このページでは、秘密保持義務・守秘義務における「秘密情報」の定義について規定しています。

実は、民法やその他の法律でも、「秘密情報」については、正確な定義がありません。

このため、業務委託契約に限らず、秘密保持義務・守秘義務の条項を規定する場合、秘密保持・守秘の対象となる「秘密情報」を正確に定義づける必要があります。

このページでは、こうした秘密情報の定義のうち、代表的な4パターンの定義について、具体的な規定の仕方・書き方を提示し、メリット・デメリットについて解説します。

また、併せて、秘密情報の例外についての規定のしかたや注意点、個人情報との関係についても解説します。

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【意味・定義】秘密情報とは?

法律上は秘密情報の定義がない

秘密保持義務・守秘義務の条項を規定する際、重要となるのが、秘密情報の定義です。

というのも、情報漏えいがあった場合、秘密保持義務・守秘義務に違反しているかどうかは、漏えいした情報が秘密情報に該当するかどうかによります。

ところが、法律上「秘密情報」という用語の定義はありません。例外として、一部の法律では、「…業務に関して知り得た情報」のように、極めて曖昧な定義があるだけです。

このため、「秘密情報」の定義がないと、漏洩した情報が秘密情報かどうかを巡って、開示者と受領者の間で、主張・見解が対立します。

こうしたトラブルを防ぐためにも、なるべく、開示者と受領者で解釈が別々にならないよう、秘密情報を定義づける必要があります。

4つの秘密情報の定義のしかた

さて、秘密情報の定義のしかたは、大きく分けて4種類あります。

4つの秘密情報の定義のしかた

  • 包括的形式:開示者が開示するすべての情報を秘密情報とする定義。
  • メタ形式(概念):概念によって秘密情報を特定する定義。
  • 媒体形式:情報の記録媒体によって秘密情報を特定する定義。
  • クレーム類似形式:特許出願の範囲(クレーム)のように、詳細かつ具体的に秘密情報を特定する定義。

それぞれ、詳しく解説します。

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包括的形式=開示された情報はすべて秘密情報

包括的形式の秘密情報の定義では、開示者が開示するすべての情報を秘密情報とします。

具体的には、次のような規定となります。

契約条項の記載例・書き方

第○条(秘密情報の定義)

本契約において、秘密情報とは、甲が開示するすべての情報及び本契約の履行により生じる情報をいう。

包括的形式は、おそらく、秘密情報の定義のしかたとしては、最も一般的な方法と思われます。

包括的形式による秘密情報の定義は、次のメリット・デメリットがあります。

包括的形式のメリット

  • 秘密保持義務の規定のしかた・書き方としては、最も簡単である。
  • 開示者にとっては、広い範囲の情報を秘密情報とすることができる
  • 開示者にとっては、開示する情報をそのつど秘密情報として指定する必要がない。
包括的方式のデメリット

  • 開示者にとっては、すべての情報を秘密情報とするため、情報を管理していることが否定される=(営業秘密の要件である)秘密管理性を否定される可能性がある。
  • 開示者にとっては、あまりにも広範囲の情報を秘密情報として指定するため、契約上の義務としては厳しすぎることから、民法上の公序良俗違反(民法第90条)として、秘密保持義務が無効となる可能性がある。

  • 受領者にとっては、秘密情報の範囲が広くなるため、結果として、秘密保持義務の範囲も広くなる
  • 受領者にとっては、すべての情報が秘密情報となることにより、かえって情報管理が杜撰となる可能性がある。
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メタ形式(概念)=抽象的な概念で秘密情報を特定

メタ形式(概念)の秘密情報の定義では、抽象的な概念で秘密情報を特定して定義づけます。

具体的には、次のような規定となります。

契約条項の記載例・書き方

第○条(秘密情報の定義)

本契約において、秘密情報とは、新技術Aを利用して製造した試作品Bの強度に関する検査データをいう。

第○条(秘密情報の定義)

本契約において、秘密情報とは、Bの製造におけるC工程で使用される添加剤及び調合の手順をいう。

第○条(秘密情報の定義)

