このページでは、請負契約と(準)委任契約の違いについて解説しています。

業務委託契約は、実態としては民法上の請負契約と(準)委任契約のいずれかであることが多いです。請負契約と(準)委任契約では、13の大きな違いがあります。

事業で締結される請負契約や(準)委任契約は、見かけ上はよく似ている契約です。だからこそ、「請負と準委任の違いがよくわからない」と思われる方も多いと思います。

ところが、法的な観点では、請負契約と(準)委任契約は、まったく別物の契約であり、大きな違いがあります。特に、トラブルになった場合の違いが大きい、という特徴があります。

このような違いは、普段は気にならなくても、いざ業務委託契約で問題が発生した際に、その業務委託契約が請負契約か(準)委任契約かによって、大きな差が出ます。

このページでは、そうした請負契約と(準)委任契約の違いについて、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページを読むことで、請負契約と(準)委任契約が理解できますし、同時に、業務委託契約を締結する際に、委託者・受託者のいずれの場合も、請負・(準)委任のどちらの契約形態にするべきかを判断できるようになります。

なお、業務委託契約の解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約書とは?書き方・注意点についてわかりやすく解説




業務委託契約における請負契約と(準)委任契約の違い一覧表

請負契約と(準)委任契約の違い
請負契約(準)委任契約
業務内容仕事の完成法律行為・法律行為以外の事務などの一定の作業・行為の実施
報酬請求の根拠仕事の完成履行割合型=法律行為・法律行為以外の事務の実施、成果完成型=成果の完成
受託者の業務の責任仕事の結果に対する責任
(完成義務・契約不適合責任)
仕事の過程に対する責任
(善管注意義務)
報告義務なしあり
業務の実施による成果物原則として発生する(発生しない場合もある)原則として発生しない(発生する場合もある)
業務の実施に要する費用負担受託者の負担委託者の負担
受託者による再委託できるできない
再委託先の責任受託者が負う原則として受託者が直接負う
(一部例外として再委託先が直接負う)
委託者の契約解除権仕事が完成するまでは、いつでも損害を賠償して契約解除ができるいつでも契約解除ができる。ただし、次のいずれかの場合は、損害賠償責任が発生する

  1. 受託者の不利な時期に契約解除をしたとき
  2. 委託者が受託者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき
受託者の契約解除権委託者が破産手続開始の決定を受けたときは、契約解除ができるいつでも契約解除ができる。ただし、委託者の不利な時期に契約解除をしたときは損害賠償責任が発生する
印紙(印紙税・収入印紙)必要(1号文書、2号文書、7号文書に該当する可能性あり)原則として不要(ただし、1号文書、7号文書に該当する可能性あり)
下請法違反のリスク高い高い
労働者派遣法違反=偽装請負のリスク低い(ただし常駐型は高い)高い(常駐型は特に高い)
労働法違反のリスク低い高い





【意味・定義】請負契約・委任契約・準委任契約とは?

請負契約・委任契約・準委任契約について、それぞれ意味・定義を確認しておきましょう。

【意味・定義】請負契約とは

請負契約は、民法では、以下のように規定されています。

民法第632条(請負)

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

【意味・定義】請負契約とは?

請負契約とは、請負人(受託者)が仕事の完成を約束し、注文者(委託者)が、その仕事の対価として、報酬を支払うことを約束する契約をいう。

請負契約の基本的なポイントにつきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

請負契約とは?委任契約や業務委託契約との違いは?

【意味・定義】委任契約とは

委任契約は、民法では、以下のように規定されています。

民法第643条(委任)

委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

【意味・定義】委任契約とは?

委任契約とは、委任者が、受任者に対し、法律行為をすることを委託し、受任者がこれ受託する契約をいう。

法律行為とは、行為者が法律上の一定の効果を生じさせようと意図して意思の表示(=意思表示)をおこない、意図したとおりに結果が生じる行為のことです。

【意味・定義】法律行為とは?

法律行為とは、行為者が法律上の一定の効果を生じさせようと意図して意思の表示(=意思表示)をおこない、意図したとおりに結果が生じる行為をいう。

学術的な用語で、非常にわかりづらいですが、わかりやすい具体例としては、「契約を結ぶこと」が、法律行為のひとつの例です。

【意味・定義】準委任契約とは

準委任契約は、民法では、以下のように規定されています。

民法第656条(準委任)

この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

【意味・定義】準委任契約とは?

準委任契約とは、委任者が、受任者に対し、法律行為でない事務をすることを委託し、受任者がこれ受託する契約をいう。

ここでいう「事務」というのは、一般的な用語としての事務(例:事務を執る、事務所、事務職など)ではなく、もっと広い概念です。

民法上は定義がありませんが、作業、助言、企画、技芸の教授など、「法律行為でない行為」が該当すると考えて差し支えないでしょう。

ちなみに、「準用」とは、ある法律の規定を、必要な修正・変更をしたうえで、類似した別の規定に当てはめることをいいます。

【意味・定義】準用とは?

準用とは、ある法律の規定を、必要な修正・変更をしたうえで、類似した別の規定に当てはめることをいう。

契約実務においては、法律の条文だけでなく、契約条項としても、「準用する」場合があります。

委任契約と準委任契約の基本的なポイントにつきまして、詳しくは、次のページをご覧ください。

委任契約・準委任契約とは?請負契約や業務委託契約との違いは?

