このページでは、請負契約の注文者に向けて、請負契約における注文者の権利義務についてわかりやすく解説しています。
「請負契約の注文者って、お金を払えばあとは義務はないんじゃない?」と思っていませんでしょうか。
確かに、請負人に対して報酬を支払う義務は、注文者の最も重要な義務ですが、実は、第三者に対する意外な責任が注文者には課されています。
また、権利のほうでは、損害賠償責任こそ発生しますが、契約途中での解除が認められています。
このページでは、こうした請負契約の注文者の権利義務や注意点について、開業22年・400社以上の取引実績がある行政書士が、わかりやすく解説していきます。
注文者の方々がこのページを読むことで、請負契約における注文者の権利・義務・責任等の注意点が理解でき、また、トラブルを未然に防ぐことができます。
このページでわかること
- 報酬の支払いだけではない、注文者の第三者に対する意外な責任とリスク
- 契約期間中でも解約できる注文者の中途解約の条件
なお、請負契約全般に関する解説につきましては、詳しくは、以下のページをご参照ください。
また、請負人の義務・責任・権利につきましては、詳しくは、以下のページをご参照ください。
請負契約(読み方:うけおいけいやく)とは
請負契約は、民法では、以下のように規定されています。
民法第632条(請負)
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
【意味・定義】請負契約とは?
請負契約とは、請負人(受託者)が仕事の完成を約束し、注文者(委託者)が、その仕事の対価として、報酬を支払うことを約束する契約をいう。
請負契約における注文者の2つ責任・義務
注文者の2つ責任・義務一覧リスト
請負契約の注文者には、以下の2つの責任・義務があります。
請負契約における請負人の2つの責任・義務
- 【義務・責任1】報酬の支払い義務
- 【義務・責任2】注文・指図にもとづく第三者に対する責任
以下、詳しく見ていきましょう。
【義務・責任1】報酬の支払い義務
請負人の報酬請求権の裏返しになりますが、注文者には、報酬を支払う義務があります。
民法第633条(報酬の支払時期)
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第624条第1項の規定を準用する。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
ここでいう報酬は、一般的な業務委託契約では、金銭=お金です。
なお、学術的には、物の給付、物の使用の許諾、労務の提供など、金銭以外の報酬でもよいとされています。ですから、理論上は、バーターでの取引きや、共同事業型の業務委託契約としての請負契約もありえます。
【義務・責任2】注文・指図にもとづく第三者に対する責任
請負人に対する注文や指図に注文者の過失があったときは、注文者は、注文者が第三者に対して加えた損害について、責任を負わなければなりません。
民法第716条(注文者の責任)
注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
この注文者の責任を「注文者責任」といいます。
【意味・定義】注文者責任とは?
注文者責任とは、請負請負人がその仕事について第三者に加えた損害であって、注文者により請負人に対して出された注文または指図に過失が起因するものについて、注文者が負う損害賠償責任をいう。
ポイント
請負契約において、注文者には、以下の責任・義務がある。
- 報酬の支払い義務
- 注文・指図にもとづく第三者に対する責任
請負契約における注文者の2つの権利とは
注文者の権利一覧リスト
請負契約の注文者には、以下の2つの権利があります。
請負契約における請負人の2つの権利
- 【権利1】「仕事の完成」を請求できる権利
- 【権利2】契約解除権・中途解約権
以下、詳しく見ていきましょう。
【権利1】「仕事の完成」を請求できる権利
請負人の「仕事の完成」の義務の裏返しになりますが、注文者は、請負人に対して、仕事の完成を請求できる権利があります。
また、すでに述べたとおり、仕事の目的物・成果物に契約不適合がある場合は、その契約不適合への対処を求める権利があります。
具体的には、以下の4つの権利です。
契約不適合責任における注文者の4つの請求権
- 追完請求権(民法第562条)
- 代金減額請求権(民法第563条)
- 損害賠償請求権(民法第564条)
- 契約解除権(民法第564条)
この他、契約不適合責任につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。
【権利2】契約解除権・中途解約権
注文者は、請負人が仕事を完成しない間は、損害を賠償して、いつでも契約解除ができます。
民法第641条(注文者による契約の解除)
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
この点につきましては、詳しくは以下のページをご覧ください。
ポイント
請負契約において、注文者には、以下の権利がある。
- 「仕事の完成」を請求できる権利
- 契約解除権・中途解約権
請負契約の注文者の権利義務に関してよくある質問
- 請負契約の注文者の義務・責任にはどのようなものがありますか?
- 請負契約の注文者には、報酬の支払い義務があります。この他、注文者が出した注文や指示に過失があったことによって第三者に損害が発生した場合は、損害賠償責任を負います(民法第716条)
- 請負契約の注文者の権利にはどのようなものがありますか?
- 請負契約の注文者には、請負人に対して、「仕事の完成」を求めることができる権利があります。この他、損害賠償が必要となりますが、「負人が仕事を完成しない間は」いつでも契約解除ができます(民法第641条)
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