このページでは、建設工事請負契約における業務内容の確定方法について解説しています。

建設工事請負契約では、いわゆる「設計図書」を作成することによって、業務内容を確定させます。

また、建設業法第19条によって、建設工事請負契約の契約当事者は、建設工事請負契約書を作成することが義務づけられています。この建設工事請負契約書には、「工事内容」として、業務内容を記載しなければなりません。

このページでは、こうした建設工事請負契約の業務内容のポイントについて、全般的にわかりやすく解説していきます。

なお、この他の、建設工事請負契約の全般的な内容につきましては、以下のページをご覧ください。

【改正民法対応】建設工事請負契約とは?建設業法・雛形・約款・作成義務・印紙について解説

また、請負契約の基本的な解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

請負契約とは?委任契約や業務委託契約との違いは?




建設工事請負契約とは?

【意味・定義】建設工事とは?

建設工事請負契約は、特に建設業法では定義がありませんが、一般的には、注文者(委託者)と請負人(受託者)との間で締結される、建設工事の施工に関する請負契約です。

ここでいう「建設工事」は、建設業法に明確に定義づけられていて、29種類あります。

建設業法第2条(定義)

1 この法律において「建設工事」とは、土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものをいう。

(以下省略)

【意味・定義】建設工事とは?

建設工事とは、土木建築に関する工事のうち、建設業法別表第一の上欄に掲げるものをいう。

そして、「別表第一の上欄」とは、次の表の左の列のことです(長いので折りたたんでいます)。

29種類の建設工事
建設工事建設業
土木一式工事土木工事業
建築一式工事建築工事業
大工工事大工工事業
左官工事左官工事業
とび・土工・コンクリート工事とび・土工工事業
石工事石工事業
屋根工事屋根工事業
電気工事電気工事業
管工事管工事業
タイル・れんが・ブロツク工事タイル・れんが・ブロツク工事業
鋼構造物工事鋼構造物工事業
鉄筋工事鉄筋工事業
舗装工事舗装工事業
しゆんせつ工事しゆんせつ工事業
板金工事板金工事業
ガラス工事ガラス工事業
塗装工事塗装工事業
防水工事防水工事業
内装仕上工事内装仕上工事業
機械器具設置工事機械器具設置工事業
熱絶縁工事熱絶縁工事業
電気通信工事電気通信工事業
造園工事造園工事業
さく井工事さく井工事業
建具工事建具工事業
水道施設工事水道施設工事業
消防施設工事消防施設工事業
清掃施設工事清掃施設工事業
解体工事解体工事業

このように、およそ「工事」と名前がつくものは、建設業法では建設工事に該当します。

これらの詳細につきましては、国土交通省が定める「業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)」をご覧ください。

【意味・定義】建設工事請負契約とは?

請負契約は、民法では、以下のように規定されています。

民法第632条(請負)

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

従って、建設工事請負契約の定義は、次のとおりです。

【意味・定義】建設工事請負契約とは?

建設工事請負契約とは、請負人(受託者)が何らかの建設工事を完成させること約束し、注文者(委託者)が、その建設工事の施工の対価として、報酬を支払うことを約束する契約をいう。

なお、建設業法第24条には、以下の規定があります。

建設業法第24条(請負契約とみなす場合)

委託その他いかなる名義をもつてするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、建設工事の請負契約とみなして、この法律の規定を適用する。

よって、「報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約」は、名義を問わず、建設業法上は請負契約とみなされ、建設業法の規制対象となります。

この他、請負契約につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

請負契約とは?委任契約や業務委託契約との違いは?

建設工事業務委託契約(=準委任契約)もあり得る

「手間請け」の建設工事は準委任契約の可能性もある

なお、建設工事の施工に関する契約だからといって、必ずしも請負契約に該当するとは限りません。

例えば、いわゆる「手間請け」といわれる、建設業者(多くの場合はいわゆる「一人親方」)が、作業のみをおこなう形態の契約があります。

このような一人親方の手間請けの契約は、請負契約ではなく、準委任契約と考えられます。

準委任契約につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

委任契約・準委任契約とは?請負契約や業務委託契約との違いは?

