このページでは、建設業者に向けて、一括下請負の定義とその例外について解説しています。

建設業法第22条では、建設業者による一括下請負の発注と、建設業を営む者による一括下請負の受注が禁止されています。

ただし、一部の建設工事については、例外として一括下請負が適法なものとして認められています。

なお、入札契約適正化法第14条による、公共工事について、例外なく一括下請負が禁止されています。

このページでは、こうした一括下請負とその例外について、開業20年・400社以上の取引実績がある管理人が、わかりやすく解説していきます。

このページでわかること
  • 一括下請負の定義
  • 一括下請負が禁止されている理由
  • 一括下請負に該当する条件
  • 一括下請負に該当しても例外として違法とならない条件




一括下請負(読み方:いっかつしたうけおい)の禁止とは?

一括下請負=工事の「丸投げ」

建設工事請負契約では、建設工事の「丸投げ」のことを「一括下請負」(読み方:いっかつしたうけおい)といいます。

【意味・定義】一括下請負(建設業法)とは?

建設業法における一括下請負とは、建設業者が、その請負った建設工事(全部、主要部分、独立して機能する一部分のいずれか)を一括して他人に請け負わせることをいう。

厳密には、工事の全部、主要部分、独立して機能する一部分のいずれかの建設工事(詳細は後述)が、一括下請負の規制対象となります。

この一括下請負は、建設業法第22条により、原則として禁止されています。

建設業法第第22条(一括下請負の禁止)

1 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。

2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。

3 前2項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。

4 (省略)

一括下請負が禁止されている理由

一括下請負が禁止されている理由は、国土交通省が一括下請負の禁止に係る判断基準の明確化した「平成28年10月14日国土建第275号」の記載内容によると、次のとおりです。

一括下請負が禁止されている理由
  • 発注者が建設工事の請負契約を締結するに際して建設業者に寄せた信頼を裏切ることになるから。
  • 一括下請負を認めた場合、中間搾取、工事の質の低下、労働条件の悪化、実際の工事施工の責任の不明確化等が発生する可能性があるから。
  • 一括下請負を認めた場合、施工能力のない商業ブローカー的不良建設業者の輩出を招く可能性があるから。





禁止される一括下請負に該当する条件とは?

禁止される一括下請負に該当する条件は、以下のとおりです。

一括下請負が禁止される条件
    1. 注文する側が「建設業者」であること。
    2. 建設業者が「請け負った建設工事」であること。
    3. 請け負わせる建設工事が「一括して」いること。
    4. 建設工事を「請け負わせて」いること。

この点について、前述の「平成28年10月14日国土建第275号」の記載内容と併せて、解説していきます。

なお、これらの条件を満たしていたとしても、例外として、一括下請負が認められる場合(後述)もあります。





一括下請負の条件1:注文者が「建設業者」であること。

一括下請負の禁止の条件の1つめが、注文者が建設業者であることです。

建設業法第第22条(一括下請負の禁止)

1 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。

2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。

3 (省略)

建設業法第22条第1項では、一括下請負の発注が禁止されている契約当事者は、建設業者(建設業法第2条第2項)です。

【意味・定義】建設業者とは?

建設業者とは、建設業の許可を受けて建設業(元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業)を営む者をいう。

このため、建設業の許可を受けていない建設業の業者による一括下請負の発注は、禁止されていません。

他方で、建設業法第22条第2項では、建設業を営む者による一括下請負の受注が禁止されています。

【意味・定義】建設業を営む者とは?

建設業を営む者とは、建設業(元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業)を営む者をいい、建設業の許可を受けていない建設業を含む。

このため、一括下請負の受注は、建設業の許可の有無に関係なく、一律で禁止されています。





一括下請負の禁止の条件2:建設業者が「請け負った建設工事」であること

「請け負った」ものだけが対象

契約形態が準委任契約である場合は対象外

一括下請負の禁止の条件の2つめが、対象となる受注した工事が、建設業者が「請け負つた建設工事」であることです。

建設業法第第22条(一括下請負の禁止)

1 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。

2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。

3 (省略)

ここでいう「請け負つた」とは、請負契約のことを意味します。

【意味・定義】請負契約とは?