なお、今後は、特に言及がなければ、委任契約と準委任契約を合わせて「委任契約」と表記します。





請負契約と(準)委任契約の違い1:業務内容

請負契約(準)委任契約
業務内容・報酬請求の根拠仕事の完成法律行為・法律行為以外の事務などの一定の作業・行為の実施

請負契約=結果重視・委任契約=過程重視

請負契約は、仕事の完成を目的とした契約です。

請負契約は、「仕事の結果」に着目した契約であり、仕事が完成していれば、仕事の過程がどうであったは、問題となりません。

これに対し、委任契約は、主に一定の行為をすること自体を目的とし契約です。

委任契約は、「仕事の過程」に着目した契約であり、仕事の過程にミスがなければ、仕事の結果(完成か未完成か)については、責任を問われません。

ただし、いわゆる「成果完成型」の(準)委任契約の場合は、成果が完成しないときは、報酬の支払いを受けられない可能性もあります(次項にて解説)。





請負契約と(準)委任契約の違い2:報酬請求の根拠

請負契約(準)委任契約
業務内容・報酬請求の根拠仕事の完成履行割合型=法律行為・法律行為以外の事務の実施、成果完成型=成果の完成

請負契約は原則として仕事の完成への対価

請負契約では、請負人の報酬請求の根拠は、原則として、仕事の完成です。

このため、仕事の完成による目的物の引渡しか、または物の引渡しがない場合は仕事の完成による終了により、報酬の請求ができます(民法第633条第1項)。

ただし、次の一定の条件のもとで、「請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受ける」場合は、仕事が完成していなくても、注文者が受ける利益の割合に応じた報酬を請求できる場合があります(民法第634条)。

請負契約において仕事が未完成の場合でも報酬の請求ができる条件
  • 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
  • 請負が仕事の完成前に解除されたとき。

(準)委任契約は業務の実施への対価と成果の完成への対価のいずれか

委任契約は原則として無報酬

委任契約は、原則として無報酬とされています(民法第648条第1項)。

ただし、企業間取引としての委任契約の場合、商法第512条により、受任者は、報酬の請求権が発生します。

なお、一般的な委任契約型の業務委託契約では、特約として報酬の設定をすることがほとんどです。

履行割合型は業務の実施そのものの対価

いわゆる「履行割合型」の委任契約の場合、報酬請求の根拠は、法律行為・事務等の業務の実施そのものです。

【意味・定義】履行割合型委任契約(準委任契約)とは?

履行割合型委任契約(準委任契約)とは、法律行為(委任契約の場合)、法律行為以外の事務(準委任契約)の履行の割合(量)に応じて報酬の請求権が生じる委任契約・準委任契約をいう。

この履行割合型委任契約は、後述の「成果完成型委任契約」とは異なり、成果が発生しなかったとしても、業務量・作業量の割合に応じて報酬が発生します。

成果完成型は成果の完成

いわゆる「成果完成型」の委任契約の場合、報酬請求の根拠は、法律行為・事務等の業務の実施により成果が発生することです。

【意味・定義】成果完成型委任契約(準委任契約)とは?

成果完成型委任契約(準委任契約)とは、法律行為(委任契約の場合)、法律行為以外の事務(準委任契約)の履行の結果として発生した成果に応じて報酬の請求権が生じる委任契約・準委任契約をいう。

この成果完成型委任契約は、前述の「履行割合型委任契約」とは異なり、単に法律行為・事務等の業務を実施しただけでは報酬が発生せず、業務の実施により成果が発生した場合に報酬が発生します。

このため、いわゆる「成果報酬」とする場合は、この成果完成型の委任契約とすることがあります。





請負契約と(準)委任契約の違い3:受託者の業務の責任

請負契約(準)委任契約
受託者の業務の責任仕事の結果に対する責任
(完成義務・契約不適合責任)
仕事の過程に対する責任
(善管注意義務)

請負契約は「仕事の結果」の完成義務・契約不適合責任がある

請負契約では、受託者は、仕事を完成させる責任を負います。

これは、不完全な仕事を完成させる義務や、後で見つかった契約不適合に対応する義務などの責任(これらを「契約不適合責任」(旧民法における「瑕疵担保責任」)といいます)も含みます。

【意味・定義】請負契約における契約不適合とは?

請負契約における契約不適合とは、請負契約において請負人がおこなった仕事の種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないこと。いわゆる「瑕疵」(欠陥・ミス等)を含む。

【意味・定義】請負契約における契約不適合責任とは?

請負契約における契約不適合責任とは、仕事の種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合(契約不適合があった場合。瑕疵、ミス、欠陥等があった場合を含む。)において、注文者から請求された、履行の追完、報酬の減額、損害賠償、契約の解除の請求に応じる請負人の責任・義務をいう。

例えば、建物を建設する建設工事請負契約では、建設業者は、設計どおりに、建物を完成させる責任を負います。

建物が竣工したときに、設計とは違う施工をしたり、後で手抜き工事が発覚したりすると、その修補(=履行の追完)等の責任を負います。

逆に、職人が途中で酒を飲んで酔っ払って施工をしていても、結果として建物が問題なく完成していれば、「仕事が完成」したといえます。

なお、契約不適合責任につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

【改正民法対応】業務委託契約における契約不適合責任とは?「知った時から1年」の修正方法は?

委任契約は「仕事の過程」における善管注意義務がある

委任契約では、受託者は、仕事の過程そのものに責任を負います。

このような責任を果たす義務を「善管注意義務」といいます。

民法第644条(受任者の注意義務)

受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

ここでいう「善良な管理者の注意…の義務」を省略したのが、善管注意義務です。

なお、より正確には、善管注意義務の定義は、以下のとおりです。

【意味・定義】善管注意義務とは?

