このページでは、業務委託契約と労働者派遣契約との法的な違いについて解説します。

業務委託契約は、内容によっては、労働者派遣業法上の労働者派遣契約とみなされる可能性があります。

業務委託契約か労働者派遣契約かの判断は、実務上は、厚生労働省が定めた、いわゆる「37号告示」(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号))を基準として、判断します。

37号告示の詳しい解説につきましては、以下のページをご覧ください。

37号告示とは?(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準 )

業務委託契約が労働者派遣契約とみなされた場合、いわゆる「偽装請負」となり、労働者派遣契約違反となります。

このため、特に常駐型のように、委託者の事業所で業務をおこなう業務委託契約の場合、労働者派遣契約とみなされない内容の業務委託契約書を作成する必要があります。




業務委託契約と労働者派遣契約の違い一覧表

まず、業務委託契約と労働者派遣契約の違いについて、わかりやすく一覧表にしましたので、ご覧ください。

業務委託契約と労働者派遣契約の違い一覧表
業務委託契約労働者派遣契約
委託者・派遣先に提供されるもの請負契約:仕事の完成
(準)委任契約:委託業務の実施
派遣元の派遣労働者による労働力
単なる肉体労働の提供の可否単なる肉体労働を提供する業務委託契約は労働者派遣契約=偽装請負のリスクあり可能
業務内容のレベル受託者の企画・受託者の専門的技術・専門的技経験のいずれかにもとづく業務実施が必要特に派遣労働者による業務実施のレベルは問われない
受託者・派遣先に提供されるもの金銭(報酬・料金・委託料)+消費税金銭(料金)+消費税
適用される法律商法・会社法・独占禁止法・下請法・各種業法労働者派遣法・商法・会社法・独占禁止法
業務の遂行方法に関する指示受託者による指示派遣先による指示
業務の遂行に関する評価等に係る指示受託者による指示派遣元による指示・派遣先の協力
労働時間の指示受託者による指示派遣先による指示
残業・休日出勤の指示受託者による指示派遣元・派遣先の双方による指示
服務規律の決定・指示受託者による決定・指示派遣元・派遣先の双方による指示
労働者の配置の決定・変更受託者による決定・変更派遣先による決定・変更
事業用の資金の調達・使用受託者による調達・使用派遣先による調達・使用
事業主としての責任の負担受託者による負担派遣元・派遣先による負担(責任を負う相手による)
機械・設備・器材・材料・資材の調達受託者による調達派遣先による調達




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い1】委託者・派遣先に提供されるもの

業務委託契約と労働者派遣契約の違い1
業務委託契約労働者派遣契約
委託者・派遣先に提供されるもの請負契約:仕事の完成
(準)委任契約:委託業務の実施
派遣元の派遣労働者による労働力

委託者・派遣先に「提供されるもの」による契約の区分は難しい

請負型・(準)委任型の業務委託契約と労働者派遣契約で、受託者・派遣元の労働者から、委託者・派遣先に提供されるものは、次のとおりです。

提供されるもの
  • 請負型の業務委託契約:仕事の完成
  • (準)委任型の業務委託契約:委託業務の実施
  • 労働者派遣契約:派遣労働者による労働力

このように、法的な表現としては別々に表現できますが、契約の実態としては、明確に切り分けることが難しいものです。

例えば、製造業の工場で働く人によって提供される、「製品の部品を組立てる作業」が、上記の3つのどれに該当するかといえば、どれにも該当する可能性があります。

このため、単に「提供されるもの」によって、業務委託契約なのか、または労働者派遣契約なのかを区別することは非常に難しいです。

この区別の難しさが、偽装請負の温床となっています。




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い2】単なる肉体労働の提供の可否

業務委託契約と労働者派遣契約の違い2
業務委託契約労働者派遣契約
単なる肉体労働の提供の可否単なる肉体労働を提供する業務委託契約は労働者派遣契約=偽装請負のリスクあり可能

「単なる肉体労働の提供」=偽装請負

単なる肉体労働の提供は、民法上は、業務委託契約・労働者派遣契約のどちらでも可能です。ただ、労働者派遣法では、業務委託契約で単なる肉体労働の提供をする場合は、実質的には労働者派遣契約=偽装請負とみなされるリスクがあります。

