このページでは、業務委託契約の契約条項のうち、秘密保持義務・守秘義務(以下、まとめて「秘密保持義務」とします)について、簡単にわかりやすく解説しています。

企業間取引である業務委託契約では、公開・漏えいすると問題となり得る情報が開示されます。

こうした情報は、委託者・受託者の一方または双方が、相手方に対して開示することになります。

ところが、現在の民法を始めとして、一般的な業務委託契約に適用される法律には、秘密保持義務が規定されていません。

このため、業務委託契約では、情報の開示者は、情報の受領者に対して、秘密保持義務を課します。

特に、有用性が高い技術情報、ノウハウ、顧客情報などを開示する場合は、不正競争防止法の保護を受けるためにも、厳しい秘密保持義務を課す必要があります。

このページでは、こうした業務委託契約における秘密保持義務に関するポイントについて、詳しく解説します。

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秘密保持義務・守秘義務を課す目的は?

企業秘密を守るために秘密保持義務・守秘義務を課す

業務委託契約では、業務内容によって、さまざまな企業秘密(以下、「秘密情報」といいます。)が開示されます。

秘密情報は、委託者から受託者に開示される場合もありますし、受託者から委託者に開示される場合もあります。

秘密情報の具体例としては、以下のものなどあります。

秘密情報の具体例

  • 技術情報(特許取得前の発明など)
  • ノウハウ・営業秘密(マニュアルの記載内容など)
  • 顧客リスト
  • 個人情報

これらの情報は、第三者に開示されたり外部に漏洩すると、開示者にとって、損害の原因となります。

このため、秘密秘密の開示がともなう業務委託契約では、こうした企業秘密を守るために、秘密保持義務・守秘義務を規定します。

業務委託契約では法律上の秘密保持義務はない

なお、現在の民法や2020年に施行予定の改正民法でも、秘密保持義務・守秘義務の規定はありません。

また、法律で特に規定されていない限り、業務委託契約には、秘密保持義務・守秘義務は課されません。

このような事情があるため、秘密保持義務・守秘義務の規定がないと、企業秘密の漏えいを防ぐことはできません。

このため、企業間取引である業務委託契約には、必ず秘密保持義務・守秘義務を規定します。

ポイント

業務委託契約では企業秘密が開示されることが多いため、秘密保持義務の条項は非常に重要となる。

営業秘密の要件を満たす意味でも重要

秘密保持義務の規定は、秘密秘密が不正競争防止法上の営業秘密として保護されるためにも重要です。

営業秘密は、知的財産権の一種で、不正競争防止法第2条第6項に規定されています。

不正競争防止法第2条(定義)

(途中省略)

6 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。

(以下省略)

上記の定義にあるとおり、営業秘密に該当するには、次の3つの要件を満たす必要があります。

営業秘密の要件

次の3つの要件をすべて満たした情報は、営業秘密として保護される。

  • 【要件1】秘密管理性(「秘密として管理されている」)
  • 【要件2】有用性(「有用な技術上又は営業上の情報」)
  • 【要件3】非公知性(「公然と知られていない」)

秘密保持義務の規定は、上記の要件のうち、秘密管理性と非公知性の2つに関係します。

秘密保持義務を課すことは、秘密情報が秘密管理性と非公知性の要件を充たしていると判断される重要な要素となります。

ただし、内容によっては、秘密保持義務を課しているからといって、必ずしも秘密管理性と非公知生を満たしていると判断されるとは限りません。

このほか、営業秘密の定義につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

営業秘密の定義・要件・具体例とは?

また、業務委託契約における営業秘密につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

営業秘密(ノウハウ)の権利処理・秘密保持義務の重要性とは?

ポイント

秘密保持義務は、単に契約上の義務としてだけではなく、営業秘密の要件のひとつである、秘密管理性・非公知性を満たすためにも重要。

【意味・定義】秘密情報とは?

