コンサルティング契約の契約形態はどのようなものですか?
コンサルティング契約の契約形態は、1.準委任契約、2.請負契約、3.準委任契約・請負契約のいずれか―の3種類です。

このページでは、経営コンサルタントとその依頼者向けに、コンサルティング契約の契約形態について解説しています。

コンサルティング契約の契約形態は、業務内容によって、準委任契約か請負契約のいずれかとなることが多いです。

業務内容がアドバイスやノウハウの提供などの場合は準委任契約、何らかの成果物の作成が伴う場合は請負契約の契約形態となる場合が多いです。

また、成果報酬型の業務内容のように、準委任契約・請負契約のどちらの契約形態でも構わない場合もあります。

このページでは、こうしたコンサルティング契約の契約形態について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • コンサルティング契約の契約形態
  • 契約形態を準委任契約とするコンサルティング契約
  • 契約形態を請負契約とするコンサルティング契約




コンサルティング契約の契約形態は準委任契約か請負契約

コンサルティング契約の契約形態は当事者が自由に決められる

コンサルティング契約の契約形態は、民法では特に決まっていません。

このため、当事者の合意があれば、契約自由の原則により、自由に決められます。

【意味・定義】契約自由の原則とは?

契約自由の原則とは、契約当事者は、その合意により、契約について自由に決定することができる民法上の原則をいう。

【意味・定義】契約自由の原則とは?

契約自由の原則とは、契約当事者は、その合意により、契約について自由に決定することができる民法上の原則をいう。

一般的には、準委任契約か請負契約のいずれかに決めることが多いです(後述)。

請負契約・準委任契約とは

請負契約=仕事の完成を目的とした契約

請負契約は、「仕事の完成」を目的とした契約です。

【意味・定義】請負契約とは?

請負契約とは、請負人(受託者)が仕事の完成を約束し、注文者(委託者)が、その仕事の対価として、報酬を支払うことを約束する契約をいう。

民法第632条(請負)

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

ここでいう「仕事」は、非常に広い意味で解釈されており、具体的には次のとおりです。

【意味・定義】仕事(請負契約)とは?

請負契約における仕事とは、請負人が労務をすることによって何らかの結果を生じさせることをいう。

この他、請負契約の詳細な解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

請負契約とは?委任契約や業務委託契約との違いは?

準委任契約=なんらかの行為の委託の契約

準委任契約とは、法律行為以外の事務(行為)の委託の契約です。

【意味・定義】準委任契約とは?

準委任契約とは、委任者が、受任者に対し、法律行為でない事務をすることを委託し、受任者がこれ受託する契約をいう。

民法第656条(準委任)

この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。

ここでいう「事務」というのは、一般的な用語としての事務(例:事務を執る、事務所、事務職など)ではなく、もっと広い概念です。

民法上は定義がありませんが、作業、助言、企画、知識・技芸の教授など、「法律行為でない行為」が該当します。

この他、準委任契約の詳細な解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

委任契約・準委任契約とは?請負契約や業務委託契約との違いは?

請負契約と準委任契約の違い

請負契約と準委任契約とは、以下の13の点で違いがあります。

請負契約と(準)委任契約の違い
請負契約(準)委任契約
業務内容仕事の完成法律行為・法律行為以外の事務などの一定の作業・行為の実施
報酬請求の根拠仕事の完成履行割合型=法律行為・法律行為以外の事務の実施、成果完成型=成果の完成
受託者の業務の責任仕事の結果に対する責任
(完成義務・契約不適合責任)
仕事の過程に対する責任
(善管注意義務)
報告義務なしあり
業務の実施による成果物原則として発生する(発生しない場合もある)原則として発生しない(発生する場合もある)
業務の実施に要する費用負担受託者の負担委託者の負担
受託者による再委託できるできない
再委託先の責任受託者が負う原則として受託者が直接負う
(一部例外として再委託先が直接負う)
委託者の契約解除権仕事が完成するまでは、いつでも損害を賠償して契約解除ができるいつでも契約解除ができる。ただし、次のいずれかの場合は、損害賠償責任が発生する

  1. 受託者の不利な時期に契約解除をしたとき
  2. 委託者が受託者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき
受託者の契約解除権委託者が破産手続開始の決定を受けたときは、契約解除ができるいつでも契約解除ができる。ただし、委託者の不利な時期に契約解除をしたときは損害賠償責任が発生する
印紙(印紙税・収入印紙)必要(1号文書、2号文書、7号文書に該当する可能性あり)原則として不要(ただし、1号文書、7号文書に該当する可能性あり)
下請法違反のリスク高い高い
労働者派遣法違反=偽装請負のリスク低い(ただし常駐型は高い)高い(常駐型は特に高い)
労働法違反のリスク低い高い