というのも、労働者派遣業とそうでない事業の区分となる37号告示では、「単に肉体的な労働力を提供するものでないこと」(37号告示第2条第2号ハ)が、労働者派遣業ではない、適法な業務委託の事業とされる条件の1つだからです。




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い3】業務内容のレベル

業務委託契約と労働者派遣契約の違い3
業務委託契約労働者派遣契約
業務内容のレベル受託者の企画・受託者の専門的技術・専門的技経験のいずれかにもとづく業務実施が必要特に派遣労働者による業務実施のレベルは問われない。

独自企画・専門的技術・専門的経験がない=偽装請負

民法上は、業務委託契約・労働者派遣契約のどちらも、特に業務内容のレベルは問題にはなりません。

ですから、高度なレベルの業務内容でないからといって、契約が無効になることはありません。

ただ、労働者派遣法では、37号告示により、受託者が「自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理」(37号告示第2条第2号ハ(2))しないと、偽装請負とみなされるリスクがあります。




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い4】受託者・派遣先に提供されるもの

業務委託契約と労働者派遣契約の違い4
業務委託契約労働者派遣契約
受託者・派遣先に提供されるもの金銭(報酬・料金・委託料)+消費税金銭(料金)+消費税

いずれの支払いも消費税の課税対象かつ仕入控除税額の対象

業務委託契約の報酬・料金・委託料も、労働者派遣契約の料金も、通常はお金での支払いになります。

理屈のうえでは、業務委託契約の報酬は必ずしもお金でなくでもかまいませんが、一般的な企業間取引では、ほぼお金での支払いとなります。

また、業務委託契約の場合も、労働者派遣契約の場合も、支払いは消費税の課税対象であり、かつ、仕入控除税額の対象となります。

そういう意味では、これらの点は、ほとんど同じで、厳密には「違い」ではありません。

ポイント
  • 業務委託契約・労働者派遣契約ともに、対価の支払いはお金・消費税の課税対象・仕入控除税額の対象。このため、対価の支払いという点では、ほぼ同じで違いはない。

なお、これらの点は、消費税の課税対象ではなく、また、仕入控除税額とならない、直接雇用する労働者への給与とは大きな違いです。

こうした、「仕入控除税額の対象となる=消費税の節税となる」という性質が、労働者派遣が拡大したひとつの要因です。




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い5】適用される法律

業務委託契約と労働者派遣契約の違い5
業務委託契約労働者派遣契約
適用される法律商法・会社法・独占禁止法・下請法・各種業法労働者派遣法・商法・会社法・独占禁止法

意外と多い企業間の業務委託契約に適用される法律

企業間取引に適用される法律の具体例

一般的に、企業間の業務委託契約では、「契約自由の原則」が誤解されて、ほとんど法律が適用されないかのように思われがちです。

ところが、業務委託契約には、意外と多くの法律が適用されます。

具体的には、企業間の業務委託契約において適用される可能性がある法律は、以下のようなものがあります。

企業間の業務委託契約に適用される法律の具体例

業務委託契約では常に独占禁止法・下請法を意識する

一般的な業務委託契約では、独占禁止法が適用されます。

また、契約当事者の資本金の金額や取引内容によっては、下請法が適用されます。

企業間の業務委託契約では、資本金の金額に差がある場合は、下請法が適用される可能性があります。

このため、委託者・受託者どちらの立場であっても、業務委託契約では、相手方の資本金に注意し、また、独占禁止法と下請法の適用を意識してください。

下請法が適用される業務委託契約につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法が適用される4つの資本金・業務内容・業務委託契約のパターンとは?