善管注意義務とは、行為者の階層、地位、職業に応じて、社会通念上、客観的・一般的に要求される注意を払う義務をいう。

例えば、医師による診療行為・医療行為の医療契約も、準委任契約の一種です。

この場合、医師は、善管注意義務を果たして、助言・手術などの診療行為・医療行為をすれば、結果として患者が亡くなっても、責任は問われません。

なお、善管注意義務につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

準委任型業務委託契約における善管注意義務とは?定義・具体例と5つのポイントもわかりやすく解説

ポイント
  • 受託者の請負契約における責任は完成義務・契約不適合責任=業務の結果の責任
  • 受託者の(準)委任契約における責任は善管注意義務=業務の過程の責任





請負契約と(準)委任契約の違い4:報告義務

請負契約(準)委任契約
報告義務なしあり

請負契約で報告義務を課すなら契約書作成が必須

請負契約では、民法では、受託者には報告義務が課されていません。

このため、請負型の業務委託契約で、受託者に対し報告義務を課す場合は、業務委託契約書を作成して、報告義務を規定する必要があります。

業務委託契約書を作成する理由

民法上の請負契約には請負人に対し報告義務が課されないことから、請負人に報告義務を課す場合は、特約として請負人の報告義務を規定した契約書が必要となるから。

これに対し、委任契約では、民法第645条により報告義務があります。

民法第645条(受任者による報告)

受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。

ただ、この報告事項は、「委任事務の処理の状況」と、委任事務の「経過及び結果」という漠然とした規定となっています。

このため、一般的な(準)委任型の業務委託契約で報告を求める場合は、より詳細な内容にすることがほとんどです。

業務委託契約書を作成する理由

(準)委任型の業務委託契約では、民法台645条において受託者に対し報告義務が課されているものの、詳細な内容が規定されていないため、委託者が詳細な報告を求めるのであれば、特約を規定した契約書が必要となるから。

ポイント
  • 民法上、請負契約には報告義務がない。
  • 請負契約において報告義務を課す場合は、契約書で報告義務を規定する必要がある。
  • 民法上、委任契約には報告義務がある(民法第645条)。





請負契約と(準)委任契約の違い5:業務の実施による成果物

請負契約(準)委任契約
業務の実施による成果物原則として発生する(発生しない場合もある)原則として発生しない(発生する場合もある)

請負契約は原則として成果物が発生する

一般的な請負契約では、原則として成果物が発生します。例えば、以下のようなものが該当します。

請負契約における成果物の例
  • 建設工事請負契約の建物等
  • 製造請負契約における製品
  • ソフトウェア開発(プラグイン・システム・アプリ等)請負契約におけるコード等の知的財産
  • グラフィックデザイン請負契約におけるデザインデータの著作物
  • ホームページ作成の請負契約におけるコード等の著作物

ただし、請負契約だからといって、必ず成果物が発生するとは限りません。

例えば、典型的な請負契約のひとつに、運送業者による運送請負契約があります。

運送請負契約は、「荷主が指定する場所に荷物を運ぶ」という「仕事を完成させる」請負契約のひとつですが、成果物は発生しません。

また、修理の請負契約なども、新たな成果物が発生しない請負契約です。

委任契約は原則として成果物が発生しない

一般的な委任契約では、原則として、成果物が発生しません。

一定の行為を行うこと自体が目的の委任契約では、基本的には、成果物が発生することはありません。

ただし、一部の委任契約では、成果物が発生することがあります。具体的には、以下のものが成果物に該当します。

例外的に(準)委任契約で発生する成果物の例
  • (準)委任型のソフトウェア(プログラム・システム・アプリ)開発で発生したコード類(著作物)
  • (準)委任型の経営コンサルティング契約における報告書

「成果物の発生の有無」は請負契約か委任契約を判断する基準ではない

「成果物があるかないかが、請負契約か委任契約かの判断基準」というような考え方がありますが、これは必ずしも妥当ではありません。

すでに述べたとおり、成果物がない請負契約もありますし、成果物がある委任契約もあります。

確かに、成果物の有無は判断材料のひとつになるかもしれませんが、成果物の有無だけで、請負・委任の判断はできません。

請負契約か委任契約かの最も重要な判断基準は、契約当事者の合意です。

つまり、契約当事者が、請負契約と委任契約のどちらで合意したのがが、最も大事な基準です。

だからこそ、契約書を作成して、請負契約なのか、委任契約なのかを明記する必要があるのです。

業務委託契約書を作成する理由

当事者の口約束だけでは業務委託契約が請負契約であるのか(準)委任契約であるのかが判然としないため、どちらの契約形態であるのかを明記した契約書が必要となるから。

ポイント
  • 請負契約では、原則として成果物が発生する。
  • ただし、成果物が発生しない請負契約もあり得る(例:運送請負契約、修理業務委託契約)。
  • (準)委任契約では、原則として成果物は発生しない。
  • ただし、成果物が発生する(準)委任契約もあり得る(例:準委任型のソフトウェア(プログラム・システム・アプリ)開発契約、報告書の提出が必要となる経営コンサルティング契約)。
  • 成果物の発生の有無は、請負契約・(準)委任契約の契約形態の判断基準にはならない。