請負契約とは、請負人(受託者)が仕事の完成を約束し、注文者(委託者)が、その仕事の対価として、報酬を支払うことを約束する契約をいう。

民法第632条(請負)

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

つまり、一括下請負が禁止されるのは、建設工事請負契約により「請け負つた建設工事」となります。

【改正民法対応】建設工事請負契約とは?建設業法・雛形・約款・作成義務・印紙について解説

このため、契約形態準委任契約である建設業務委託契約として建設業者が受託した建設工事については、一括下請負の対象外となると思われます。

この他、建設業務委託契約につきましては、詳しくは、以下のページをご覧ください。

建設業の業務委託とは?請負との違いや準委任との関係も解説

「建設工事の完成を目的として締結する契約」は請負契約扱い

なお、建設業法第24条により、「委託その他いかなる名義をもつてするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約」は、建設工事請負契約とみなされます。

建設業法第24条(請負契約とみなす場合)

委託その他いかなる名義をもつてするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、建設工事の請負契約とみなして、この法律の規定を適用する。

このように、「建設工事の完成を目的」とした場合は、たとえ契約書のタイトルが「建設業務委託契約」や「建設工事業務委託契約」だったとしても、建設業法が適用されます。

「建設工事」が対象

また、建設業法における建設工事は、非常に広く定義づけられています。

【意味・定義】建設工事とは?

建設工事とは、土木建築に関する工事のうち、建設業法別表第一の上欄に掲げるものをいう。

建設業法別表第一
建設工事建設業
土木一式工事土木工事業
建築一式工事建築工事業
大工工事大工工事業
左官工事左官工事業
とび・土工・コンクリート工事とび・土工工事業
石工事石工事業
屋根工事屋根工事業
電気工事電気工事業
管工事管工事業
タイル・れんが・ブロツク工事タイル・れんが・ブロツク工事業
鋼構造物工事鋼構造物工事業
鉄筋工事鉄筋工事業
舗装工事舗装工事業
しゆんせつ工事しゆんせつ工事業
板金工事板金工事業
ガラス工事ガラス工事業
塗装工事塗装工事業
防水工事防水工事業
内装仕上工事内装仕上工事業
機械器具設置工事機械器具設置工事業
熱絶縁工事熱絶縁工事業
電気通信工事電気通信工事業
造園工事造園工事業
さく井工事さく井工事業
建具工事建具工事業
水道施設工事水道施設工事業
消防施設工事消防施設工事業
清掃施設工事清掃施設工事業
解体工事解体工事業

このため、建築・土木のいずれの場合であっても、およそ工事と名前がつくものは、すべて建設工事に該当します。





一括下請負の禁止の条件3:請け負わせる建設工事が「一括して」いること

「一括して」いる条件とは?

一括下請負の禁止の条件の3つめが、請け負わせる建設工事・請け負う建設工事が「一括して」いることです。

建設業法第第22条(一括下請負の禁止)

1 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。

2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。

3 (省略)

この「一括して」とは、「平成28年10月14日国土建第275号」によると、以下の条件を満たした場合を意味します。

【意味・定義】一括して(建設業法)とは?

建設業法第22条第1項の「一括して」とは、以下のいずれかの場合をいう。

  • 元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
  • 元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合

ここでいう「実質的に関与」をしているかどうかは、果たすべき役割を果たしているかどうかにより判断されいます。

この点については、元請(発注者から直接建設工事を請け負った建設業者)下請(元請け以外の者)によって、果たすべき役割が異なります(次項にて詳述)。

また、「一括下請負に該当するか否かの判断は、元請負人が請け負った建設工事一件ごとに行い、建設工事一件の範囲は、原則として請負契約単位で判断されます」(平成28年10月14日国土建第275号。詳細は後述)。

「実質的に関与」とは?

