業務委託契約書に再委託条項・下請負条項がなく、再委託や下請負ができるかどうかわからない場合、受託者は、勝手に再委託・下請けをしてもいいのでしょうか?
契約形態が請負契約の場合は、再委託・下請負ができます(ただし建設工事請負契約の場合は一括下請負が禁止されています)。他方、契約形態が(準)委任契約の場合は、再委託・下請けができません。
このため、再委託条項・下請負条項がない業務委託契約の場合、まずは契約形態が請負であるか、(準)委任であるかを特定する必要があります。

こんにちは。契約書作成専門・小山内行政書士事務所代表の小山内です。

このページでは、弊事務所によくお寄せいただくご質問である、再委託条項・下請負条項がない場合に、再委託・下請けができるかどうかについて、解説します。

契約書に契約条項として、再委託条項・下請負条項がない場合は、民法の原則どおりに、契約内容が解釈されます。

民法では、請負契約の場合は、再委託・下請けができるとされ、(準)委任契約では、再委託・再委任ができないとされてます。

このページでは、こうした再委託・下請けができるかどうかについて、詳しく解説します。

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再委託・下請負の規定がない場合は民法の原則で判断する

請負=再委託・下請けは可┃(準)委任=再委託・再委任は不可

業務委託契約において、再委託条項・下請負条項が規定されてない場合は、民法の原則によって判断されます。

民法では、請負契約の場合は再委託・下請けができるとされ、(準)委任契約では再委託・再委任ができないとされています。

業務委託契約が請負型か(準)委任型かによって再委託・下請けの可否は変わる

  • 請負型の業務委託契約:民法上、再委託・下請けはできる。
  • (準)委任型の業務委託契約:民法上、再委託・再委任はできない。

再委託・下請けの可否は業務委託契約の契約形態が重要

以上のように、再委託・下請けの可否は、業務委託契約の契約形態が、請負型か(準)委任型かが重要となります。

このため、業務委託契約に再委託条項・下請負条項がない場合は、まずは、業務委託契約が民法上のどの契約に該当するかどうかを判断しなければなりません。

この点について、業務委託契約の7つの契約形態については、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約の7つのパターン―請負・委任・偽装請負・雇用・売買(譲渡)・寄託・組合

場合によっては再委託・下請けの可否の判断がつかないこともある

なお、業務委託契約で、契約形態についてまったく規定がない場合は、そもそもその業務委託契約が、民法上のどの契約に該当するのかを判断しなければなりません。

業務委託契約は、法律上の定義がない契約ですので、そもそも「何の契約なのか」の判断がつかない場合もあります。

このように、「何の契約なのか」の判断がつかない場合は、結局、再委託・下請けの可否の判断がつかないことになります。

なお、業務委託契約の定義につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約書とは?その定義とポイントを簡単にわかりやすく解説

もちろん、業務委託契約に明確に契約形態(特に請負契約か(準)委任契約のどちらか)が規定されていれば、再委託・下請負の可否は判断できます。

ポイント

  • 業務委託契約に再委託・下請負の規定がない場合は、民法の原則により、再委託・下請負の可否を判断する。
  • ただし、そもそも業務委託契約が民法上のどの契約に該当するかは必ずしも明らかでないため、再委託・下請負の可否も判断できない場合が多い。

請負契約=再委託・下請負ができる

請負契約=「仕事の完成」が重要な契約

請負契約は、「仕事の完成」を目的とした契約であり、その仕事を「誰が」完成させたかは、重要ではありません。

このため、民法上は、受託者(請負人)が再委託・下請負をすることは、禁止されていません。

逆にいえば、委託者(注文者)として、受託者(請負人)に対して、再委託・下請負を禁止する場合は、その旨を業務委託契約書の作成の際に記載しなければなりません。

ただし、例外として、誰が完成させるかが重要な契約(例:小説の執筆、絵画の作成、講演、演奏などの「一身専属的給付義務」がともなう契約)の場合は、再委託・下請負が認められないこともあります。

建設工事請負契約では一括下請負は禁止

なお、建設工事請負契約では、建設業法第22条により、原則として、「一括下請負」、つまり「丸投げ」が禁止されています。

建設業法第第22条(一括下請負の禁止)

1 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。

2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。

3 前2項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。

4 (省略)

ただし、第3項にあるとおり、「共同住宅を新築する建設工事」(建設業法施行令第6条の3)以外の建設工事で、発注者(いわゆる「施工主・施主」)からの書面による承諾がある場合は、例外として一括下請負が認められます。

ポイント

  • 業務委託契約が請負契約に該当する場合は、受託者(請負人)は、再委託・下請負ができる。
  • 委託者(注文者)として再委託・下請けを禁止したい場合は、契約条項として明確に再委託禁止条項・下請負禁止条項を規定する。
  • 建設工事請負契約の場合は、建設業法によって、原則として、一括下請負が禁止されている。

(準)委任契約では再委託・再委任はできない

(準)委任契約は委託者と委託者の信頼関係がベースとなる

(準)委任契約では、契約当事者の信頼関係がベースにあるため、原則として、受託者(受任者)自身が、受託した業務を実施しなければなりません。

このため、受託者(受任者)以外の第三者に対して、受託した業務の再委託・再委任はできません。

これは、民法の代理の規定を根拠としています。

民法第104条(任意代理人による復代理人の選任)

委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

再委託・再委任を認める場合は業務委託契約書に特約として明記する

以上のように、(準)委任型の業務委託契約では、再委託・再委任はできません。

ただ、一般的な企業間取引においては、取引内容や業界の慣習によっては、再委託・再委任は、よくおこなわれています。

このため、特に受託者(受任者)の立場として、再委託・再委任を認めて欲しい場合は、特約として、その旨を業務委託契約に規定する必要があります。

この特約がない場合に、勝手に第三者に対し再委託・再委任をしてしまうと、民法に違反することになります。

ポイント

  • 業務委託契約が(準)委任契約の場合は、受託者(受任者)は、再委託・再委任ができない。
  • 受託者(受任者)として再委託・再委任をしたい場合は、契約条項として、再委託条項・再委任条項を規定し、再委託・最委任ができるようにする。