このページでは、秘密保持義務の要素のひとつである、(狭義の)秘密保持義務について解説します。

秘密保持義務には、次の3つの要素があります。

秘密保持義務の3要素

  • 秘密情報の開示
  • (狭義の)秘密保持義務と例外
  • 秘密情報の使用許諾・目的外使用の禁止

一般的に、秘密保持義務・守秘義務といえば、この(狭義の)秘密保持義務のことをいいます。

このため、通常、秘密保持義務・守秘義務の規定では、まず間違いなく規定されている、非常に重要な規定です。

シンプルな業務委託契約では、この(狭義の)秘密保持義務だけを規定する場合もあります。

また、このページでは、併せて、秘密保持義務の例外についても解説しています。

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秘密保持義務の条項において最も重要な規定

基本は第三者への開示・漏えいを禁止する

(狭義の)秘密保持義務の規定では、秘密情報の受領者に対し、秘密保持義務を課します。

言うまでもなく、この規定は、秘密保持義務の条項において、最も重要な内容です。

内容としては、秘密情報の受領者による、第三者への秘密情報の開示と漏えいを禁止します。

契約条項の記載例・書き方

第○条(秘密保持義務)

受領者は、秘密情報を第三者に対し開示し、または漏えいしてはならない。

(※便宜上、表現は簡略化しています)

場合によっては「第三者」を定義づける

たとえ親会社・子会社でも別法人=第三者

なお、この際、場合によっては、「第三者」という用語を定義づける必要があります。

通常、第三者とは、契約当事者=委託者・受託者以外の者を意味します。

第三者の定義

第三者とは、契約当事者以外の者をいう。

たとえ子会社・親会社であっても、契約当事者でない以上、第三者に該当します。

しかしながら、一部の契約実務に詳しくない事業者の担当者などは、こうした定義で理解をしていないことがあります。

再委託先・下請先を第三者ではなく当事者として誤解することもある

例えば、受託者にとって、再委託先・下請先は、別法人・別人格ですので、明らかに第三者です。

しかしながら、管理人の個人的な経験では、一部の事業者では、再委託先・下請先を当事者の一部と解釈し、第三者とはしていない事業者もいます。

こうした場合、例えば受託者に対して開示された秘密情報が、第三者への開示が禁止されているにもかかわらず、第三者に簡単に開示されてしまうことがあります。

このため、開示者としては、少なくとも、受領者による第三者の認識について質問はしておくべきです。

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秘密保持義務の例外を規定する

理論上は第三者への情報開示は一切できない

さて、このように秘密保持義務を規定した場合、契約当事者しか、秘密情報は開示されません。

受託者は、理論上は、いかなる第三者に対しても、秘密情報は開示できないことになります。

このような厳格な解釈の場合、それこそ契約交渉の担当者である役員・従業員も、契約当事者の法人とは別人格であるため、第三者に該当します。

契約当事者以外は第三者

契約当事者(=開示者・受領者)以外は、たとえ契約当事者の役員・従業員・子会社・親会社といえども、厳密には、別人格の第三者。

このため、理論上は、秘密保持義務が規定された業務委託契約が成立した途端に、秘密保持義務違反となる、ということになります。

このようなことがないように、秘密保持義務の条項では、一定の第三者については、例外として、秘密保持義務の対象外とします。

秘密保持義務の例外となる第三者の具体例一覧

具体亭には、次の第三者が、秘密保持義務の対象となります。

秘密保持義務の例外となる第三者

  • 【例外1】役員・従業員
  • 【例外2】再委託先・下請業者
  • 【例外3】外部の専門家
  • 【例外4】行政機関・裁判所
  • 【例外5】弁護士会
  • 【例外6】金融商品取引所
  • 【例外7】上場企業の投資家

これらの第三者への秘密情報の開示が秘密保持義務の例外として規定されている場合に限り、秘密情報の受領者は、これらの第三者に対し、秘密情報を開示できます。

それぞれ、具体的に見ていきましょう。

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【例外1】役員・従業員への開示

役員・従業員に秘密情報の開示がないのはあり得ない

すでに触れたとおり、役員・従業員は、厳密には、その就任先・勤務先である法人とは、別人格の自然人です。

このため、理論上は、役員・従業員は、契約当事者ではなく、第三者に該当します。

ただ、当然ながら、役員・従業員に対しても、一切秘密情報を開示しないというのは、不可能です。

そこで、一般的な秘密保持義務では、役員・従業員は、第三者の例外として、秘密保持義務の対象外とします。

秘密情報を開示する役員・従業員を限定する

なお、開示者としては、いくら役員・従業員とはいえ、全員の役員・従業員を対象とする必要はありません。

特に、受領者が大企業の場合、全員の役員・従業員を秘密保持義務の例外とした場合は、業務委託契約とはまったく関係のない役員・従業員にも秘密情報が開示される場合があります。

これでは、情報漏えいのリスクが無駄に高くなってしまいます。

このため、開示者としては、あくまで開示できる役員・従業員は、必要最低限とし、場合によっては、部署や氏名で特定することも検討します。

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【例外2】再委託先・下請業者への開示

再委託・下請負の許可だけでなく情報開示の許可も得る

業務委託契約では、受託者が、再委託先・下請業者に対し、受託した業務の全部または一部の再委託・下請負をする場合があります。

再委託・下請負(外注)の許可・禁止条項とは?