また、業務委託契約における独占禁止法の問題につきましては、詳しくは、次のページをご覧ください。

業務委託契約では独占禁止法(不公正な取引方法・優越的地位の濫用)に注意

委託者の資本金が1,000万円以下でも「優越的地位の濫用」に該当する

なお、委託者側の資本金が1,000万円以下の場合は、下請法は適用されません。

だからといって、委託者の側は油断してはいけませんし、受託者の側も諦めてはいけません。

下請法は、そもそも独占禁止法の「優越的地位の濫用」をより具体化した特別法に過ぎません。

このため、単に形式的に資本金の要件を満たしていない委託者によって、不当な業務委託契約が結ばれている場合は、独占禁止法の「優越的地位の濫用」に該当します。

なお、優越的地位の濫用につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

下請法とは?中小零細企業・個人事業者・フリーランス=業務委託契約の受託者の味方の法律

労働者派遣契約では主に労働者派遣法に注意する

派遣元はもとより派遣先も注意する

労働者派遣契約では、当然ながら、労働者派遣契約を直接規制している労働者派遣法に注意する必要があります。

この点について、派遣先の中には、派遣業者である派遣元だけが労働者派遣法に気をつければいい、と誤解している向きもあるようですが、そうではありません。

労働者派遣法は、あくまで派遣労働者を保護している法律であり、派遣先も規制の対象です。

ですから、派遣先も、労働者派遣法には注意する必要があります。

商法・会社法・独占禁止法も適用される

また、労働者派遣契約では、労働者派遣法だけが適用される、と誤解されがちですが、他の法律も適用されます。

後述のとおり、民法も適用されますし、商法や会社法も適用されます。

ただ、これらの法律は、労働者派遣契約の契約内容に直接関わることは、まずありません。

また、独占禁止法も労働者派遣契約において適用される法律です。

特に「不公正な取引方法」に該当するようなことがないよう、注意する必要があります。

民法・知的財産権法などは共通して適用される

なお、契約の一般的な通則が規定されている民法は、業務委託契約と労働者派遣契約の両者に共通して適用されます。

ただし、適用される個別の規定は、ほとんどの場合は業務委託契約にとって重要であり、労働者派遣契約ではあまり重要ではありません。

また、同様に、著作権法、特許法、不正競争防止法などの知的財産権に関する法律も、共通して適用されます。

特に、労働者派遣法では、秘密保持義務の規定がありません。

このため、派遣先としては、一般的な業務委託契約と同様に、秘密保持契約を結ばなければ、社内の機密情報(特に営業秘密)が漏洩する可能性があります。




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い6】業務の遂行方法に関する指示

業務委託契約と労働者派遣契約の違い6
業務委託契約労働者派遣契約
業務の遂行方法に関する指示受託者による指示派遣先による指示

「指揮命令」は業務委託契約では受託者・労働者派遣契約では派遣先

業務委託契約で委託者から受託者の労働者に対する指揮命令・指示は偽装請負

業務委託契約では、受託者の労働者に対する指揮命令は、受託者自身がするのであって、委託者がするのではありません。

これに対し、労働者派遣契約では、派遣労働者に対する指揮命令は、派遣先がします。

この点の違いが、業務委託契約と労働者派遣契約の決定的に大きな違いです。

なお、業務委託契約において、委託者が受託者の労働者を直接指揮命令してしまうと、実質的には労働者派遣契約=偽装請負とみなされるリスクがあります。

というのも、37号告示第2条第1号イ(1)では、適法な業務委託契約の条件のひとつとして、「労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと」とあるからです。

例外として委託者がしてもいい指揮命令・指示とは?

なお、一部の指揮命令・指示は、例外として認められることがあります。

具体的には、以下のとおりです。

適法な指揮命令・指示の具体例
  • 災害時等の緊急時における受託者の労働者に対する指示(疑義応答集第2集)
  • (車両管理業務委託契約の場合)委託者側で緊急に別の用務先に行く必要が生じた場合における受託者の労働者に対する指示(同上)
  • 法令遵守のために必要な指示(同上)
  • 業務手順等の指示(同上)
指揮命令・指示ではない行為の具体例
  • 委託者と受託者の労働者との日常的な会話(疑義応答集第1集)
  • (通信回線の営業代行契約・代理店契約等の場合)委託者から受託者の労働者に対する回線工事のスケジュール等の情報提供(疑義応答集第2集)
  • (車両管理業務委託契約の場合)委託者から受託者の労働者に対する用務先での停車位置や待機場所、用務先からの出発時間の伝達(同上)
  • 打ち合わせへの受託者の労働者の同席(同上)
  • 委託者による受託者の管理責任者に対する電子メールを送信した場合にける受託者の労働者に対する(CC等による)電子メールの送信(同上)
  • 委託者側の開発責任者と受託者側の開発担当者間のコミュニケーション(疑義応答集第3集)
  • (アジャイル開発型のシステム・アプリ等開発契約の場合)開発チーム内のコミュニケーション(同上)
  • (同上)会議や打ち合わせ等への参加(同上)
  • (同上)委託者による受託者の開発担当者の技術・技能の確認・スキルシートの提出を求める行為(同上)

なお、これらには、一部を除いて詳細で厳しい前提や例外があるため、これらに該当しそうな行為であっても、安易におこなってはなりません。

こうした委託者による適法な指揮命令・指示の例外の解説につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

【偽装請負対応】指揮命令・指示の例外は?どこまでならできる?