工事が「完成しない」建設工事もある

さく井工事は「仕事の完成」がないこともある

また、建設工事のなかには、予定どおりに施工したとしても、「仕事の完成」がないものがあります。

典型的な例としては、「さく井工事」があります。

さく井工事の具体例としては、「さく井工事、観測井工事、還元井工事、温泉掘削工事、井戸築造工事、さく孔工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事、揚水設備工事」などがあります(国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」p.50)。

これらの工事のうち、さく井工事、温泉掘削工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事などは、さく井工事を施工したとしても、必ずしも、水、温泉、石油、天然ガスが出てくるとは限りません。

必ず実態に合わせた契約内容とする

このように、建設工事の中には、必ずしも結果=「仕事の完成」が伴わないものもあります。

こうした建設工事の契約形態を請負契約とした場合、施工自体は完成したとしても、「仕事の完成」とはみなされない可能性もあります。

請負契約では、原則として、「仕事の完成」がないと、請負人(受託者)は、報酬・料金・委託料を請求できません。

ただ、施工自体が完成しているのに、請負人(受託者)に報酬・料金・委託料の請求権が認められないのは、あまりにも不合理です。

このため、特に請負人(受託者)の立場では、契約形態を準委任契約にしたり、仕事の完成がなくても報酬・料金・委託料を請求できるようにするなど、実態に合わせた契約内容とするべきです。

ポイント
  • 建設工事請負契約とは、請負人(受託者)が何らかの建設工事を完成させること約束し、注文者(委託者)が、その建設工事の施工の対価として、報酬を支払うことを約束する契約。
  • 建設業法では29種類の建設工事が規定されている。
  • 建設工事の契約だからといって、必ずしも請負契約とは限らない。
  • 建設工事の契約には、準委任型の契約もありうる。





建設工事請負契約では必ず契約書を作成しなければならない

建設業法第19条で書面作成義務が課されている

建設工事の請負契約を結ぶ場合、次のとおり、書面の交付が義務づけられています。

建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)

1 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

(1)工事内容

(2)請負代金の額

(3)工事着手の時期及び工事完成の時期

(4)工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容

(5)請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法

(6)当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

(7)天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

(8)価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更

(9)工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

(10)注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め

(11)注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期

(12)工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

(13)工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

(14)各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

(15)契約に関する紛争の解決方法

(16)その他国土交通省令で定める事項

2(以下省略)

このように、建設業法では、書面の作成義務に加えて、作成するべき書面の詳細な事項まで規定されています。

建設業法第19条の書面=建設工事請負契約書とする

しかも、単に契約内容を記載した書面を交付すればいいだけではなく、「署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」となっています。

このため、通常は、この建設業法第19条の「書面」として建設工事請負契約書を作成し、同第1項各号に規定された事項をすべてを契約書に記載します。

ちなみに、この規定では、「建設工事の請負契約の当事者は」となっていますので、注文者(委託者)・請負人(受託者)の双方に義務が課されています。

このため、建設工事請負契約書を作成しないと、注文者(委託者)・請負人(受託者)の双方が建設業法違反となります。

建設工事請負契約は電子契約でも締結できる

なお、建設工事請負契約は、建設業法第19条第3項により、契約書の取り交わしだけでなく電子契約でも締結はできます。

建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)

(第2項まで省略)

3 建設工事の請負契約の当事者は、前2項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。この場合において、当該国土交通省令で定める措置を講じた者は、当該各項の規定による措置を講じたものとみなす。

電子契約は、印紙税の節税や契約書(会計証憑)の保存のための経費を節減するなどのメリットもあります。このため、紙の契約書ではなく、電子契約のシステムで契約を締結してもいいでしょう。

【ありがちな誤解】「ウチは建設工事はやってない」

このように、建設業法では書面=建設工事請負契約書の作成が義務づけられている、ということをお客さまに話すと、次のような言葉が返ってきます。

「いや、ウチでは建設工事はやっていないんですよ」

これは、建設業の許可を取得していない会社のお客さまから、お聞きすることが多いです。

こうしたお客さまからお話を伺うと、「建設工事」のことを、大規模な建物の建築工事や土木工事のことをイメージしているようなのです。

しかし、すでに触れたように、建設業法では、29種類の建設工事が定義づけられています。

建設工事のイメージ
  • 【間違ったイメージ】建設工事はゼネコンが施工しているような大規模な建築工事や土木工事
  • 【正しいイメージ】建設工事は建設業法第2条第1項・別表第一に規定する29種類の建設工事

