こんにちは。契約書作成専門・小山内行政書士事務所代表の小山内です。

このページでは、委託者でと受託者(製造業者)との物品・製品の製造請負契約書が、法律上義務づけられる場合について、簡単にわかりやすく解説しています。

製造請負契約は、民法上は、特に契約書が作成が義務づけられた契約ではありません。

ですから、契約書がなくても(=口頭でも)、製造請負契約自体は、有効に成立します。

しかしながら、契約当事者の立場によっては、民法以外の法律にもとづいて、製造請負契約書を作成が義務づけらる場合があります。

これは、特に注文者(委託者)の側に義務づけられることが多いです。

このため、注文者(委託者)の立場として、請負人(受託者)と製造請負契約を結ぶ場合は、特に注意が必要です。

なお、このほか、製造請負契約そのもののポイントにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

これだけは押さえておきたい!製造請負契約書の作成の20のポイント

スポンサードリンク

原則として製造請負契約書は作成する義務がない

現在の法律では、原則として、製造請負契約は、契約書を作成する義務はありません。

契約の世界では、「契約自由の原則」という原則があり、そのうちのひとつに、「方式自由の原則」があります。

この方式自由の原則により、契約を締結する際の方式は、当事者が自由に決められます。

ですから、製造請負契約も、必ずしも契約書を作成しなくても、つまり口頭であっても、契約自体は成立します。

ただし、例外として、次のような場合は、何らかの書面(実務上は製造請負契約書など)を作成する義務があります。

【例外1】下請法が適用される場合

下請法は親事業者を規制し下請事業者を保護する法律

下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といいます。

その名のとおり、下請法は、業務委託契約・下請契約における代金の支払遅延の禁止を中心とした法律です。

また、支払遅延の禁止以外にも、注文者(委託者)である親事業者には、多くの義務が課され、禁止行為も規定されています。

逆にいえば、下請法は、請負人(受託者)である下請事業者を強力に保護している法律です。

なお、下請法につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法とは?中小零細企業・個人事業者・フリーランスの味方の法律

下請法はメーカー同士の製造請負契約で適用されることが多い

製造請負契約は、下請法が適用されることがあります。

特に、契約当事者の双方が製造業者・メーカーであり、注文者が大企業・請負人が中小企業である製造請負契約の場合、下請法が適用されることが多いです。

下請法が適用される製造請負契約かどうかにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法が適用される4つの業務委託契約のパターン

注文者(委託者)には三条書面=製造請負契約書の作成義務がある

下請法が適用される場合、親事業者となる注文者(委託者)は、下請事業者となる請負人(受託者)に対して、下請法第3条にもとづき、書面を交付しなければなりません。

この書面のことを、三条書面といいます。

一般的な製造請負契約における契約実務では、製造請負契約書が三条書面として扱われるように、下請法を遵守した契約内容とします。

なお、三条書面につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法の三条書面とは?―業務委託契約書の12の必須事項

三条書面を交付しないと50万円以下の罰金

親事業者=注文者(委託者)が下請業者=請負人(受託者)に対し、三条書面を交付しない場合は、50万円以下の罰金が科されます。

下請法第10条(罰則)

次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、50万円以下の罰金に処する。

(1)第3条第1項の規定による書面を交付しなかつたとき。

(省略)

ポイントは、親事業者=注文者(委託者)である法人だけに罰金が科されるのではなく、「その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者」にも罰金が科される、ということです。

つまり、会社で50万円を払えばいい、というものではないのです。しかも、50万円とはいえ、いわゆる「前科」がつきます。

ポイント

  • 下請法は親事業者を規制し下請事業者を保護する法律。
  • 下請法はメーカー同士、特に大企業が注文者(委託者)で中小企業が請負人(受託者)の製造請負契約で適用されることが多い。
  • 下請法が適用される場合、注文者(委託者)には三条書面=製造請負契約書の作成義務がある。
  • 三条書面を交付しない場合は50万円以下の罰金。