請負契約と(準)委任契約の違い6:業務の実施に要する費用負担

請負契約(準)委任契約
業務の実施に要する費用負担受託者の負担委託者の負担

請負契約での業務実施の費用はすべて受託者負担

請負契約では、受託者が業務の実施にともなうすべての費用を負担して、仕事を完成させる義務があります。

たとえ、仕事の途中で災害にあったとしても、自己の費用負担で、追加報酬なしで、仕事を完成させなければなりません。

つまり、見積もり違いで報酬の範囲で費用が収まらなかったとしても、その責任は、受託者が負わなければなりません。

逆に、同じ仕事であっても、仕事が完成していれば、経費を節約した分は、受託者の利益となります。

委任契約での業務実施の費用はすべて委託者負担

前払いの経費負担と後払いの経費負担がある

委任契約では、委託者が業務の実施に必要なすべての費用を負担します。

しかも、前払いの経費負担と、後払いのものとして、受託者が立替えたものの経費負担があります。

民法第649条(受任者による費用の前払請求)

委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。

民法第650条(受任者による費用等の償還請求等)

1 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

2 (以下省略)

委託業務の実施による費用を受託者負担とする場合は業務委託契約に明記する

このように、委任契約では、必要な費用は、すべて委託者の負担となります。

このため、請負型と同じように、(準)委任型の業務委託契約で委託者の費用負担とせずに、受託者の費用負担とする場合、その旨の特約を合意する必要があります。

つまり、業務委託契約書を作成する際に、費用負担に関して特約を規定する必要があります。

業務委託契約書を作成する理由

(準)委任型の業務委託契約では、民法第649条により、原則として委託者が費用負担をすることとなるため、委託者が費用負担をしたくない場合、特約として受託者が費用負担をする条項を規定した契約書が必要となるから。

このほか、業務委託契約における費用負担につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約における費用負担とは?書き方・規定のしかたは?

ポイント
  • 請負契約における業務実施の費用は原則として受託者(請負人)の負担。
  • (準)委任契約における業務実施の費用は原則として委託者(委任者)の負担





請負契約と(準)委任契約の違い7:受託者による再委託

請負契約(準)委任契約
受託者による再委託できるできない

請負契約は再委託・下請負は自由にできる

請負契約は、「仕事の完成」を目的とした契約であり、その仕事を「誰が」完成させたかは、重要ではありません。

このため、受託者(請負人)が再委託・下請負をすることは、民法上は禁止されていません。

逆にいえば、委託者(注文者)として、受託者(請負人)に対して、再委託・下請負を禁止する場合は、その旨を業務委託契約書の作成の際に記載しなければなりません。

業務委託契約書を作成する理由

民法上は、請負契約において請負人による再委託・下請負は禁止されていないことから、請負型の業務委託契約において、委託者として受託者による再委託・下請負を禁止したい場合は、特約として再委託や下請負の禁止を規定した契約書が必要となるから。

なお、建設工事請負契約については、建設業法第22条により、一括下請負(いわゆる丸投げ)が禁止されています。

建設業法第第22条(一括下請負の禁止)

1 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。

2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。

3 前2項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。

4 (省略)

一括下請負の定義・条件・例外等につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

建設業で禁止される一括下請負とは?条件・例外(適法・合法な委託)も解説

委任契約は再委託・再委任はできない

委任契約では受託者本人が業務を実施するのが原則

委任契約では、契約当事者の信頼関係がベースにあるため、受託者本人による委託業務の実施が原則とされています。

このため、受託者以外の第三者に対する委託業務の再委託・再委任は、原則としてできません(民法第644条の2第1項)。

民法第644条の2(復受任者の選任等)

1 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。

2 (省略)

以上のとおり、「委任者の許諾を得たとき」か「やむを得ない事由があるとき」でなければ、再委託・再委任はできません。

ただし、これは、「委任者(=委託者)の許諾を得たとき」や「やむを得ない事由があるとき」は再委託・再委任ができる、ということでもあります。

再委託・再委任を認める場合は業務委託契約書に特約として明記する

以上のように、(準)委任型の業務委託契約では、再委託・再委任はできません。

ただ、一般的な企業間取引においては、取引内容や業界の慣習によっては、再委託・再委任は、よくおこなわれています。

このため、特に受託者(受任者)の立場として、再委任・再委任を認めて欲しい場合は、特約として、その旨を業務委託契約書に規定する必要があります。

業務委託契約書を作成する理由

(準)委任型の業務委託契約では、民法第644条の2により原則として再委託が禁止されているため、受託者が再委託をする場合は、特約として再委託の条項を規定した契約書が必要となるから。

このほか、再委託・下請負につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約における再委託・下請負(外注)の許可・禁止条項とは?

ポイント
  • 請負契約では、自由に再委託・下請負ができる。よって、再委託・下請負を禁止する場合は業務委託契約書に特約が必要。
  • (準)委任契約では、再委託・再委任ができない。よって、再委託・再委任を認める場合は業務委託契約書に特約が必要。





請負契約と(準)委任契約の違い8:再委託先の責任

請負契約(準)委任契約
再委託先の責任受託者が負う原則として受託者が直接負う
(一部例外として再委託先が直接負う)

請負契約での再委託・下請負は受託者がすべて責任を負う

請負契約における受託者は、再委託先・下請負人の行為について、責任を負わなければなりません。

再委託先・下請負人は、法的には、再委託・下請けの程度によって、履行補助者と履行代行者に分かれます。

履行補助者は、わかりやすく言えば、受託者(請負人)を補助する存在であり、会社の従業員などが該当します。

これに対し、履行代行者は、受託者(請負人)に代わって仕事をする存在であり、いわゆる「丸投げ」をされて仕事をする事業者などが該当します。

【意味・定義】履行補助者・履行代行者とは?
  • 履行補助者とは、受託者(請負人)を補助する者(従業員・労働者等)。
  • 履行代行者とは、受託者(請負人)に代わって仕事をおこなう者(下請負人等の個人事業者等)。

受託者(請負人)は、再委託先(下請負人)が履行補助者・履行代行者のいずれであっても、その行為については、責任を負わなければなりません。

このほか、再委託・下請負につきましては、以下のページもご参照ください。

業務委託契約における再委託・下請負(外注)の許可・禁止条項とは?