建設業法で規定されている29種類に該当する工事は、どんなに小規模であっても、建設業法上は建設工事として扱われます。

建設業法以外でも契約書の作成が義務づけられる可能性もある

なお、建設業法以外の法律でも、契約書なしの建設工事に関する契約は、違法となる可能性が高いです。

具体的には、契約書が必要な建設工事に関する契約は、以下のとおりです(カッコ内は根拠法令)。

契約書が必要な建設工事に関する契約
  • 契約形態が請負契約の建設工事に関する契約(建設業法)
  • 一般消費者が委託者となる場合において、訪問販売・電話勧誘販売による建設工事に関する契約(特定商取引法)
  • 契約形態が請負契約でない(=準委任契約である)建設工事に関する契約であって、委託者と受託者の資本金に大きな差がある場合におけるもの(下請法)
  • 受託者がフリーランス・個人事業者(一人親方を含む)や一人法人の場合における建設工事に関する契約(フリーランス保護法。ただし、2024年秋頃までに施行予定)

この他、契約書なしの建設工事に関する契約の違法性につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

契約書なしの工事請負契約は違法?少額工事・金額が少ない場合は不要?

ポイント
  • 建設業法にもとづき、建設工事請負契約の契約当事者は、建設工事請負契約書を作成する義務がある。
  • 建設工事請負契約書は、建設業法第19条第1項各号の内容を規定する。
  • 建設業法の29種類の建設工事に該当すれば、どんなに小さな規模の工事でも、建設工事に該当し、建設工事請負契約書を作成しなければならない。
  • 建設業法以外の法律によって、契約書なしの建設工事に関する契約は違法となる可能性もある。





建設工事請負契約では設計図書で業務内容(工事内容)を確定する

建築確認・開発許可が必要な建設工事では事前に作成する

一般的な建設工事請負契約では、仕様書・設計図などの書面(=設計図書)を作成することで業務内容を確定します。

特に、一定の規模以上の建設工事では、事前に、建築基準法にもとづく建築確認や、都市計画法にもとづく開発許可などの手続きが必要です。

設計図書は、こうした建築確認や開発許可の申請の際に、地方自治体等に提出しなければなりません。このため、建築確認や開発許可が必要な建設工事では、設計図などの書面は、必ず事前に用意されています。

規模の大きな建設工事では必ず設計図書がある

このように、規模が大きな建設工事では、建築士が作成した設計図書が必ずあります。

また、設計図書がないと、建設業者としては、施工そのものができません。このため、適正な工事の実施を確保するためにも、主に元請けの建設業者の側が、設計図書を用意します。

この点から、規模が大きい建設工事請負契約では、一般的な業務委託契約にありがちな「業務内容がハッキリしない」ということは、まずありません。

規模が小さい建設工事請負契約でも設計図書は用意しなければならない

他方、建築確認や開発許可が不要な小規模の建設工事の場合、設計図などの書面が常に作成されるわけではありません。具体例としては、小規模なリフォーム、建物の外装の塗装工事、屋根工事などです。

ただ、この場合であっても、建設業法第19条第1項第1号では、書面=建設工事請負契約書に記載するべき内容として、「工事内容」と明確に規定されています。

ですから、規模が小さい建設工事請負契約だからといって、業務内容=工事内容を規定しなくてもいい、ということにはなりません。

このため、建築確認や開発許可の有無にかかわらず、建設業法上、業務内容=工事内容は、契約書に規定して明らかにします。

建設工事は工事内容が不明確でトラブルが多い

そもそも、わざわざ建設業法第19条第1項で、「工事内容」を書面で明らかにするように義務づけているのは、それだけ、建設工事請負契約では工事内容が不明確で、トラブルが多いからです。

こうした事情があるため、しっかりと建設業法を守っている建設業者は、工事内容が記載された建設工事請負契約書を作成しています。

逆に、工事内容が記載されていない建設工事請負契約書を作成している建設業者や、そもそも契約書すら作成していない建設業者は、建設業法を始めとした法律を守っていない可能性があります。

このため、一般の施主や消費者として建設工事を依頼する際は、必ず工事内容が記載された建設工事請負契約書を作成している建設業者を選ぶべきです。

ポイント
  • 建設工事請負契約では、設計図書で業務内容=工事内容を確定する。
  • 大規模な建設工事では、建築確認・開発許可のために、事前に設計図書が準備される。
  • 小規模な建設工事では、設計図書がない場合もある。
  • どんなに小規模な工事でも、建設業法上の建設工事に該当する場合は、工事内容を書面=建設工事請負契約書に記載する義務がある。





一般の注文者(委託者)が業務内容(工事内容)を理解するにはどうするか?

