秘密情報の開示がある業務委託契約では、秘密情報の受領者は、契約が終了した場合に、秘密情報の返却・廃棄・消去をしなければなりません。

そこで、契約書にも、秘密情報の返却・廃棄・消去に関する内容を規定しておきます。

ただし、秘密情報の中には、法律上、長期間の保管が義務づけられるものもあります。

このため、場合によっては、返却・廃棄・消去の義務の対象外とするべき秘密情報もあります。

このページでは、こうした秘密情報の返却・廃棄・消去の条項について、わかりやすく解説します。

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秘密情報の返却・廃棄・消去の条項とは?

業務終了・契約終了時に秘密情報が返却・廃棄・消去される条項

秘密情報の返却・廃棄・消去の条項は、受領者が秘密情報の返却・廃棄・消去をする条項です。

通常は、業務終了時または契約終了時に、直ちに、または一定期間経過後、秘密情報を返却・廃棄・消去するように規定します。

契約条項の記載例・書き方

第○条(秘密情報の返却・廃棄・消去)

本契約が終了した場合、受領者は、直ちに、開示者に対し秘密情報を返却し、または秘密情報の廃棄もしくは消去をしなければならない。

(※便宜上、表現は簡略化しています)

返却・廃棄・消去とは?

ここでいう、返却・廃棄・消去とは、それぞれ、一般的には次のとおりです。

秘密情報の返却・廃棄・消去

  • 【返却】秘密情報が有体物の記録媒体に記録されている場合であって、返却可能なものは返却。
  • 【廃棄】秘密情報が有体物の記録媒体に記録されている場合であって、返却不能なものは、再生不能は方法による廃棄。
  • 【消去】秘密情報が電磁的記録・データの場合は、消去。
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受領者は返却・廃棄・消去ができるかよく検討する

開示者の請求による返却・廃棄・消去に注意する

なお、業務終了時・契約終了時だけでなく、開示者から請求があった場合に、秘密情報を返却・廃棄・消去するような内容とすることもあります。

契約条項の記載例・書き方

第○条(秘密情報の返却・廃棄・消去)

本契約が終了した場合または開示者から請求があった場合、受領者は、直ちに、開示者に対し秘密情報を返却し、または秘密情報の廃棄もしくは消去をしなければならない。

(※便宜上、表現は簡略化しています)

この場合、特に受領者としては、対応できるかどうを検討のうえ、この条件を受入れるかどうかを決めるべきです。

秘密情報の種類によっては、業務実施中に返却・廃棄・消去を求められた場合に、業務の実施に支障が出る可能性があります。

このようなことがないように、受領者としては、開示者からの請求による秘密情報の返却・廃棄・消去については、削除を求めるべきです。

最低限、例外として、業務の実施に支障が出る場合は秘密情報の返却・廃棄・消去は、業務終了時まで留保できるようにします。

契約条項の記載例・書き方

第○条(秘密情報の返却・廃棄・消去)

本契約が終了した場合または開示者から請求があった場合、受領者は、直ちに、開示者に対し秘密情報を返却し、または秘密情報の廃棄もしくは消去をしなければならない。ただし、受領者が本件業務の実施に必要なものとして認めた秘密情報については、この限りでない。

(※便宜上、表現は簡略化しています)

現実的に返却・廃棄・消去の対応可能かどうかを検討する

また、受領者としては、これらの返却・廃棄・消去が、現実的に可能かどうか、よく検討するべきです。

ありがちな話ですが、秘密情報の管理は、意外に面倒なもので、特に電子データになった情報などは拡散しやすく、管理しきれないものです。

こうした情報について、管理しきれないにもかかわらず、返却・廃棄・消去について合意してしまうと、実際に業務や契約の終了時に、思わぬコストや手間になる可能性があります。

また、いい加減な対応をしていると、最悪の場合、不正競争防止法違反で、刑事罰を科される場合があります(次項で解説)。

ポイント

  • 受領者の場合、開示者の請求による返却・廃棄・消去に対応できるかどうか、よく注意して検討する。
  • 受領者の場合、特に業務実施中における開示者の請求による返却・廃棄・消去については、例外を設定する。
  • そもそも、契約終了後であっても、秘密情報の返却・廃棄・消去について、可能かどうか、よく検討する。
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安易に廃棄・消去をした旨を通知してはいけない

受領者として、開示者から、秘密情報の廃棄・消去について問い合わせを受けた場合、しっかりと確認したうえで回答するようにしてください。

確認もしないで、「廃棄しました」「消去しました」と回答し、後で廃棄・消去ができていないことが発覚した場合、不正競争防止法違反となる可能性があります。

不正競争防止法第21条(罰則)

1 次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは2千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

(3)営業秘密を保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得した者

(途中省略)

ハ 営業秘密記録媒体等の記載又は記録であって、消去すべきものを消去せず、かつ、当該記載又は記録を消去したように仮装すること。
四 営業秘密を保有者から示された者であって、その営業秘密の管理に係る任務に背いて前号イからハまでに掲げる方法により領得した営業秘

もちろん、単にうっかり消去し忘れた程度であれば、直ちに罰則が科されることはないと思われます。

ただ、例えば、担当者の管理が届かない部署で、消去されたはずの秘密情報を利用して利益を上げていた、ということなると、本条が適用され、罰則が科される可能性があります。

ポイント

してもいない廃棄・消去を安易に伝えると、不正競争防止法違反となる可能性がある。

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返却・廃棄・消去してはいけない秘密情報は?

法律上保管が義務づけられた秘密情報は例外とする

なお、秘密情報の中には、そう簡単に返却・廃棄・消去してはいけないものもあります。

代表的な例としては、会計処理に必要な証憑書類です。

例えば、法人税法施行規則第59条によると、「取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し」は、7年間の保存義務があります。

秘密情報がこれらの書類に該当する場合は、返却・廃棄・消去の対象外とする内容とする場合があります。

時効との関係で秘密情報を長期保存する場合もある

また、必ずしも法律上の保管義務がなくても、法的な証拠として、秘密情報を保管しておくこともあります。

業務委託契約(特に製造請負契約)との関係でいえば、PL法(製造物責任法)における時効は、最長で10年とされています(製造物責任法第5条第1項)。

同様に、一般的な債権の消滅時効もまた、10年とされています(民法第167条

このように、秘密情報が、業務委託契約において、時効に関わる重要なものである場合は、10年程度保存しておく必要があります。

そこで、こうした重要な情報については、返却・廃棄・消去の対象外とすることもあります。

ポイント

  • 法律上保管が義務づけられた秘密情報は、返却・廃棄・消去の例外とする。
  • 時効に関係する秘密情報は、返却・廃棄・消去の例外とする。
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