元請が果たすべき役割=実質的な関与

元請の実質的関与=果たすべき役割は、「施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等」として、それぞれ次に掲げる事項をすべておこなうことです。

一括下請負に該当しない元請の「実質的な関与」
  • (ⅰ)施工計画の作成:請け負った建設工事全体の施工計画書等の作成、下請負人の作成した施工要領書等の確認、設計変更等に応じた施工計画書等の修正
  • (ⅱ)工程管理:請け負った建設工事全体の進捗確認、下請負人間の工程調整
  • (ⅲ)品質管理:請け負った建設工事全体に関する下請負人からの施工報告の確認、必要に応じた立会確認
  • (ⅳ)安全管理:安全確保のための協議組織の設置及び運営、作業場所の巡視等請け負った建設工事全体の労働安全衛生法に基づく措置
  • (ⅴ)技術的指導:請け負った建設工事全体における主任技術者の配置等法令遵守や職務遂行の確認、現場作業に係る実地の総括的技術指導
  • (ⅵ)その他:発注者等との協議・調整、下請負人からの協議事項への判断・対応、請け負った建設工事全体のコスト管理、近隣住民への説明

元請の建設業の業者は、これらの事項をすべておこなう必要があることから、ひとつでもおこなっていない事項がある場合は、「実質的な関与」が無いとみなされ、一括下請負をしているものと判断されます。

下請が果たすべき役割=実質的な関与

下請(元請以外の建設業の業者)の実質的関与=果たすべき役割は、「施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等」それぞれ次に掲げる事項を主としておこなうことです。

一括下請負に該当しない下請の「実質的な関与」
  • (ⅰ)施工計画の作成:請け負った範囲の建設工事に関する施工要領書等の作成、下請負人が作成した施工要領書等の確認、元請負人等からの指示に応じた施工要領書等の修正
  • (ⅱ)工程管理:請け負った範囲の建設工事に関する進捗確認
  • (ⅲ)品質管理:請け負った範囲の建設工事に関する立会確認(原則)、元請負人への施工報告
  • (ⅳ)安全管理:協議組織への参加、現場巡回への協力等請け負った範囲の建設工事に関する労働安全衛生法に基づく措置
  • (ⅴ)技術的指導:請け負った範囲の建設工事に関する作業員の配置等法令遵守、現場作業に係る実地の技術指導
  • (ⅵ)その他:自らが受注した建設工事の請負契約の注文者との協議、下請負人からの協議事項への判断・対応、元請負人等の判断を踏まえた現場調整、請け負った範囲の建設工事に関するコスト管理、施工確保のための下請負人調整

下請の建設業の業者は、これらの事項を主としておこなう必要があることから、主としておこなっていない事項がある場合は、「実質的な関与」が無いとみなされ、一括下請負をしているものと判断されます。

なお、下請の業者が、請け負った建設工事と同一の種類の建設工事について、単一の業者と下請契約を締結するものについては、以下に掲げる事項をすべておこなうことです。

単一業者と工事下請負契約を締結する場合の下請の「実質的な関与」
  • 請け負った範囲の建設工事に関する、現場作業に係る実地の技術指導
  • 自らが受注した建設工事の請負契約の注文者との協議
  • 下請負人からの協議事項への判断・対応

単一の建設業の業者と同一の種類の建設工事下請負契約を締結する場合、下請の建設業の業者は、これらの事項をすべておこなう必要があることから、ひとつでもおこなっていない事項がある場合は、「実質的な関与」が無いとみなされ、一括下請負をしているものと判断されます。

「単に現場に監理技術者または主任技術者を置いているだけ」は一括下請負扱い

なお、建設業者は、工事現場に監理技術者や主任技術者を置かなければなりません(建設業法第26条)。

この点につき、単に現場に監理技術者・主任技術者を置いているだけでは、「実質的な関与」をおこなったことにはなりません。

同様に、現場に置く監理技術者・主任技術者は、直接的・恒常的な雇用関係が無ければなりません。

なお、建設業者は、建設業法第26条第1項及び第2項に基づき、工事現場における建設工事の施行上の管理をつかさどるもの(監理技術者又は主任技術者。以下単に「技術者」という。)を置かなければなりませんが、単に現場に技術者を置いているだけでは上記の事項を行ったことにはならず、また、現場に元請負人との間に直接的かつ恒常的な雇用関係を有する適格な技術者が置かれない場合には、「実質的に関与」しているとはいえないことになりますので注意してください。

よって、建設業者は、いわゆる正社員である監理技術者・主任技術者を工事現場に置き、かつ、単に置くだけでなく、工事現場において「実質的な関与」をさせなければ、一括下請負をしているものと判断されます。

一括下請負の判断は元請負人が請け負った建設工事一件ごと・その範囲は請負契約単位で判断

工事の全部・主要部分か一部分かによって判断が異なる

次に、一括下請負に該当するか否かの判断は、元請負人が請け負った建設工事一件ごとにおこなわれます。

そして、その建設工事一件の範囲は、原則として請負契約単位で判断されます。

そのうえで、他の業者に請け負わせる建設工事が、「建設工事の全部又はその主たる部分」か、「建設工事の一部分」かによって、判断基準が異なります。

【意味・定義】一括して(建設業法)とは?