委任契約での再委託・再委任は原則として受託者が負う

原則として再委託・再委任の責任は受託者が委託者に対し直接負う

受託者(受任者)は、委託者(委任者)に対し、再委託先(復受任者)の行為による責任を負わなかればなりません。

これは、債務不履行の一般原則、(準)委任契約の契約内容や善管注意義務による責任によるものです。

いずれも、たとえ再委託先(復受任者)の行為が原因であったとしても、委託者(委任者)に対しては、委託者(受任者)が直接責任を負います。

なお、この場合、再委託先(復受任者)は、受託者(受任者)に対し、責任を負わなけれなりません。

代理権が付与された委任契約・再委任契約の場合は再委託先が責任を負う

ただし、委託先(受任者)に代理権が付与された委任契約の場合において、再委任契約でも再委託先(復受任者)に代理権が付与されたたときは、再委託先(復受任者)は、委託者(委任者)に対し、その権限の範囲内において、代理人と同一義務を負います(民法第644条の2第2項)。

民法第644条の2(復受任者の選任等)

1 (省略)

2 代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。

このため、委託者(委任者)は、受託者(受任者)と再委託先(復受任者)の両者に対し、直接責任を問うこともできます。

このほか、再委託につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

業務委託契約における再委託・下請負(外注)の許可・禁止条項とは?

ポイント
  • 請負契約において再委託(下請負)があった場合、再委託先(下請負人)の行為の責任は受託者が負う。
  • (準)委任契約において再委託(再委任)があった場合、受託者(受任者)が委託者(委任者)に対し、再委託先(復受任者)の行為の責任について直接負う。
  • ただし、委任契約・再委任契約ともに、受託者(受任者)・再委託先(復受任者)に代理権の付与がある場合は、再委託先(復受任者)の行為の責任は、再委託先(復受任者)が委託者(委任者)に対し、直接責任を負う。





請負契約と(準)委任契約の違い9:委託者の契約解除権

請負契約(準)委任契約
委託者の契約解除権仕事が完成するまでは、いつでも損害を賠償して契約解除ができるいつでも契約解除ができる。ただし、次のいずれかの場合は、損害賠償責任が発生する

  1. 受託者の不利な時期に契約解除をしたとき
  2. 委託者が受託者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき

請負契約は仕事の完成前であればいつでも解除できる

請負契約では、委託者(注文者)は、受託者(請負人)が仕事を完成しない間は、損害を賠償して、いつでも契約解除ができます。

民法第641条(注文者による契約の解除)

請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

また、一般的な債務不履行に該当する場合も、契約解除ができます(民法第562条、第563条、第564条、第541条、第542条)。

この他、請負契約の契約解除につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

請負契約の契約解除権とは?請負人・注文者からの契約解除について解説

(準)委任契約では委託者はいつでも契約解除できる

いつでも=必要とせずに解除できる

(準)委任契約では、委託者(委任者)は、民法第651条により、いつでも(準)委任契約を契約解除できます。

民法第651条(委任の解除)

1 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。

2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

(1)相手方に不利な時期に委任を解除したとき。

(2)委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。

ここでいう、「いつでも」というのは、時期に限らず、特別な理由が必要がない、という意味です。

受託者(受任者)としては、この「いつでも解除できる」契約解除権を制限したい場合は、業務委託契約書を作成して、契約解除を認めない内容にする必要があります。

業務委託契約書を作成する理由

(準)委任契約は、民法第641条により、いつでも=時期に限らず、特別な理由も必要とせずに解除できることから、(準)委任型の業務委託契約においてこの契約解除権制限したい場合は、特約として解除権の制限を規定した契約書が必要となるから。

もっとも、この契約解除を制限する条項は、必ずしも有効になるとは限らず、場合によっては無効となることもあり得ます。

(準)委任契約の解除で損害賠償が必要な場合は?

ただし、上記の民法第651条第2項第1号にあるとおり、受託者(受任者)に不利な時期に解除した場合は、損害賠償責任が発生します。

同様に、第2項第2号にあるとおり、「委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任」契約を解除した場合にも、損害賠償責任が発生します。

これは、例えば、債務者である会社Aが、債権者である会社Bの代表取締役CをAの代表取締役として委任する契約が考えられます。

この委任契約の場合、CによるAの経営再建が達成されることにより、Bの債権が回収されることとなり、結果的には、Cの利益にもつながります。こうした委任契約の場合は、「いつでも」解除できるわけではありません。

この他、(準)委任契約の契約解除につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

(準)委任契約の契約解除権とは?「いつでも」解約できるとは?