設計図書は専門知識がないと理解できない

一般的に、建設工事の設計図書は、国家資格である建築士によって作成されます。

当然ながら、設計図書の内容を理解するためには、建築設計や建設工事についての専門知識が必要です。

ここで問題となるのが、注文者(委託者)が一般消費者や建設業と無関係の企業である場合、設計図書の内容が理解できない、という点です。特に、一般消費者が住宅を建てる場合は、この点が問題となります。

設計図書の内容が理解できない=施工の検証ができない

設計図書の内容が理解できないと、適正に工事が実施されているのかがわからなくなる、という点が問題となります。いわゆる「手抜き工事」が見抜けない、という問題です。

こうした問題は、一部の悪質な建設業者による欠陥住宅の建設や、悪質リフォームの原因となっています。

いくら正確な設計図書で工事内容=業務内容が定義づけられた建設工事請負契約書があったとしても、そのとおりに施工されているかがわからなければ、意味がありません。

建築士に施工の検証を依頼する

建設工事監理業務委託契約を結ぶ

では、注文者(委託者)の立場の場合、どうすれば手抜き工事がないよう、建設業者に適正に工事を実施してもらえるのでしょうか?

この点については、建築士に施工の検証を依頼する方法があります。

こうした施工の検証のことを、「工事監理」といいます(「工事管理」ではありません)。

【意味・定義】工事監理とは?

工事監理とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。「工事管理」ではない。

根拠条文

第2条(定義)

(第7項まで省略)

8 この法律で「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。

(以下省略)

この点から、建築士との工事監理はの契約は、建設工事監理業務委託契約といいます。

建設業者に、手抜き工事のない、適正な工事を実施してもらうには、注文者(委託者)は、建築士と建設工事監理業務委託契約を結び、しっかりと建設業者の施工を監理したもらうことが重要となります。

ほとんどの建設工事では「内部監理」となっている

ただ、現実の建設工事では、ほとんどの場合、請負人(受託者)である建設業者の社内の建築士や、「建設業者から」依頼を受けた外注の建築士が、建設工事を監理しています(このような方式を「設計施工」といいます)。

つまり、結局のところ、多くの建設工事では、建設業者の内部の建築士や、外注の建築士が、「内部監理」をしているに過ぎません。

こうした問題が、手抜き工事や欠陥住宅の温床になっています。

このため、注文者(委託者)の立場として、手抜き工事や欠陥住宅とならないようにするためには、「設計施工」をしようとする建設業者の主張を退けて、施工と設計・監理を分離し、設計・監理は別の建築士に依頼するように交渉する必要があります。

ポイント
  • 建設業者・建設工事の専門家でない限り、注文者(委託者)は、設計図書の内容は理解できない。
  • 設計図書の内容が理解できない場合は、建設工事が適正に施工されたのかどうか検証=工事の検査ができない。
  • 適正な建設工事の施工のためには、注文者(委託者)としては、建築士に工事監理を依頼する、という方法がある。
  • ただし、一般的な建設工事では「設計施工」がほとんどであり、注文者(委託者)から依頼をうけた建築士が工事監理をすることは、ほとんどない。





建設工事請負契約では製造業者は工場レイアウトの漏えいに注意

工場レイアウトは価値のある企業秘密≒営業秘密

なお、製造業者が工場を建設する場合、特に注意しなければならないのが、工場レイアウトの情報管理です。

工場のレイアウトは、効率的に製品を製造するための生産ラインなどの情報が記載された、重要な企業秘密です。

これらの工場レイアウトに関する企業秘密は、不正競争防止法の営業秘密として保護を受けられる情報です。

営業秘密につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

営業秘密の定義・要件・具体例とは?