【例外2】家内労働法が適用される場合

家内労働法は家内労働者=内職の個人事業者を保護する法律

あまり馴染みがないかもしれませんが、自宅で内職をしている家内労働者を保護する法律として、「家内労働法」という法律があります。

家内労働法は、労働基準法と同様に、家内労働者の最低限の労働条件の確保を目的とした法律です。

家内労働法では、次項で触れる家内労働手帳に関する規定のほか、支払期限や最低工賃などについて一定の規制をかけています。

このような規制により、家内労働者は保護されています。

「委託者」=注文者(委託者)には家内労働手帳の作成義務がある

家内労働法が適用される場合、委託者(注文者)は、委託をするにあたって、家内労働者(請負人)に対して、「家内労働手帳」という書面を交付しなければなりません。

ここでいう「委託」と「家内労働者」とは、それぞれ、次のとおりです。

家内労働法第2条(定義)

1 この法律で「委託」とは、次に掲げる行為をいう。

(1)他人に物品を提供して、その物品を部品、附属品若しくは原材料とする物品の製造又はその物品の加工、改造、修理、浄洗、選別、包装若しくは解体(以下「加工等」という。)を委託すること。

(2)他人に物品を売り渡して、その者がその物品を部品、附属品若しくは原材料とする物品を製造した場合又はその物品の加工等をした場合にその製造又は加工等に係る物品を買い受けることを約すること。

2 この法律で「家内労働者」とは、物品の製造、加工等若しくは販売又はこれらの請負を業とする者その他これらの行為に類似する行為を業とする者であつて厚生労働省令で定めるものから、主として労働の対償を得るために、その業務の目的物たる物品(物品の半製品、部品、附属品又は原材料を含む。)について委託を受けて、物品の製造又は加工等に従事する者であつて、その業務について同居の親族以外の者を使用しないことを常態とするものをいう。

3 (以下省略)

家内労働法が適用される場合、委託者(注文者)は、次の3回のタイミングで、家内労働手帳を交付しなければなりません(家内労働法第3条)。

家内労働手帳を交付しなければならないタイミング

  1. 委託に係る物品を提供するときまで
  2. 製造又は加工等に係る物品を受領するつど
  3. 工賃を支払うつど

なお、家内労働手帳は、家内労働法施行規則で、様式(家内労働法施行規則様式1)が決まっています。

家内労働手帳を交付しないと5,000万円以下の罰金

委託者(注文者)が家内労働者(請負人)に対し、家内労働手帳を交付しない場合や、家内労働手帳に記入事項を記入しない場合は、5,000円以下の罰金が科されます。

家内労働法第35条(罰則)

次の各号の一に該当する者は、5千円以下の罰金に処する。

(1)第3条第1項、第6条又は第17条の規定に違反した者

(2)第3条第2項の規定による記入をせず、又は虚偽の記入をした者

(3)(以下省略)

ここでいう第3条第1項が家内労働手帳の交付義務が規定されていて、第3条第1項が家内労働手帳への記入義務が規定されています。

ポイント

  • 家内労働法は家内労働者=内職の個人事業者を保護する法律。
  • 「委託者」=注文者(委託者)には家内労働手帳の作成義務がある。
  • 「委託者」は、家内労働者に対して、「委託に係る物品を提供するときまで」「製造又は加工等に係る物品を受領するつど」「工賃を支払うつど」の3回のタイミングで、家内労働手帳を交付する義務がある。
  • 家内労働手帳を交付しない場合や、家内労働手帳に記入事項を記入しない場合は、5,000円以下の罰金。

【例外3】特定商取引法が適用される場合

【意味・定義】業務提供誘引販売取引とは?

意外に思われるかもしれませんが、実は、製造請負契約には、特定商取引法が適用される場合があります。

特定商取引法第51条では、次の3つの条件に当てはまるものを「業務提供誘引販売取引」といい、規制対象としています。

業務提供誘引販売取引の定義

  1. 物品の販売または役務の提供(そのあっせんを含む)の事業であって
  2. 業務提供利益が得られると相手方を誘引し
  3. その者と特定負担を伴う取引をするもの

業務提供誘引販売取引では書面の交付義務がある

概要書面の記載事項は?

