注文請書・受注書の印紙税・収入印紙は、委託者・受託者のどちらが貼るものなのでしょうか?
注文請書・受注書の印紙税・収入印紙は、注文請書の作成者である受託者が貼らなければなりません。

このページでは、業務委託契約の委託者・受託者向けに、注文請書・受注書の印紙税・収入印紙の負担について解説しています。

注文請書・受注書の印紙税・収入印紙は、原則として、受託者が貼ります。

これは、印紙税法により、印紙税の納税義務者が、注文請書の作成者となっているからです。

このページでは、こうした注文請書・受注書の印紙税・収入印紙について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 委託者・受託者のどちらが注文請書・受注書に収入印紙を貼らなかればならないのか。
  • 業務委託契約では、印紙税は委託者・受託者のどちらが負担するのか。




注文請書・受注書の印紙税・収入印紙は受託者が負担して貼る

印紙税の納税義務者は課税文書の「作成者」

注文請書・受注書の印紙税は受託者が収入印紙を貼らなければなりません。

というのもの、印紙税法では、印紙税の納税義務者は、課税文書の「作成者」となっています。

印紙税法第3条(納税義務者)

1 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

2 1の課税文書を2以上の者が共同して作成した場合には、当該2以上の者は、その作成した課税文書につき、連帯して印紙税を納める義務がある。

通常、注文請書・受注書は受託者が作成することとなります。

このため、注文請書・受注書の収入印紙は、受託者が貼らなければなりません。

補足:注文書には収入印紙を貼る必要はない

なお、申込書・注文書・発注書・依頼書等には、通常、収入印紙を貼る必要はありません。

[平成29年4月1日現在法令等]

契約とは、申込みとその申込みに対する承諾によって成立するものですから、契約の申込み事実を証明する目的で作成される単なる申込書、注文書、依頼書等(以下「申込書等」という。)は、通常、課税対象にはなりません。(以下省略)

ただし、注文書を送付しただけで自動的に契約が成立する手続きとした場合、その申込書・注文書・発注書は、契約書扱いとなり、課税文書となる可能性があります。

この他、収入印紙が必要な注文書につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。





注文請書・受注書への収入印紙の貼り方や消印(≠割印)の押し方は?

注文請書・受注書の収入印紙の貼り方・消印の押し方は契約書と同じ

注文請書・受注書の収入印紙の貼り方・消印の押し方は、契約書と同じです。

具体的には、以下の図のように押します。

収入印紙は貼る場所はどこでも構いませんが、一般的には、注文請書・受注書の左上または右上の余白に貼ることが多いです。

注文請書・受注書の収入印紙はいつ貼る?

また、注文請書・受注書の収入印紙を貼る時期は、委託者に交付する時までとなります。

印紙税の課税文書は、「課税文書の作成の時まで」に、「印紙税を納付しなければならない」とされています(印紙税法第8条)。

印紙税法第8条(印紙による納付等)

1 課税文書の作成者は、次条から第12条までの規定の適用を受ける場合を除き、当該課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額の印紙(以下「相当印紙」という。)を、当該課税文書の作成の時までに、当該課税文書にはり付ける方法により、印紙税を納付しなければならない。

2 課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙をはり付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。

注文請書・受注書は、印紙税法では「相手方に交付する目的で作成される課税文書」(印紙税法基本通達第44条)とされ、その「作成の時」とは、「当該交付の時」とされています(同上)。

このため、注文書・注文請書は、相手方に交付する時、具体的には、手渡しの場合は渡す時まで、郵送の場合は発送の時までには、収入印紙を貼って消印を押さなければなりません。

この他、収入印紙への消印(≠割印)の押し方の詳細な解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

契約書に貼る印紙(収入印紙)への消印(≠割印)のしかた・場所は?

注文請書・受注書には委託者の消印は必要ない

なお、注文請書・受注書には、委託者の消印は必要ありません。

収入印紙への消印の押印については、「課税文書の作成者」が「判明に印紙を消さなければならない」となっています(印紙税法第8条)。

印紙税法第8条(印紙による納付等)

1 課税文書の作成者は、次条から第12条までの規定の適用を受ける場合を除き、当該課税文書に課されるべき印紙税に相当する金額の印紙(以下「相当印紙」という。)を、当該課税文書の作成の時までに、当該課税文書にはり付ける方法により、印紙税を納付しなければならない。

2 課税文書の作成者は、前項の規定により当該課税文書に印紙をはり付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない。

すでに述べたとおり、課税文書である注文請書・受注書の作成者は、受託者であって委託者ではありません。

このため、委託者による消印は、注文請書・受注書には不要です。

なお、これは共同で作成される契約書であっても、一方の契約書当事者だけが押印すれば足ります(印紙税法基本通達第64条)。

印紙税法基本通達第64条(共同作成の場合の印紙の消印方法)

2以上の者が共同して作成した課税文書にはり付けた印紙を法第8条《印紙による納付等》第2項の規定により消す場合には、作成者のうちの一の者が消すこととしても差し支えない。





高額な印紙税が発生する場合は基本契約書に負担を明記する

注文請書・受注書の印紙税は折半となる可能性もある

このように、注文請書・受注書に収入印紙を貼らなければならないのは受託者の側です。

ただし、その印紙税は、委託者と受託者の双方が折半して負担しなければならない可能性もあります。

というのも、民法では、原則として、契約に関する費用は、契約当事者の等分負担となっています。

民法第558条(売買契約に関する費用)

売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。

民法第559条(有償契約への準用)

この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

ここでいう「契約に関する費用」というのは、契約の締結に必要な費用であって、債務の弁済に必要な費用(民法第485条)ではありません。

【意味・定義】契約に関する費用とは?