工場の建設工事では工場レイアウトの情報管理に注意

ただ、そもそも工場レイアウトが、重要な企業秘密≒営業秘密に該当するということ自体、よく認識されていないことがあります。

特に、注文者(委託者)である製造業者の側はともかく、請負人(受託者)である建設業者の側としては、それほど重要な情報だとは認識していない可能性が高いです。

これが、下請けの建設業者や、従業員ともなると、さらに工場レイアウトが重要であるという意識は薄くなりがちです。

このため、注文者(委託者)である製造業者の立場の場合は、建設工事請負契約を結ぶ際には、工場レイアウトを始めとした情報の取扱いについて、契約内容として規定しておく必要があります。

建設業法では秘密保持義務・守秘義務がない

具体的には、建設業者に対する秘密保持義務・守秘義務を課すことが重要となります。

というのも、そもそも建設業法には、建設工事に関して、秘密保持義務が一切課されていません。

このため、特に契約上の対策をしていないと、請負人(受託者)である建設業者には、一切の秘密保持義務・守秘義務が課されないことになります。

なお、民間(七会)連合協定工事請負契約約款には秘密保持義務が規定されていますが、その内容は非常に簡素なものであり、営業秘密の漏洩を防ぐものとしては不十分です。

また、国土交通省が作成している民間建設工事標準請負契約約款や建設工事標準下請契約約款には秘密保持義務が規定されていません。

建設工事請負契約とは別に秘密保持契約を結ぶ

このような実態があるため、工場の建設する場合、製造業者=注文者(委託者)の側としては、建設工事請負書とは別に、秘密保持契約書を取り交すべきです。

こうすることで、最低限ではありますが、工場レイアウトの情報漏えいを防ぐ対策になります。

また、秘密保持契約以外では、建設業者=請負人(受託者)による、安易な再委託・下請負を認めないことが重要です。

再委託・下請負を認めてしまうと、建設業者による情報管理が行き届かなくなり、結果として、情報漏えいが起こりやすくなってしまいます。

なお、再委託・下請負につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約における再委託・下請負(外注)の許可・禁止条項とは?

ポイント
  • 工場レイアウトは重要な企業秘密≒営業秘密。
  • 工場の建設では、工場レイアウトを中心とした企業秘密≒営業秘密の情報管理が重要となる。
  • 建設業法・工事請負契約約款では秘密保持義務・守秘義務の規定がない。このため、何も手を打たないと、建設業者には一切の秘密保持義務・守秘義務が課されない。
  • 工場を建設する製造業者としては、建設工事請負契約とは別に、秘密保持契約を結び、建設業者に秘密保持義務・守秘義務を課すことが重要となる。
  • この他、製造業者として、工場レイアウトの情報漏えいを防ぐためには、建設業者による安易な再委託・下請負を認めてはならない。





その他の業務内容を決める全行程は?

この他の業務内容につきましては、以下の行程で決定し、契約書の記載することとなります。

業務内容の決め方・書き方の全行程一覧
  • ステップ1:契約形態(請負型か準委任型か)を決定する
  • ステップ2:業務内容の項目をリストアップして決定する
  • ステップ3:しない業務や別途見積りにする業務を決定する
  • ステップ4:個々の業務内容を定義づける
  • ステップ5:業務の実施方法を決定する
  • ステップ6:業務の実施の日程、時間、時刻(時間帯)や時間の上限などを決定する
  • ステップ7:使用するツールを決定する
  • ステップ8:決定した業務内容をすべて契約書等の書面に落とし込む

この業務内容の決め方・書き方の全行程につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約書における業務内容の決め方・書き方と全行程を解説





建設工事請負契約における業務内容に関するよくある質問

建設工事請負契約では、どのように業務内容(工事内容)を決めますか?
一般的な建設工事請負契約では、設計図などの、いわゆる「設計図書」で業務内容(工事内容)を決めます。
建設工事請負契約で業務内容(工事内容)を契約書に書かないと法律違反になるのですか?
建設業法第19条では、建設工事請負契約について書面の作成・交付義務を規定しており、その第1項各号列記では、書面に記載する次項について明記されています。
工事内容は、その第1号に規定されていますので、工事内容を記載した書面を作成し、交付しないと、注文者・請負人の両者が建設業法違反となります。