業務提供誘引販売取引をおこなう者(注文者)は、請負人(業務を事業所等によらないで行う個人に限ります)に対し、契約を締結するまでに、その業務提供誘引販売取引の事業の概要について記載した書面=概要書面を交付しなければなりません(特定商取引法第55条第1項)。

この概要書面には、以下の内容を記載されていなければなりません。

概要書面の記載事項

  1. 業務提供誘引販売業を行う者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  2. 商品の種類、性能、品質に関する重要な事項(権利、役務の種類およびこれらの内容に関する重要な事項)
  3. 商品名
  4. 商品(提供される役務)を利用する業務の提供(あっせん)についての条件に関する重要な事項
  5. 特定負担の内容
  6. 契約の解除の条件そのほかの契約に関する重要な事項
  7. 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項

契約書面の記載事項は?

また、業務提供誘引販売取引とおこなう者(注文者)は、請負人(業務を事業所等によらないで行う個人に限ります)に対し、「業務提供誘引販売契約の内容を明らかにする書面」=契約書面を交付しなければなりません(特定商取引法第55条第2項)。

この契約書面には、以下の内容が記載されていなければなりません。

契約書面の記載事項

  1. 商品の種類、性能、品質に関する事項(権利、役務の種類およびこれらの内容に関する事項)
  2. 商品(提供される役務)を利用する業務の提供(あっせん)についての条件に関する重要な事項
  3. 特定負担に関する事項
  4. 業務提供誘引販売契約の解除に関する事項
  5. 業務提供誘引販売業を行う者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人にあっては代表者の氏名
  6. 契約の締結を担当した者の氏名
  7. 契約年月日
  8. 商品名、商品の商標または製造者名
  9. 特定負担以外の義務についての定めがあるときには、その内容
  10. 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項

これらの事項につきましては、次の点にも注意が必要です。

注意事項

そのほか消費者に対する注意事項として、書面をよく読むべきことを、赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。また、契約書面におけるクーリング・オフの事項についても赤枠の中に赤字で記載しなければなりません。さらに、書面の字の大きさは8ポイント(官報の字の大きさ)以上であることが必要です。

業務提供誘引販売取引はクーリング・オフできる

業務提供誘引販売取引は期間内であれば書面で契約解除ができる

なお、業務提供誘引販売取引は、クーリング・オフができる契約です(特定商取引法第58条第1項)。

業務提供誘引販売取引の際、消費者が契約をした場合でも、法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日間以内であれば、消費者は業務提供誘引販売業を行う者に対して、書面により契約の解除(クーリング・オフ)をすることができます。

ポイントは、あくまで「書面」による解除が必要だということです。

クーリング・オフの期間はあくまで法律上の要件を満たした日から起算する

ここでは、「法律で決められた書面を受け取った日から数えて20日間以内」という期間が限定されています。

このため、そもそも請負人(受託者)が書面を受取っていなければ、「20日間以内」のカウントが始まりません。

また、この「書面」は、あくまで、特定商取引法の要件を満たした書面のことです。

このため、法特定商取引法の要件を満たしていない書面を請負人(受託者)が受取ったとしても、同じように、「20日以内」のカウントは始まりません。

法律上の要件を満たした書面でなければいつまでもクーリング・オフできる

このように、請負人(受託者)が書面を受取っていない、または、請負人(受託者)が特定商取引法の要件を満たしていない書面を受取った場合は、クーリング・オフの期間は、いつまでも進行しません。

つまりこれは、特定商取引法の要件を満たした書面を請負人(受託者)が受取らない限り、請負人(受託者)は、いつまでもクーリング・オフができる、ということです。

このため、業務提供誘引販売取引に該当する場合、注文者(委託者)の立場としては、特定商取引法の要件を満たした書面を交付するように、注意しなければなりません。

このほか、業務提供誘引販売取引のクーリング・オフにつきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約はクーリングオフできる!?

ポイント

  • 製造請負契約が「業務提供誘引販売取引」に該当する場合は、特定商取引法の規制対象。
  • 業務提供誘引販売取引に該当する場合、注文者(委託者)は、請負人(受託者)に対して、「概要書面」と「契約書面」を交付する義務がある。
  • 書面の交付がない場合、請負人(受託者)は、いつまでもクーリング・オフができる。