このページでは、業務委託契約書の意味・定義と、基本的な内容について、簡単にわかりやすく解説しています。

「業務委託契約」は、法令用語としては、明確な定義がありません。

業務委託契約は、一般的なビジネス用語としては浸透していますので、明確な定義があると誤解されがちですが、実際は、業務委託契約は、民法を始めとした、各種法令では、明確な定義はありません。

このため、「業務委託契約」という名前だけが独り歩きしてしまい、実際の契約内容や法的な位置づけについては、あまり知られていません。このような事情があるため、業務委託契約書の作成の実務では、契約内容をはっきりと定義づけて作成することが非常に重要となります。

このページでは、こうした業務委託契約の実態や法的な位置づけなど、基本的なことについて、わかりやすく解説していきます。

【意味・定義】業務委託契約とは

業務委託契約とは、一般的には、企業間で締結される契約の一種で、ある企業から別の企業に対して、自社でおこなうべき業務の全部または一部を委託する契約のことをいいます。

【意味・定義】業務委託契約とは?

業務委託契約とは、一般的に、企業間取引の一種で、ある事業者が、相手方の事業者に対して、自社の業務の一部または全部を委託し、相手方がこれを受託する契約のことをいう。<

よく誤解されがちですが、「業務委託契約書=業務委託契約」ではありません。

業務委託契約書は、あくまで契約書=書類のことです。また、業務委託契約は、契約そのもののことです。

ポイント
  • 業務委託契約は、一般的には自社がおこなう業務を第三者に委託する契約。
  • 業務委託契約書は、業務委託契約の契約書。

「業務委託契約」の法的な定義はない

「業務委託契約」はあくまで一般のビジネス用語であり法令用語ではない

業務委託契約は、一般的な事業者間でよく結ばれている、なじみのある契約です。ところが、実は、業務委託契約の定義は、法律上の用語の表現としては存在しません。

あくまで、「業務委託契約」という言葉は、一般的なビジネス用語であり、法令用語ではありません。

この点が非常に厄介な問題で、契約当事者や担当者レベルで「業務委託契約」の定義や解釈がバラバラとなり、トラブルになることがよくあります。

契約のルールである民法には「業務委託契約」はない

契約のルールは、民法という法律で決められています。

民法では、13種類の典型的な契約について、基本的なルールが規定されています。このような典型的な契約のことを、典型契約または有名契約といいます。

【意味・定義】典型契約・有名契約とは?

典型契約・有名契約とは、民法に規定された13種類の契約をいう。

ところが、この13種類の典型契約には、「業務委託契約」という名前の契約はありません。

13種類の典型契約・有名契約
  1. 贈与契約(民法第549条)
  2. 売買契約(民法第555条)
  3. 交換契約(民法第586条)
  4. 消費貸借契約(民法第587条)
  5. 使用貸借契約(民法第593条)
  6. 賃貸借契約(民法第601条)
  7. 雇用契約(民法第623条)
  8. 請負契約(民法第632条)
  9. 委任契約(民法第643条)
  10. 寄託契約(民法第657条)
  11. 組合契約(民法第667条)
  12. 終身定期金契約(民法第689条)
  13. 和解契約(民法第695条)

ご覧のとおり、業務委託契約という名称の契約は、民法上は存在しません。

また、民法の条文が記載されている政府の公式サイトで、「Ctrl+F」キーで「業務委託契約」と検索しても、検索結果は0件です。

このように、民法には、「業務委託契約」という表現はありません。

【意味・定義】委託とは?

なお、「委託」という表現は、民法では使われている表現ですが、明確な定義までは規定されていません。このため、「業務委託契約」と同じように、委託も定義がない用語です。

ただし、家内労働法という法律や、下請法という法律では、一部定義づけられている場合もあります。

この他、委託という表現ついては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

委託とは?その意味・定義について解説

専門家は「委託・受託」以外はあまり使わない

ちなみに、契約実務の専門家は、「業務委託」という言葉自体、好んで使うことはありません。

ただ、一般的に「業務委託契約」という言葉が使われているため、業務委託や委託・受託、発注・受注といった言葉を使うことはあります。

これに対し、「受委託」「委受託」といった言葉は、まず使いません。こういう言葉使いが間違いというわけではないのですが、法令用語ではないため、専門家としては使うことはありません。

ポイント
  • 「業務委託契約」という言葉には法的な定義がない。
  • 専門家は「業務受託契約、業務委受託契約、業務受委託契約、委託契約、受託契約、委受託契約、受委託契約、委嘱契約」という用語をめったに使わない。
  • 民法上、「委託」の定義もない。

業務委託契約は民法上の契約の一部または複合的な契約

業務委託契約の実態は民法上の「別の契約」

では、ビジネスの現場で、実際に結ばれている業務委託契約は、一体、何なのでしょうか?