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い7】業務の遂行に関する評価等に係る指示

業務委託契約と労働者派遣契約の違い7
業務委託契約労働者派遣契約
業務の遂行に関する評価等に係る指示受託者による指示派遣元による指示・派遣元の協力

業務委託契約では受託者・労働者派遣契約では派遣先(派遣元の協力)

業務委託契約では受託者の労働者の人事評価は受託者自身がする

業務委託契約では、受託者の労働者に対する人事評価は、受託者自身がするのであって、委託者がするのではありません。

もちろん、受託者が、自己の労働者の業務処理に関する情報提供を委託者に求めるのは差し支えありません。

いずれにせよ、受託者の労働者の人事評価をおこなうのは、最終的には、受託者自身でなくてはいけません。

なお、受託者の労働者の人事評価を委託者がおこなうと、実質的には労働者派遣契約=偽装請負とみなされるリスクがあります。

というのも、37号告示第2条第2号イ(1)では、適法な業務委託契約の条件のひとつとして、「労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと」とあるからです。

労働者派遣契約では派遣労働者の人事評価は派遣元がする

派遣元は派遣労働者の「均等待遇の確保」をしなければならない

労働者派遣契約では、派遣労働者の人事評価は、派遣元がすることになります。

特に、賃金に関しては、労働者派遣法第30条の3第1項により、不意合理な待遇が禁止されています。

労働者派遣法第30条の3(不合理な待遇の禁止等)

1 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において、当該派遣労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

2 派遣元事業主は、職務の内容が派遣先に雇用される通常の労働者と同一の派遣労働者であつて、当該労働者派遣契約及び当該派遣先における慣行その他の事情からみて、当該派遣先における派遣就業が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該派遣先との雇用関係が終了するまでの全期間における当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、正当な理由がなく、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する当該通常の労働者の待遇に比して不利なものとしてはならない。

派遣先も派遣労働者の評価等に協力しなければばらない

では、派遣先は、派遣労働者の評価について、何もしなくてもいいかといえば、そうではありません。

もちろん、最終的な派遣労働者の人事評価は派遣元がすることにはなりますが、派遣先は、この人事評価に協力しなければなりません。

この点については、労働者派遣法第40条第5項に規定があります。

労働者派遣法第40条(適正な派遣就業の確保等)

(第1項から第4項まで省略)

5 派遣先は、第30条の2、第30条の3、第30条の4第1項及び第31条の2第4項の規定による措置が適切に講じられるようにするため、派遣元事業主の求めに応じ、当該派遣先に雇用される労働者に関する情報、当該派遣労働者の業務の遂行の状況その他の情報であって当該措置に必要なものを提供する等必要な協力をするように配慮しなければならない。




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い8】労働時間の指示

業務委託契約と労働者派遣契約の違い8
業務委託契約労働者派遣契約
労働時間の指示受託者による指示派遣先による指示

業務委託契約では受託者・労働者派遣契約では派遣先

業務委託契約では、受託者の労働者の労働時間は、受託者自身が決定するのであって、委託者がするのではありません。

これに対し、労働者派遣契約では、派遣労働者の労働時間は、派遣先が決定します。

業務委託契約において、委託者が受託者の労働者の労働時間を決定してしまうと、実質的には労働者派遣契約=偽装請負とみなされるリスクがあります。

というのも、37号告示第2条第1号ロ(1)では、適法な業務委託契約の条件のひとつとして、「労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと」とあるからです。




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い9】残業・休日出勤の指示

業務委託契約と労働者派遣契約の違い9
業務委託契約労働者派遣契約
残業・休日出勤の指示受託者による指示派遣元・派遣先の双方による指示

業務委託契約では受託者・労働者派遣契約では派遣先

業務委託契約では、受託者の労働者の残業・休日出勤は、受託者自身が決定するのであって、委託者が決定するのではありません。

これに対し、労働者派遣契約では、派遣労働者の残業・休日出勤は、(日雇い派遣を除けば)派遣先が決定します。

業務委託契約において、委託者が受託者の労働者の残業・休日出勤を決定してしまうと、実質的には労働者派遣契約=偽装請負とみなされるリスクがあります。

というのも、37号告示第2条第1号ロ(2)では、適法な業務委託契約の条件のひとつとして、「労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと」とあるからです。