これらの請負契約と準委任契約 の違いに関する詳しい解説につきましては、以下のページをご覧ください。

請負契約と(準)委任契約の14の違い





契約形態が準委任契約であるコンサルティング契約

準委任型のコンサルティング業務の内容

一般的なコンサルティング契約の契約形態は、準委任契約とすることが多いです。

これは、コンサルティング契約の業務内容は成果の保証をしにくいため、コンサルタントの側が、成果について保証する必要のない準委任契約としたがるからです。

準委任契約であるコンサルティング契約の業務内容は、一般的には、次のものがあります。

準委任契約型のコンサルティング業務
  • 知識・情報・ノウハウ・助言の提供
  • 各種データの収集・分析・報告
  • リサーチ・調査

なお、これらの業務であっても、請負契約とすることもできます。

契約形態が準委任契約であるコンサルティング契約のメリット・デメリット

クライアント側のメリット・デメリット

コンサルティング契約の契約形態が準委任契約である場合、クライアント(委託者)にとっての主なメリット・デメリットは、次のとおりです。

準委任型コンサルティング契約のクライアント側のメリット
  • 特約で短縮しない限り、コンサルタントに対し、長期間(10年間)の善管注意義務違反=債務不履行の責任を追求できる(請負契約の場合は、一般的に納入または検査合格から1年間程度の契約不適合責任)。
  • いつでも契約解除ができる。
準委任型コンサルティング契約のクライアント側のデメリット
  • 成果の保証を要求できない。
  • いつでも契約解除をされる可能性がある。

クライアントとしては、成果の保証がないことから、コンサルティング契約の契約形態を準委任契約とすることは、敬遠されがちです。

しかしながら、(違約金がない場合に限りますが)コンサルタントとミスマッチがあった場合に、いつでも契約解除ができる点は、非常に大きなメリットです(ただし、損害賠償を求められるリスクがあります)。

(準)委任契約の契約解除権とは?「いつでも」解約できるとは?

コンサルタント側のメリット・デメリット

コンサルティング契約の契約形態が準委任契約である場合、コンサルタント(受託者)にとっての主なメリット・デメリットは、次のとおりです。

準委任型コンサルティング契約のコンサルタント側のメリット
  • 成果を保証する必要がない。
  • いつでも契約解除ができる。
準委任型コンサルティング契約のコンサルタント側のデメリット
  • 特約で短縮しない限り、クライアントから、長期間(10年間)の善管注意義務違反=債務不履行の責任を追求できる(請負契約の場合は、一般的に納入または検査合格から1年間程度の契約不適合責任)。。
  • いつでも契約解除をされる可能性がある。

コンサルタントとしては、成果を保証する必要がないため、コンサルティング契約の契約形態を準委任契約にしがちです。

ただ、準委任契約はいつでも解除ができますので、契約期間中に契約を打ち切られてしまうリスクがあります。

(準)委任契約の契約解除権とは?「いつでも」解約できるとは?

このため、違約金を設定するなど、契約解除への対処が必須となります。





契約形態が請負契約であるコンサルティング契約

請負型のコンサルティング業務の内容

これに対し、一部のコンサルティング契約の契約形態は、請負契約であることがあります。

これは、主になんらかの成果物や納品物の完成を目的としたコンサルティング契約の契約形態です。

この場合、名目上はコンサルティング契約であっても、実態としては別の請負契約であることが多いです。

請負契約であるコンサルティング契約の業務内容は、次のとおりです。

請負契約型のコンサルティング業務
  • マニュアル等のドキュメント類の作成
  • キャッチコピー、販促用のグラフィックデザイン等の作成
  • プログラミング

なお、これらの業務であっても、準委任契約とすることもできます。

契約形態が請負契約であるコンサルティング契約のメリット・デメリット

クライアント側のメリット・デメリット

コンサルティング契約の契約形態が請負契約である場合、クライアント(委託者)にとっての主なメリット・デメリットは、次のとおりです。

請負型コンサルティング契約のクライアント側のメリット
  • 仕事の完成や成果の保証を請求できる。
  • 「請負人が仕事を完成しない間」は、いつでも(ただし、損害を賠償して)契約解除ができる。
請負型コンサルティング契約のクライアント側のデメリット
  • 成果物の契約不適合責任の期間を短期間(納入または検査完了から1年程度)とされることが多い。

クライアントとしては、仕事の完成や成果の保証を求めることができる点は、非常に大きなメリットです。

また、契約不適合責任の期間も、1年程度であれば、ビジネスの慣例としては、それほど大きなデメリットではありません。

【改正民法対応】業務委託契約における契約不適合責任とは?「知った時から1年」の修正方法は?

ただ、これらは、そのままコンサルタント側のデメリットとなるため、契約交渉がまとまらないリスクもあります。

コンサルタント側のメリット・デメリット

コンサルティング契約の契約形態が請負契約である場合、コンサルタント(受託者)にとっての主なメリット・デメリットは、次のとおりです。

請負型コンサルティング契約のコンサルタント側のメリット
  • 特約の合意があれば、成果物の契約不適合責任の期間を短期間に短縮できる。
請負型コンサルティング契約のコンサルタント側のデメリット
  • 仕事の完成や成果の保証を請求される。
  • 「請負人が仕事を完成しない間」は、いつでも(ただし、損害の賠償を請求できる)契約を解除されるリスクがある。