実は、業務委託契約のほとんどが、すでに触れた民法の13種類の典型契約のうちの、いずれかひとつ、あるいは複合に該当するものです。

特に、大半の適法な業務委託契約は、請負契約か(準)委任契約のいずれかの場合が多いです。

つまり、業務委託契約というのは、実は、民法上の「別の契約」であることがほとんどなのです。

民法に規定されてている契約=典型契約は13種類

民法で規定されている13種類の契約は、以下のとおりです。

13種類の典型契約・有名契約
  1. 贈与契約(民法第549条)
  2. 売買契約(民法第555条)
  3. 交換契約(民法第586条)
  4. 消費貸借契約(民法第587条)
  5. 使用貸借契約(民法第593条)
  6. 賃貸借契約(民法第601条)
  7. 雇用契約(民法第623条)
  8. 請負契約(民法第632条)
  9. 委任契約(民法第643条)
  10. 寄託契約(民法第657条)
  11. 組合契約(民法第667条)
  12. 終身定期金契約(民法第689条)
  13. 和解契約(民法第695条)

一般的なビジネスモデルにおける、企業間の業務委託契約は、この13種類の典型契約のうち、いずれか単体またはこれらの複合であることがほとんどです。

ポイント

多くの業務委託契約の実態は、民法上の別の契約。

典型的な業務委託契約のパターンは7つある

すでに述べたとおり、一般的な業務委託契約は、請負契約か、委任契約(または委任契約に準じた準委任契約)のいずれかであることが多いです。

これらの請負契約・(準)委任契約を含めて、企業間取引での典型的な業務委託契約では、以下の7つのパターンがあります。

典型的な業務委託契約の7つのパターン
  1. 請負契約型の業務委託契約
  2. 委任契約・準委任契約型の業務委託契約
  3. 寄託契約型の業務委託契約
  4. 組合契約型の業務委託契約
  5. 実は雇用契約・労働契約である業務委託契約
  6. 実は労働者派遣契約である業務委託契約(偽造請負)
  7. 売買契約・譲渡契約が含まれる業務委託契約

これらの業務委託契約の7つのパターンにつきまして、以下のページにまとめていますので、ご覧ください。

業務委託契約の7つのパターン―請負・委任・偽装請負・雇用・売買(譲渡)・寄託・組合

ポイント

業務委託契約は、大きく分けて7種類に分類される。ただし、一般的な業務委託契約は、請負契約か準委任契約のどちらか。

「業務委託契約書」というタイトルには要注意

「業務委託契約書」というタイトルを安易に使わない

すでに述べたとおり、業務委託契約は、明確な定義がない契約です。このため、明確な定義がある企業間取引の契約(例:売買契約)以外の契約については、なんとなく「業務委託契約」ということにしてしまいがちです。

ところが、「業務委託契約」というタイトルを決めてしまうと、それで安心してしまうのか、内容がほとんど決まっていない契約書となっていることがあります。

契約書のタイトルは、法的にはほとんど意味がありません。契約実務においては、契約書の本文にある内容のほうが重要なのです。ですから、「業務委託契約」というタイトルをつけて契約書を作成しただけでは安心せずに、契約内容を可能な限り明確に記載するべきです。

「業務委託契約」というタイトルに惑わされない

また、契約書をチェックする場合にも、「業務委託契約」というタイトルに惑わされずに、契約内容をよくチェックすることが重要です。

私の経験上、業務委託契約書というタイトルの契約書は、いい加減な内容のものが多いです。より正確には、業務委託契約書は、実務上、意外と作成することが難しいため、それだけいい加減なものができやすい、という傾向があります。

特に、決めておくべき内容がほとんど決まっておらず、非常に抽象的な業務内容、金銭の支払いに関する条項、申し訳程度の一般条項があるだけの場合がほとんどです。

ですから、「業務委託契約書」というタイトルの契約書をチェックする際には、「本当はもっと規定するべき内容があるのでは?」という視点を持つことが重要となります。

ポイント
  • 契約書を「業務委託契約」というタイトルにすると、それで安心して(あるいはタイトルに「逃げて」)内容が不十分になりがち。
  • 契約書をチェックする際は、「業務委託契約」というタイトルに惑わされずに、契約内容をよく確認する。

業務委託契約書を作らない8つのリスク・デメリット

業務委託契約は、原則として、口約束でも成立します。このような、当事者の合意だけで成立する契約を「諾成契約」といいます。

口約束でも成立する業務委託契約は、法律上の義務がない限りは、業務委託契約書を作成する必要はありません。ただ、企業間の取引である業務委託契約ですので、金額も多額となることも多く、契約内容も複雑である傾向が強いです。

こうした業務委託契約であるにもかかわらず、業務委託契約書を作成せずに、口約束で済ませると、いろんなリスク・デメリットがあります。

具体的には、以下の8つのリスク・デメリットがあります。

業務委託契約書を作成しない8つのリスク・デメリット
  1. 契約内容を巡って水掛け論・トラブルとなる
  2. 下請法違反
  3. 労働法違反
  4. 労働者派遣法違反(偽装請負)
  5. 建設業法違反
  6. 著作権を巡ってトラブルとなる
  7. 資金決済法違反
  8. 税法違反・税務調査に対応できない

これらの業務委託契約書を作成しないリスク・デメリットにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約書を作成しない8つのリスク・デメリット

ポイント

企業間の取引きで業務委託契約書を作成しないと、法令違反をはじめとした、さまざまなリスク・デメリットが発生する。

業務委託契約書を作る4つのメリット

これに対し、業務委託契約書を作成する場合、次の4つのメリットがあります。

業務委託契約書作成の4つのメリット
  1. 取引内容を可視化できる
  2. 業務プロセスを明確化できる
  3. 違法行為を予防できる
  4. 収入印紙を節約できる

これらの業務委託契約書を作成するメリットにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約書を作成する4つのメリット

業務委託契約書の作成のポイントは?

なお、業務委託契約書のポイントにつきましては、委託者側受託者側のそれぞれにつきまして、以下のページで、詳しくまとめていますので、ご参照ください。

【委託者側編】業務委託契約書の作成の21のポイント

【受託者側編】業務委託契約書の作成の21のポイント