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い10】服務規律の決定・指示

業務委託契約と労働者派遣契約の違い10
業務委託契約労働者派遣契約
服務規律の決定・指示受託者による決定・指示派遣元・派遣先の双方による指示

業務委託契約では受託者・労働者派遣契約では派遣先

業務委託契約では委託者が服務規律を決めてはいけない

業務委託契約では、受託者の労働者の事業所への入退場に関する規律、服装、職場秩序の保持、風紀維持のための規律等、いわゆる服務規律は、受託者自身が決定するのであって、委託者が決定するのではありません。

これに対し、労働者派遣契約では、派遣先の事業所における、派遣労働者の服務規律は、派遣先が決定します。

業務委託契約において、委託者が受託者の労働者の服務規律を決定してしまうと、実質的には労働者派遣契約=偽装請負とみなされるリスクがあります。

というのも、37号告示第2条第1号ハ(1)では、適法な業務委託契約の条件のひとつとして、「労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと。」とあるからです。

合理的な理由があれば委託者と同じ服務規律でも差し支えない

ただ、特に製造業の現場では、業務委託契約とはいえ、委託者と受託者とが、同様の服務規律を定める必要がある場合があります。

この点について、作業の効率化、施設の管理、安全衛生管理の必要など、合理的な理由がある場合は、委託者と受託者が同様の服務規律を定めても、このことをもって、直ちに労働者派遣契約とは判断されません。

問11 請負業務の実施に当たり、発注者側の作業効率化や施設管理の必要上、発注者の就業時間・休日、服務規律、安全衛生規律と同等の内容で、請負事業主が自己の労働者を指揮命令することは、請負業務として問題がありますか。
請負業務では、請負事業主は自己の就業規則、服務規律等に基づき、労働者を指揮命令して業務を遂行する必要があります。
ただし、例えば、請負事業主の業務の効率化、各種法令等による施設管理や安全衛生管理の必要性等合理的な理由がある場合に、結果的に発注者と同様の就業時間・休日、服務規律、安全衛生規律等となったとしても、それのみをもって直ちに労働者派遣事業と判断されることはありません。




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い11】労働者の配置の決定・変更

業務委託契約と労働者派遣契約の違い11
業務委託契約労働者派遣契約
労働者の配置の決定・変更受託者による決定・変更派遣先による決定・変更

業務委託契約では受託者・労働者派遣契約では派遣先

業務委託契約では委託者が受託者の労働者の配置を決定・変更してはいけない

業務委託契約では、受託者の労働者の配置は、受託者自身が決定・変更するのであって、委託者が決定・変更するのではありません。

これに対し、労働者派遣契約では、派遣労働者の配置は、派遣先が決定・変更します。

業務委託契約において、委託者が受託者の労働者の配置を決定・変更してしまうと、実質的には労働者派遣契約=偽装請負とみなされるリスクがあります。

というのも、37号告示第2条第1号ハ(2)では、適法な業務委託契約の条件のひとつとして、「労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと」とあるからです。

派遣先が決定・変更できる配置はあくまで労働者派遣契約の範囲内

労働者派遣契約で、派遣先が派遣労働者の配置を決定・変更できるとはいえ、何の制限もなく自由に配置を決定・変更できるわけではありません。

当然ながら、労働者派遣契約において規定された「派遣労働者が従事する業務の内容」(労働者派遣法第26条第1項第1号)の範囲内でなければ、契約違反となります。

また、いわゆる「事前面接」や「指名」のような、あらかじめ派遣労働者を特定するような行為も禁止されています。

労働者派遣法第26条(契約の内容等)

(第1項から第5項まで省略)

6 労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。

(以下省略)

この規定では、「努めなければならない」という、いわゆる「努力義務」の規定となっていますが、実際には、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(いわゆる派遣先ガイドライン)の第2の3で明確に禁止されています。