ポイント
  • 請負契約の場合、委託者(注文者)は、仕事が完成するまでは、いつでも損害を賠償して契約解除ができる。
  • (準)委任契約の場合、委託者(委任者)は、いつでも契約解除ができる。
  • ただし、損害賠償責任が発生する場合もある。





請負契約と(準)委任契約の違い10:受託者の契約解除権

請負契約(準)委任契約
受託者の契約解除権委託者が破産手続開始の決定を受けたときは、契約解除ができるいつでも契約解除ができる。ただし、委託者の不利な時期に契約解除をしたときは損害賠償責任が発生する

請負契約での受託者の契約解除権は「注文者が破産手続開始決定を受けた」場合だけ

一般的な契約のルールとしての契約解除権を除けば、請負契約では、受託者(請負人)は、「注文者が破産手続開始の決定を受けた」場合に契約解除ができます。

民法第642条(注文者についての破産手続の開始による解除

1 注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人又は破産管財人は、契約の解除をすることができる。ただし、請負人による契約の解除については、仕事を完成した後は、この限りでない。

2 (以下省略)

ポイントは、受託者(請負人)にとって、請負契約特有の契約解除権は、「委託者(注文者)が破産手続開始決定を受けた場合の契約解除権だけである」という点です。

このため、受託者(請負人)として、もっと広い契約解除権を確保しておきたい場合は、業務委託契約書を作成して、契約解除事由を規定した業務委託契約を締結する必要があります。

業務委託契約書を作成する理由

請負契約における民法上の請負人の法定解除権は「注文者が破産手続開始の決定を受けた」場合に限られていることから、より多くの契約解除権を確保する場合は、特約として約定解除権を規定した契約書が必要となるから。

この他、請負契約の契約解除につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

請負契約の契約解除権とは?請負人・注文者からの契約解除について解説

(準)委任契約では受託者はいつでも契約解除ができる

いつでも=必要とせずに解除できる

(準)委任契約では、受託者(受任者)は、民法第651条により、いつでも(準)委任契約を契約解除できます。

民法第651条(委任の解除)

1 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。

2 前項の規定により委任の解除をした者は、次に掲げる場合には、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。

(1)相手方に不利な時期に委任を解除したとき。

(2)委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき。

すでに述べたとおり、「いつでも」は、時期に限らず、特別な理由が必要がない、という意味です。

ただし、上記の民法第651条第2項第1号にあるとおり、委託者(委任者)に不利な時期に解除した場合は、損害賠償責任が発生します。

この他、(準)委任契約の契約解除につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

(準)委任契約の契約解除権とは?「いつでも」解約できるとは?

ポイント
  • 請負契約の場合、受託者(請負人)は、委託者(注文者)が破産手続開始の決定を受けたときは、契約解除ができる。
  • (準)委任契約の場合、受託者(受任者)は、いつでも契約解除ができる。
  • ただし、損害賠償責任が発生する場合もある。





請負契約と(準)委任契約の違い11:印紙(印紙税・収入印紙)

請負契約(準)委任契約
収入印紙必要(1号文書、2号文書、7号文書に該当する可能性あり)原則として不要(ただし、1号文書、7号文書に該当する可能性あり)

請負契約書は2号文書

請負契約書は、印紙税法別表第一の「請負に関する契約書」(いわゆる2号文書)ですので、印紙税の課税対象となります。

また、請負型のソフトウェア(プログラム・システム・アプリ等)開発契約のように、契約内容として、著作権などの知的財産権(=無体財産権)の譲渡が含まれる場合は、同表の「…無体財産権…の譲渡に関する契約書」(いわゆる1号文書)ですので、印紙税の課税対象となります。

さらに、いわゆる請負基本契約のような、3ヶ月以上の契約期間の請負契約書などは、「継続的取引の基本となる契約書」(いわゆる7号文書)ですので、印紙税の課税対象となります。

【意味・定義】優越的地位の濫用とは?

優越的地位の濫用とは、「自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が,取引の相手方に対し,その地位を利用して,正常な商慣習に照らし不当に不利益を与える行為」をいう。

請負契約書における印紙税・収入印紙につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

請負契約書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額はいくら?

委任契約書自体は原則として不課税文書

委任契約書自体は、印紙税法において、課税対象とされていませんので、不課税文書であり、印紙税の課税対象ではありません。

ただし、(準)委任型のソフトウェア(プログラム・システム・アプリ等)開発契約のように、契約内容として、著作権などの知的財産権(=無体財産権)の譲渡が含まれる場合は、印紙税法別表第一の「…無体財産権…の譲渡に関する契約書」(いわゆる1号文書)ですので、印紙税の課税対象となります。

さらに、印紙税法施行令第26条第2号により、代理店契約書のように、売買に関する業務の委託に関する契約書は、7号文書に該当しますので、印紙税の課税対象となります。

印紙税法施行令第26条(継T続的取引の基本となる契約書の範囲)

法別表第一第七号の定義の欄に規定する政令で定める契約書は、次に掲げる契約書とする。

(1)(省略)

(2)代理店契約書、業務委託契約書その他名称のいかんを問わず、売買に関する業務、金融機関の業務、保険募集の業務又は株式の発行若しくは名義書換えの事務を継続して委託するため作成される契約書で、委託される業務又は事務の範囲又は対価の支払方法を定めるもの

(3)(以下省略)

(準)委任契約書における印紙税・収入印紙につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

(準)委任契約書の印紙(印紙税・収入印紙)の金額はいくら?