法律上は秘密情報の定義がない=契約で定義づける

秘密保持義務の条項では、秘密情報の定義を規定します。

法律上、「秘密情報」という用語の定義はありません。例外として、一部の法律では、「…業務に関して知り得た情報」のように、極めて曖昧な定義があるだけです。

このため、実際に情報が漏えいした場合、そもそも「秘密情報」の定義がないと、漏洩した情報が秘密情報かどうかを巡って、開示者と受領者の間で、主張・見解が対立します。

こうしたトラブルを防ぐためにも、なるべく、開示者と受領者で解釈が別々にならないよう、秘密情報を定義づける必要があります。

契約における秘密情報の4つの定義のしかた

さて、秘密情報の定義のしかたは、大きく分けて4種類あります。

4つの秘密情報の定義のしかた

  • 包括的形式:開示者が開示するすべての情報を秘密情報とする定義。
  • メタ形式(概念):概念によって秘密情報を特定する定義。
  • 媒体形式:情報の記録媒体によって秘密情報を特定する定義。
  • クレーム類似形式:特許出願の範囲(クレーム)のように、詳細かつ具体的に秘密情報を特定する定義。

これらの秘密情報の規定のしかた・書き方につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

秘密情報とは?意味・定義・規定のしかた・書き方について解説

秘密保持義務の3要素

情報開示・(狭義の)秘密保持義務・目的外使用の禁止

秘密保持義務には、次の3つの要素があります。

秘密保持義務の3要素

  • 秘密情報の開示
  • (狭義の)秘密保持義務と例外
  • 秘密情報の使用許諾・目的外使用の禁止

秘密情報の開示条項とは?

そもそも秘密保持義務は、秘密情報の開示が前提となります。

このため、契約の履行や業務の実施に秘密情報の開示が前提となる業務委託契約では、秘密情報の開示について規定します。

ポイントとなるのは、開示者側(主に委託者の側)に対して、どのように情報開示を義務づけるか、という点です。

秘密情報の開示条項につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

秘密情報の開示条項とは?規定のしかた・書き方についても解説

(狭義の)秘密保持義務とは?

(狭義の)秘密保持義務の条項は、秘密情報の受領者に対して、秘密情報の第三者への開示および漏えいを禁止する義務・条項です。

言うまでもなく、秘密保持義務に関連する契約条項では必須の条項であり、最も重要な条項です。

もっとも、(狭義の)秘密保持義務そのものは、シンプルであり、それほど難しい条項ではありません。

それよりも、秘密保持義務の例外のほうが、契約実務としては重要となります。

(狭義の)秘密保持義務につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

(狭義の)秘密保持義務と例外の条項とは?規定のしかた・書き方についても解説

目的外使用の禁止(秘密情報の使用許諾)とは?

秘密情報は、開示を受けただけでは、単に「認知」できるだけです。

秘密情報の受領者としては、開示を受けただけでは、秘密情報を勝手に使うことはできません。

このため、受領者としては、秘密情報の使用について、開示者の許諾を得る必要があります。

逆に、開示者としては、想定した使用のしかた以外で受領者が勝手に使用しないように、目的外の使用について禁止する必要があります。

秘密情報の使用許諾と目的外使用の禁止につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

秘密情報の使用許諾・目的外使用の禁止の条項とは?規定のしかた・書き方についても解説

秘密情報の管理についても規定する

秘密保持義務を規定する場合、単に秘密情報の漏えいを禁止しただけでは、実際に漏えいを防げるわけではありません。

秘密保持義務の条項や秘密保持契約の難しい点は、他の条項や契約と違って、どのように守らせるかを考えなければいけない点です。

このため、秘密保持義務の一部の契約条項として、受領者による情報管理について、具体的に契約書に明記することがあります。

こうした情報管理の条項につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

秘密情報の管理条項とは?規定のしかた・書き方についても解説

秘密情報の返却・廃棄・消去を規定する

なお、秘密情報は、開示だけではなく、返却・廃棄・消去についても規定する必要があります。

業務委託契約における秘密情報の返却・廃棄・消去のタイミングは、主に次の2つです。

秘密情報の返却・廃棄・消去のタイミング

  • 業務終了時または契約終了時
  • 開示者による請求があった時

秘密情報の返却・廃棄・消去は、受領者にとっては大きな負担となります。

このため、特に受領者の立場としては、契約条項の記載や、実際に返却・廃棄・消去ができるかどうかを含めて、慎重に検討しなければなりません。

この他、秘密情報の返却・廃棄・消去の契約条項につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

秘密情報の返却・廃棄・消去の条項とは?規定のしかた・書き方についても解説