3 派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止

派遣先は、紹介予定派遣の場合を除き、派遣元事業主が当該派遣先の指揮命令の下に就業させようとする労働者について、労働者派遣に先立って面接すること、派遣先に対して当該労働者に係る履歴書を送付させることのほか、若年者に限ることとすること等派遣労働者を特定することを目的とする行為を行わないこと。なお、派遣労働者又は派遣労働者となろうとする者が、自らの判断の下に派遣就業開始前の事業所訪問若しくは履歴書の送付又は派遣就業期間中の履歴書の送付を行うことは、派遣先によって派遣労働者を特定することを目的とする行為が行われたことには該当せず、実施可能であるが、派遣先は、派遣元事業主又は派遣労働者若しくは派遣労働者となろうとする者に対してこれらの行為を求めないこととする等、派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止に触れないよう十分留意すること。




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い12】事業用の資金の調達・使用

業務委託契約と労働者派遣契約の違い12
業務委託契約労働者派遣契約
事業用の資金の調達・使用受託者による調達・使用派遣先による調達・使用

業務委託契約では受託者・労働者派遣契約では派遣先

業務委託契約では、受託者の運転資金などの事業用の資金は、受託者自身が調達し、使用するのであって、委託者が調達し、使用するのではありません。

同様に、労働者派遣契約では、派遣先の運転資金などの事業用の資金は、派遣先が調達し、使用します。

この点について、業務委託契約において、受託者の事業用の資金を実質的に委託者が調達している場合は、実質的には労働者派遣契約=偽装請負とみなされるリスクがあります。

というのも、37号告示第2条第2号イでは、適法な業務委託契約の条件のひとつとして、「業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること」とあるからです。

例えば、受託者が委託者の完全子会社のような場合は、注意が必要です。




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い13】事業主としての責任の負担

業務委託契約と労働者派遣契約の違い13
業務委託契約労働者派遣契約
事業主としての責任の負担受託者による負担派遣元・派遣先による負担(責任を負う相手による)

業務委託契約では受託者・労働者派遣契約では責任を負う相手次第

業務委託契約では受託者が責任を負わなければならない

業務委託契約では、業務の処理について何らかの損害等が発生した場合、その責任については、受託者自身が負担するのであって、委託者が負担するのではありません。

これは、委託者に対して損害を与えた場合と、第三者に対して損害を与えた場合の双方が該当します。

この点について、業務委託契約において、本来は受託者が負うべき責任について、委託者が負い、または、免責する場合は、実質的には労働者派遣契約=偽装請負とみなされるリスクがあります。

というのも、37号告示第2条第2号ロでは、適法な業務委託契約の条件のひとつとして、「業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと」とあるからです。

労働者派遣契約では最終的には派遣元が責任を負う

労働者派遣契約では、派遣労働者が第三者に対して損害を与えた場合は、まずは派遣先がその第三者に対し、責任を負います。

そのうえで、派遣先から派遣元に対して、損害賠償請求などの責任を追求します。

また、派遣労働者が派遣先に対して損害を与えた場合、派遣元が派遣先に対して、その責任を負います。

業務委託契約とは違って、派遣先が派遣元の責任を負ったり、派遣元を免責したとしても、少なくとも労働者派遣法では問題となりません。




【業務委託契約と労働者派遣契約の違い14】機械・設備・器材・材料・資材の調達

業務委託契約と労働者派遣契約の違い14
業務委託契約労働者派遣契約
機械・設備・器材・材料・資材の調達受託者による調達派遣先による調達

業務委託契約では受託者・労働者派遣契約では派遣先

業務委託契約では、業務処理に必要な機械・設備・器材・材料・資材は、受託者自身が調達するのであって、委託者が調達するのではありません。

同様に、労働者派遣契約では、派遣先の機械・設備・器材・材料・資材は、派遣先が調達します。

この点について、業務委託契約において、業務処理に必要な機械・設備・器材・材料・資材(業務上必要な簡易な工具を除く)を委託者が調達している場合は、実質的には労働者派遣契約=偽装請負とみなされるリスクがあります。

というのも、37号告示第2条第2号ハ(1)では、適法な業務委託契約の条件のひとつとして、「自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること」とあるからです。




特に常駐型の業務委託契約は偽装請負になりやすい

労働者派遣法では契約当事者である企業は規制される立場

以上のように、業務委託契約と労働者派遣契約では、理論上は大きな違いがあります。ただ、実態としては明確に区分するのが難しい場合も多いです。

このため、契約当事者の意図としては業務委託契約だったつもりが、実態としては労働者派遣契約=偽装請負となっていることがあります。

当事者の合意が優先される一般的な契約とは違って、労働者派遣契約は、派遣労働者の保護が最も優先されます。

このため、契約当事者が業務委託契約として合意していたとしても、実態が労働者派遣契約である場合は、当事者の合意に関係なく、労働者派遣法違反となってしまいます。

常駐型のソフトウェア・システム・アプリ開発業務委託契約では特に要注意

この点について、特に問題となるのが、常駐型の業務委託契約、中でもアジャイル型開発のソフトウェア・システム・アプリ開発業務委託契約です。

【意味・定義】アジャイル開発とは?