ポイント
  • 請負契約書・請負型の業務委託契約書は収入印紙が必要。
  • 委任契約書・委任型の業務委託契約書は原則として収入印紙は不要。ただし、必要な場合もある。





請負契約と(準)委任契約の違い12:下請法違反のリスク

請負契約(準)委任契約
下請法違反のリスク高い高い

下請法は請負契約だけでなく委任契約にも適用される

「下請法」という名前で誤解されがちですが、下請法は、請負契約だけに適用される法律ではありません。

請負契約であろうと、委任契約であろうと、下請法第2条第5項の「製造委託等」=「製造委託、修理委託、情報成果物作成委託及び役務提供委託」に該当する取引きであれば、適用される可能性があります。

根拠条文

第2条(定義)

1 この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託することをいう。

2 この法律で「修理委託」とは、事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいう。

3 この法律で「情報成果物作成委託」とは、事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。

4 この法律で「役務提供委託」とは、事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること(建設業(建設業法(昭和二十四年法律第百号)第二条第二項に規定する建設業をいう。以下この項において同じ。)を営む者が業として請け負う建設工事(同条第一項に規定する建設工事をいう。)の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせることを除く。)をいう。

5 この法律で「製造委託等」とは、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託及び役務提供委託をいう。

従って、下請法は、請負契約だけでなく、(準)委任契約にも適用される法律です。

もちろん、この他にも、契約当事者の資本金など、下請法が適用されるには細かな条件があります。いずれにせよ、請負契約であろうと、(準)委任契約であろうと、下請法が適用されるリスクは高いです。

なお、下請法につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法とは?中小零細企業・個人事業者・フリーランス=業務委託契約の受託者の味方の法律

ポイント
  • 請負契約であっても、(準)委任契約であっても、下請法違反となるリスクは高い。





請負契約と(準)委任契約の違い13:労働者派遣法違反=偽装請負のリスク

請負契約(準)委任契約
労働者派遣法違反のリスク低い(ただし常駐型は高い)高い(常駐型は特に高い)

「偽装請負」は請負契約だけなく委任契約でも該当する

「偽装請負」という名前で誤解されがちですが、偽装請負は、請負契約だけではなく、委任契約でも該当することがあります。

そもそも、偽装請負とは、「書類上、形式的には請負(委託)契約ですが、実態としては労働者派遣であるものを言い」ます(出典:あなたの使用者はだれですか?偽装請負ってナニ? | 東京労働局)。

【意味・定義】偽装請負(労働者派遣法・労働者派遣契約)とは?

労働者派遣法・労働者派遣契約における偽装請負とは、実態は労働者派遣契約なのに、労働者派遣法等の法律の規制を免れる目的で、請負その他労働者派遣契約以外の名目で契約が締結され、労働者が派遣されている状態をいう。

「請負」という表現から、委任契約であれば問題ないような誤解がありますが、「請負その他労働者派遣以外の名目で契約し」(労働者派遣法第40条の6第1項第5号)たは、すべて偽装請負とみなされる可能性があります。

根拠条文

労働者派遣法第40条の6(派遣先に雇用される労働者の募集に係る事項の周知)

1 労働者派遣の役務の提供を受ける者(国(行政執行法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。)を含む。次条において同じ。)及び地方公共団体(特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第2項に規定する特定地方独立行政法人をいう。)を含む。次条において同じ。)の機関を除く。以下この条において同じ。)が次の各号のいずれかに該当する行為を行つた場合には、その時点において、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。ただし、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、その行つた行為が次の各号のいずれかの行為に該当することを知らず、かつ、知らなかつたことにつき過失がなかつたときは、この限りでない。

(第1号から第4号まで省略)

(5)この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、第26条第1項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。

偽装請負に該当するかどうかは、厚生労働省が定める、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(いわゆる「37号告示」)によって判断されます。

【意味・定義】37号告示とは?

37号告示とは、労働者派遣事業と請負等の労働者派遣契約にもとづく事業との区分を明らかにすることを目的とした厚生労働省のガイドラインである「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)」をいう。

37号告示につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

37号告示とは?(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準 )

請負契約は常駐型以外は労働者派遣法違反のリスクが低い

請負契約は、「仕事の完成」を目的とした契約ですので、業務内容自体が、委託者の事業から明確に切り分けられ、独立していることが多いです。

このため、「実態は労働者派遣契約なのに、名目だけ請負契約となっている」というケースは、あまりありません。

ただし、典型的な偽装請負として社会問題となった、委託者の工場などの事業所に常駐する取引きは、偽装請負とみなされるリスクが高いです。

この場合、業務委託契約書を作成する際は、37号告示に準拠して、適法な請負契約となるように契約書の条文を起案します。

業務委託契約書を作成する理由

請負型の業務委託契約であっても、特に工場等の客先常駐型のものの場合、労働者派遣契約=偽装請負をみなされないよう、適法な請負契約となる内容を規定した契約書が必要となるから。

また、実態としても、偽装請負に該当しないような取引きとしなければなりません。

委任契約は労働者派遣法違反のリスクが高い

業務委託契約としての、委任契約は、本来は委託者自身がするべき事業の一部の作業を、受託者に対して委託することが多いです。

この場合、委託者の事業と受託者がするべき委託業務との切り分けができず、混然とした状態で委託業務が実施されることになります。

こうした状態では、委任契約は、委託者から受託者の労働者に対して、直接指揮命令がなされるなど、実際には労働者派遣契約=偽装請負となりがちです。

特に、委託者の事業所に常駐するタイプ契約、具体的には、準委任型のソフトウェア(プログラム・システム・アプリ等)開発契約で、よくあるパターンです。

このため、常駐するタイプの準委任型の業務委託契約書を作成する際には、特に37号告示に準拠して、適法な委任契約となるように契約書の条文を起案します。

業務委託契約書を作成する理由

準委任型の業務委託契約の場合、特にシステムエンジニアリングサービス契約(SES契約)などの客先常駐型のものの場合、労働者派遣契約=偽装請負をみなされないよう、適法な請負契約となる内容を規定した契約書が必要となるから。

