見積りは完全無料となっていますので、お問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。