アジャイル開発とは、「開発の途中で仕様や設計の変更があるとの前提に立って、最初から厳密な仕様を決めずにおおよその仕様だけで開発に着手し、小単位での『実装→テスト実行』を繰り返しながら、徐々に開発を進めていく手法を指す。」契約形態は、主に準委任契約となる。

アジャイル型開発のソフトウェア・システム・アプリ開発業務委託契約は、契約締結時に作業内容(要件定義)が固まりきっておらず、開発途中で変更されることが前提となっています。

このため、つい委託者から受託者の労働者に対して、直接の指揮命令・指示がありがちです。

この指揮命令・指示によって偽装請負となり、労働者派遣法に違反してしまいます。

システムエンジニアリングサービス契約(SES契約)は偽装請負のリスクが高い

なお、いわゆるシステムエンジニアリングサービス契約(SES契約)は、アジャイル開発型のソフトウェア・システム・アプリ開発業務委託契約よりも、さらに偽装請負のリスクが高いです。

【意味・定義】システムエンジニアリングサービス契約・SES契約とは?

システムエンジニアリングサービス契約(SES契約)とは、プログラムのコーディング・プログラミングの作業のみを提供する準委任契約型の契約をいう。

システムエンジニアリングサービス契約(SES契約)は、その性質上、作業の指示を作業の都度出さなければなりません。

これを適法におこなうためには、少なくとも委託者・受託者の双方の管理者が偽装請負に関する知識を身につけたうえで、厳格なプロジェクトマネジメントやオペレーションをしなければなりません。

しかし、実際のシステム開発の現場では、そのような状況にならないことが多いです。




業務委託契約と労働者派遣契約のどれに該当するかは37号告示で判断する

労働者派遣契約と適法な業務委託契約の判断基準については、厚生労働省がガイドラインを出しています。

このガイドラインが、いわゆる「37号告示(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)」です。

【意味・定義】37号告示とは?

37号告示とは、労働者派遣事業と請負等の労働者派遣契約にもとづく事業との区分を明らかにすることを目的とした厚生労働省のガイドラインである「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)」をいう。

適法な業務委託契約とするには、この37号告示に準拠して、9つの条件を満たした業務委託契約書を作成しなければなりません。

業務委託契約書を作成する理由

偽装請負(=労働者派遣契約・労働者派遣法違反)ではなく、適法な業務委託契約とするためには、37号告示に準拠した適法な業務委託契約書が必要となるから。

また、実態としても、適法な業務委託契約となるようなオペレーションとします。

この点につきましては、37号告示のチェックリストにおいて解説しておりますので、詳しくは、以下のページをご覧ください。

業務委託契約が偽装請負(労働者派遣法違反)にならないチェックリスト【37号告示対応版】




業務委託契約と労働者派遣契約の違いに関するよくある質問

業務委託契約と労働者派遣契約には、どのような違いがありますか?
業務委託契約と労働者派遣契約には、次の点で違いがあります。

  • 委託者・派遣先に提供されるもの
  • 単なる肉体労働の提供の可否
  • 業務内容のレベル
  • 受託者・派遣先に提供されるもの
  • 適用される法律
  • 業務の遂行方法に関する指示
  • 業務の遂行に関する評価等に係る指示
  • 労働時間の指示
  • 残業・休日出勤の指示
  • 服務規律の決定・指示
  • 労働者の配置の決定・変更
  • 事業用の資金の調達・使用
  • 事業主としての責任の負担
  • 機械・設備・器材・材料・資材の調達
労働者派遣契約と適法な業務委託契約との区分の判断基準は、どのようになっていますか?
労働者派遣契約と適法な業務委託契約とは、厚生労働省が定める、いわゆる「37号告示」により判断されます。