コンサルタントとしては、仕事の完成や成果を保証する必要があるため、請負契約の契約形態は避ける傾向があります。

もっとも、成果物がある場合や、成果報酬の場合などでは、請負契約であることに大きなデメリットはありません。





準委任契約・請負契約いずれかのコンサルティング契約の業務内容

この他、特に成果報酬型のコンサルティング契約の契約形態は、準委任契約・請負契約のどちらにすることもできます。

ただ、こちらも成果の保証をしないコンサルタントの側が、成果について保証する必要のない準委任契約としたがることが多いです。

請負契約であるコンサルティング契約の業務内容は、次のとおりです。

準委任契約型・請負契約型のいずれかのコンサルティング業務
  • 営業や集客の支援等の売上・利益・成約件数等を成果とする業務
  • 経費削減等の経費の減額を成果とする業務
  • ページビュー(PV)、アクセス数、検索順位(SEO)等のウェブサイトの指標の改善を成果とする業務





コンサルティング契約書で契約形態を明記する

このように、コンサルティング契約の契約形態は、業務内容によって様々であり、しかも当事者の合意がなければ決まらないこととなります。

このように、契約形態が決まっていない場合、いざトラブルになった際に、それぞれの当事者が自身にとって都合のいい主張をすることとなり、より深刻な状態になる可能性が高くなります。

例えば、成功報酬・成果報酬ではなかったとしても、なんらかの成功・成果を目的としているかのようなコンサルティング契約は、請負契約と解釈できます。

こうしたコンサルティング契約で、成功・成果がなかった場合、当事者の主張は、次のように完全に対立します。

コンサルティング契約においてトラブルがあった場合の当事者の主張
  • 委託者(クライアント):これは成功・成果の達成を目的とした契約だから請負契約である。このため、成功・成果=仕事の完成がない以上、報酬・料金・委託料は払えない。
  • 受託者(経営コンサルタント):成功・成果はあくまで目標であって、この契約は成功・成果を出すことが目的の請負契約ではなく、あくまで成功・成果を出すための助言をする準委任契約。このため、成功・成果の有無に関係なく、助言の対価として報酬・料金・委託料は請求できる。

このように、クライアントと、受託者(経営コンサルタント)との間で、契約形態の解釈を巡って、水掛け論となります。

ですから、コンサルティング契約書には、業務内容の実態に応じて、準委任契約なのか請負契約なのか(またはその両方なのか)を、明記しておくべきです。

業務委託契約書を作成する理由

コンサあるティング契約は法律上は契約形態が決まっていないことから、トラブルの防止のため、(主に)準委任契約か請負契約のいずれかを明記した契約書が必要となるから。

また、業務ごとに準委任契約と請負契約に分かれるのであれば、どの業務が準委任型で、どの業務が請負型なのかも明記します。





契約形態の記載がないとムダな印紙税を負担することに

準委任契約のコンサルティング契約書は収入印紙は不要

準委任契約であるコンサルティング契約の場合は、コンサルティング契約書に契約形態を明記することにより、不必要な印紙税を負担するリスクもなくなります。

原則として、準委任契約書は不課税文書です。

このため、準委任契約であるコンサルティング契約書作成した場合、印紙税を負担する必要はありません。

ただし、著作権の譲渡がある場合は、1号文書として扱われるため、印紙税が課税され、コンサルティング契約書には、収入印紙を貼らなければなりません。

請負契約(2号文書・7号文書)と解釈されると収入印紙を貼る必要がある

ところが、コンサルティング契約書に準委任契約であることが明記されていなければ、準委任契約と解釈されない可能性があります。

それどころか、税務調査の際、税務署・国税庁の担当官から、そのコンサルティング契約が、請負契約と解釈される可能性があります。

コンサルティング契約が請負契約と解釈された場合、そのコンサルティング契約書は、2号文書か7号文書のいずれかに解釈されます。

こうなると、本来ならば不必要な印紙税に加えて、過怠税を負担しなければならなくなります。

一般的に、コンサルティング契約は高額な報酬・料金・委託料となることが多いため、印紙税や過怠税も高額になりがちですから、注意が必要です。

コンサルティング契約書の印紙税・収入印紙の関連ページ

この他、コンサルティング契約書の印紙税・収入印紙につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

コンサルティング契約書の印紙(印紙税・収入印紙)はいくら?

ポイント
  • 準委任契約型のコンサルティング契約は、原則として非課税文書。
  • 契約形態の記載がないと、請負契約書と解釈されて、本来は負担する必要のない印紙税を負担することになりかねない。





関連:コンサルティング業務の決め方

なお、コンサルティング契約の業務内容は、非常に多岐にわたり、複雑になりがちです。

このコンサルティング契約における業務内容の決め方につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

コンサルティング契約における業務内容の決め方・書き方とは?





コンサルティング契約の契約形態に関するよくある質問

コンサルティング契約は、法律上、どのような契約形態となっていますか?
コンサルティング契約の契約形態は、法律では特に決まっていません。
コンサルティング契約では、どのような契約形態とすることが多いですか。
コンサルティング契約の契約形態は、当事者の合意により、成果物がない場合は準委任契約、成果物がある場合は請負契約とすることが多いです。