受託者の再委託先・下請業者は、受託者とは別人格の法人または自然人であり、当然これらは、第三者です。

ですから、受託者としては、再委託先・下請業者への秘密情報を開示についても、委託者から許可を得る必要があります。

少なくとも同等以上の秘密保持義務を課す

なお、委託者としては、再委託先・下請業者とは、直接契約を締結しているわけではありません。

このため、再委託先・下請業者の情報管理については、関与できません。

あくまで、委託者として直接関与できるのは、受託者との業務委託契約においてのみです。

そこで、業務委託契約では、委託者としては、受託者に対し、再委託先・下請業者に対して、業務委託契約の秘密保持義務と同等以上の秘密保持義務を課すように、義務づけるべきです。

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【例外3】外部の専門家への開示

弁護士、公認会計士、弁理士、税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士など、国家資格を持つ外部の専門家もまた、当然、第三者となります。

よほど小規模な事業者でない限り、こうした外部の専門家との取引があるでしょうし、現在ない場合でも、将来取引関係になる可能性は十分にあるはずです。

こうした外部の専門家も、第三者の例外として、秘密情報義務の対象外とし、秘密情報を開示できるようにしておくべきです。

なお、少なくとも、こうした有資格者は、各種業法において、罰則付きの秘密保持義務が課されています。

このため、再委託先・下請業者のような、秘密保持義務を課す義務までは、必要ありません。

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【例外4】法令にもとづく場合の行政機関・裁判所への開示

法令違反と秘密保持義務の板挟みにならないようにする

秘密情報の中には、法令にもとづいて、行政機関や裁判所に対して、開示義務があるものもあります。

こうした場合に備えて、行政機関や裁判所も第三者の例外として、秘密保持義務を開示できるようにしておくべきです。

行政機関や裁判所への開示を例外としておかないと、法令にもとづく開示命令があった場合、開示しなければ法令違反となり、開示したら秘密保持義務違反となる、という板挟みとなってしまいます。

なお、行政機関と裁判所は、厳密には別々の組織ですので、必ず両者を区別して規定します。

行政機関・裁判所への開示を秘密情報の例外としない

よくやりがちなミスですが、行政機関や裁判所を第三者の例外=秘密保持義務の例外とせずに、「秘密情報の例外」とすることがあります。

契約条項の記載例・書き方

第◯条(秘密情報の例外)

次の各号のいずれか一つに該当する情報は、秘密情報に該当しない。

(1)秘密保持義務を負うことなくすでに保有している情報

(2)秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報

(3)相手方から提供を受けた情報によらず、独自に開発した情報

(4)本契約及び個別契約に違反することなく、かつ、受領の前後を問わず公知となった情報

(5)法令等に基づき、行政機関又は裁判所から開示を求められた情報

(※便宜上、表現は簡略化しています)

この場合は、例えば、税務調査の際に税務署の担当者に開示した情報が、それ以降は秘密情報でなくなる、ということになります。

つまり、行政機関や裁判所に対して開示した情報=秘密情報の例外となった情報は、理論上は、他の第三者の開示や公開ができるようになってしまいます。

また、秘密情報の例外となるということは、そうした情報については、目的外使用もできるようになってしまいます。

こうしたことがないように、行政機関や裁判所については、あくまで第三者の例外=秘密保持義務の例外とするべきです。

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【例外5】弁護士会への開示

弁護士会からの照会請求とは?

意外にご存じない方も多いと思いますが、実は、弁護士会には、照会という制度があります。

弁護士法第23条の2(報告の請求)

1 弁護士は、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができる。申出があつた場合において、当該弁護士会は、その申出が適当でないと認めるときは、これを拒絶することができる。

2 弁護士会は、前項の規定による申出に基き、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

このように、原則として、弁護士会からの照会請求には、回答しなければなりません。

このため、弁護士会もまた、第三者の例外として規定し、秘密情報を開示できるようにします。

弁護士会からの照会には安直に回答していいわけではない

この弁護士会からの照会請求ですが、正当な理由がないのに回答を拒絶した場合は、損害賠償を請求される可能性があります(大阪高裁判決平成19年1月30日・京都地裁判決平成19年1月24日)。

逆に、不当に情報を回答してしまった場合は、開示することによって不利益を被る者から損害賠償を請求させる可能性もあります(最高裁判決昭和56年4月14日)。

もっとも、後者の判例は、民事事件の秘密情報に対する弁護士会の照会についての判例ではなく、地方公共団体が、弁護士会に対し、特定の個人の犯罪経歴について回答した判例です。

このように、特に個人のプライバシーに関する情報については、弁護士会からの照会請求があったらといって、安直に回答するべきではありません。

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【例外6】金融商品取引所への開示

上場企業が受領者となる場合に限った話ですが、一部の情報は、金融商品取引所の規則にもとづき、開示が求められることがあります。

こうした開示にも対応できるように、上場企業である受領者としては、金融商品取引所も第三者の例外としておき、秘密情報を開示できるようにします。

また、将来上場を予定している企業もまた、このような内容にしておくべきでしょう。

なお、金融商品取引所は、民間企業であり、行政機関ではありません。

このため、行政機関・裁判所を第三者を例外としていた場合であっても、この規定を根拠に、金融商品取引所への秘密情報の開示はできません。

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【例外7】上場企業の投資家への公開

主に上場企業が受領者となる場合の話ですが、一部の情報は、金融商品取引法にもとづき、投資家に対し公開する必要があります(いわゆる「開示規制」)。こうした開示規制に違反した場合、課徴金の対象となります。

このため、上場企業である受領者としては、こうした金融商品取引法にもとづく情報公開ができるように、秘密情報を公開できるようにしておくべきです。

なお、一部の投資スキームにおいては、必ずしも上場企業ではなくても、開示規制に抵触する可能性があります。

ですから、未上場企業であっても、投資の募集をする可能性があるのであれば、秘密保持義務を規定する際には、投資家に対し秘密情報を開示できるようにしておきます。

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