建設業法第22条第1項の「一括して」とは、以下のいずれかの場合をいう。

  • 元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、請け負った建設工事の全部又はその主たる部分について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合
  • 元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事について、自らは施工を行わず、一括して他の業者に請け負わせる場合

建設工事の「主たる部分」を請け負わせる場合

建設工事の「主たる部分」を請け負わせる場合については、典型例・具体例として、以下のものが該当します。

(注1)「その主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合」とは、下請負に付された建設工事の質及び量を勘案して個別の建設工事ごとに判断しなければなりませんが、例えば、本体工事のすべてを一業者に下請負させ、附帯工事のみを自ら又は他の下請負人が施工する場合や、本体工事の大部分を一業者に下請負させ、本体工事のうち主要でない一部分を自ら又は他の下請負人が施工する場合などが典型的なものです。
(具体的事例)
① 建築物の電気配線の改修工事において、電気工事のすべてを1社に下請負させ、電気配線の改修工事に伴って生じた内装仕上工事のみを元請負人が自ら施工し、又は他の業者に下請負させる場合
② 戸建住宅の新築工事において、建具工事以外のすべての建設工事を1社に下請負させ、建具工事のみを元請負人が自ら施工し、又は他の業者に下請負させる場合

「建設工事の一部分」を請け負わせる場合

「建設工事の一部分」のうち、「他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事を一括して他の業者に請け負わせる場合」については、典型例・具体例として、以下のものが該当します。

(注2)「請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の建設工事を一括して他の業者に請け負わせる場合」とは、次の(具体的事例)の①及び②のような場合をいいます。
(具体的事例)
① 戸建住宅10戸の新築工事を請け負い、そのうちの1戸の建設工事を一社に下請負させる場合
② 道路改修工事2キロメートルを請け負い、そのうちの500メートル分について施工技術上分割しなければならない特段の理由がないにもかかわらず、その建設工事を1社に下請負させる場合





一括下請負の禁止の条件4:建設工事を「請け負わせて」いること

準委任契約による再委託は一括下請負の対象外となり得る

一括下請負の禁止の条件の4つめが、建設工事を「請け負わせて」いることです。

建設業法第第22条(一括下請負の禁止)

1 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。

2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。

3 (省略)

これは、1つめの条件と同様で、契約形態準委任契約である建設業務委託契約により、建設業者が他人=第三者に対し委託する建設工事については、一括下請負の対象外となると思われます。

建設業法第24条により請負契約とみなされると一括下請負に該当する可能性もある

ただ、3つめの条件にある工事の全部・主要部分・独立して機能する一部分について、仕事=工事の完成を目的とした請負契約として注文するのではなく、準委任契約として委託することは、理論上は可能であっても、実態としてそのような契約内容となることは考えにくいと言えます。

また、すでに述べた建設業法第24条により、「委託その他いかなる名義をもつてするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約」は、建設工事請負契約とみなされます。

建設業法第24条(請負契約とみなす場合)

委託その他いかなる名義をもつてするかを問わず、報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、建設工事の請負契約とみなして、この法律の規定を適用する。

この条項により、工事の全部・主要部分・独立して機能する一部分の施工について「業務委託」とした場合は、請負契約とみなされ、一括下請負をしていると判断される可能性もあります。





一括下請負の禁止の例外・合法的な一括下請負とは?