また、実態としても、偽装請負に該当しないような取引きとしなければなりません。

ポイント
  • 常駐型の請負契約と(準)委任契約は偽装請負のリスクが高い。





請負契約と(準)委任契約の違い14:労働法違反のリスク

請負契約(準)委任契約
労働法違反のリスク低い高い

個人事業者・フリーランスとの業務委託契約は労働契約とみなされるリスクがある

個人事業者やフリーランスなど、法人ではなく、個人として事業をしている人との業務委託契約の場合、雇用契約・労働契約と実態が同じ場合があります。

このような、実態としては雇用契約・労働契約の業務委託契約は、雇用契約・労働契約とみなされるリスクがあります。

業務委託契約が雇用契約・労働契約とみなされた場合、残業代や社会保険料の負担、場合によっては源泉所得税(+追徴課税)など、金銭的な負担を一気に求められることになります。

なお、業務委託契約が雇用契約・労働契約とみなされないようにするためには、「労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)」で示されている基準に準拠した業務委託契約書を作成する必要があります。

【意味・定義】昭和60年労働基準法研究会報告とは?

昭和60年労働基準法研究会報告とは、旧労働省(現:厚生労働省)の労働基準法研究会によっておこなわれた、労働基準法第9条の「労働者」の定義と、その判定基準をいう。

この労働基準法研究会報告につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)とは

請負契約は労働法違反となるリスクは低い

請負契約は、「仕事の完成」を目的とした契約ですので、業務内容自体が、委託者の事業から明確に切り分けられ、独立していることが多いです。

このため、請負型の業務委託契約は、(準)委任型の業務委託契約に比べると、雇用契約・労働契約とみなされるリスクは低いです。

特に、SOHOや在宅で、なんらかの成果物(プログラム・グラフィックデザイン・文章など)を納入するタイプの業務委託契約の場合は、よほど拘束性が高くない限りは、雇用契約・労働契約とはみなされません。

もちろん、受託者が、委託者の事業所に常駐し、委託者の指揮命令を受けるなど、実態として委託者の労働者として変わらないような場合は、雇用契約・労働契約とみなされる可能性はあります。

委任契約は労働法違反となるリスクが高い

(準)委任型の業務委託契約は雇用契約・労働契約とみなされるリスクが高い

これに対し、業務委託契約としての、委任契約は、本来は委託者自身がするべき事業の一部の作業を、受託者に対して委託することが多いです。

この場合、委託者の事業と受託者がするべき委託業務との切り分けができず、混然とした状態で委託業務が実施されることになります。

このような状態では、受託者が委託者から完全に独立して委託業務を実施できず、また、委託者も受託者に対して、委託業務の発注を越えた指揮命令をしてしまいがちです。

このような場合、(準)委任契約や業務委託契約ではなく、雇用契約・労働契約とみなされるリスクは高くなります。

個人事業者・フリーランスとの業務委託契約書は慎重に作成する

特に、常駐型の業務委託契約が委任契約の場合は、よほど慎重に業務委託契約書を作成し、また、実態としても雇用契約・労働契約ではないオペレーションをしていないと、高い確率で雇用契約・労働契約とみなされます。

このため、(準)委任型の業務委託契約で個人事業者やフリーランスに対し委託する場合、委託者としては、雇用契約・労働契約とみなされない契約内容とした業務委託契約書を作成する必要があります。

業務委託契約書を作成する理由

個人事業者・フリーランスを相手方とした(準)委任型の業務委託契約は、雇用契約・労働契約とみなされるリスクがあることから、このリスクを回避するために、事業者間の適法な業務委託契約を規定した契約書が必要となるから。

なお、個人事業者・フリーランスとの業務委託契約と雇用契約・労働契約との違いについては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

個人事業者・フリーランスとの業務委託契約と雇用契約・労働契約の15の違い

ポイント
  • 個人事業者・フリーランスとの請負型の業務委託契約は、雇用契約・労働契約とみなされるリスクは低い。
  • 個人事業者・フリーランスとの(準)委任型の業務委託契約は、雇用契約・労働契約とみなされるリスクが高い。





請負契約と(準)委任契約の違いに関するよくある質問

請負契約と(準)委任契約には、どのような違いがありますか?
請負契約と(準)委任契約には、主に、以下の14の違いがあります。

  1. 業務内容
  2. 報酬請求の根拠
  3. 受託者の業務の責任
  4. 報告義務
  5. 業務の実施による成果物
  6. 業務の実施に要する費用負担
  7. 受託者による再委託
  8. 再委託先の責任
  9. 委託者の契約解除権
  10. 受託者の契約解除権
  11. 収入印紙
  12. 下請法違反のリスク
  13. 労働者派遣法違反=偽装請負のリスク
  14. 労働法違反のリスク
請負と準委任では、どちらがいいのでしょうか?
請負契約と準委任契約は、それぞれメリット・デメリットがありますので、一概にどちらがいいとは言えません。一般的には、委託者にとっては、仕事の結果に対して責任を追求できる請負契約が有利とされ、逆に受託者にとっては、仕事の結果に対して直接責任を負わない準委任契約が有利とされています。





請負契約の関連ページ





(準)委任契約の関連ページ