本契約において、秘密情報とは、D社からの業務委託の際に提供を受けた5社以上からの借入を有する多重債務者のデータをいう。

メタ形式(概念)による秘密情報の定義には、次のメリット・デメリットがあります。

メタ形式(概念)のメリット

  • 包括的形式による定義に比べて、情報がより限定(必ずしも特定というわけではありません)される。
  • 開示者にとっては、秘密情報が(営業秘密の要件である)秘密管理性を肯定する要素となる。後述の記録媒体で秘密情報を特定する方法と併用するとなお良い。
メタ形式(概念)のデメリット

  • 受領者にとっては、メタ形式(概念)での定義は、抽象的な定義であるため、必ずしも情報が特定されず、情報管理が杜撰になる可能性がある。
  • 秘密保持義務の規定のしかた・書き方としては、一定以上の実務能力が必要となる。
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媒体形式=記録媒体で秘密情報を特定

媒体形式の秘密情報の定義では、情報の記録媒体によって、秘密情報を特定して定義づけます。

具体的には、次のような規定となります。

契約条項の記載例・書き方

第○条(秘密情報の定義)

本契約において、秘密情報とは、ラボノートXに記載された情報をいう。

第○条(秘密情報の定義)

本契約において、秘密情報とは、Y社から提供されたファイルZのうち○○ページに記載された情報をいう。

媒体形式による秘密情報の定義は、次のメリット・デメリットがあります。

メリット

  • 具体的に情報が特定される。後述のクレーム類似形式・詳細な記載の方法と併用すると、より情報が特定できる。
  • 開示者にとっては、秘密情報が(営業秘密の要件である)秘密管理性を肯定する要素となる。
デメリット

  • 受託者にとっては、記録媒体に「マル秘」・「社外秘」を記載するなどの対策を取らないと、情報管理が杜撰になる可能性がある。
  • 口頭、映像・音声のように、記録媒体以外の方法により開示された情報は、秘密情報とはならない。
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クレーム類似形式=詳細・具体的に秘密情報を特定

クレーム類似形式の秘密情報の定義では、クレーム(特許請求の範囲)のように、詳細かつ具体的に情報を記載することで秘密情報を特定して定義づけます。

具体的には、次のような規定となります。

契約条項の記載例・書き方

第○条(秘密情報の定義)

本契約において、秘密情報とは、構成脂肪酸において炭素数○○以下の飽和脂肪酸含量が○○~○○重量%であり、炭素数○○以上の飽和脂肪酸含有量が○○~○○重量%である油脂配合物を、○○交換してなることを特徴とするクリーミング性改良油脂を、油相中に○○~○○重量%含有することを特徴とするバタークリームに関する情報をいう。

クレーム類似形式形式による秘密情報の定義は、次のメリット・デメリットがあります。

メリット

  • 記載が正確であれば、最も具体的に情報が特定される。
デメリット

  • 主に、ある程度研究開発が進んだ技術情報を秘密情報とする場合にしか使用できない。
  • 実際に契約文章を起案するには、他の秘密情報の定義の方法と比べて、相応の実務能力が必要となる。
  • 開示者にとっては、契約が成立せずに破談となった場合、その詳細に定義づけられた秘密情報そのものに対する秘密保持義務が及ばなくなるリスクがある。
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秘密情報の例外を規定する

実は例外のほうが重要

さて、秘密情報の定義では、秘密情報の例外も規定します。

秘密情報の定義では、直接的な秘密情報の定義も重要ですが、同様に、秘密情報の例外もまた、間接的な秘密情報の定義として、非常に重要です。

特に、秘密情報の定義の範囲が非常に広い、包括的形式や、媒体形式の定義では、むしろ例外のほうが重要といえます。

具体的には、一般的な秘密保持義務では、次の4つの例外を規定します。

秘密保持義務の例外

  • 保有情報:契約成立時にすでに受領者が保有している情報。
  • 第三者情報:契約期間中に受領者が第三者から秘密保持義務を負わずに開示を受けた情報。
  • 独自開発情報:契約期間中に受領者が受領者が開示した情報によらずに開発した情報。
  • 公知情報:契約成立時に公開されていた情報。
  • 公開情報:契約期間中に受領者の責任によらずに公開となった情報。