民間工事(共同住宅を新築する建設工事以外)で発注者からの書面の承諾が必要

以上の一括下請負の条件を満たした場合であっても、例外として、次のすべての条件を満たした場合は、例外として一括下請負が認められます。

一括下請負の例外に該当する条件
  • 工事が「多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの」=「共同住宅を新築する建設工事」(建設業法施行令第6条の3)以外の建設工事であること。
  • 発注者(いわゆる「施工主・施主」)からの書面による承諾があること。

建設業法第第22条(一括下請負の禁止)

1 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。

2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。

3 前2項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。

4 発注者は、前項の規定による書面による承諾に代えて、政令で定めるところにより、同項の元請負人の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより、同項の承諾をする旨の通知をすることができる。この場合において、当該発注者は、当該書面による承諾をしたものとみなす。

一括下請負の書面による承諾は事前承諾である必要がある

この一括下請負の承諾は、当然ながら、事後承諾ではなく、事前承諾である必要があります。

① 建設工事の最初の注文者である発注者の承諾が必要です。発注者の承諾は、一括下請負に付する以前に書面により受けなければなりません。

なお、建設業法第22条第4項により、書面のみならず、電子的な方法による承諾の通知があっても問題ありません。

必要なのは「発注者」からの承諾

建設業法における発注者(建設業法第2条第5項)とは、いわゆる施工主・施主のことです。

【意味・定義】発注者(建設業法)とは?

建設業法における発注者とは、建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者をいう。

このため、元請の業者が一括下請負をする場合のみならず、下請の業者が一括下請負をする場合も、発注者の承諾が必要となります。

② 発注者の承諾を受けなければならない者は、請け負った建設工事を一括して他人に請け負わせようとする元請負人です。
したがって、下請負人が請け負った建設工事を一括して再下請負に付そうとする場合にも、発注者の書面による承諾を受けなければなりません。当該下請負人に建設工事を注文した元請負人の承諾ではないことに注意してください。





公共工事は例外なく一括下請負は例外なく禁止

なお、公共工事は、入札契約適正化法により、一律で一括下請負が禁止されています。

第14条(一括下請負の禁止)

公共工事については、建設業法第22条第3項の規定は、適用しない。

このため、公共工事においては、一括下請負は、例外なく禁止されています。





建設工事の一括下請負は営業停止処分・建設業許可の取消し

なお、一括下請負は、営業停止命令や指示などの行政処分の対象となります。

建設業法第第28条(指示及び営業の停止)

1 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当する場合(途中省略)においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。(後段省略)

(1)~(3)(省略)

(4)建設業者が第22条第1項若しくは第2項又は第26条の3第9項の規定に違反したとき。

(途中省略)

2 (省略)

3 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が第1項各号のいずれかに該当するとき若しくは同項若しくは次項の規定による指示に従わないとき又は建設業を営む者が前項各号のいずれかに該当するとき若しくは同項の規定による指示に従わないときは、その者に対し、1年以内の期間を定めて、その営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。

4 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の許可を受けた建設業者で当該都道府県の区域内において営業を行うものが、当該都道府県の区域内における営業に関し、第1項各号のいずれかに該当する場合(途中省略)においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。

5 都道府県知事は、国土交通大臣又は他の都道府県知事の許可を受けた建設業者で当該都道府県の区域内において営業を行うものが、当該都道府県の区域内における営業に関し、第1項各号のいずれかに該当するとき又は同項若しくは前項の規定による指示に従わないときは、その者に対し、1年以内の期間を定めて、当該営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。

(以下省略)

また、特に悪質な場合は、一括下請負は、建設業許可の取消しの原因ともなります。

建設業法第第29条(許可の取消し)

1 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該建設業者の許可を取り消さなければならない。

(1)~(7)(省略)

(8)前条第1項各号のいずれかに該当し情状特に重い場合又は同条第3項若しくは第5項の規定による営業の停止の処分に違反した場合

2 (省略)





一括下請負に関するよくある質問

一括下請負とは何ですか?
一括下請負とは、建設業者が、その請負った建設工事(全部、主要部分、独立して機能する一部分のいずれか)を一括して他人に請け負わせることです。
一括下請負に該当する条件は何ですか?
以下の条件に該当する場合、一括下請負となり、原則として禁止されます。

  • 注文する側が「建設業者」であること。
  • 建設業者が「請け負った建設工事」であること。
  • 請け負わせる建設工事が「一括して」いること。
  • 建設工事を「請け負わせて」いること。