契約に関する費用(民法第558条)とは、契約の締結に必要な費用をいう。

高額な印紙税が発生する場合は負担者を明記する

このように、収入印紙を貼ることそのものの義務は、印紙税法により受託者に課されていますが、民法の原則どおりであれば、印紙税の負担については、折半となる可能性があります。

このため、委託者としては、高額な印紙税が発生する取引の場合、注文請書の印紙税については、受託者が負担する旨を明記しておくべきです。

すでに述べた民法第558条は任意規定であるため、こうした特約は有効となります。

【意味・定義】任意規定とは?

任意規定とは、ある法律の規定と異なる合意がある場合に、その合意のほうが優先される法律の規定をいう。

特に、建設工事請負契約や製造請負契約などの注文請書は2号文書に該当しますが、これらは請負の代金が大きくなると、印紙税の金額も多くなります。

このため、基本契約書において、念のため、注文請書の印紙税の負担について、明記しておきましょう。

【意味・定義】基本契約(取引基本契約)とは?

基本契約とは、継続的な売買契約、請負契約、準委任契約の取引の基本となる、個々の取引における共通した条項を規定した契約をいう。取引基本契約ともいう。





注文請書・受注書の委託者が印紙税に負担させることもできる

注文請書・受注書の印紙税を委託者の負担とする特約は有効

ちなみに、注文請書・受注書の印紙税を委託者の負担とすることもできます。

すでに述べたとおり、印紙税等の契約に関する費用の折半に関する民法第558条は任意規定です。

このため、この民法第558条とは異なる特約は有効となります。

この場合、業務委託契約の報酬・料金・委託料とは別に、またはこれらの一部として、印紙税の金額についても規定します。

そのうえで、委託者は、受託者に対し、これらを合計した金額を支払うこととなります。

注文請書・受注書に収入印紙を貼るのはあくまで受託者

なお、すでに述べたとおり、印紙税法により、収入印紙を貼り、消印を押さなければならないのは、あくまで受託者です。

このため、委託者が注文請書・受注書に収入印紙を貼り、消印を押した場合、厳密には印紙税法に違反することとなります。

ただし、印紙税法の規定通りの金額の印紙税が納税されている場合は、よほど悪質な場合を除いて、違法行為とみなされることは無いと思われます。

やむを得ず、委託者が注文請書・受注書に収入印紙を貼り、消印を押す必要がある場合は、こうした印紙税の納税を委託する規定を契約書に明記しておきましょう。





印紙税の節税は電子契約サービスがおすすめ

印紙税の節税には、電子契約サービスの利用がおすすめです。

というのも、電子契約サービスは、他の方法に比べて、デメリットがほとんど無いからです。

印紙税を節税する方法は、さまざまあります。

具体的には、以下のものが考えられます。

印紙税を節税する方法
  1. コピーを作成する:原本を1部のみ作成し、一方の当事者のみが保有し、他方の当事者はコピーを保有する。
  2. 契約形態を変更する:節税のために準委任契約のような非課税の契約にする。
  3. 7号文書を2号文書・1号文書に変更する:取引基本契約に初回の注文書・注文請書や個別契約を綴じ込むことで7号文書から2号文書・1号文書に変える。

しかし、これらの方法には、以下のデメリットがあります。

印紙税の節税のデメリット
  • コピーを作成する:契約書のコピーは、原本に比べて証拠能力が低い。
  • 契約形態を変更する:節税のために契約形態を変えるのは本末転倒であり、節税の効果以上のデメリットが発生するリスクがある。
  • 7号文書を2号文書・1号文書に変更する:7号文書よりも印紙税の金額が減ることはあるものの、結局2号文書・1号文書として課税される。

これに対し、電子契約サービスは、有料ではあるものの、その料金を上回る節税効果があり、上記のようなデメリットがありません。

電子契約サービスのメリット
  1. 電子契約サービスを利用した場合、双方に証拠として電子署名がなされた契約書のデータが残るため、コピーの契約書よりも証拠能力が高い。
  2. 電子契約サービスは印紙税が発生しないため、印紙税を考慮した契約形態にする必要がない。
  3. 電子契約サービスは印紙税が発生しないため、7号文書に2号文書や1号文書を同轍する必要はなく、そもそも契約書を製本する必要すらない。

このように、印紙税の節税には、電子契約サービスの利用が、最もおすすめです。

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注文請書・受注書の収入印紙に関するよくある質問

注文請書・受注書の印紙税・収入印紙は、委託者・受託者のどちらが貼るものなのでしょうか?
注文請書・受注書の印紙税・収入印紙は、注文請書の作成者である受託者が貼らなければなりません。
注文請書・受注書の印紙税は誰が負担するのですか?
民法上、注文請書・受注書の印紙税は、委託者・受託者の折半となる可能性があります。