秘密情報の例外をただし書きで規定しない

長い文章ではただし書きは使わない

なお、秘密情報の例外を規定する際に、いわゆる「ただし書き」で表現した場合、秘密情報の例外を規定したことにならないおそれがあります。

以下、具体的に見てみましょう。

第41条(秘密情報の取扱い)

1 甲及び乙は、本件業務遂行のため相手方より提供を受けた技術上又は営業上その他業務上の情報のうち、相手方が書面により秘密である旨指定して開示した情報、又は口頭により秘密である旨を示して開示した情報で開示後○日以内に書面により内容を特定した情報(以下あわせて「秘密情報」という。)【1】第三者に漏洩してはならない。【2】但し、次の各号のいずれか一つに該当する情報についてはこの限りではない。また、甲及び乙は秘密情報のうち法令の定めに基づき開示すべき情報を、当該法令の定めに基づく開示先に対し開示することができるものとする。

(1)秘密保持義務を負うことなくすでに保有している情報

(2)秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報

(3)相手方から提供を受けた情報によらず、独自に開発した情報

(4)本契約及び個別契約に違反することなく、かつ、受領の前後を問わず公知となった情報

(以下省略)

上記の【1】では秘密情報の定義が規定され、【2】では秘密保持義務が規定されています。

その後のただし書きでは、「但し、次の各号のいずれか一つに該当する情報についてはこの限りではない。」となっています。

これでは、「次の各号」の情報が、「秘密情報の例外」となるのか、「秘密保持義務」の例外となるのかが、必ずしも明らかではありません。

このように、長い文章=複数の意味が書かれた文章でただし書きを使う場合は、「この限りではない」が何の例外なのかが明らかにならないことがあります。

秘密情報の例外か秘密保持義務の例外かで目的外使用の禁止の内容が変わる

このただし書きの規定ですが、秘密情報の例外と解釈される場合と、秘密保持義務の例外と解釈される場合では、目的外使用の禁止の内容が変わってきます。

通常、目的外使用の禁止の内容では、「秘密情報」の目的外使用を禁止します。

つまり、ただし書きの解釈が秘密情報の例外と秘密保持義務の例外では、次のように意味が変わってきます。

秘密情報の例外・秘密保持義務の例外の違い

  • 【秘密情報の例外の場合】例外とされた情報は、秘密情報ではないため、秘密保持義務の対象外であり、かつ、目的外使用ができる
  • 【秘密保持義務の例外の場合】例外とされた情報は、秘密保持義務の対象外だが、秘密情報ではあるため、目的外使用ができない。

つまり、秘密保持義務の例外と解釈された場合、受領者は、開示者から開示をうけた情報については、理論上は、公知等の情報であっても目的外使用ができなくなります。

このようなことがないように、秘密情報の例外を規定する場合は、ただし書きを使わずに規定します。

ポイント

  • 秘密情報の例外も併せて規定する。
  • 秘密情報の例外は、ただし書きで規定せずに、別の条項で規定する。
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個人情報は「例外の例外」とする

なお、個人情報は、秘密情報の例外に該当する場合であっても、例外なく(つまり例外の例外として)秘密情報に該当するようにします。

例えば、電話帳や表札に書かれている個人情報は、秘密情報の例外とすることが多い、「公知情報」といえます。

しかし、個人情報は、たとえ公知のものであったとしても、漏洩してしまうと、損害賠償請求の対象となります(大阪高裁判決平成13年12月25日「宇治市住民基本台帳データ大量漏洩事件控訴審判決」)。

このため、開示者の立場としては、万が一、受領者から個人情報が漏えいしてしまった場合に、受領者から「個人情報は秘密情報の例外に該当する」と主張されないように、個人情報は、例外なく秘密情報とするべきです。

ポイント

個人情報は秘密情報の例外とせずに、例外なく秘密情報とする。

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